黒の剣士の妹分?   作:唄乃 奏

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第六話

「……っ、グンナル!」

 

やりこみ度のほどは分からないが、勝手知ったるプレイヤーが見るからに初期装備のニュービーを前衛に置いたチームに負けた。初撃で前衛が崩壊し、なすすべなく後衛が沈む……という未来を予想していたであろうグンナルの取り巻きの二人は、しばらく唖然としていたが、やがて我に返ったようにグンナルの名前を呼びながら炎に近づいた。すぐに蘇生魔法を唱え始める。

 

「あれが、魔法か……なんて威力だよ」

オレは横になって肘で上体を起こしていた格好から、あぐらをかいて座る姿勢になった。そしてデュエルにケリがついて安心したのか、大きな安堵の息を吐いているレコンに顔だけ向けた。

「あんなもん、唱えられたら終わりなんじゃないか?」

「……ふぅ。いや、実はそうでもないんだ。あの魔法は木の根元に逃げられるか、飛ばれたら当たらなかったんだよ。硬直が長かったから大丈夫かと思ったけど、一瞬前に解けてたね。……当たってよかったぁ」

「……意外とお前、ばくち打ちなのな」

レコンの言葉にオレは少し目を丸くする。「んー、まあ……」と頭を掻くレコンは、どことなく鼻が高そうな様子だった。

 

「……驚いたぜ。まさか初心者にあそこまで圧倒されるとはな」

いつまでも地面に座っているのもなんだかなと思ったオレが立ちあがると、ちょうど蘇生が終わったのか、光につつまれてグンナルが膝をついた姿勢で現れた。彼は復活一番に悔しそうにそうつぶやいた。

「んー、まあ最終的に決めたのはこいつの魔法だよ。あのまま続けてたらオレが負けてたって」

オレは剣を右手に持ち替え、剣を収めた。そして右手で剣の柄に触れながら、左手の人差し指で右隣りにいるレコンを指さして言う。

「……ふん、だといいがな」

グンナルは自嘲気に言うと、ゆっくりと立ち上がった。

 

「オレの名前はグンナルだ。嬢ちゃんは、確かリィンナールだったか?」

グンナルは真っ直ぐにオレを見てきた。オレはその視線を受けつつ、頷いた。

「あ、ああ」

「……今度は差しで勝負しようぜ?」

にやりとグンナルが挑戦的に笑った。それにオレもにやりと不敵に微笑み返す。

「……そうだな。もうちょっとマシな装備になったら、いつでも相手になるぜ」

「次は負けんからな」

そうするとグンナルはくるりとオレに背を向けた。取り巻きの二人に何かつぶやく。二人は先ほどの戦闘の余韻がまだ残っているのか、若干呆けた様子で同じくオレに背を向けた。三人そろって歩き始める。どうやら街に帰るようだ。

 

「……まさか初日からこんなことになるとは思わなかったわ」

グンナル達の姿が遠くなったところで、オレはぽつりとつぶやいた。

「そう言う風に事を運んだのはリィンナールの方じゃないか」

「ま、まあそうなんだけどな」

軽く責めるように視線を飛ばしてきたレコンに、オレは目を泳がせながら答えた。

「てか、そもそもお前があいつらに囲まれてたから、助けてやろうと思ってこうなったんだぞ?」

今度は逆にオレが責めるようにレコンの顔を覗き込んだ。そうするとレコンは「……その節はどうも」としおらしく頭を下げた。

「……まあ、いいか。久しぶりの実戦で何気に楽しかったし」

ふうと小さくため息をついた後、オレはぐぐっとのびをした。

「楽しかったんだ……」

横からレコンが苦笑いを浮かべてつぶやいた。オレはそれに「おう」と答える。

 

「……で、この後どうする?」

上に延ばした両手を後頭部に当てがって、オレは横目でレコンを見た。するとレコンは再び苦笑いを浮かべた。

「一応合流したら、戦闘とか基本的なことを教えようかなと思ってたんだけど……その様子じゃあんまり必要なさそうだしね。でもホントすごいよ。どこで覚えたのあんな動き?」

「んー」

好奇心がうかがえる目をして、レコンがしてきた質問を、オレはすぐさま答えるかどうか悩んだ。しかし最終的に「まぁいっか」とつぶやいて、ぽりぽりと頭を掻いた。

 

「あれだ。……デュエルの前にさ、剣の扱いは別のMMOで多少心得てるっていったじゃん? あれ、実は海外のやつなんだ」

それを聞いて、レコンが目を丸くする。

「海外のって……あれ、市販じゃ手に入らないんじゃないの?」

 

そう、レコンの言うとおり海外産のVRゲームというものは、市販などといった通常のルートでは入手できない、日本国内では非合法の代物なのだ。その理由は、内容があまりに過激すぎること。例えば、VRゲーム内で食らったダメージのショックが大きすぎて、生身の人体に悪影響が出たりするケースが普通にあったりするのだ。日本のVRゲームはショックアブソーバーという機能が付いており、ゲーム内で切られたり撃たれたりしても、ダメージのショックが軽減され、生身の体に影響がないような仕様になっている。

 

「まぁ、普通はそうなんだろうけど。うちの兄貴がさ、割とそう言う闇ルート的なのに詳しくてな……。ALOほどファンタジーじゃないんだけど、中世の戦争を描いたようなゲームを取ってきて、二人でやってたわけなんですよ。まぁ、そのゲームはちょっと前に閉鎖されちゃったんだけどな」

詳しい事情は知らないが、そのゲームはつい先日突然サービスを終了させた。まだVRゲームというジャンルは始まったばかりだ。法的な縛りが追加されつつある昨今の流れに淘汰されたのではないか、というのはうちの兄貴の談である。確かに、あのゲームは色々と……すごかった。

「な、なるほど……」

どういう反応を返したらいいのか、判断がつきかねたのだろう。レコンは困ったような顔をして小さく頷いた。

 

「いやー、でも楽しかったんだよ。英語さっぱりわかんないから、話が通じなかったのはちょっと怖かったが、PVP(プレイヤー対プレイヤー)はかなり熱かったんだぜ?」

レコンが困惑げな顔をしているのに気がつかずに、オレは意気揚々と当時のことを話そうと口を開きかけたところで、パチパチと軽い音があたりに響いた。

 




この場で少しご報告をさせていただきます。

改めて原作を読み返してみると、ALOにアインクラッドとソードスキルが実装されたタイミングが、この小説の時間軸と合わないことが分かりました。というのも、アインクラッドとソードスキルが実装されたのは、新学期に入った後……つまり、鈴汰やレコン・長田、リーファ・直葉が高校生に上がった後のことのようです。

原作どおりに修正したいところではあるのですが、考えているストーリー上、このまま少し時間軸がずれた状態で進めたいと思います。すみません御容赦ください。
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