黒の剣士の妹分?   作:唄乃 奏

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第四話

「なんだ、嬢ちゃん?」

「嬢ちゃんて……まあいいや。とにかく、ここは引いてくれないか?」

剣を抜いたインプ族の男の前に降り立つと、オレは背中にレコンをかばいながら、まず穏便に話をつけようとした。

「悪いけど、こいつはオレの友人なんだ。わざわざ迎えに来てくれたんだよ」

「ほう、それはご苦労なこって」

だが、男は剣を右手に持ってだらりと下げているだけで、一向に戻そうとしない。

「……だが、それとこれとは話が別だ。ここはインプ領。シルフがのうのうと歩いていい場所じゃないんだよ。斬りかかられても文句は言えないのさ、ニュービーの嬢ちゃん?」

口元に小さく笑みを浮かべながら、男は切っ先をオレ――正確には、オレの背後にいるレコンの眉間に向けた。

「……どうしても、見逃してはくれないか?」

オレは遥か上にある男の顔をにらみながら、押し殺したようにつぶやく。そうすると、男ははっと鼻で笑った。

「どうしてもだ……と言いたいところだが、少し気が変わった」

男は一度剣を下ろし、何かウィンドウを操作し始めた。ほどなくして、オレの目の前にデュエル申請を知らせる警告文が現れた。

「……これは?」

「随分と自信ありげだからな。どうせならデュエルで決着を決めようぜ?」

オレが不審げに男に聞くと、男はオレとレコンを指さした。

「そっちはペアでいい。俺は一人で受ける。武器も持ってる中で一番弱い奴を使おう。嬢ちゃんはニュービーだからな、ハンデだ」

「……へぇ、随分と気前いいね」

オレは男のその提案に、口元に不敵な笑みを浮かべた。

「いいだろう、そのデュエル受けて――」

 

「ちょ、ちょっと!」

 

がしっと、不意にオレは後ろから肩を掴まれる。首だけ振り返ると、レコンが不安げな表情でオレを見つめていた。

「……今まで黙ってたけど、……君はもしかして鳴戸く――リィンナールなの?」

その質問に、オレは肩をすぼめた。腰のあたりで束ねた髪がふわりと揺れた。

「ああそうさ。変な格好になっちまったけどな。……そっちはレコンで間違いないよな?」

「ああ、……うん」

「なら、問題ないな」

オレは軽くレコンのほうに半身振り返った。

 

「……聞いての通りだ。このデュエル、お前とペアで受けることになったけど、それでいいか?」

「そ、それは仕方ないけど……」

レコンから歯切れの悪い返事が返ってきた。

「……でも、リィンナールは初心者でしょ? 大丈夫なの?」

「たぶんそこは大丈夫」

と言って、オレはポンポンと腰に差している剣と鞘を叩いた。

「こいつの扱いは、別のMMOである程度心得てるから。……ただ、魔法についてはサッパリだから、そこはお前に任せるよ。お前見るからに後衛タイプだから、そっちの方がいいだろ? 前でオレがあいつを押さえておくから、魔法でぶっとばしてくれ」

「え……まあ、リィンナールがそれでいいなら、僕も構わないけど」

「じゃ、決まりだ。頼むぜ相棒!」

バシンとレコンの薄い背中を叩いた後、オレは男の方に向き直った。

 

「話はついたようだが、ホントにいいのかい嬢ちゃん? 泣いても知らないぜ」

「泣かせれるもんなら、泣かせてみな」

「へっ、威勢のいい嬢ちゃんだ」

オレがデュエルを受けるボタンを押すと、男がふふふと不敵に微笑んだ。

「ルールは全損決着。……地上戦と空中戦、どっちがいい?」

「さすがに空中戦は出来ないから、地上戦がいい」

「了解。じゃ、そう言う風に」

男の言われた通り、デュエルのオプションは『全損決着モード』が選択されていた。その上には男のアバターの名前……グンナルという表記。オレは当然のようにOKボタンにタッチした。

すると、ポンと男の傍らにアバター名が表示された。おそらく、オレの傍らにも名前……リィンナールの文字が浮かんでいることだろう。

デュエルウィンドウが自動で消滅し、代わりに一分のカウントダウンが表示された。男がゆっくりと腰だめに剣を水平に構えた。取り巻きの男たちも、数歩後ろに下がる。背後からも、レコンが構えを取ったような気配がした。

 

「さってと……」

オレはしゃんと腰から片手剣を抜き放った。いままでずっと使いっぱなしだったから、耐久が気になるが、仕方ない。その初期の片手剣を抜刀すると、そのまま左足を前に出し半身になったところで、右手一本で片手剣を持った。刀身を地面と平行になるように構え、左手は触れないながらも右肩に添える形で固定する。

ふう、と小さく息を吐いたところでカウントがゼロになった。

 

 

「レコン、詠唱頼むぜっ!」

 

 

【DUEL】の文字が表示された瞬間、オレは背後のレコンに言い放つと、一気に地面を蹴った。

 

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