推しの飯/絶望の未来から転生した戦士   作:Miurand

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 やっとヤマを越えた(プライベートのお話)
 これでようやく小説書くのに時間を割くことができると思ったところ、疲労感に襲われしばらくダウン。でも変にモチベが出た時は30分で10000文字とかいうアホみたいなペースで書けてしまった。いやはや恐ろしい。



第十四話 本音

フリーザの最後の変身が始まった。その変身の危険性にラディッツは気づいたのか、ベジータにトドメを刺すように指示するが、ベジータ及びナッパはこれを拒否。自分でトドメを刺そうにも、ナッパがそうはさせてくれない。

 

そんな中、カカロットも戦場に到着した。

 

「えっ……!?」

 

「か、カカロットさんも空を飛んできた…!!?」

 

当たり前のように宙に浮いていたカカロットに対して驚くアクアとルビー。壱護はこのことを知っていたのかと問い詰めるが、勿論2人は知らない。しかし、目を疑う要素はそれだけではなかった。

 

「ア、アイ!?アイじゃねえか!!?なんであいつと一緒に!!!?」

 

「なんでママをこんなところに連れてきてるのよ!!?馬鹿なの!?ボディガードの意味分かってんの!!?職務怠慢かよ!!!?」

 

「あ、アイツなにやってんだ……!!」

 

壱護とミヤコは、カカロットがアイを連れてきたことにただひたすら驚くばかり。アクアとルビーに関しては、カカロットの行動が意味不明だと非難する。だが、2人は知る由もないだろう。星野アイがエメの心配をしてここに来たことに。

 

「はっ!俺様がフリーザと戦っている間に呑気に女遊びか?」

 

「はぁ?俺がこいつと?何変な勘違いしてやがんだ。そもそも俺は女に興味ねえって言ってんだろ」

 

そして、自身の弟が到着したことを察知し、ラディッツは大慌てでカカロットに告げる。

 

「カカロット!よく来てくれたな!!お前からもなんとか言ってくれ!!!フリーザに最後の変身をさせてはいかん!!」

 

「何言ってんだお前。フルパワーじゃねえアイツを倒したところで意味ねえだろうが。それでもサイヤ人か?何のために稽古つけてやったと思ってやがるんだ」

 

だが、カカロットも思想的には完全にベジータ寄りだった。寧ろサイヤ人としてはラディッツの方が異質だった。頼みの綱であるカカロットもダメだったということで、ラディッツの不安はいよいよ最高潮に達した。いや、ある意味では最低である。

 

「ね、ねえカカロットさん。エメいないよ?それにあの宇宙人っぽい人は何?例のフリーザーって人?」

 

()()()()な。あいつもそろそろここに来るはずだぜ。んなことよりテメェは邪魔だ」

 

「……えっ?」

 

雑に抱き抱えられたかと思えば、いつの間にかアクアとルビーの姿が見えた。社長とミヤコの姿も確認できる。

 

「えっ?い、いつの間に…!?」

 

「ママ…!ママぁ!!良かった!!生きてたんだね!!」

 

「ルビー!アクア!!無事だったんだね!!」

 

ルビーとアイはお互いに抱き合って再会を心の底から喜んでいた。アクアは少し離れたところで安堵の表情を浮かべている。

 

「あっ、佐藤社長にミヤコさんも!」

 

「斉藤な……。ったく、心配かけさせやがって……。ってかアイ!!あのカカロットってやつのこと知ってたのか!?アレを知っていたからボディガードに推薦したのか?!」

 

「いや?知らなかったよ。まさか人が変なビーム出したり空飛んだりするとは思わないじゃん?ファンタジーな世界じゃあるまいし」

 

「そ、それはそうだが……。ってかアンタ!!これはどういうことなんだよ!!説明してくれ!!」

 

この大戦の事情を知っており、唯一交友関係のあるカカロットに壱護は半ば懇願するように問いかける。すると、カカロットは事情を知らない者にも分かるように、簡潔に答えた。

 

「これは俺達サイヤ人とフリーザの戦争だ。運悪くお前らは巻き込まれたんだよ」

 

フォローするわけでもなく、かと言って不安を煽る意図もなく、ただ事実を告げたのみだった。

 

「……まあ、一度ボディガードするって決めたわけだ。余裕さえあれば守ってやるよ」

 

しかし、カカロットがフォローしたつもりなのか、そんなことを呟いた。

 

「じゃあな。できるだけここから離れた方がいいぜ?まあ、最悪地球そのものがお陀仏になるだろうから、その場合はどこに逃げても無駄だがな」

 

「変に不安を煽るようなことを言わないでよ!?てか、惑星破壊?マジ?」

 

ルビーが発狂するようにツッコむが、事の重大さに気付いたのか、カカロットにこの戦いの規模を聞き返した。無論返答は肯定。

 

「も、もし仮に地球が壊されるようなことがあったら……。じゃあ、どこに逃げても無駄?」

 

「まあ、そういうことになるな」

 

その言葉を聞き、ルビーは失神しかけた。無理もないだろう。先程まで推しのドームライブを楽しんでいたと思ったらこれなのだ。寧ろ失神で済んだのが凄いくらいである。

 

「ちょっと…!もう少しオブラートに包んでくださいよ!」

 

「あん?じゃあ何も知らずに気がついたらあの世でしたって言われても、お前は納得できるのかよ?」

 

ミヤコが子供達に配慮したのか、カカロットに注意する。だが、カカロットの言い分にも一理ある。

 

「まあ、心配するな。なんとかなるさ。多分な」

 

「(最後の一言余計だ……)」

 

アクアは心の中でツッコんだ。

 

「かぁぁあああああッッ!!!!」

 

そんなやり取りをしているうちに、フリーザの全身にヒビが走る段階にまで到達した。恐らく、殻が破れるようにして変身が完了するのだろう。今か今かと待ち続けた。

 

 

 

そして、フリーザの究極の姿が具現化された……。

 

「……?」

 

「おい、さっきより小さくなってねえか?」

 

ラディッツとナッパは、フリーザの見た目があまりにもシンプルなものに変化したことにより、逆に呆気を取られてしまう。ベジータに至っては笑いを堪えるのに必死……というか、既に高笑いしていた。

 

「…………」

 

しかし、カカロットだけが、この状態でフリーザを分析するように、静かに見続けていた。今感じる気の大きさ。本当にこの程度なのか?エメの言葉を信じるならば、異次元の変身とやらがこの程度なわけがないと。

 

「せっかく大きくなれたのに、随分小さくなっちまったな、フリーザさんよ」

 

「……」

 

煽るように語りかけるベジータを無視して、自分の身体の調子を確かめるようにして、自分の身体を動かしていた。

 

「待たせたね。僕のこの姿を見せるのは君達が最初で最後だよ……と言いたいところだけど、ザーボンとドドリアもいるからね……。敵としては、君達で最後……と付け足しておこうかな」

 

口調も先程までのやや丁寧な口調から、少し子供っぽい口調に変化した。

 

「あ、あれがフリーザ様の真の姿…!」

 

「ず、随分シンプルな見た目だな……」

 

側近2名は、フリーザの真の姿を見てそれぞれの感想をこぼす。サイヤ人を含む変身型の宇宙人は、変身をすることで戦闘力アップを実現させるが、フリーザの場合は逆だ。有り余る力を抑えるために変身しているのだ。少なくとも、ザーボンはフリーザ本人からそんな話を聞いたことがある。

 

つまり、フリーザがしたものは、厳密には逆変身ということになる。

 

「自信はあるようだな。口だけにならないといいな?」

 

「心配しなくても大丈夫さ。断言するよ。君は僕に猶予を与えたことを後悔するだろう。それこそ、泣いて謝罪するほどにね」

 

「はっはっはっ!!とんだ戯言だぜ!!今度こそその薄ら笑いを消し去ってやるぜ。貴様の身体ごとな」

 

その言葉を最後に両者は睨み合いを始めた。再び戦いが始まる合図だ。戦いに参加しない者達は、より激しい戦闘になることを察知し、距離を置くことにした。カカロットもまた、距離を置くついでにボディガードの仕事もしてやるかと、アイ達の元に戻ってきた。

 

「な、なあ。大丈夫なのか?勝つんだよな、あいつ?まさかとは思うが、あんな舐めプをしといて負けるなんてことは……」

 

「……どうだろうな。フリーザ……。つまり、お前らから見て敵の実力がまだ見えねえからな……」

 

カカロットはあくまでも冷静に現状を説明する。アクアも負けが確定したわけではないことを知り、一息をついた。だが、まだまだ油断できるような状況ではない。

 

「……!!」

 

最初に動き出したのはフリーザ。高速で背後に回り込み、ベジータに蹴りを喰らわそうとするも、それを避けて逆に反撃しようとする。が、フリーザもまたそれを避け、反撃。ベジータが避けて反撃。

 

しばらく避け合いが続き、次にフリーザがエネルギー弾を放つ。ベジータは回避せずに、片手で受け止めて弾き返した。フリーザはそれを尻尾で弾き飛ばした。エネルギー弾が飛んだ方向は大爆発を引き起こした。目測では相当遠い場所だが、それでもこちらまで余波が来るほどだった。

 

ラディッツがフリーザ軍の兵士達を一掃した時もそうだが、自分達とは明らかに次元が違う。生物としての格が違うことを思い知らされる。

 

「たあっ!!!」

 

ゴッ!!

 

だが、とうとうフリーザに攻撃が命中した。ベジータの蹴りがフリーザの頬を歪める。その威力で飛ばされるフリーザだが、地面を掴むようにして、抉りながらもその威力を殺し、立ち上がった。

 

「……なるほど。確かにそれなりの強さを手に入れたようだね」

 

「ちっ。まだ余裕って面をしていやがるな」

 

両者共にまだ真の実力を隠している状態のようだ。お互いに息切れもしていない。

 

「じゃあ、ちょっとだけ本気を出そうかな」

 

そう呟いたフリーザは直後に姿を消した。アクア達の非戦闘人はもちろんのこと、ナッパとラディッツもフリーザの動きを捉えることはできなかった。

 

だが、カカロットとベジータだけはその動きを捉えていた。

 

「見えてるぞ!!」

 

背後に回ったフリーザにそう伝えつつ反撃を喰らわそうとするベジータだったが、その拳は空を切った。

 

「なに……!?」

 

しかし、それも避けられた。更にどこに行ったかも分からない始末。見失ったか?先程まで優勢だったのに?いや、考えれば、スピードに特化した形態なのかもしれない。でなければ、こんなミスをすることなど……。

 

「ふーん?僕がちょっと本気を出した程度で、もう見えないようだね?」

 

不適な笑みを浮かべながら、ベジータの目の前に来てそう言った。嘲笑うかのように。わざわざベジータを馬鹿にするために、それだけのために姿を現したのだ。

 

「き、貴様ぁ……!!」

 

ノコノコと目の前に現れたフリーザに渾身の一撃を入れるべく、拳に力を込めて振るうも、またしても避けられた上に見失ってしまった。その直後、背中に強い衝撃を感じると同時に、近くにあったビルに叩きつけられた。

 

そのビルは轟音を立てて崩壊していく。ベジータが突然劣勢になったのを見て、ラディッツとナッパは冷や汗をかくばかりだ。

 

だが、当然その程度でベジータが死ぬはずもない。瓦礫の山を雑に退かして飛び上がってきた。

 

身体こそ傷はないものの、ベジータの心は傷ついていた。あれほどトレーニングを重ね、少し前までは考えられないほどにパワーアップをした。それでも、本気のフリーザには敵わない。その事実を受け入れることができなかった。

 

「ば、馬鹿な……!俺は伝説の超サイヤ人に近づいているはず……!まだ、まだ何か足りないのか……!?」

 

「ふん。仮にその伝説の存在になったところで、君に僕を倒せるとは思えないけどね」

 

ガッ……!!

 

鈍い音が響いた。フリーザが指を突き立てるようにするだけで、ベジータの顔が歪む。その衝撃で吹き飛ばされるが、ベジータは途中で踏ん張る。しかし、その先にはフリーザが待ち構えており、尻尾で身体を叩きつけられる。

 

なんとか制止しても、その先に待ち構えているフリーザに同じように叩きつけられる。制止しては叩きつけられるの繰り返し。フリーザはまるで一人二役の卓球……というより、テニスをやっているようだった。

 

「ね、ねえ?あの人大丈夫なの…?カカロットさんが助けに行った方がいいんじゃないないの?」

 

アイの真っ当な意見がカカロットの耳に届いた。普通に考えれば、戦争は勝つことが目標。その認識は間違いではないはずだ。だが、カカロットはベジータを理解していた。理解していたからこそ、ただ見守るだけだったのだ。

 

「あいつは、自分が戦闘の天才であることを自覚している。それは間違いない。ベジータは天才だ。だが、その自負があるからこそ、あいつは1人でフリーザを倒したかったんだ。群がらずに、自分の実力だけでフリーザを上回りたいんだ」

 

サイヤ人の、戦闘民族特有の感性なのかもしれない。ベジータのようなエリート戦士特有の感性なのかもしれない。ベジータは、何も惑星ベジータを破壊されたことは恨んでいない。自分の上に立つフリーザが気に食わないのだ。

 

ベジータとカカロットは、実力こそほぼ互角だが、一つ大きな違いがある。それは、フリーザに対する恨みの中身。ベジータは先程述べた通りで、カカロットは、家族を無残にも殺された恨みを持っていた。

 

しかし、ベジータの考えも理解できる。そのため、ベジータを単独で向かわせることを許したのだ。

 

「ぐおっ……!!」

 

「……どうしたんだい?もう終わりかい?」

 

ベジータは動かなくなった。だが、心肺共に動いており、意識もある。圧倒的な実力差に打ちのめされ、戦意を喪失してしまったのだ。

 

「……つまらないね。僕としてはもう少し遊びたかったけど、この程度かな。少しはいい運動になったよ」

 

フリーザは不適な笑みを浮かべながら、話を聞いていないベジータにそう告げると、人差し指を彼に向ける。その指先から、一本の光が放たれた。それは超速でベジータの左胸に突き進んでいた。

 

 

 

 

 

 

だが、その光線は弾かれた。

 

「……!!!?」

 

そのビームは、超速かつ莫大な威力を孕んでいるため、手加減したとはいえ弾くのは厳しい。少なくとも、今のベジータでは弾くことはできても、無傷では済まない。

 

だが、目の前の少年は、無傷でそれをやってみせた。

 

「……君は確か…。ベジータに殺されたかと思っていたけど、生きていたんだね?」

 

フリーザの問いに答えることなく、その少年、星野緑(孫悟飯)はベジータを抱えて、座り込める場所まで運び込んだ。

 

「よう。遅かったじゃないか、小僧」

 

「すまない。色々あって遅れた……」

 

エメはカカロットに軽く謝罪すると、その後ろにいる者達の顔を見て、固まってしまう。

 

「えっ、あっ……」

 

エメは、アイ達がいる前で堂々とフリーザのデスビームを弾いた。それだけではない。高速移動と舞空術を使用しているところもしっかりと目撃されている。今まで心配をかけない為になんとか隠し通しながら過ごしてきたのに、その努力が全て水の泡になってしまった。

 

エメは必死に言い訳を考えていたが、そんなことに構わずアイはエメに駆け寄った。そして抱きしめた。

 

「あ、あの……」

 

「良かった……!生きてたんだ……!!本当に、良かった……!!」

 

まるであの時のようだ。エメがアイを庇うようにして、刺されてしまったあの日に。悟飯は初めてアイの嘘の仮面が剥がれる姿をその目で見た。アイドルのアイではなく、ただ1人の少女、星野アイの姿を。今も、B小町のアイはいない。星野アイという、ただ1人の母親が息子の生還を泣いて喜んでいるだけだった。

 

「エメ!!生きてたんだ!!!良かったぁ!!」

 

ルビーもまた、エメの心配の反動によって、泣きながら飛びつくように抱きしめる。アクアも2人ほどではないにせよ、エメの生還を心から喜んでいるのは誰が見ても明らかだった。

 

「お前!物騒な嘘をついてどこかに消えただろ!!どれだけ俺達が探したと思ってんだ!!!!」

 

そう壱護に叱られる。エメもそのことに関しては自覚があったようで、すぐに謝罪した。

 

「……エメさん。もう勝手にどこかに行くのはやめてください。もう、二度とあんな思いはしたくないんですから……」

 

ミヤコのこの一言が一番聞いたようで、エメは心底申し訳なさそうに謝罪をした。この間、アイとルビーに引っ付かれたままである。

 

悟飯としては、まず自身の力について言及されるものだと思っていたが、その予測は裏切られた。勿論いい意味で。心配する言葉が先にきたことから、自分は本当に愛されているのだと感じる。

 

それと同時に、絶対に負けられない戦いだと覚悟を決めた。今までは最悪相打ちで決着をつけることを考えていたが、少し前の少女の言葉を思い出し、心配そうにするこの人達を見て、尚のこと生還しなければ。そんな思いが強くなっていく。

 

「感動の再会とやらか?悪いがそれは後にしてくれねえか?」

 

カカロットがそう言って、アイとルビーがハッとするも、アイは抱きつくことをやめない。ルビーも離れたものの、心配そうにする視線を離すことはない。

 

「お母さん。話は後でいくらでも聞く。質問にも全部答える。だけど、今は行かなきゃいけないんだ。だから、離してくれないかな……?」

 

「……やだ」

 

「おい、小娘。我儘言うな」

 

「離したら、またエメは無茶をする。あの化け物と戦いに行くんでしょ……?そんなの、絶対にさせない……!」

 

アイは黒星(本音)でカカロットに返事する。言葉だけ聞けば、子を心配する親だが、その様子を見るに、何かを恐れているかのような、そんな表情だ。

 

「我儘言ってる場合じゃねえんだよ。このガキはな、お前なんかよりもずっと強い。戦闘力で言えば、月とスッポン……いや、太陽と塵ほどの差はあるんだ。お前に心配されるほど柔なやつじゃないんだよ」

 

「やだやだ……!絶対にいやだ……!」

 

「あ、アイ……」

 

「分かってんのかお前!俺達があいつと戦わなきゃ、次に殺されるのはテメェらなんだぞ!!そこにいるあと2人のガキが殺されるんだぞッ!!そこんとこ分かってんのか?」

 

少々錯乱気味になっているアイに言い聞かせるように、聞き分けの悪い子供を躾けるような言い方で、カカロットはアイを説得する。アクアとルビーの話を出し、少しは自分がしていることを理解したようだ。

 

それでも、エメを離すことができなかった。

 

「お母さん…………」

 

悟飯は勝手にアイが強い人間だと勘違いしていた。勿論、精神的な意味で。普段の生活や、テレビで見る彼女は常に自信に溢れていて、失敗する可能性を排斥するかのようなその立ち振る舞い。そんな彼女を、エメは隙がなく、強い人間だと認識していた。

 

だが、彼女にも弱い部分はある。隙がないように見せかけているだけで、実は人並みに隙があった。弱さがあった。そのことを、身近にいながら悟飯は気づけなかった。

 

エメ自身は子供3人の中では一番アイを理解しているものだと自負していた。アクアとルビーは前世からのファン。対して自分はアイの子供に転生するまでは、その存在を知らなかった。だからこそ、冷静な視点でアイを知ることができたと思い込んでいた。

 

でも、自分は知って気になっていただけ。否、アイを強い人間だと思い込むことで、修行に励む言い訳にしていた節はある。心の奥底では、アイのそういう部分を頼りにしていたのかもしれない。

 

「聞き分けの悪い小娘だな……!それでも母親かよお前は……!」

 

痺れを切らしたカカロットは、アイとエメを力ずくで引き剥がそうと手を伸ばす。それを見て、アイは抱きしめる力を強める。

 

「待って」

 

だが、それにストップをかけた。アイでもルビーでもない。少し離れた場所で見ていたアクアでもなければ、4人の世話をよくしていたミヤコでもなく、壱護でもない。

 

声の主は、アイに抱きしめられているエメだった。

 

「お前が一番今の状況を理解しているはずだぜ?」

 

「少しだけ、時間をくれ」

 

「……チッ。1分だけだからな」

 

なんとかカカロットを静めて、エメはアイに向き直した。

 

「お母さん。今まで心配かけてごめんなさい。でも、僕は……()()は、フリーザを倒さなきゃいけない。そうしないと、この地球が滅んじゃうから……」

 

「……そっか。やっぱりそうだったんだね……?あの大猿の怪獣が出てきた時も?」

 

エメは静かに頷いた。

 

「……今までは、自分の命を犠牲にしてでも、地球を守るべきだと思っていた。でも、それじゃダメだということに気づかされたんだ」

 

前世だってそうだ。もし定期的に実家に帰っていれば、きっとチチが毎日のように、それこそ飽きるほど心配の声をかけるに違いない。でも、それがあれば、自分はもっと早く気づけていたかもしれない。

 

「オレはあいつを倒す。そしてみんなで家に帰る。両方やらなきゃいけないっていうのは、きっと凄く厳しいことなんだと思う。でも、オレはそれを必ずやり遂げてみせる」

 

「……そのみんなには、エメも含まれるの?」

 

今までなら、きっと肯定も否定もせずに沈黙し、敢えて返事することなく戦場に向かっていたことだろう。

 

だが、それではダメだということに気づいた。だから、エメ(悟飯)はこう口を開く。

 

「勿論。オレだってみんなと過ごしたい。くだらないことで笑って、みんなで美味しいご飯を食べて、みんなでお風呂に入って、時には綺麗な星を眺めて……。そんな生活を、誰1人欠けることなく、みんなと送りたい」

 

エメ(悟飯)もまた、アイのように本音を隠していた。それは一環しており、心配をかけたくなかったから。もしかすると、アイも同じなのかもしれないし、別の理由で本心を隠しているのかもしれない。

 

だが、こうしてアイが嘘という名の鎧を全て剥いで本物を見せてくれるなら、自分もそれに応えるべきだと判断した。

 

「本当は戦いたくない。どんなに悪いやつでも、殺したくない。勉強して学者になりたい。特別な待遇も力もいらないから、ただ普通の平凡な生活を送りたいだけなんだよ、(オレ)は……」

 

悟飯もまた、隠し事という鎧を剥いで、アイに本音を見せた。

 

「これだけは理解してほしい。オレが戦う理由は、決して死にたいからじゃない。戦いが好きだからでもない。生きて、普通の人生を送りたいから。平和な世界を生きたいからなんだ」

 

「エメ……」

 

「そして、その平和な世界を、家族と共に過ごしたい。だから、(オレ)の帰りを待っててほしいんだ」

 

これで、エメ(悟飯)の本音は全てアイにぶつけた。エメの本音を知り、無茶する要因も理解した。他人のために庇い、他人のために戦っているものとばかり思っていた。

 

でも、それは自分のためでもあった。ただ、そのためにする行動をした結果、大勢の人のためになっていただけ。その結果だけを見て、エメを他人に尽くす子だと思い込んでいたのだ。

 

アイもまた、自分の子どものことを理解していなかったのだ。でも、それはお互い様だ。どんなに親しい人間でも、自分自身でない以上は、完全に理解することなど不可能に等しい。

 

アイが抱きしめる力を弱めた。しかし、今度は逆にエメがアイを抱きしめた。

 

「……!!」

 

初めてエメから抱きしめられ、アイの目が見開かれる。しかし、表情は柔らかいものになった。

 

少しして、離す。そして、アイ達から離れ、カカロットの方へと歩く。その途中で、振り向いた。

 

「壱護さん。ミヤコさん。3人を、よろしくお願いします」

 

「……ああ」

 

「はい……」

 

「……ルビー。アクア。お母さん」

 

 

 

 

 

 

 

「いってきます」

 

 

 

エメは静かに、しかしはっきりとした声で3人にそう言った。

 

「……いってらっしゃい」

 

「……無理しないでね?」

 

「絶対に帰ってこいよ」

 

アイ、ルビー、アクアは各々の返事をする。信頼、心配、催促。色々な感情がそれぞれの一言に詰まっていた。

 

「うん。なるべく早く帰るよ」

 

そう言って、再び戦場の方へと向き直す。すると、もう目の前にフリーザがいた。アイ達と話している間に、こちらに移動してきたようだ。

 

「やあ、さっきぶりだね地球人。念の為もう一度聞くけど、僕の下で働く気はないかい?」

 

「答えは変わらない」

 

「そうか……。その為に遺言を伝えたんだね。でも意味ないよ。君たちを殺したら、どうせ後ろにいる君達の家族も死んじゃうんだから」

 

先程までのしんみりとした雰囲気は完全に消え失せ、張り詰めた空気が漂う。ナッパとラディッツもカカロット達の側に移動してきた。

 

「……揃ったな。2人とも、用意はいいな?」

 

「……ああ」

 

「やるしかない……」

 

2人も覚悟は決まったようだ。この戦いが、自分達の運命を決める分岐点だと認識しているのだろう。だから、普段は弱気なラディッツも戦いから逃げるようなことはしない。

 

エメには、もはや聞くまでもない。

 

「今度は複数人か。蟻が何匹増えようがあまり変わらないけど、さっきよりは楽しませてくれることを期待するよ」

 

フリーザは相変わらず余裕の笑みを浮かべている。その態度は規格外の強さと自信に裏付けされたものだ。

 

「いくぜフリーザ。チビんじゃねえぞ!!」

 

こうして、地球史上最大の戦闘が幕を開けた。

 




 戦闘描写に重きを置くつもりで書いたのに、いつの間にか親子で腹を割って話す回になってた。でもこうでもしないと過保護ママと化したアイが息子を戦場に行かせるわけもないのですよ。いや、正直あれがあっても行かせたくないでしょうけど。
 超ではフリーザは一貫して敬語になっていますが、最終形態は元々はこんな感じの口調だったはず……。
 次回からはようやくエメ対フリーザ。バトルパートで私が一番書きたかった部分に徐々に近づいております。
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