推しの飯/絶望の未来から転生した戦士   作:Miurand

13 / 40
 補足説明。
 サイヤ人たちは1年ほど地球で暮らしたことによって、そこそこ地球に馴染んでいる。



第十三話 浸食される故郷

「アイのライブ凄かった〜!!」

 

「良かったわね」

 

アイのライブが終わり、握手会も済ませたある親子は、ライブの話に花を咲かせながら帰宅している真っ最中であった。

 

中学生くらいと思われる少女に、その母親。少女は幼少期からアイのファンであり、アイドルに憧れていた。アイのドームライブが行われると知れば、ファンとしては現地に行きたいと考えるのは当然のこと。応募すると、見事当選したのだ。

 

推しの最高の瞬間を見ることができて、まさに幸せの絶頂にいると言っても過言ではなかった。だが……。

 

ドゴォンッッ!!!!

 

「キャっ!!?な、なに!!?」

 

上空から物凄いスピードで落下した。親子は上空に視線を向けていなかった為、目の前に突然物が落ちたようにしか感じない。

 

「えっ?こ、子供!!!?」

 

しかも、落下してきたのはまだ幼い子供だった。自分の()()と同年代……否、明らかに年下だ……。それくらいの年齢だと思われる。

 

「血が……出てない……?と、とにかく救急車を呼んだ方がいいかな!?」

 

「え、ええ!その方が良さそうね!」

 

状況を飲み込めずにいた親子だが、何かの間違いで子供が助かるかもしれないと考え、119番通報をして救急を依頼した。

 

その時だった。

 

「フリーザ様のご命令によれば、地球人を殲滅しろとのことだったが……。本当にいいのか?」

 

「ああ。見てみろよ。この星、相当環境がいいぜ。いくら辺境の星と言えども、こういう星を欲しがる輩は一定数いるものだからな」

 

見かけない格好をした人達が数人、数十人、いや、どんどん増えていく。

 

「えっ?な、なに?なんなの……?」

 

「おい、スカウターで測ってみろよ。どいつもこいつも戦闘力が10もないぜ」

 

「よく今まで繁栄できたものだな。普通ならば、すぐに他星人に侵略されても不思議ではないが」

 

専門用語なのか、自分達が知らない単語を相手は当たり前のように述べていく。そのため、何を言っているのか、半分以上は理解できなかったが、これだけはなんとなく分かる。

 

自分達は、殺される。いや、それは大袈裟かもしれない。だが、良い扱いを受けないことだけは確信した。

 

取り敢えず、できる限り逃げようと決心した、その時……。

 

「キャっ!!!!!」

 

「な、なに!!!?」

 

突然の大爆発。その直後に来る余波。それによる強風で、親子兵士共々吹き飛ばされそうになった。脆弱な建物は爆発の余波だけで崩れ、比較的丈夫な建物も、窓は流石に衝撃に耐えきれず、割れてしまったものがほとんどだった。

 

事態が収まった時には、道端に大量のガラスの破片や瓦礫がそこら中に転がり落ちていた。

 

えっ……?えっ?

 

ここは東京の街。世界中の誰もが都会と認識しているその街には、当然ながら沢山の人がいる。そんな中、核と見間違えるほどの大爆発が発生した場合、想定される被害は想像もしたくないものだった。

 

突然の大爆発に、親子はパニックを通り越して、これが現実であることを受け入れるのに時間がかかり、硬直してしまった。

 

「おいおい、まさか……」

 

「ああ、フリーザ様とサイヤ人達が本格的に殺し合い始めたようだな。マジで裏切ったんだな…………」

 

「フリーザ様相手に歯向かったってことか?死んだなあいつら」

 

どうやら、何らかの理由で大気圏で睨み合っていたはずのベジータとフリーザが地上に降り立ったようだ。両者共地球のことなど気にする理由もなく、好き勝手に戦っているのだ。

 

ベジータが悟飯を気絶させた理由は、フリーザと思う存分に戦うだけではない。いや、正確には、2つ目の理由は1つ目の理由に関連するもの。それは、極力地球の被害を出さないというものだが、ベジータとしてはそんなことは知ったことではない。しかし、好き勝手に戦おうものなら、あの地球人が介入してくるに決まっている。

 

ならば、初手で無力化すればいいと考えたのだ。

 

自分は今までの借りをフリーザに返したい。その為に今日まで鍛えてきたのだ。そんな時に、興味も関心もない他民族のことなど気にかける余裕はないし、そのつもりもなかった。

 

「よし、フリーザ様が戦っておられる間、俺達は掃除をするとするか」

 

「地球人ってのは数は多いらしいからな。時間はかかるだろうなぁ」

 

「というか、フリーザ様があれだけ暴れたら、この星は売り物になるのか?」

 

「フリーザ様のご命令だぞ。俺たちはそれに従うま…」

 

1人の兵士の言葉が途中で途切れた。何事かと仲間達はその兵士の方を向く。すると、その兵士の顔が見当たらない。首から上が綺麗さっぱりなくなっていた。

 

「あ、あれ……?あの子……!!」

 

先程まで気絶していたはずの少年が目を覚ました。その少年の正体は言うまでもないだろう。遥か彼方の上空から落下しても尚、平然としていられる子供など、世界中を探しても彼以外にはいないだろう。

 

「なんだ、これは……?どうしてこんなことに……」

 

現状を見て、悟飯は軽く絶望した。今ので大勢の人が死んだに違いない。この世界にはドラゴンボールもない。いや、もしかすれば、()()()()()あるのかもしれない。でも確実にあるという保証もない。

 

自分がこの世界のベジータを過信したあまり、この事態を招いてしまった。そんな自責の念に駆られてしまった。

 

「あ、あの地球人の子供ってまさか……!!」

 

「や、やつだ!半年前、戦闘力40万という記録を叩き出した化け物だろう!?」

 

「あ、あの大猿になったベジータを真っ向から挑んで倒したっていうあの……!?」

 

兵士はエメの存在を認めるなり、自分達では束になっても敵わない相手に恐怖し始めた。何せその地球人の子供は敵に容赦ないと伝えられている。敵と認めた相手は真っ先に殺す。甘さなど一切なく、恐らく交渉も通じない、ある意味では言語の通じない相手として警戒されていた。

 

「……!!!!」

 

「がっ……!!」

 

エメが睨みを効かせたかと思えば、瞬きする間に大量にいたはずの兵士達が跡形もなく消し飛ばされていた。気合だけで消し飛ばせるほどに実力差が開いていた、ということになる。

 

周囲の敵を討伐した悟飯は、ゆっくり親子2人の元に歩み寄った。だが、親子は強大な力を持つ子供相手に怯えているようで、震えながら抱き合っていた。

 

「大丈夫です。あなた達に危害を加えるつもりはありません」

 

できるだけ、相手を安心させることができるような柔らかい表情を作り、悟飯は相手に話しかけた。

 

すると、敵意はないと判断したのか、親子2人はエメ相手に警戒を解き、その場に座り込んでしまった。

 

「た、助かったよ……。ありがとう……」

 

「礼には及びません。それより、ここから早く逃げることをオススメします。でないと……」

 

悟飯が2人に避難を促している最中に新たな刺客が到着した。それを気で捉えた悟飯は、言葉を止めて敵の方へと振り向く。またしてもフリーザ軍の兵士だった。こちらで戦闘していることに勘付き、こっちに来たのだろう。

 

だが、エメの戦闘力を計っては、スカウターが爆発する。1人ではない。何人も確認しようとするが、結果は同じ。計測不能なほどに強い相手だということを理解した兵士達は慌て始めた。

 

「まー待て。慌てる必要はない。俺が片付けてやるから下がってろ」

 

そう言って、兵士達を黙らせたのは、かつてベジータと互角とされていたエリート戦士、キュイだった。彼の戦闘力も18000と、少し前のベジータと同等の戦闘力を有しており、ベジータをライバル視していた。

 

「ベジータのやつも馬鹿だなぁ。少し強くなった程度でフリーザ様に敵うはずがないってのに」

 

「……お前は?」

 

悟飯はこのような戦士を知らない。何故なら、前世では悟飯達と会う前に、ベジータにあっさり殺されてしまったからだ。

 

「俺様はフリーザ軍のエリート戦士、キュイ様だ。降参するなら今のうちだぜ?」

 

「……オレからも言わせてもらう。この星からとっとと去れ。そうすれば、見逃してやる」

 

「お坊ちゃん。自分が置かれている立場ってのを理解できていないようだな!」

 

全て言い終える前に、キュイは悟飯の目の前まで移動し、拳を突き出した。しかし……。

 

「な、なにィ!?」

 

悟飯は人差し指のみでその攻撃を受け止めた。エリートだと自負しているキュイにとって、無名の民族にこのような仕打ちを受けるのはあってはならないこと。すぐに冷静さを失った。

 

「この小僧!調子に乗ってると」

 

ゴッ!!!!

 

「うがっ……」

 

逆上して怒鳴ったキュイだったが、悟飯が腹部に強烈な一撃を入れたことによって、すぐに黙り込んでしまった。

 

「ま、待て!!」

 

そのままキュイの片腕を掴み、上空に投げようとしているところに、キュイが制止を呼びかける。

 

だが、悟飯がそれに応じるはずもなかった。力に任せてそのまま上空に投げやり、追い討ちをかけるように気弾を発射した。その直後、キュイがいたと思われる場所で爆発が起こった。夏の風物詩とも言える花火と言うには、少々汚いものであった。

 

「……本当は自力で避難してもらおうと思ったんですが……、安全な場所までオレも付き添います」

 

本音を言えば、今すぐにでもフリーザとベジータの戦いに乱入し、いち早く戦闘を終わらせたい。しかし、目の前の命を見捨てられるほど、悟飯は冷酷でもない。結果として、悟飯はしばらくその親子の護衛に専念することとなる。しかし、それは…………。

 

「ね、ねえ?こんな時に聞くのも変かもだけど、君の名前は?」

 

「……僕の名前は、星野(エメラルド)です。ちょっと個性的な名前ですよね」

 

 

 

一方その頃。時を少し遡って、カカロットとアイは……。

 

「か、カカロット……!?」

 

「あれ?戦闘員のカカロットだよな…!?なんでここに!?」

 

兵士達に囲まれたアイだったが、カカロットもその場にいたことから、兵士達には驚かれている様子だった。

 

「よう雑魚共。こんなところまで何しに来たんだ?」

 

「えっ?カカオさん、知り合いなの?」

 

「まあな。殆ど話したことはないがな」

 

 

「確か、カカロットってフリーザ様を裏切ったんだよな……?」

 

「えっ?じゃあ敵ってことだよな……?」

 

「ならどうする?でも強くなったって話だろ?元から強かったのに勝てるのか…?」

 

兵士達は何やらヒソヒソとカカロットに聞こえないように会話し始めた。要約すれば、カカロット達サイヤ人とフリーザ側のどちらにつくかという議論だった。しかし、普通に考えればフリーザ側についた方が良いに決まっている。悪人にとっては、フリーザ軍以上に居心地の良い場所などないし、そもそもフリーザが異次元に強い。だが、ここでフリーザ軍の敵としてカカロットを処理しようものなら、間違いなく返り討ちにされ、最悪殺されてしまう。

 

「そ、そうだカカロット!いや、カカロット様!!どうか我々も同行させていただけないだろうか!!」

 

「あん?なんだよ急に?」

 

「俺達、実は、フリーザには前から嫌気がさしててさぁ……!どうにかして立ち向かいたかったんだが……」

 

「俺達だけだと無理なんだ。だから協力してくれ!お前達サイヤ人が味方なら心強い!!」

 

「なんだ、そういうことか」

 

相手の意図を理解したカカロットは、一瞬承諾してもいいかと思ったが、それは留まった。

 

「(ほんとか?実は嘘ついてんじゃねえだろうなぁ……)」

 

しかし、カカロットは嘘を見抜くことは特別得意ではない。別に裏切られたところで大したダメージにはならないだろうが、メディカルマシン付きの宇宙船が壊されたりしたら面倒だ。ならいっそのこと断ってから様子を見ようと判断したとき……。

 

「ふーん?そのクリーザ?って人が目の前にいたらどうするんだろうね?」

 

純粋な疑問なのか、遠回しのアドバイスのつもりなのか、アイはボソッと呟いた。

 

「……それだ」

 

「んっ?」

 

「おいおいお前達。そのフリーザご本人様がお越しだが、大丈夫なのか?」

 

「な、なに!!?」

 

「フリーザ様!!?」

 

「こ、これはカカロットを油断させる作戦でして……」

 

カマをかけてみれば、嫌な予感は見事に的中。フリーザがすぐ側にいると勘違いした何人かの兵士達があっさり口を開いた。

 

「ふ、フリーザ様は……?」

 

「馬鹿野郎!!ここにはいねえよ!!今誰かと戦ってるんだよ!!さっきの爆発はそれだ!!」

 

「ど、どうす」

 

だが、兵士達は言い訳をする間もなく消し飛ばされた。カカロットの手によって。

 

「ちっ。やっぱりそうだと思ったぜ。サイヤ人以外は基本的にフリーザの野郎にご執心なやつが多いからな。おかしいと思ったぜ」

 

カカロットの突然の行動に、流石のアイも取り繕うことを忘れてしまった。

 

相手をあっさり殺したこと、地面が抉れるほど攻撃を片手を振り翳しただけで行ったこと、それらをさも当たり前のように行うこと。聞きたいことは山ほどあったが、驚きのあまり口が動かなかった。

 

「おい小娘。質問したいなら今のうちだぜ。これからどんどん忙しくなるからな」

 

流石に動揺していることをカカロットは察知したらしい。カカロットの言葉に正気を取り戻したアイは……。

 

「……ねぇ?あの人たちは何者なの?」

 

「……まあ、一言で言うなら、俺たちの敵だな。多分地球人の敵でもあるだろう」

 

シンプルかつ分かりやすい答えだった。

 

「……もしかして、エメも……?」

 

言葉は少ないが、カカロットは質問の意図を理解した。今まで自分と一緒に不自然なほどの頻度で外出していたこと。疲労した状態で帰宅することが多かったこと。エメが無茶をする要因。

 

その答えを欲していたのだろう。だが、カカロットは答え合わせをする気はなかった。

 

「まあ、それは近々分かるだろうぜ。俺がわざわざ答えるまでもない」

 

この状況そのものが、勝手に答えを明示してくれるから。

 

だが、その返答で察してしまった。自分の息子が何故無茶をするのか。何故死にかけたことがあったのか。

 

恐らく、大猿の怪獣が出た時も、その怪獣と戦ったに違いない。このカカロットと同じことがエメにもできるのだとすれば、怪獣と戦って生還できるのも不思議ではない。

 

「ねえ、()()()()()さん」

 

「お前、やっと俺の名前を覚えたか」

 

「エメはどこにいるか分かる?」

 

アイは息子が置かれている状況を理解し、嘘という鎧が剥がれ始めた。先程までいたアイドルのアイは、ここにはいない。いるのは、星野アイ(1人の母親)だった。

 

その母親は、息子が死闘を展開している可能性を知り、一気に心配の表情が見えてくるようになった。

 

「……まあ、あいつがどこにいるのか、俺には分かる。だが、お前が行ったところで邪魔になるだけだ」

 

「お願い。私を連れてって……!」

 

「お前、俺の話を聞いていたか?」

 

カカロットは足手纏いだと言って振り払おうとするも、アイの目に思わず息を飲んだ。

 

普段から、アイに対してはどこか胡散臭さを感じていたカカロットだったが、ここで初めて本当の星野アイという人物を見たのかもしれない。

 

どんなに悪口を言われようと、怒る言動はすれども実際に怒っている雰囲気は感じなかった。だが、今は黙り込んでいても怒りを感じる。

 

恐らく、『何故子供がそんな危険な目に遭わなきゃいけないのか?あなたがエメをその世界に引き込んだのか?』という怒りも含まれているのだろう。これは紛れもなく、星野アイの本心だった。

 

だが、カカロットがそんな意図を読み取れるはずもなかったが、何故か自分に対して少なからず怒りの類を向けていることだけは分かった。

 

「……死んでも文句言うなよ?命の保証はねえからな?」

 

 

 

カカロットが脅すようにアイに言っても、彼女の態度は変わらなかった。カカロットは諦めてアイを連れていくことにした。

 

 

 

少し離れた場所で、アクア達4人はアイとカカロットが合流するのを待っていた。そのまま打ち上げをする予定だったのだが、今はそんな悠長なことを言っていられる事態ではなかった。

 

突然の大爆発。宙に浮く謎の知的生命体。周りの人々を容赦なく殺していく様子を、ただ逃げながら見ることしかできなかった。

 

「ね、ねえお兄ちゃん!あれ何!?もしかして宇宙人!?侵略されてるの!?」

 

「そんなこと聞かれても分からん!!俺が聞きたいくらいだ!!」

 

不幸中の幸いと言うべきか、4人はなんとか逃げることに成功していた。今は物陰に潜んで事が収まることを祈るばかりだった。

 

「どうしてこんなことになっちまったんだ……。アイは無事か?あのカカロットとかいうボディガードは?それにエメはどこに行ったんだ……!!」

 

本来、頼りになるはずの大人2人も、流石の事態に冷静さを欠いていた。それもそうだ。武器もノウハウもなしに突然戦場に放り出されたようなものだ。寧ろここまで逃げることに成功したことを褒めるべきだ。

 

「とりあえず、今は静かにしましょう。気づかれたら、終わりです……」

 

ミヤコがそう言って、3人は沈黙を貫くことにした。会話は必要最低限、最小限の声量ですることになった。

 

エメやアイのことは心配だが、今は自分達の身を守らればならない。ここで死ねば、例えアイやエメが生きていたとしても、もう二度と会えなくなるのだから。

 

「この辺はとりあえず一掃したか?」

 

「ああ。仮に残っていたとしても、そいつらは奴隷にでもすればいいんじゃないか?」

 

「お、おいあれ……」

 

先程まで順調だった兵士達の顔が一気に青に染まった。

 

目の前には、フリーザ軍を裏切ったとされる、二人組のサイヤ人がいた。片や髪が腰まで伸びており、片や髭は生えていても、髪の毛は一本も生えていない戦士だった。

 

「な、なんだ……?」

 

「似たような服装をしているから仲間じゃないの……?」

 

「くそ……!更に人数が増えるってのか……!!」

 

壱護は隙を見て更に遠方へ逃げようと試みるも、更に敵が増えたことで絶望してしまった。この場を切り抜けるには、ここに隠れて様子を見るしかないのだ。常に緊張感がつきまとうことになる。

 

「貴様ら。随分と好き勝手してくれたな」

 

「地球は俺達サイヤ人のナワバリだ。それを荒らしたってことは……分かってんだろうな?」

 

ハゲのサイヤ人、ナッパの睨みに思わず後退りをしてしまう兵士たち。だが2人は相手が怯えていようが関係なかった。自分達が狙うのは、フリーザ軍の撲滅。フリーザを倒すだけでは意味がない。フリーザに心酔する者たちを倒して、初めて自分達サイヤ人がフリーザ軍という呪いから解放される。そのためには、1人残らず蹴散らすのが良いと判断したのだ。

 

「くたばれっ!!!」

 

長髪の男、ラディッツが両手からそれぞれビームを繰り出し、その光に兵士達が飲み込まれ、消滅するのを4人は目撃した。

 

あまりにも人間離れした光景に、思わず自身の目を疑ってしまった。なんなら夢ではないかと思ったほどだ。しかし、何をしてもこれは現実だった。とてもではないが、信じがたいことに。

 

正直、いつまで経っても情報が完結しない状況だが、とりあえず二人組の尻尾が生えた男達は宇宙人の敵だということは推察できた。でもなければ、あのように殺すことはしないはずだ。

 

「あ、あの人達は味方なの……?私達の味方ってことでいいのかな?顔が悪そうだけど……」

 

「分からん。もしかしたら勢力争いかもしれない……。敵の敵は味方とは限らないぞ」

 

少しでも自分達が生き延びる可能性を上げるために、アクアはルビーに黙っているように告げると、そのまま二人組を観察することにする。

 

「……この膨大な戦闘力はやはり……」

 

「フリーザとベジータが戦っているようだな。あの地球人の話では、俺達は集団でかかるのではなかったのか?」

 

ラディッツは隣にいるナッパに、純粋な疑問をぶつける。単独でフリーザに挑むのは賢い選択ではないから、戦う時は集団で戦うべきだと、エメは打診した。ベジータも最初こそ認めていたものの、修行によって己が磨かれていくのを自覚すると、次第に自分の手で倒したいと思うようになった。

 

だが、それを言えば、エメを利用した修行が行えなくなるかもしれない。別にフリーザと戦う時に自分が勝手に行けばいいだけの話。宣言は直前にすればいい。

 

そのため、打ち合わせ通りに進んでいないのは当然のことと言えた。

 

「ベジータのことだ。きっと1人でフリーザを倒したいんだろう」

 

特にベジータと長い間同じ時を過ごしてきたナッパは、ベジータの性格を一番理解しているつもりだ。プライドの高い彼ならば、あのような考えになっても不思議ではない。

 

「取り敢えず、今はベジータの方が優勢だ。だがフリーザは何回変身したんだ?もしあと1回残しているとなれば……」

 

エメの話では、最後の変身だけは次元が違うと言っていた。最後の変身だけは戦闘力の上がり幅が桁違いだと言う。実際に何度か戦闘力が上がっていることから、フリーザが変身型なのは間違いない。とすれば、最後の変身に関しても事実なのだろう。

 

「……ん?」

 

「どうしたラディッツ?」

 

しばらく2人で会話をしていた彼らだったが、周辺にいくつかの気を見つけた。大きさからして、恐らく原住民だということはすぐに分かった。

 

「いや、どうやらこの辺りに地球人がいるようだ」

 

「今はそんなことどうでもいいだろう。取り敢えず、俺達はベジータのところに……」

 

ナッパがそう言いかけたところ、二人組の宇宙人が高速で飛来し、サイヤ人二人組の目の前で着地した。服装からして、先程と同じ宇宙人と同じ組織に所属していることは分かった。

 

「随分派手に暴れているようだな、猿ども」

 

「ザーボンにドドリア……!」

 

またしても奇怪な宇宙軍の兵士と思われる者たちが登場した。だが、片方は地球人から見てもイケメンだった。

 

「あ、あのイケメンなお兄さんは味方……なんてことはないよね?」

 

「だろうな……」

 

だが、ルビーはそれほど面食いではないようだった。イケメン=味方という方程式はそもそも立案すらされなかった模様。

 

「ちょうどいい機会だ。ここいらでテメェらもまとめて地獄に送ってやるぜ。軍にいた時は、散々お世話になったからなぁ?」

 

サイヤ人二人組、特にナッパは側近二人組に対して多大な鬱憤を溜めていたようだ。今すぐにでも発散するべく、戦闘態勢に入っている。

 

しかし、ザーボンとドドリアは、サイヤ人二人組が恐ろしいほどに強くなったことを知っている。今の自分達は最早挑戦者とでも言うべき立ち位置だった。しかし、サイヤ人如きに頭を下げるのは自分達のプライドが許さない。フリーザ様の側近とあろう者が、猿共に屈するなど、あってはならないのだ。仮にそれで生き延びたとしても、フリーザに処刑を言い渡されてもおかしくないほどの屈辱的な行為だと認識している。

 

だが、ここで馬鹿正直に挑んでも勝てるわけもない。フリーザに殺される前にこの2人に殺される。プライドを守るべきか、己の命を守るべきか。

 

相手が地球人ならば人質作戦が有効。頭を下げるよりはプライドが傷つかない。だが、サイヤ人相手にそれをやっても無意味。地球人如き殺そうとしてくるのは目に見えている。

 

「!!!?」

 

脳をフル回転させている時に、建物をいくつか突き破ってこちらに墜落するように落下してきた者が見えた。数秒してベジータも生成されたばかりのクレーターの前に足をつく。

 

煙が晴れ、倒れかけている者の正体が彼らの主、フリーザであることを確認した。しかもドドリアとザーボン両名が見たことのない姿。しかし、その威厳からフリーザだと分かった。分かったはいいのだが、変身しても尚ベジータに敗北しているという事実に絶望しかけていた。

 

「ば、馬鹿な……!フリーザ様が…!!あのフリーザ様が……!!?」

 

「あり得ねぇ……!何かの悪夢だ……!そうに違いねえ…!!」

 

今のフリーザは、最初に見た時よりも体が巨大化しており、複雑な見た目をしていた。多くの地球人が想像するエイリアンのような見た目だった。

 

「……なかなかやりますね、ベジータさん」

 

しかし、ベジータに敗北している状況でも余裕の態度を崩さない。その様子を見るに、最後の変身はしていないようだった。フリーザの変身回数を知らないザーボンだが、複数回変身することは知っている。それ故に、まだ変身を残していると確信した。

 

「随分ボロボロになっちまったじゃないか、フリーザさんよ。これが宇宙の帝王の姿か。笑えてくるぜ」

 

そして、ベジータは案の定と言うべきか、完全に鼻を伸ばして戦いを楽しんでいた。今まで格上だと思っていた相手を一方的に叩きのめしている。その事実は、戦闘民族としては他に変えようがないほどの快感。自分が宇宙頂点に立ったことを自覚させてくれる。この愉快な状況を少しでも楽しみたい。だが、不満があるとすれば、まだフリーザが気味の悪い薄ら笑いを浮かべていること。ベジータとしては、フリーザの怯えている姿をいち早く見たかった。

 

「すげえな、ベジータのやつ……。あのフリーザ相手にあそこまで一方的に……」

 

「これは、本当にいけるのか…!?ベジータ1人だけで勝ててしまうのか!?」

 

この一方的な状況に、ナッパとラディッツはベジータの勝利を確信した。

 

()()()()()をしてみろよ、フリーザ」

 

「なっ……」

 

だが、ベジータの言葉を聞き、ラディッツの表情が一気に不安なものとなる。それとは対照的に、ザーボンとドドリアが余裕を取り戻した。

 

「……いいでしょう。私を侮ったことを後悔させてあげましょう」

 

「御託はいい。さっさと変身しろ」

 

「まあまあ、そう焦らずに。心配しなくても、ちゃんとあなたを地獄に送ってあげますよ」

 

「ふっ…」

 

フリーザの言葉に、ベジータは鼻で笑った。そんなことできるはずがないと。自分は最早伝説の超サイヤ人の領域に片足を突っ込んでいる。例え最後の変身が桁違いのものだろうが、天才の自分はそれをも上回る実力を持っていると、信じて疑わなかった。

 

「はぁぁあああ……!!」

 

フリーザが最後の変身を始めた。身体に徐々にヒビが生える。まるで無駄なものを削ぎ落とすように脱皮をするかのような……。今までの変身とは明らかに別物。異質だった。ベジータは期待を含めた笑みを浮かべて、RPGのラスボスのように余裕の表情で待ち構えていた。まるで挑戦者はお前だとでも言わんばかりの態度だった。

 

「べ、ベジータ!!今のうちにフリーザを倒してしまえ!!何か嫌な予感がする!!」

 

「ふっ。どれだけ強くなろうが、お前の本質は弱虫のままのようだな?少しはお前の弟を見習ったらどうだ?」

 

ラディッツはベジータの説得を試みるも、ベジータは方針を変えない。ラディッツは今まで強者から逃げ続けていた。弱虫だからこそ、フリーザの最後の変身の危険性に気付けたのかもしれない。

 

「そうだぜラディッツ。俺達は俺達が思っているよりもずっと強くなっちまったんだ。あのザーボンやドドリアだけじゃねえ。今のフリーザでさえ、1人で戦っても勝てそうだろ?」

 

「だ、だが……」

 

エリート二人組は聞く耳を持たない。ラディッツは批判されることを覚悟の上でフリーザにトドメを刺そうとするが、ナッパがその手を掴んで妨害する。

 

「焦るな。せっかくだからフリーザの本気ってやつを見てみたいだろ?ベジータも同じ気持ちなんだ。ここは大人しくベジータの希望に答えてやろうぜ?」

 

ナッパもまた、ベジータの才能を理解している。だからこそ、この直後に後悔が訪れることなど、予想もできなかったのかもしれない。

 

彼らは後にこう思うことだろう。「ラディッツの言う通りにしておけばよかった」と……。

 

 

 

 

 

「ありがと〜エメ君!!お陰でなんとか生き延びられたよ〜!!」

 

「あはは、良かったです……。その、離してもらえませんか?」

 

時は少し遡り、エメの方へと移る。彼は親子を安全だと思われる場所まで送り届けたところだ。護衛をしている間に雑談をしていたのだが、いつの間にか娘の方とは仲良くなったようだ。

 

「あっ、ごめんね。もう行かなきゃ…だもんね?」

 

「……えぇ」

 

そして、その雑談の中で、エメ自身が経験してきたことも話題に入れていた。流石に全部話したわけではないし、今世の母のことや前世のことは話していない。

 

弟達よりも幼い子供が、世界を駆けた死闘に駆り出されていることに、どうしても思うところがあった。自分は何かできないのか。こんな幼い子に大きな責任を押し付けてもいいものなのかと。

 

「大丈夫です。オレは必ずこの世界を守ります。例え、この命に変えてでも……」

 

悟飯としては、自分を犠牲にしてまで世界を守るのは当然のことだった。だが、彼は知らない。前世で孫悟飯が死に、どれだけ悲しんだ人がいたほどか。交友関係は広くなかったから、決して多くの人にその死を悲しまれたわけではない。だが、彼の死を悲しむ人がいた。彼が父や師匠、仲間達の死を悲しんだように……。

 

そんなこと言わないで!!

 

「……!!」

 

エメが飛び立つ前に、少女がそう叫んだ。エメは思わず足を止めて振り返る。

 

「そんなこと言わないでよ…!君の帰りを待つ人だっているはずだよ!それこそ、君の家族とか!友達とか!!」

 

きっとその少女は家族を大切にしているのだろう。先程の雑談の中で、彼女が長女だという話も聞いた。自分よりかはいくら歳を重ねた弟もいると聞いた。恐らく、弟達が死んだとしたら……。そんなことを想像しながら、エメに訴えかけたのかもしれない。

 

「……そっか。そうだったな……」

 

彼は地球を守ることに必死で、自分を心配してくれる人のことを失念していたかもしれない。母は自分の死を知ってどう思っただろうか。弟子は、怒るどころか悲しみに暮れているかもしれない。でも、それは過ぎてしまったこと。気にするなと言われても難しいが、気にしても仕方ない。

 

だが、幸いなことに、今世にも心配をしてくれる家族がいる。(アイ)(アクア)(ルビー)に、社長(壱護)マネージャー(ミヤコ)。それに師匠(かな)もいる。

 

「……ありがとうございます。大事なことを、忘れていた気がします」

 

自分には、帰るべき場所がある。家族がいる。友人がいる。その人達を悲しませるわけにはいかない。その為には、勝利を収めると同時に生還しなければならない。

 

「……いってきます」

 

家族の元に帰ったら、「おかえり」と言ってもらえるように。

 

そんな願いも込めて、彼は戦場に向かって飛び出した。

 

ほぼ同時刻。フリーザの最後の変身が既に始まっていた……。

 




 お待たせして申し訳ありません。私事ではありますが、多忙な日々が続いている影響で先週は投稿することができませんでした。予定通りにいけば、金曜にはとりあえず落ち着くはず……。

 フリーザvsベジータの描写に関しては大幅にカットしました。というのも、ここのベジータ達は相当強化されているため、各形態ごとに書いても同じような展開になってしまうためです。最終形態の時は流石にじっくりやりますがね。ここからが本番ですもの。

 ちなみに、現時点ではエメの年齢は5,6歳。そして弟たちを持つB小町ファンのJC……一体誰なんだろうな~(すっとぼけ)

 高校生編……と言うと少し語弊がありますね。日常メインパートまではあと1,2話といったところでしょうか……?あと少しじゃあ……!でもここのフリーザ編も丁寧にやっていきたい。特にフリーザ戦。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。