黒の剣士の妹分?   作:唄乃 奏

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第七話

「コングラチュレーション」

 

急にあたりに響いたパチパチという軽い音。何の音だ、とあわてて辺りを見回したオレが見たのは、近くにあった大きめな木の陰から一人の少年が出てくるところだった。どうやら先ほどの軽い音は、拍手の音だったらしく同様に賛辞の声を発したのもこの少年のようだ。

 

「……あ」

 

よく見たら、見覚えのある少年だった。先ほど空を飛んでいるときに手を振ってきたスプリガンだ。そして、その少年の後ろからは「あっ」と小さく声を上げてシルフ族の少女が続いた。とたんに、オレの後ろに立っていたレコンが浮き足立つ。

「リーファちゃん! ……とキリトさん」

(知り合いか……だが、なんか露骨だなこいつ……)と思いはしたが口に出さず、オレは肩越しに視線を送るだけにとどめた。その後すぐさま近づいてくる少年少女に注意を戻す。

 

「さっきのデュエル、見させてもらったよ。すごいな君」

「え、あ、あぁ……どうも」

突然の祝福の言葉に、とりあえずぺこりと小さくお辞儀を返すオレ。

「あの、お二方は……レコンのフレンドかなにかですか?」

「ん? あぁごめん。そう、俺たちはレコンのフレンドだ。俺の名前はキリト。こっちがリーファ」

 

「……」

 

レコンの反応からしてそうではないかと思い尋ねてみたところ、スプリガンの少年――キリトが気さくに答えてくれた。だが、その後ろに立っているシルフの少女――リーファと紹介された少女は、ぺこりと小さくお辞儀をしたのはいいが、なにやら疑わしげにオレとレコンを交互に見つめてくる。

「……?」

な、なんなんだ、この人は?

挨拶もおざなりにこちらを見つめてくる少女に戸惑いを覚えていると、ぐいとレコンがオレの前に出てきた。

 

「ごめん、リーファちゃん! 言ったように友人の手助けをしに来てたから、パーティ組めなくて」

「……いや、別にあんたがいなくても普通に狩りはできるし」

「ひどっ!?」

ばっさりと言葉の刃でリーファに切られるレコン。手痛い仕打ちに肩を落として涙するレコンを他所に、リーファはじっとオレを見つめてきた。この少女、勝気そうな雰囲気が漂うが、なかなかの美少女だと思う。まぁ、基本的に整った造形が形成される《ALO》では、大抵は美男美女になるのだが……。

 

それはそれとして、そんな少女に見つめられては、免疫力のない(つまり女の子と付き合ったことがない)オレは瞬く間に目を泳がせて挙動不審になる。

「え、あ、あのー……」

「あなた、名前は?」

「え、あぁ。リィンナールです」

「リィンナール……。まぁ、名前だけじゃ分からないか」

オレがアバター名を言うと、リーファは口の中で転がすようにそうつぶやいた。

お、オレなにかこのお嬢さんを煩わせるようなことをしでかしてしまったのだろうかっ。

 

「……レコン、ちょっといい?」

「……っ! なにリーファちゃん!?」

オレが冷や汗を浮かべている目の前で、リーファはレコンを呼び手招きをした。それに気がついたレコンは、ぱっと表情を明るくしてそそくさと彼女のそばに駆ける。それを見て、まるで飼いならされた犬のようだなと頭の片隅で思ったオレは、同時にレコン――長田らしいっちゃらしいか、という感想を抱いた。

 

「相変わらず仲がいいなあの二人は……というか、レコンが一途だな」

レコンとリーファの様子をぼーっと見つめていると、不意にキリトがぼそりとつぶいやいた。それにオレも小さくうなづく。

「そう、ですねぇ。いつもあんな感じなんですか?」

レコンとリーファが二人の会話をしだしたところで、キリトは手持ち無沙汰になったのだろう。それはオレも同様だったので、キリトのつぶやきにオレは言葉を返した。するとキリトは「んー、そうだなぁ」と腕を組みながら、なにかささやきあっている二人のほうを見つめる。

「最近リーファは俺達のフレンドとパーティを組むことが多いし、レコンもレコンでフレンドがいるっぽいから、顔を合わせるのは毎日って訳じゃないんだけど。顔を合わせたときは、大抵あんな感じだな。毎回レコンが必死なんだ」

「あぁ……。哀れ、レコン」

そういって、オレたちは二人して苦笑を浮かべる。

 

「……そういえば。えっと……リィンナールさん?」

ふと、何かを思い出したようにキリトが口を開いた。確認を取るようにオレの名前を口にするキリトにオレは肩をすぼめる。

「リィンナールでいいですよ。長ければリィン、あるいはリンって呼んでください。えっと、そちらはキリトさん……でしたっけ?」

「あぁ、俺もキリトでいいよ。敬語も必要ない。それじゃあ、リンって呼ばせてもらうよ。……リンはさ、ALOはじめたばかりなんだよな? その割にはさっきの動き、堂が入ってるというか……慣れてる感じというか」

「そのことですか。まぁー、あんまり大声では言えないんだけどね……」

そうぼそっとつぶやくと、オレは声量を小さくしてレコンにした説明をキリト相手に繰り返した。するとキリトは「……へぇ」と興味深げに口元を歪ませた。

「あの動きは海外仕様なのか……。おもしろそうだな」

「……もしかしなくても、あんた戦闘狂って言われたことない?」

「……よ、よく言われるかな?」

「だろうな……」

戦闘の話をし始めたときの、あの不敵な笑み……初対面のオレですらすぐ分かる。

まぁ、オレも大概なんだけどな。たぶん、同じく戦闘の話となると饒舌になるだろう。

 

「……はぁっ!? それホントなの?」

 

 

戦闘狂二人でニヤニヤしていると、不意にレコンと話していたリーファが甲高い声を上げた。

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