推しの飯/絶望の未来から転生した戦士   作:Miurand

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 本編に入る前に軽い注意書き

 この作品は、ドラゴンボール(Z)と推しの子のクロスオーバーになります。世界観は本編中に語られます。また、今後推しの子側の原作ネタバレが含まれる可能性もあるので、ご留意ください。



序章 幼少期
第一話 未来の戦士は一番星の子供に転生する


ある世界では、孫悟空という戦士がウイルス性の心臓病で亡くなった。これまで数々の強敵に打ち勝ってきた戦士でも、新発見されて治療法が確立されていない病には勝てなかった。

 

仲間たちは悲しみをそれぞれの胸にしまいこみ、半年ほどは平和な日々が続いた。しかし半年後、今後長年世界を地獄に変えることになる2人の悪魔が産声をあげた。その世界の戦士達は立ち上がった。

 

しかし、彼らの健闘もむなしく、ピッコロが死んだ。それによって片割れの神様も死に、ドラゴンボールが消失した。続けてベジータ、ヤムチャ、天津飯、そしてクリリンが殺された。

 

その世界は、たった2人の人造人間によって、あっという間に地獄に変貌した。

 

そして、1人になっても人造人間に抵抗し続ける戦士がいた。その戦士は時には1人で、時には弟子と共に。時には弟子を庇って片腕を失いながらも、長年人造人間と戦ってきた。

 

しかし、その戦士も、ついに人造人間を前にして敗北し、その生涯を終えてしまった。

 

 

 

 

 

『オレは死なない!例えこの肉体が滅んでも、オレの意志を継ぐ者が必ず立ち上がり!そして、お前たち人造人間を倒す!!!』

 

あの時、オレは負けるつもりは全くなかった。勝つつもりで勝負に挑んだ。だが、やはり人造人間には敵わなかった。薄々分かっていた。五体満足の状態でも不利だったのに、片腕を失った状態では勝てないことくらい。だからオレは賭けた。トランクスがオレより強くなり、人造人間を倒してくれることを。

 

あの後どうなったのだろうか?トランクスは無事超サイヤ人になれたのだろうか?人造人間を倒して、平和な世界を取り戻すことはできたのだろうか?

 

トランクスに才能を見出したから、オレはトランクスに全てを託すことにした。まだ超サイヤ人になれていないトランクスを戦場に行かせたら、間違いなくトランクスは負けるし、オレもトランクスを守ることはできなかっただろう。

 

だから、これでよかったはずだ。オレの選択は間違っていなかったはずだ。幼い君一人に全てを託すのは気が引ける。でも、お前しかいないんだ。世界を救える可能性があるのは、トランクスだけなんだ。

 

オレの意志を継いでくれ。そして、世界を救ってくれ。お前が最後の希望だ。

 

 

 

 

 

孫悟飯の意志はトランクスに受け継がれた。過去の世界から帰ってきたトランクスは、人造人間を圧倒するほどの力を身につけていた。現代(あちら)では多少ヤンチャな程度だった人造人間も、未来(こちら)では極悪そのもの。トランクスは容赦する気など全くなかった。

 

人造人間17号、18号の両者を見つけ次第、すぐに超サイヤ人に変身し、18号を撃破。立て続けに17号も一瞬で始末してみせた。だが、ここで安堵してはいけない。まだもう一体、倒さなければならない人造人間がいる。

 

歴戦の戦士の細胞を集められて作られた特殊な人造人間、セルは完全体になるために必要な17号と18号を探す為に街に出てきた。しかしその時には既にトランクスによって撃破されていた。

 

そのセルもまた、トランクスによって命乞いをする暇もなく片付けられた。これによって、ようやくこの世界に平和が訪れたのだ。

 

 

 

「……悟飯さん。俺、やっと人造人間を倒せました。悟飯さんがあの時、身を挺して俺を止めてくれなかったら、きっとこの世界は今も人造人間の恐怖に怯え続けていたと思います。どうか、安らかに眠ってください………」

 

この世界には、既にドラゴンボールはない。何故ならピッコロが死んでしまったから。トランクスは、できれば悟飯達を生き返らせ、この平和な世界を見せたかった。でもそれは叶わない。だから、トランクスはこう願う。

 

(……もし、来世というものが存在するのなら、その時は平和な世界で幸せに過ごせますように……)

 

 

 

 

 

 

 

人は生き返ることは可能なのか?

 

普通ならそんなことは不可能だ。だけど、昔はドラゴンボールというものが存在していた。それはピッコロさんの片割れ、神様が作ったものだそうで、1年に1回しか願いは叶えられないものの、死んだ人をも生き返らせることができるほどに万能な物だった。

 

実際、それでラディッツと戦って死んだはずのお父さんは生き返ったし、ナッパやベジータさんに殺されたみんなも生き返ることができた。ただ、2度同じ人を生き返らせることは不可能だったり、病気や寿命で死んだ人…、つまり、自然死をした人にもその効果は表れないらしく、制約は意外とある。更にはドラゴンボールの創造者、つまり、神様の力を大幅に超える願いを叶えることもできないらしい。故に、別の世界に移動することは難しいだろう。時を超えることも恐らく無理だ。

 

だが、そんなことを話しても無駄だ。何故なら、ドラゴンボールはピッコロさんか死んだ時点で消滅してしまったのだから。ドラゴンボール以外で人が生き返る手段をオレは知らない。

 

 

「よしよーし、エメラルドはいい子でちゅね〜♪」

 

だから、オレは今のこの状況を飲み込めずにいる。エメラルドとはオレのことである。『星野(エメラルド)』。それがオレの今世の名前らしい……。

 

 

 

第一話 未来の戦士は一番星(星野アイ)の子供に転生する

 

 

 

 

気がついたら、オレは生まれ変わっていた。失ったはずの左腕が存在しているし、何より殺されたはずなのに生きている。別にそれだけならまだ驚きはしなかった。どうにかしてナメック星人の手を借りて生き返らせたのだろうと納得できた。

 

でも、オレは赤ん坊になっていた。ただ赤ん坊に戻ったわけではない。他人の子供として生まれ変わってしまったのだ。鏡を見れば、そこにはオレが知らない赤ん坊が映っていた。こんなことあり得るのか……?ドラゴンボールの力もなしにこんなことが……?

 

「それにしても、エメラルドは本当に大人しい子だよね〜。お腹すいた時やオムツの時でも泣かないなんて」

 

そして、今オレを抱き上げているこの女性は『星野アイ』さん。聞いた話では、アイドル活動をしており、子供ができたことによって今日まで休止期間に入ってるのだとか。

 

前世は勉強と戦いに明け暮れていたため、他のことはからっきしだ。だからアイドルのこともよく知らない。社長やミヤコさんという人はアイドルが子供を持つ危険性をアイさんに説明していたが、オレには理解できなかった。

 

アイドルが子持ちだとファンが怒って炎上してしまうのだとか。確かに、年齢を考えればちょっと早いのかもしれないが、何がいけないのだろうか…?山の中に住んでいたせいか、そういう常識には疎いのかもしれない。

 

ちなみに、この世界がオレの住んでいた世界とは全く別物だと分かったのは、テレビやインターネットを使って調べて分かったことだ。カプセルコーポレーションのことを調べようとしても、それに関連する情報が全く出てこない。人造人間や天下一武道会のことを調べても、結果は同じだ。

 

年もエイジではなく、西暦もしくは和暦で表される。それに通貨はゼニーではなく円。さらに、様々な国がいくつも存在し、オレ達が住んでいる国は日本というらしい。前の世界では国という概念は存在しなかった。強いて言うなら、地球国という一つの大きな国と言ったところだろうか。

 

もしかすると、この地球は人造人間によって人間が滅ぼされかけて、その後にどうにかして立ち直った後の世界なのかもしれない。しかし、それなら人造人間は誰に倒されたのか?まさか宇宙に旅立った?それをするくらいなら、あいつらなら地球そのものを破壊してもおかしくない。だから、オレは別世界の地球ということで納得している。

 

まあ、色々考えても仕方がない。こうして幸せな家庭が築かれているところを見るに、この世界は間違いなく平和だ。人造人間に怯えながら過ごす人はいないと思いたい。

 

「おっ?アクアも起きたんだね〜?高い高〜い!」

 

そして、オレには兄と姉がいる。今アイさんに抱かれているのが、『星野愛久愛海(アクアマリン)』。なんというか、とてもユニークな名前だ。この子もかなり大人しく、オレの記憶が正しければ、アクアに限っては一度も泣いているところを見たことがない。

 

……それにしても、アクアを抱いているアイさんも、抱かれているアクアも幸せそうな顔をしている。人がこんな顔をしているのを見るのは久しぶりかもしれない。なんせ、前世はみんな人造人間に怯えて生きてきたから……。トランクスが上手くやってくれたのなら、あの世界にもこのような笑顔が戻っていたのだろうか……?

 

「ふぇえええん!!!」

 

そうだ。今世のオレには姉もいる。名前は『星野瑠美依(ルビー)』今は泣いているけど、これでも大人しい方だと思う。

 

「なんでちゅか〜?ルビー?」

 

アクアとルビーとオレ。この三人が三つ子としてアイさんのところに生まれてきた。オレは前世の記憶があるが、アクアとルビーも同じなのだろうか?でもそんな偶然なんてあり得るわけないか。

 

「ふぁあああん!!」

 

「どうしたの〜、アクア?」

 

「そっちはルビーだろう?」

 

社長さんとミヤコさんも入ってきた。アイさんは人の名前を覚えるのが苦手だと言っていたけど、流石に自分の子供くらいは覚えられるものなんじゃないだろうか………?

 

斎藤社長のことも佐藤社長と呼び間違えていたし…。もしかすると、そういう類の病気を患っている可能性もあるけど…。

 

 

そして、アイさんは今日からアイドルに復帰するらしいけど、子連れでの外出は基本的にNG。やむを得ないときは社長夫妻の子供を連れているという設定で出なければならないらしい。アイさんの年齢を考えればまだ納得できるけど、アイドルだからという理由でここまでしなければならないものなのか…。アイドルって大変なんだな…。

 

 

 

「ベビーシッターなんて経験ないのに、なんで私が………」

 

そう言うと、疲れ果てたミヤコさんは眠りに入ってしまう。これでようやく赤ん坊のフリをする必要がなくなってひと安心だ。

 

すると、それを待っていたのか、アクアは当たり前のように立ち上がってテレビ前まで移動。そしてリモコンを取り出してテレビをつけた。

 

ちなみに、チャンネルはアイさんの出演する番組に合わせられている。録画しているというのに、それでも生放送を見るなんて、アクアは相当アイさんのことが好きなようだ。

 

「あはは…。アクアはアイさんのこと大好きだね〜」

 

 

「お前がアイに関心無さすぎるんだよ」

 

そして、当たり前のように喋る乳児が二人……。そしてアクアもオレもこれをおかしいとは思わなくなってしまった。お互いにとって、オレとアクアが喋れるのは最早常識となっている。というのも、以前こんなことがあった…。

 

 

 

夜中…。何かうるさくて目が覚めてしまった時がある。その発声源まで念の為ハイハイで移動すると、そこには…。

 

「はぁ死ねよ!!ママの才能と美を理解しない猿人類が…!!パフォーマンスの質で格の違いが明らかでしょ!!!」

 

それはもう、赤ん坊が使ってはいい言葉ではない、不適切な表現を息を吐くようにして発するルビーがいた。後で聞いた話だと、アイさんの悪口がネットに書き込まれていたから、その人たちと戦っていたらしい…。

 

「もしかして、お前俺と同じか?」

 

「えっ…?」

 

そして、アクアもまた、当たり前のように言語を発した。

 

「赤ん坊が喋った!!?キモ〜ッ!!!!?」

 

「いやお前もだろ」

 

オレはこの光景に頭が真っ白になりかけた。でも寸前のところでなんとか戻ってくることができた。よく考えれば、オレだって前世の記憶がある身だ。一人いるなら、二人三人いても何もおかしくない。ただ、世界は狭すぎると思う。いや、むしろ三つ子だからか?ダメだ、考えるとキリがなくなりそうだ。

 

正直、オレも同類だと伝えた方がいいのかどうか悩んだ。

 

「……ん?ということは、まさかエメラルドもなのか?」

 

「あ〜。エメラルドって明らかに赤ん坊っぽくない素振りだったよね〜。全然あり得るけど、3人もそんなことある?」

 

…ということで、バレるのも時間の問題だったので、打ち明けることにした。

 

つまり、星野アイの子供達は全員前世の記憶を持ったまま転生しているということになる。なんというか、アイさんにはちょっと気の毒というか、普通の子供が1人くらいいても良かったのではないかと思ってしまう。でも少なくともオレが自らの意思でここに転生してきたわけではないから不可抗力だ。許してほしい……。

 

 

 

時は現代に戻り、オレとアクアはアイさんが復帰して初めてとなるテレビ番組を見ている。

 

この番組は、B小町の踊りを披露するものとなっているらしい。オレはそれを見るのは初めてだが、アクアとルビーは前世からアイさんのファンだったらしく、今回の放送も見るのを楽しみにしていたようだ。ミヤコさんが起きている間は赤ん坊らしい振る舞いをしているが、いざオレ達だけになると、アイさんのこと、B小町のことを圧倒的な熱量で語ってくる。特にルビーはすごい……。うん。

 

正直オレはついていけない……。アクアとルビーそれを察したからか、『だったらアイの踊りを見て!気がついたら絶対アイ推しになってるから!』と、強い押しに負け、こうして見ているというわけだ。

 

いや、別に見たくないわけではないのだ。今世の母親がどんなことをしているのかは気になっていたが、まさか自分の口から聞くわけにもいかないので、こうして見ることができるのは好都合と言えよう。

 

だが、オレは他にやりたいことがある。それは……

 

『そうそう!ご飯と言えば、この間ウチの子がね!』

 

「なっ…!!!?」

 

ちなみに、この番組は生中継だ。故に、失言した場合はリアルタイムで放映される。この発言は危ない。下手したら子供がいることを暴かれかねない。

 

だが、アイさんはペットを飼い始めたという嘘でなんとか乗り切った。瞬時にそんな嘘が思いつくのは素直に尊敬する。オレには絶対できないことだ。昔から隠し事が下手だってブルマさんやお母さんに指摘されてたっけ……。

 

「………今のは危なかったね」

 

「復帰早々、この先が思いやられるな…」

 

と、心臓に悪い出来事はあったものの、なんとかこの番組のメインとも言える、B小町のパフォーマンスの開始直前までやってきた。まだ始まってもいないのに、アクアは画面を食い入るように見ている。

 

 

 

そして、始まった。

 

『あなたのアイドル〜!サインはB!!ちゅ♡』

 

オレはアイドルというものをよく知らないし、前世は殆ど娯楽というものに触れてこなかった。だから、このアイさんが他のアイドルと比べてどこが優れているのかは分からない。だが、そんな素人なオレでも確実に言えることがある。

 

この人は、やけに人の目を引き寄せる。つい目で追ってしまう。

 

何故だろうか?オレは彼女のファンってわけではない。信者でもない。容姿がいいから?歌が上手いから?踊りが上手だからか?

 

……分からない。でも気がついたら彼女を目で追ってしまう。周りの子だってダンスは上手だ。容姿だっていいはずだ。でも何故だろう。どうしてもアイさんにばかり目がいってしまう。

 

………言葉に表すのは難しい。だけど、社長さんがリスクを背負ってでもアイさんにアイドルをやらせるのは、こういうことだろうか?アクアが夢中になるのも、少しだけ分かるような気がする。

 

「待って…!もうNステ始まってんじゃん!どうして起こしてくれなかったの!!?」

 

声の正体はミヤコさん………ではなく、オレの今世の姉に当たるルビーだ。その後も画面に映るアイさんを見ては彼女を褒め倒す。まだ1歳にも満たない子供が自分のことを褒め倒している光景を見たら、アイさんはどんな反応をするのだろうか?ふと気になってしまった。

 

「もう!生放送ではリアタイに意味があるってのに、なんで起こしてくれなかったの!?」

 

と、ルビーはオレとアクアに言う。いや、一応オレとアクアも起こそうとしたんだけど、身体が赤ん坊だからなのか、なかなか起きなかったのだ。

 

心の中でそう呟いていると、アクアが一応起こしそうとしたと言う。するとルビーは素直に謝ってきた。どうやらこの子は素直なようだ。たださっきはアイさんの勇姿を見るのに出遅れてしまったから、少々機嫌が悪かったようだ。

 

そんな小さなハプニングがありつつも、オレ達は3人で最後までアイさんの勇姿を見届けた。ちなみに2人は途中から、どこから取り出したのかサイリウムを持ってキレッキレのダンスを踊っていた。ちなみにそのダンスはオタ芸というものらしい。

 

………それ、ミヤコさん達の前では絶対に見せちゃダメだぞ……。

 

 

 

番組が終わると、オタ芸を踊って疲れたのか、そのまま眠ってしまった。中身は何歳かは分からないけど、やはり身体に影響されるものはあるようだ。実際オレも眠気に負けてしまうことが多々ある。突然眠気が来て、大人の時のように我慢できないから意外と不便だ。

 

……さて。ミヤコさんもまだ眠っているし、アイさんはまだ帰ってこないだろう。赤ん坊が1人で外を徘徊するわけにもいかないので、この家の中でやる必要がある。

 

 

 

念の為別室に移動し、戸をゆっくり閉める。そして今日も毎日の日課を始める。

 

「…………」

 

意識を集中させる。自分の中にある『力』を感じ取り、それを出力しようと試みる。

 

だけど、上手くいかない。何故だ?気の扱い方は今でも覚えている。しかしどうも勝手が違うようだ。やはり身体が違うからか?以前、お父さんがギニューと身体を入れ替えられた際、ギニューはお父さんの秘めた力を上手く扱うことができなかった。

 

それと似たようなものなのか、前の肉体に完全に慣れてしまったから、その感覚のままやろうとするのがいけないのだろうか……?それとも、サイヤ人の血が入ってないからか?

 

いや、それはおかしい。もしサイヤ人の血もなしに気を扱えないなら、クリリンさん達はどうやって会得したのだ?強さに差は出るかもしれないが、気を扱えるかどうかに種族は関係ないはずだ。とすると、やはりこの身体に慣れていないだけなのだろうか……?

 

慣れてないなら尚更修行だ。少しでも早くこの身体に慣れて、気を扱えるようにしておきたい。この世界ではフリーザや人造人間のような悪人が出ないとも限らない。前世ほどの力を身につけるのは厳しいとしても、出来る限り強くなって、守れるようになりたい。

 

結局、その日も核心が掴めないまま修行は終わってしまった。ただの精神統一だけでも、赤ん坊にとっては重労働のようで、強い眠気に襲われてしまう。残念ながら今日の日課はここまでのようだ。多分起きたらミヤコさんは目を覚ましているだろうし、アイさんも帰宅しているだろう……。でも、眠気には逆らえなかった………。

 

 

 

「……!!」

 

気がつくと、オレは見慣れた景色の中にいた。煙があがっている街。崩れたビル。響き渡る悲鳴に爆発音。血だらけになって倒れている人々。

 

……どういうことだ…?オレは確かに生まれ変わったはず…。まさか、夢だったのか?

 

「よお、孫悟飯。久しぶりだな」

 

「お、お前は……!!」

 

忘れるわけがない顔。一見ただの不良少年にも見えるが、そんな生優しいレベルの悪人じゃない。こいつは、今まで沢山の命を奪ってきたんだ。相方(18号)と共に。どっちが夢なのかは分からない。だが、こいつが目の前にいる以上、オレには選択肢が残されていない。

 

「お前達の好きにはさせないぞ!」

 

気を解放し、()()()()()()()()した。近距離だったため、そのまま17号を殴った、はずだった。

 

「なっ……!!?」

 

だが、オレの拳が奴に触れることはなかった。透けたのだ。

 

「おいおい、忘れたのか?お前は既にこの世界では死んだ身だ」

 

そうだ。それは分かっている。オレは何故か星野アイさんの子供として生まれ変わった。だとすると、やっぱりこれは夢なのか……?

 

「そうだ、せっかく久しぶりに会ったんだ。いいものを見せてやるよ」

 

17号はそう言うと、1人の人間をこちらに投げてきた。いや、もう人ではないのかもしれない。人の形をした何かなのかもしれない。

 

別に、そんなものは沢山見てきた。オレが無力なばかりに、大勢の犠牲を出してしまった。だから、それを見た程度でオレが怯むはずがなかった。

 

「…………ま、まさか…!!!」

 

「俺達がお前を殺した後、こいつはようやく()()()()()()()()()()ようだな。だがまだひよっこだった。ただ感情に任せて無鉄砲に突っ込んでくるだけだったぜ?面白味のカケラもない」

 

「そ、そんな……………!!」

 

分かってる。これは夢だ。オレの懸念が夢となって現れた幻覚に過ぎない。それは分かっている。でも、もしかしたらそうなっている可能性もある。そう考えるだけで、オレの選択は正しかったのか?本当にあれで良かったのかと、疑心暗鬼に陥ってしまった。

 

「お前のせいだぜ?お前がトランクスの面倒をちゃんと見てやらないから、こいつは死んだ」

 

「そ、そんなはずは……。トランクスがそう簡単にやられるわけが……」

 

「いい加減認めろよ。お前は逃げたんだよ。もう戦うのは嫌だったんだろう?だからトランクスに押し付けたんだよ、お前は。身勝手なやつだな」

 

やめろ……。オレはそんなつもりでトランクスに託したんじゃない…!オレは、トランクスに可能性を感じたから託したんだ…!決して逃れるためでは…!!

 

「へぇ?なら今の体たらくはどう説明するのさ?赤ん坊になって、ただ飲んで寝るだけの生活をしてさ。幸せそうだよね〜。トランクスは今も一生懸命戦っているのにさ?」

 

「ましてや、死んでるかもしれないのにな」

 

お前らに言われる筋合いはない。だけど、今考えると、無意識にオレは戦いから逃げてきたのかもしれない。元々オレは戦いは好きではなかった。お父さんやベジータさんのように、オレは好戦的な性格ではない。だが、みんな死んでしまったから、オレが戦う必要があった。強くなる必要があった。トランクスの師匠になる必要があった。

 

自分の夢も諦めて、ひたすら戦いに身を投じていた。

 

そんな生活に無意識に嫌気がさしていてもおかしくない。オレは、そんなセコいことをしたのか……?トランクスはどう考えているんだ?

 

オレの選択は、正しかったのか……?

 

教えてください、ピッコロさん、お父さん………。

 

 

 

「………ん…?」

 

……悪夢から目が覚めた。やっぱりあれは夢だったのか。自責の念が夢という形で現れてしまったようだ。正直に言ってしまうと、前の世界での生活よりもこっちの生活の方が好きだ。その理由はとても単純だ。

 

この世界はとにかく平和だから。人造人間のような極悪人が暴れ回っている世界ではないからだ。それだけでも、とても居心地がいい。

 

……そうだ。ここの居心地がいいから、自分は逃げるためにトランクスを庇ったんじゃないか?最近はそう考えるようになってしまったのだ。良かれと思ってやったことだが、本当に良かったのだろうか…?トランクスには、まだ導いてくれる存在が必要だったんじゃないか?あそこは大人しくトランクスと共に引き返すべきだったんじゃないか?

 

そんな思考の沼に陥っていると、ふと頭に熱を感じた。この感触は、手だ。オレはアイさんに抱えられているんだ。何故だろう。撫でられるだけで、こんなにも安心感を覚えてしまう。

 

「良かった…。エメラルド、なんか凄く魘されていたから心配したんだよ?怖い夢でも見たの?」

 

優しく、アイさんはオレを、僕をあやしてくれる。だけど、優しくされればされるほど、オレは逃げてきたのではないか?そう考えてしまう。

 

「けぷっ…」

 

「あはは、ゲップ?エメラルドは食いしん坊さんだったもんね〜?」

 

「(……えっ?)」

 

アイさんの一言で、オレは硬直してしまう。いやまさか、寝ている間にそんなことをするわけがない。気を紛らわす為に周りを見渡すと……。

 

「……………」

 

アクアがオレを蔑む目で見てくる。まるで、『お前、ついにやりやがったな』とでも言いたげな顔だ。

 

「……すぅ…」

 

ルビーはぐっすり寝ていた。良かった…。ルビーにも見られていたら、オレは生きていけなかったかもしれない…。

 

「あれ?アクアもお腹空いた?おっぱい飲む?」

 

「……!!!?」

 

アクアは思いっきり首を横に振る。その直後に近くにあった哺乳瓶を取って飲み始めた。

 

「おお、凄い飲み方……。アクアは哺乳瓶大好きだね〜」

 

……オレは、本当にこんな生活を続けていてもいいのだろうか?

 




星野(エメラルド)孫悟飯(未来悟飯)の生まれ変わり。隻腕になっても一人で人造人間に立ち向かい、死亡した。次に目を覚ました時には、あの世ではなく星野アイの腕の中だった。しばらくこの状況に困惑していたものの、最近ようやく慣れ始めた。

 星野家三人目の子供。兄にアクア、姉にルビーがいる。髪色は上の二人とは違い、若干紫が入った黒髪に、自身の名前にもなっているエメラルドを連想する鮮やかな緑色の瞳が特徴的。アクアは右目に、ルビーは左目に星型のハイライトが入っているが、エメラルドにそのようなものは確認されていない。ただ、親や兄姉にはあるので、今後何かをきっかけに現れる可能性はある。

 超サイヤ人どころか気をコントロールすることもできない。身体能力はほぼ一般人と同じ。周りの目を盗んではこっそりと修行するが、なかなかうまくいかない。

 ちなみに、名前をエメラルドにした理由ですが、単純にポケモンのルビーサファイア(ホントはアクアだけど)エメラルドがパッと思い浮かんだこと、超サイヤ人の瞳の色に近いことの2つです。また、エメラルドの宝石言葉をググってもらえると分かりますが、未来悟飯にピッタリな宝石言葉もあったので……。


 推しの子1話見て、アイが可哀想すぎる+カカロット未来編をプレイして未来悟飯の人生が悲惨だなぁ…。この二つの感情がぶつかった結果生まれたダークマターでございます。ちなみに推しの子側に関しては最新話まで読破済。ということで、今後こちらのネタバレが含まれる可能性もあるのでご注意を。

 また、今話は悟飯視点でしたが、この作品は基本的に地の文は三人称視点になります。たまに1人称視点になることもありますが…。

 早速アンケートを設置していますが、このアンケートの結果によって今後の展開が変わるというようなことはありません。ただの興味本位です。暇つぶし感覚でどうぞ。

星野アイの未来

  • 生存ルート
  • 原作通りの死亡ルート
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