推しの飯/絶望の未来から転生した戦士   作:Miurand

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※今回前書き長文につき、早く本編を読み進めたい方はスキップ推奨。

 ここでは今後の計画について少し話したいと思います。先日あるご指摘をいただきました。内容を超ざっくり言うと、「流石にDBに偏りすぎ」です。まあこれに関しては私も薄々感じていたことなんですよね。だからやっぱりそう感じる人もいるよなぁという感じです。だからと言って今更5,6話分を無かったことにするのも、それはそれで、気に入ってここまで読み進めて下さった方にも申し訳ないので……。

 まず、第6話と第7話を修正しました。と言っても、内容自体に変化はありません。6話の終わりと7話の始まりを変更しただけです。具体的には、カカロットの登場を7話に遅らせるようなイメージで、区切る場所を変えました。そして、バトルいらない人向けに一気に推しの子メインパートまで進むリンクでも作ろうかと考えています。例えばの話ですが、20話から推しの子メインパートになるとして、第6話の後書きに第20話のURLを貼るようなイメージです。そんで、第20話の前書きにそれまでのバトルパートのあらすじをめっちゃ簡単に記す、といった感じにしようかと考えております。一応、第7話以降の戦闘メインのお話を読まなくても、違和感なく読み進められるように配慮するつもりです。

 実を言うと、ご指摘をもらう少し前からこの計画は立てていました。そこにご指摘をもらって実行することを決意した感じです。ここまで読み進めて、なおかつ気に入って下さってる方には少々無縁な話にはなってしまうかもしれませんが、念の為ここにも記しておきます。始めたからには、ちゃんとバトルパートも終わらせます。より多くの方に楽しんでいただくには、これが最善だと判断しました。では、長文失礼しました。



第十二話 裏切り

ベジータ主導による過酷な修行と、エメ主導による戦闘力コントロールの修行が続き、ベジータとナッパは気をコントロールできるようになった。エメ達もベジータ達と初めて戦った時よりも大幅にパワーアップした。

 

エメはそれと並行して、有馬かな主導の演技修行も行っていた。そのはずなのだが、最近は頻度が落ちていた。

 

というのも、かなの母が仕事を取ってくるようになったらしい。子役として活躍していけるので、かなは喜んでいるのだろうと、エメは気楽に考えていた。それよりも、やはりいち早くフリーザを倒せるだけの戦闘力を身につけなければならない。ということで、何度か死にかけながらも、過酷な修行を継続していた。

 

そうしているうちに、約半年が経過した。その日の早朝、エメは早起きをしていた。今日は特別な日だった。別にフリーザが来襲するわけではない。今日は、本来ならあの日やるはずだった、B小町のドームライブの日なのだ。

 

アイの代わりにエメが刺され、アイのメンタルが崩れた影響によって、大幅に遅れてしまったが、こうしてドームの日を迎えることができたのだ。

 

「エメ。今日はアイのドームライブの日だ。なんとしてでもアイを守るぞ!」

 

「勿論!」

 

「もー大袈裟だなぁ。大丈夫だよ。ちゃんとカメラで確認して、社長達じゃなかったら開けないことにしてるから」

 

アクアとルビーとしても、以前のストーカーによる刺傷事件はトラウマになっていた。その為、今日の警戒心は無茶苦茶高かった。

 

インターホンが鳴るも、アイはしっかりカメラで確認して、壱護社長とミヤコであることを確認してから、扉を開けた。特に大きな事件もなく、ドームにまで辿り着くことができた。

 

「よし。行ってくるね!」

 

「頑張れ〜ママ!」

 

「ちゃんと応援するから!」

 

「ありがと!」

 

子供達に激励され、アイは待機室に向かい、エメ達は関係者席でドームライブの様子を見ることになっている。

 

「歴史的瞬間に立ち会えるとかマジ神〜!!私もうすぐ死ぬんじゃない……!?」

 

「縁起でもないことを言わないの」

 

ハイテンションになっているルビーに一言ツッコむエメ。アクアも似たようなテンションになっていた。壱護とミヤコは何故この子達はこの歳からドルオタになっているのかと、昔からの疑問だったが、最早今更だった。

 

「よう。ひと仕事終えてきたぜ」

 

「あっ、カカロットさんだ!いいから早く座って!!もうすぐライブ始まるから!!」

 

「うっせえ。少しは静かにしやがれ」

 

カカロットも関係者席に座るが、誰一人として驚いていない。何故彼がこの場にいるのかというと、彼はアイに指名されたのだ。当日のボディガードを担当する人物として。

 

壱護とミヤコは、アイがわざわざ指名したことに不信感を抱いていた。また男を作ったのではないかと疑ってしまったのだが、エメの世話をしてもらっていると言うと、意外とすんなり信用された。

 

エメに護身術を教えている彼ならばと、ある意味厚い信頼を得ていたわけである。

 

しかし、カカロットは指名されただけで仕事を引き受ける義理はないはずだ。では何故仕事を引き受けたのか?

 

 

 

時を少し遡って、約1ヶ月前……。

 

「あっ?俺がてめぇのボディガードだぁ?なんでだよ?」

 

「だって、エメに護身術を教えているんでしょ?それならカカオさんが適任かなぁって思ったの!」

 

「別にこの小僧でよくないか?コイツも相当強いぞ?」

 

「ダメ!また無茶をして今度こそ死んじゃうかもしれないもん!そんなことさせられないよ!」

 

「そーだよ!それにママのボディガードができるんだよ!?これ歴史の教科書に載るくらい偉大な仕事だからね!?」

 

「断る。俺にメリットがない」

 

アイが急にボディガードにカカロットを雇うのはどうだろうかと提案し、実際に勧誘してみたのだが、案の定カカロットは応じなかった。そのはずなのだが……。

 

「ふーん?メリットがあればいいんだね?」

 

「まあな。俺にとってメリットがあるなら、話に乗ってやらんこともない」

 

「実はね、ドームライブが終わった後に打ち上げに行く予定なんだけど、社長が奮発してくれるみたいで、普段は行かないような超高級店に行くらしいんだよね〜。もしもカカオさんが来てくれるなら、招待するかもって社長が言ってたよ!」

 

高級店というワードを聞き、カカロットの目の色が変わったのを、アイは見逃さなかった。してやったりと言わんばかりのニヤけ顔をしたいところだが、それを隠して追い討ちをかける。

 

「しかも、いくら食べてもいいんだって!食べ放題だよ!食べ放題!!」

 

「ったく、しょうがねえな」

 

「ありがと〜!!」

 

 

 

と、言った具合でボディガードをやることになったのである。アクアとルビーはカカロットがボディガードをやることに難色を示したものの、エメがボディガードとしては最適だと言うと、すんなり納得した。やはりあの日のような事態に陥ることだけはなんとしても避けたいようだ。

 

ベジータがこの光景を見たら、無様なものだなとでも言いそうである。本当にあのサイヤ人として育ったのだろうかと、エメは疑いを持ってしまうほどに地球に馴染んでいるカカロットに、今更ながら驚いてしまった。

 

「はぁ!?そんなこと俺は許可した覚えはないぞ!!?」

 

「いいじゃん。アイが殺されるよりはよっぽどマシだろ?」

 

アクアがカカロットのボディガード入りの経緯を話すと、そんな条件は提示していないという。つまり、アイが偽りの餌をカカロットの目の前に吊し上げたというわけである。

 

「おいおい。確か相当な食いしん坊なんだろ……?ウチの経営が終わるぞ?分かってんのかあのクソアイドル……!!」

 

「はぁ?あのクソ小娘。嘘だったのかよ……!!」

 

「だがまあ、あの時みたいにストーカーに殺されそうになるよりかはマシか……」

 

「あはは……」

 

そんなやり取りをしているうちに、あっという間にドームライブが始まる時間になった。アイがB小町の代表として、当たり障りのない挨拶をして、本格的にライブが始まった。

 

あの日、エメが殺されかけたことによって、愛というものをなんとなく理解したアイは、今までとは一味も二味も違う魅力を引き出していた。

 

その細かい変化に、ファンは気づいたのかどうかは分からない。だが、いつもより調子がいいことだけは分かっていたようだ。観客達も普段以上に盛り上がっていた。

 

アイだけでない。センターに影響されて、他のB小町メンバーの調子も良くなるばかり。今のアイは、ただそこにいるだけで、好循環を生み出す存在となっていた。

 

「あの小娘、こんなに人気者だったんだな……。正直信じられねえぜ……」

 

「普段のアイを見てりゃ、そう感じるのも分かる。だが、アイは天性の嘘つきだ。何かが欠けているやつは、欠けている部分を補うように吸収していく。アイは愛という欠けたピースが揃ったことによって、完璧で究極のアイドルに進化したんだよ。その初披露がこのドームライブってわけだ」

 

カカロットはアイの人気ぶりに素直に感心し、壱護はアイファン初心者(仮称)に懇切丁寧にアイについて説明をしていた。正直、カカロットにとっては何を言っているのかよく分からなかったものの、取り敢えずアイは凄いやつだということは理解したようだ。

 

「わっ!ママすごっ!!いつもの10倍……いや、100倍は輝いている!!あ〜生きてて良かったぁ……!!アイ推し古参勢として鼻が高い……!!!!」

 

「俺はメディアに認知されるちょっと前にハマったが、こんなに早く登り詰めてくれるとは思ってもいなかったぜ……!アイィィイイイイ!!!!やっぱりお前が神だぁああああ!!!!」

 

「おい、このガキ達をどうにかしろ。そのうち暴れ出すんじゃないか?」

 

あまりの発狂っぷりにカカロットも引くほどだったが、ミヤコと壱護にとっては最早見慣れた光景だった。

 

「まあ、暴れることはないと思うよ?二人ともお母さんの大ファンだから、ライブを台無しにするようなことなんてしないよ」

 

「そーいうこと!!」

 

「ファンとして最低限のマナーは弁えているからな!!」

 

エメの意見に同調しながらも、二人は赤のサイリウムを振ることを忘れない。

 

そんな二人をアイはチラッと見た。子供達がこんなにも応援してくれている。ならば自分ももっと頑張らねば。限界以上のパフォーマンスを引き出さなければ、カッコ悪いよね。そう思うと同時に、更に輝き出す。

 

「……すっげえな、あいつ。あのポテンシャルが戦闘力の方に行ってたら、一体どれほどの……」

 

「えっ?戦闘……力?ってなんです?」

 

「あーいや!なんでもないよミヤコさん!この人たまに変なこと言うから気にしないで!」

 

「おいクソガキ。一回ぶっ殺すぞ?」

 

一悶着はありつつも、B小町の曲の殆どを踊りきり、最後にこのグループを代表する、『サインはB』で締めくくることになる。

 

「エメ!最後来たよ!早く準備準備!!」

 

「うん。分かった」

 

「えっ?エメさん何かやるんですか?」

 

「それは見てのお楽しみですよ」

 

そう答えるエメは、カバンからサイリウムを取り出した。色は2本とも赤。アイのイメージカラーとして扱われているものになる。

 

「お前、いつの間にドルオタになったんだよ?」

 

「あはは……。別にそういうのじゃないんですけど……」

 

エメが壱護に説明しようとすると、最後の曲が始まった。アクアとルビーはそれと同時に席から立ち上がって、いつも通りオタ芸を披露する。

 

実を言うと、エメはアイのためにオタ芸を練習してきたのだ。しかし、マトモにできるのはサビの部分のみ。限られた時間の中でできる限り練習したのだが、流石にルビーやアクアのように通しで完璧にすることはできなかった。

 

何故、ドルオタでもないのにそこまでするのだと、壱護が尋ねると。

 

「……あの日のドームは、僕のせいで中止になってしまいましたからね。それに、今までお母さんには沢山心配をかけてしまいましたから。せめて、この場でだけでも、ファンとして応援したいんです」

 

「お前ってやつは……。アイが聞いたら泣くぞ」

 

「えっ!?そんなに僕が踊るのまずいんですか!?」

 

「違うわ!なんでこういう時に限って馬鹿になるんだよお前は……」

 

「エメ!!もうすぐサビが来る!!」

 

「あっ!そうだ!!」

 

壱護と会話していると、もうサビが近づいていた。エメはあくまでも落ち着いていた。

 

「(あはは!アクアとルビー、相変わらず凄いオタ芸だなぁ。赤ちゃんの時からやってたけど、一体どこで覚えたんだろうね?)」

 

サビに入る直前、ふと子供達の方を見て、自然な笑顔になったアイ。さて、サビに入るから更に気合いを入れようとした、その時だった。

 

「……!!」

 

エメが、踊り始めた。動きは完璧だった。まるでアクアとルビーをトレースしたかのような、完璧なパフォーマンス。エメはドルオタでもなければ、アイドルアイのファンでもない。そのエメが今日になって唐突にファンになったとは思えない。仮になったとして、突然オタ芸を踊れるわけがない。

 

「(もしかして、私のために……?もう、親孝行するにはまだ早すぎるよ、エメ)」

 

だが、子が応援してくれているのだ。こちらもそれに応えなければ、無作法というもの。

 

この瞬間、アイは人生で最も、アイドルとして輝くことになった。そのアイの姿を、ファン達だけでなく、B小町メンバーや、スタッフ達も一生忘れることはないだろう。

 

「みんな〜!!ここまで応援してくれてありがと〜!!愛してるよ〜!!!!」

 

無事、全ての行程を終えた。全てのライブを1つ残さず見尽くしていたルビーとアクアは、断言した。アイは、間違いなく今までで一番輝いていたと。

 

「まさかエメさんがオタ芸を披露することになるとは……」

 

「ここまで踊れるようになるまで結構苦労したんですよ……。ドームライブが確定してから、必死に練習したんですから……」

 

「本当なら全部覚えさせたかったんだけど、流石に厳しかったね〜」

 

「まあ、アイには響いたはずだ。重要なのはそこだろ?」

 

「まあそうだけどね〜」

 

ライブを終えたとはいえ、その後に握手会等のイベントも控えている。母親としてのアイと再会するには、まだまだ長い時間を待つ必要がありそうだ。

 

カカロットは、握手会中に、アイに危害を加える者が出た場合に早急に対応するために、再び仕事に出ることにした。アイが提示した餌が嘘だと判明しても、一度引き受けた仕事はなんだかんだで最後まで遂行してしまうようだ。その姿勢が、フリーザ軍では結構高評価だったりしたのかもしれない。

 

「ライブ最高だった〜!ママの娘に生まれてきて良かったぁ…!」

 

アクアとルビーは、当然ながらご満悦だったし、エメも楽しめた。壱護とミヤコは、ようやく念願のドームを達成したということで、今にも泣きそうになっていたが、子供達がいる手前、そう簡単に涙を見せるわけにはいかないと、なんとか堪えた。だが、酒が入ったら間違いなく号泣するだろう。

 

感傷に浸っていると、何やら轟音を立ててこちらに近づいている物体が見えた。気を確認すると、身に覚えのない気が複数。そんなに大きくないが、邪悪なものを感じる。

 

「ま、まさか……!!」

 

「ん?どうしたエメ?」

 

「あッ!!あんなところでカカロットさんとお母さんがキスしてる!!」

 

「「「「はぁ!!!?」」」」

 

エメは咄嗟に嘘をつき、アクア、ルビー、壱護、ミヤコを振り向かせた。その隙に気を解放し、超速で高層ビルの屋上まで移動した。

 

「おいおい嘘だろあのクソアイドル……!!」

 

「って、ママもカカロットさんもどこにもいないけど、どこにいるのエメ……。ってあれ?いない?」

 

「えっ?エメ?どこに行ったんだ?」

 

「……まさか、迷子……?」

 

「嘘だろ?まだ数秒しか目を離してないぞ?」

 

 

 

「……あれは恐らくフリーザ軍の宇宙船だよな……?でもフリーザの気は感じないぞ……?」

 

何故フリーザ軍がわざわざ地球に?もしかして、何人もサイヤ人を送り込んだのに、未だに反応がないからか?でも、フリーザはそこまでサイヤ人を大事に扱っていなかった記憶がある。でも、もしかすると、戦力としては大事に扱っていた…?前世の時に、フリーザ軍のことについて詳しく聞くべきだったと後悔する悟飯だが、過ぎたことを言っても仕方ない。

 

フリーザ本人ではないのは寧ろ好都合。こちらからとっとと動いて始末してしまえば、被害皆無で済ませることができるかもしれない。いや、そうしてみせる。悟飯はそんな決意を胸に抱いて、ビルの屋上を蹴る。ビルにダメージが行き渡らない程度に加減し、ある程度浮き上がってから舞空術で加速する。

 

今のエメならば、ものの数秒で大気圏に移動することが可能。ここら辺で向かい撃てば、被害を極力抑えられるだろう。なにより……。

 

「今日はアイさんのドームライブの日なんだ……!!二度も邪魔させてたまるか……!!」

 

 

 

「ん?なんだ?あそこに誰かいるぞ?」

 

「先に軍の者が到着したのかもしれないな」

 

試しにスカウターで対象を計測してみることにした。だが、計測を開始したと同時にスカウターは爆発。何事かと焦る戦闘員達。

 

目の前に視線をやると、先程はなかったはずの光。その光は、一瞬にして小惑星かと見間違えるほどに肥大化すると同時に、自分達の方へと急接近する。

 

「う、うわぁああああッッ!!!!」

 

「だ、脱出装置は……」

 

大量に動員されたはずの戦闘員達。その戦闘達は、宇宙船から脱出することも許されず、ただその光に飲み込まれるだけだった。

 

 

 

「いや〜、今日はファンが多かったね〜。流石に私も疲れたよ〜」

 

ドームライブ後の握手会。アイは自身のファンの多さこそなんとなく把握していたものの、実際に相手するとなると、流石に疲れたようだ。

 

「ん?どうしたのカカオさん?」

 

「……いや」

 

カカロットは、地上からとはいえ悟飯の膨大な気を感知した。フリーザ軍らしき気が近づいていることは分かっていたが、初っ端から容赦がないことに、戦闘民族として数々の民族を滅ぼしてきた自分でさえも舌を撒きそうになるほどであった。

 

「もしかすると、俺をボディガードとして雇った意味、来るかもしれねえぞ?」

 

「えっ?」

 

カカロットの言葉に、アイは意味が分からず首を傾げた。ここにはストーカーらしき人はいないし、過激なファンも見当たらない。

 

「まあ、気をつけろってことだ。隕石の1つや2つは落ちて来てもおかしくねえぜ?」

 

「あはは!!面白い冗談を言うね!」

 

地球人類としては、冗談として済まされることを願うばかりである。

 

 

 

場面は戻って、大気圏。エメは次々来るフリーザ軍の兵士達を相手にしていた。一人たりとも地球に入れてやらないという強い意志を感じる。

 

「こ、こいつ強すぎるぞ……!!」

 

「我々だけではどうしようもない!!」

 

「ザーボン様やドドリア様は!?キュイ様はいないのか!!?」

 

一般兵士程度が群れを成したところで、エメの足下にも及ばなかった。しかし、何もしなければ殺されるだけ。必死の抵抗をするも、エメはハエを払う要領で敵を始末していく。

 

敵には一切容赦しない。それが、前世世界で地獄を見てきた悟飯のスタイルだった。少しも戦闘を楽しむ素振りは見せない。ただ、地球を守るためだけに力を奮う。

 

「……!!!!」

 

「あれが例の地球人ですね?」

 

周りの兵士の処理に追われていた悟飯は、突然手を止めた。エメの向いた方に兵士達も向き直すと、そこにはフリーザがいた。

 

「ふ、フリーザ様だ……!!」

 

「フリーザ様自ら……!!」

 

「来たなフリーザ……!!」

 

いつの間にか巨大な宇宙船も到着しており、大気圏で待機している様子だ。フリーザはエメの存在を確認すると、天に向けて人差し指を向ける。すると、そこに小さなエネルギーの塊が生み出された。だが、少しすると一瞬で巨大化し始めた。

 

「ふ、フリーザ様……!?」

 

部下達は驚いていた。フリーザが作り出しているその技は、惑星など簡単に吹き飛ばせるものだから。このままでは自分達も巻き込まれてしまうから。

 

「いきなり……!?」

 

そして、悟飯もまた驚いていた。フリーザがいきなり勝負を仕掛けるようなことをするとは思ってもいなかったのだ。いきなり惑星を破壊することで、自分達を無力化しようとしているのだ。追い詰められでもしない限りは、このような手段に出るとは思ってもいなかったので、想定外だった。

 

「ほっほっほっほっ!!」

 

笑い声と共に、惑星ベジータを滅ぼした『スーパーノヴァ』が放たれた。短時間で小惑星レベルにまで巨大化し、ゆっくりと地球に向かって進み始めた。

 

その様子は、遠くから見れば、小さな太陽が地球に近づいているようにも見えた。

 

半年前の悟飯ならば、恐らく何もできずに死んでいたに違いない。しかし、半年前にベジータ達が仲間になったことにより、修行はよりハードなものになった。それによって、戦闘力の飛躍的な上昇も実現し、実戦形式での修行も並行して行っていたため、実戦経験も積まれてきた。

 

故に、今の悟飯ならば、この程度の攻撃を受け止めることは難しくない。

 

「なんと……」

 

フリーザは特別驚く様子は見せなかった。寧ろ興味深そうな目でスーパーノヴァを受け止める悟飯を見据えていた。今の悟飯は、片手で受け止めている状態だ。まさかエネルギー波で対抗するわけでもなく、全身で受け止めるわけでもなく、片手だけで受け止められることは流石に想定外だったようだ。

 

「はぁっ!!!!!」

 

受け止めるだけで当然終わるはずがない。悟飯はそのまま気合でスーパーノヴァを押し返した。

 

「ふんっ!!」

 

しかし、フリーザが右手を握りしめる動作をすると、スーパーノヴァは大爆発を起こした。フリーザに命中することなく、大技は消滅した。

 

「なかなかやるじゃないですか。ここまでできる方と出会うのは初めてかもしれませんね。あなたのお名前は?」

 

「お前に名乗る名前はない」

 

「おやおや、これは手厳しいですね。これからあなたにとって美味しいお話でもして差し上げようかと考えていたところなのですが……」

 

「興味ない」

 

「まあまあ、そう言わずに」

 

今の悟飯の考えではこうだ。恐らく、第3形態までならなんとかなる。しかし、最終形態になられた場合は勝ち目がない。しかし、念には念を入れて、変身する前に片をつけてしまおう。その為に、密かに攻撃の準備をしていた。

 

フリーザがまだ明確に戦う意思を見せていない今がチャンスだ。確実に仕留める為に、力を込めている真っ最中だった。

 

「私の下で働いてみる気はありませんか?私の攻撃を片手で防げるあなたならば、フリーザ軍に大いに貢献してくれることは間違いないでしょう。あなたの望む待遇も保証しましょう。実力に応じた福利厚生もしっかり用意していますよ?」

 

「…………」

 

本当ならば、今すぐにでもNOを叩きつけてやってもいい。どうせやることは虐殺だ。どれだけ金を積まれようとも、悟飯が応じることなどあり得なかった。

 

だが、ここで悩んでいる演技をする。少しでも部下になる可能性があると判断すれば、フリーザは攻撃を遅らせるだろうと考えてのことだった。まさか本当に有馬の演技指導が役に立つとは思ってもいなかった。

 

激戦の中で使うことは、現段階では厳しくとも、敵を仕留めるというところに焦点を置けば、本当に有用なものだと実感した。例えズルかろうが気にしない。地球を守るためならば、手段を選ぶ気はなかった。

 

「焦らなくても大丈夫ですよ。じっくり考えてください」

 

ならばじっくりお前を倒す準備をしてやると、内心だけ返事をして、悩む素振りだけを見せる。そんな時だった。

 

「おやおや。これはこれは、ベジータさんではありませんか。ご存命でしたか」

 

「よう、フリーザさんよ」

 

「おや?見ないうちに少し言葉遣いが雑になりましたか?」

 

ベジータが加戦しに来たようだ。だが悟飯は内心ベジータに謝った。きっとベジータもカカロットも、正々堂々と戦ってフリーザに勝ちたいはずだ。

 

準備が完了し、右手にありったけの気を集中させたので、あとはフリーザにこの拳をぶつければ全てが終わる。

 

これで終わりだッ!!フリーザァアア!!!!

 

ドゴォォオオッッ!!!!

 

拳が、腹部に命中した。口から血を吐き出して、痛みに苦しみ悶えていた。

 

「あっ……がっ……!!」

 

「させねえぜ?」

 

しかし、それはフリーザではない。攻撃を受けたのは悟飯だった。攻撃を仕掛けたのは、フリーザでもなければフリーザの部下でもない。

 

「てめぇが最初からフリーザの野郎を殺そうとしていたことは分かっていた。トレーニングをしている時も、貴様だけは全く楽しんでいなかった。貴様だけは戦いを楽しんでいなかった。だから貴様はとっとと終わらせるだろうと考えていた」

 

ベジータは拳の力を更に強め、悟飯の意識を確実に刈り取ろうとしていた。

 

「冗談じゃねえぜ。俺は今まで受けてきた屈辱をフリーザに返すために、貴様を利用してでも今日までトレーニングしてきたんだ」

 

ベジータはそれだけ悟飯に言うと、拳を離すと同時に、もう片方の手で悟飯の髪を掴んだ。

 

悟飯はフリーザを確実に仕留める為に、右手に気を集中させていた。だがそれは他の部位の防御が疎かになっていることと同義でもある。そこに予想外の攻撃を当てられ、悟飯は今にも意識を失いそうになっていた、というわけである。

 

単刀直入に言えば、悟飯はベジータに裏切られたのだ。最も重要な場面で、最悪のタイミングで。

 

「貴様はもう用済みだ!失せろ!!」

 

「がぁッ…!!!」

 

髪を離すと同時に、後頭部に強く叩きつけられた悟飯は、その場で意識を刈り取られた。舞空術を維持することも不可能になり、そのまま地上に向けて下降を開始するしかなかった。

 

「さて、次は貴様の番だぜフリーザ。どうせ今の姿のままではすぐに俺に殺されるのがオチだ。今すぐにでも変身することを勧めてやるぜ」

 

「……誰からそのことを聞いたんですか?」

 

「あの地球人が言っていたんだ。貴様は3回変身できるとな」

 

「……ほう。彼に詳細をお聞きしたいところですが……。まあいいでしょう。私も随分と舐められたものですね。少し強くなった程度で、私を超えた気になられているとは…………」

 

「御託はいいからかかってきやがれ、フリーザ」

 

こうして、大気圏では、宇宙の帝王と戦闘民族の王子の激突が始まった。

 




  未来悟飯の性格を考えると、多分とっとと倒すだろうと思いまして、そこを変えてしまうと未来悟飯ではなくなってしまうため、どうしたもんかと考えましたところ、こうすればとりあえず未来悟飯に非はない展開になるかと考えました。セル編ではとにかくやらかしまくっていたベジータですし、一応フリーザ対峙時で比較すると、ベジータは今作の方が強くなっているので、調子に乗ってしまうのも仕方ないでしょう、多分。

 まあ、皆さんご推察の通り、地球そのものが大ピンチでございます。ナメック星に行けばなんとかなるかもしれませんが、異常気象がこの世界でも起きていた場合は……。

 ご指摘されて改めて思いましたが、これ完全にドラゴンボールですね。推しの子要素どこや……。早く推しの子メインパートに到達せねば……。でも中途半端にこのパートを終わらせるわけにもいかないのや。
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