推しの飯/絶望の未来から転生した戦士   作:Miurand

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 連続投稿2日目。しかしギリギリアウト()


第十六話 決戦(中編)

「俺様はまだ死んでないぜ、フリーザ?」

 

フリーザに攻撃を仕掛けたのは、大猿化したベジータだった。そしてその技はギャリック砲。サイヤ人の中では他に類を見ない、エネルギーを断続的に放出するタイプの技だ。

 

しかし、大猿のギャリック砲を受けても尚、フリーザはその場から動いていない。少々傷が増えたとはいえ、大したダメージではなさそうだ。

 

「ベジータ。まだ戦う気があったとは驚きだけど分かってるのかい?大猿はパワーを得る代わりにスピードを失う。どんなに恐ろしい攻撃でも、当たらなければ意味がないんだよ?」

 

「さっきは当たっているように見えたがな?俺の気のせいか?」

 

「口数が多いね……。仕方ない。また黙らせてあげるとするか……」

 

フリーザとしても、大猿となったベジータ単体ならともかく、あと2人も戦力となる者がいるとなると不利だと判断したのだろう。

 

「はぁああああッッ!!!!」

 

フリーザの戦闘力が更に上がっていく。大猿となったベジータや、界王拳10倍のエメでも、単体ならともかく、複数ならなんとかなる程度の戦闘力だった。

 

だが、今の戦闘力ではそれも不可能。それほどまでに巨大なものだ。人によっては、巨大すぎて正確に強さを判別できないかもしれない。震度が7までしか存在しないとの同じようなものだ。

 

「ば、馬鹿な……!!フリーザの野郎、ここまでやるとは……」

 

「今更引き下がってられるか!」

 

カカロットはフリーザの膨大な戦闘力に、流石に恐怖を覚える。しかし、ベジータは諦める様子がない。いや、もしかしたらヤケクソになっているだけかもしれない。大猿になって勝てないのならば、もうフリーザに勝つ手段はないから。

 

「お、おいベジータ!」

 

やはりヤケになっているのだろう。ベジータは作戦を全力で無視してフリーザに突っ込む。そもそもエメが立案した作戦は、大猿のパワーを活かしつつ欠点であるスピード及び尻尾をカバーするもの。勝手に単独行動を取られては、メリットよりも遥かにデメリットの方が大きくなる。

 

「死ねぇ!フリーザッ!!」

 

大きさだけで見れば、フリーザなど容易く握り潰せそうなほどに大きい拳が振り翳される。しかし、フリーザは不適な笑みで指一本で受け止めた。

 

「なっ……!?」

 

片腕で受け止められることは想定していたが、流石に指一本で止められるとは思っていなかったようだ。

 

しかし、ベジータもただ無策で突っ込んだわけではない。

 

「……!!」

 

ベジータは口を大きく開き、そこからエネルギー砲を放った。至近距離にいたフリーザには見事に直撃した。大猿になった際には誰でも使用できる技で、ギャリック砲やかめはめ波のようにチャージを必要とすることはない。溜めもないのに、高威力の技を放つことができる。ベジータの本命はこっちだった。

 

「はっはっはっ!!!流石にこれは応えただろう!!!」

 

勝利を確信したベジータは、その巨体から高笑いを発する。

 

ドカッ!!!!

 

「うがっ……」

 

その直後、ベジータの膝が歪んだ。それと同時に、何かが折れる音がした。恐らく骨が折れた音だ。

 

ベジータは立つことができなくなり、その場にうずくまってしまった。膝を抑えて痛みに耐えている様子だった。

 

「ちっ、こいつはやべぇ!!」

 

カカロットは尻尾を狙われていることを察知したが、遅かった。

 

「気付いたのかい?でも遅かったね」

 

カカロットが察知した時点で、フリーザはベジータの尻尾を引きちぎっていた。少し経ってベジータは元の人間サイズに戻ってしまった。

 

足の骨を折られてしまったため、立ち上がることはできない上に、大猿状態の時に受けたダメージもあり、とてもではないが戦闘続行が可能と言える状態ではない。

 

「1対複数ならどうにかなるって考えだったんだろうね。しかも理性を残せるやつを大猿にして、他は尻尾の護衛に回す……。なかなか賢いと思うよ。でもサイヤ人がそんなに頭が回るとは思えないから、やっぱりあの地球人の子供が立案者かな?惜しいね、あの子も是非フリーザ軍で働かせたいものだよ」

 

ナッパ、ラディッツ、ベジータは完全にダウンしてしまった。死んではいないだろうが、正確に状態を確認したわけではない。ベジータは死ぬことはないだろうが、ナッパとラディッツに関しては分からない。

 

まともに戦えるのは、カカロットだけかもしれない。エメも相当なダメージを喰らっていたはずだ。絶望という言葉が綺麗に当てはまる状態になってしまった。

 

しかし、カカロットが諦めることはない。例え最後の1人になろうとも、たったひとりになろうとも、フリーザに跪くつもりは全くない。それをするくらいなら、戦いながら散ることを選ぶ。

 

「……1人になっても諦める気はないようだね。君の父親にそっくりだよ」

 

「……父親?父ちゃん……バーダックのことか?」

 

「ああ。多分そいつだね。今の君はそいつにそっくりだよ。無駄な抵抗をするその惨めな姿はね」

 

フリーザはカカロットを挑発するような発言をするが、カカロットが動じることはない。

 

「どうだい?頑固者のベジータとは違って、君はまだ賢い方だと思うんだ。もう一度、僕の下で働く気はないかい?今戻るって言ってくれるなら歓迎するよ」

 

生存欲求が強い者ならば、これほど都合の良い話はない。先程はまで殺し合いをしていたにも関わらず、救いの手が差し伸べられるのだから。

 

だが、カカロットはその手をはたいた。

 

「はっ!お前に跪くことこそが惨めな姿だろうがよ。またてめぇの部下になるくらいなら、塵になった方がマシだ。だから父ちゃんもこうしたんだろ?」

 

「……そうかい。サイヤ人というのは、どいつもこいつも……

 

フリーザは呆れるような仕草をする。カカロットとエメの勧誘を完全に諦めたらしい。

 

「まあ、君達は本当によくやったと思うよ。僕に最後の変身をさせて、その上でここまでやったんだから。僕の家族を除けば、ここまでやれたのは君達が初めてだよ」

 

フリーザは賞賛の言葉を出しながら、カカロットにトドメを刺す準備を確実に進めている。カカロットもまた、自身と父親の奥義、スピリッツキャノンの準備をする。

 

今の自分がフリーザには勝てない。それは分かっている。変身させなければ勝てたのも、今なら分かる。だが後悔することはない。負けたならその程度だった。少なくとも、カカロットはそういう考えだった。

 

「(すまねえな、父ちゃん。俺じゃ、サイヤ人の手じゃ、フリーザを倒せそうにねぇ。この様じゃ、地獄にも行けやしねぇ……)」

 

カカロットは半ば諦めていた。しかし、無抵抗で殺されるつもりはない。どうせ散るなら、出せる力を出し切ってから散りたい。だからこそのスピリッツキャノンだった。

 

「……!!!!」

 

2人がそれぞれの奥義をぶつけ合おうとしたその時、膨大な戦闘力が接近するのを、カカロットは察知した。

 

「な、なんだこの戦闘力は…!?」

 

フリーザァアア!!!!

 

「あの小僧…!!!?」

 

エメが赤いオーラを纏って猛スピードでフリーザに突っ込んでいく。先程フリーザにされたように頭突きをした直後に、腹部にエルボー、顔に回し蹴り、両手をハンマーのようにして、腕ごと振ってフリーザの頭に叩きつけた。

 

フリーザは地面に叩きつけられる。それとほぼ同時にエメが追い、重力も加えてフリーザを踏みつけるようにして蹴りつける。

 

「ぐぉあッ!!!?」

 

あだだだだだだッッ!!!!

 

そして、エメは怒涛のラッシュをフリーザの全身にぶつける。そのラッシュを打ち付けるたびに、地面に発生したクレーターが徐々に大きくなっていく。その光景だけでも、威力の高さを物語っている。

 

「あががっ……!?」

 

そして、先程の攻撃もそうだが、このラッシュもフリーザに効いているようだった。

 

「おりゃあッッ!!!!」

 

ラッシュを終えたエメは、フリーザの足を掴んで空中に放り投げた。その直後に自分も後を追って、フリーザと同じ高度にまで到達し……。

 

「かー……!めー……!!」

 

両手で蒼白のエネルギーを生成する。気を少しずつ、しかし確実に溜め、フリーザを確実に仕留めるだけの威力を生み出そうとする。

 

「はー……!めぇぇ……!!!」

 

今、エメが使用している界王拳の倍率は、無謀にも30倍だった。許容を遥かに超えた倍率の使用は、身体に大きな負担を伴う。度が過ぎている場合は、最悪死ぬ。しかし、エメはフリーザを倒すことを最優先事項とし、自分の身体は二の次とした。

 

こうでもしなければ、フリーザは倒せない。逆に、ここまでしてフリーザを倒せないならば、何をしても無駄だから。

 

「波ぁあああああああッッ!!!!」

 

エメは最後の賭けのかめはめ波を繰り出した。当然フリーザには直撃し、大爆発を起こした。エメは最早その場に留まる力はおろか、舞空術を使う力も残っていなかった。しかし、微妙に舞空術は使用できているのか、落下する速度は遅い。

 

「エメ!!」

 

比較的遅い速度だったため、一般人のアイでも余裕で反応できるほどだった。

 

「いくらなんでも無茶しすぎだよ…!!」

 

素人目で見ても、エメが無茶をしていることは明らかだった。子供が地球を守るために必死になっている姿は、見ていて心に来るものがあった。それが自分の子供ならば尚更。

 

「でも、本当によくやったね……。もう休んで……」

 

流石にあれでフリーザは死んだだろう。素人目ならそう見える。しかし、カカロットは更に絶望するような表情を見せる。

 

「クソ野郎が……!!不死身かあいつ……!!!!」

 

「えっ……?あ、あれを喰らって死んでないなんてことは……」

 

アクアがそう呟くと、カカロットは真っ向から否定した。

 

「死んでねえからこんな反応になってんだよ……!!」

 

少しすると、煙の中からフリーザが現れた。そしてカカロットとエメの近くに降り立つと同時に、アイに抱えられているエメを睨みつけた。

 

「今のは相当痛かったぞ……。下手したら死んでいたかもしれないね……」

 

とは言いつつも、表情には僅かながらの余裕が現れている。エメが死を覚悟して放った技は、フリーザにとってはちょっと死ぬかもしれないと思った程度だったということ。

 

あまりにも、強さに差がありすぎた。

 

それこそ、蟻と恐竜どころの話ではなく、ノミと太陽を比較するようなものだった。

 

「フリ……ザ…!」

 

フリーザが生きていることを確認するなり、エメは再び戦闘態勢に入ろうとする。

 

「ぐぁああああっ!!!がぁあッ!!!」

 

しかし、界王拳の反動で、少しでも動こうとするだけで、死を覚悟するほどの激痛に襲われる。気を高めようとすると、失神すると確信できるほどだった。

 

「エメ!もうやめて!!これ以上無茶しないで……!!」

 

「あいつもリタイアかよ……!」

 

「これであとは君だけになったわけだけど、その前にあの地球人だけは殺しておきたいね」

 

フリーザがわざわざエメを狙う理由は幾つもある。

 

まず、自分の秘密を知り過ぎていること。一応ザーボンには話したことがあるが、正確な変身回数までは話してないし、そもそもエメとザーボンは面識がなかったはずだ。

 

次に、サイヤ人と違って、戦うことよりも殺すことを優先すること。いくら自分が強いと言えども、殺すことに特化した技を使われては危ない。

 

厄介な存在は早めに消しておくことに越したことはない。

 

「……!!」

 

「あ、アイ!!」

 

「ママっ!!」

 

フリーザが指を向けると、アイはエメを庇うようにして抱き抱え、その場に座り込んだ。

 

もしデスビームが当たった場合は、アイだけでなくエメも死ぬ。この戦いを見たアイもそれは分かっていた。分かってはいても、子供を放置することなどできなかった。

 

今のアイは、意識せずとも母親として子を守る行動ができるようになった。しかし、今それをしたところで、無駄に犠牲者を増やすだけなのだが……。

 

お、おかあさ……やめ……

 

無理な界王拳の反動によって、エメは喋ることすらもままならない。なんとかアイにこの場から離れるように言おうとするが、言葉が続かない。発音も上手くできなかった。

 

「おい小娘!てめぇじゃ肉壁にもなれやしねえ!馬鹿なことはやめろ!!」

 

しかし、カカロットの呼びかけに応じない。何がなんでも息子を庇うつもりのようだ。無駄だと分かっていても、息子を見殺しにしたくないのだろう。

 

あの日のように、自分のせいで子供を傷つけたくない。子供が傷つくくらいなら、代わりに自分が傷を受ける。そんな思いがあったのだろう。それほどまでに、あの日の出来事はアイにとってトラウマと化していたのだ。

 

「随分と頭の悪い母親もいたものだね。まあいいよ。そんなに死にたいなら、君から殺してあげるよ」

 

「アイ!!馬鹿なことはやめろ!!」

 

壱護はエメを救うことを諦めた。実際、こんな化け物を相手にしたところで勝てるわけがない。アイが庇ったところでエメごと殺されるだけ。ならば、せめてアイだけは救いたかった。決してエメがどうでもいいわけではない。ただ、今救えるものを救いたいだけなのだ。

 

「……ちっ。クソ野郎!!」

 

ドカッ!!!!

 

カカロットはヤケクソ気味にフリーザを殴る。しかし、一切動じることもないし、擦り傷一つもつかない。

 

「……邪魔だね。消えてもらおうか」

 

空いている左手を使ってエネルギー砲を瞬時に生成し、それをカカロットに向けて放った。

 

「ぐぁああああああッ!!!!?」

 

既に消耗していたカカロットは、これを避けることができずに喰らってしまった。吹き飛ばされたのか、消し飛ばされたのかは分からないが、攻撃が収まった頃には、カカロットの姿はなかった。

 

「そ、そんな……」

 

カカロットも消えた。戦える者はいなくなってしまった。エメはまだ意識があるものの、とてもじゃないが戦える状態ではない。しかも回復するまでの猶予もない。そうなる前にフリーザが殺そうとしているから。

 

しかし、アイが邪魔だ。やろうと思えばアイとエメを纏めて殺すことなど容易い。しかし、そんな簡単に殺してしまってもいいのか?エメには少々苦労させられたので、その仕返しをしたい。

 

そう考えたフリーザは、まず手始めにアイを殺し、エメの反応を楽しんでみることにした。その為に指先に力を込める。そして、アイの左胸目掛けて解き放とうとしたその時……。

 

存在しないはずの記憶が、フリーザの頭に過ぎる。

 

「……!?(な、なんだこれは…?)」

 

フリーザの頭に現れた()()()()()()()の記憶……。それは、金髪の何者かに自分が倒されるものだ。いや、記憶というよりは夢に近いかもしれない。

 

その金髪の男は、初めは黒髪だった。カカロットやバーダックに似ているが、性格は似ても似つかないし、訛りもある。服装も戦闘服ではなく、山吹色の道着を着ている。

 

しかし、ハゲで小柄な男……、おそらくそいつの仲間を殺した際に、奴は金髪になった。その後は悪夢の連続。最強だったはずの自分は一方的に叩きのめされた。フルパワーを出しても、互角だったのは一瞬。塩を贈られた上に殺されかけた。

 

そこで記憶の再生が終わる。我に帰り、今自分が何をしようとしているかを確認する。

 

ある戦士の大切な存在を殺そうとしている。殺されれば、間違いなく戦士は怒り狂う。その際に、記憶のように金髪に覚醒して、自分に襲い掛かるかもしれない。

 

フリーザは手を引っ込めた。

 

「……えっ?」

 

フリーザを睨みながらも、僅かに怯えがあったアイだったが、何故か手を引っ込めたことに疑問を感じた。

 

絶対に自分は殺される。そう確信していたのに、いつまで経っても攻撃されない。

 

「……気が変わったよ。君を殺すと僕に不都合な何かが起こる気がするよ」

 

フリーザは確信した。この時に記憶を見た理由。それは間違いなく警告。夢のはずなのに、夢とは思えない現実感。もしかすると、並行世界の記憶というやつかもしれない。サイヤ人ならともかく、地球人が自分を超えることなどあり得ない。

 

そう思っていたが、エメだけは例外。奴は気味が悪い。自分のことを知り過ぎている。自分よりも自分のことを知っている気がしてならない。異質な何かを感じる。

 

だから、とっとと無力化する方が良いと判断した。

 

「君たちはよく頑張ったよ。多分、君達のことは忘れないよ」

 

そう言うと、フリーザはゆっくり浮かび上がる。

 

指を天に掲げ、デスボールを作る。否、デスボールにしてはデカすぎるし、色が明るい。まるで太陽のような……

 

「あっ……」

 

フリーザが生成したのはデスボールではない。それより遥かに巨大で、強力なエネルギーを含んでいるスーパーノヴァ。これによって、サイヤ人の故郷も餌食になった。

 

「さようなら、気味の悪い地球人」

 

太陽のようなエネルギーの塊は、フリーザが指を曲げると同時に、ゆっくりとこちらに進み始めた。

 

こちらに近づけば近づくほど、熱を感じるようになる。死が近づくのがよく分かる。

 

何もかも終わる。何もできない。自分や家族、大切な人たちだけじゃない。仲間も、ファンも、自分が知らない人たちも、何もかもなくなる。

 

「あはは……。もしかしてこれが代償……?そんなに、私は幸せになっちゃいけなかったかな……?」

 

愛を与えられなかった。愛を知りたかった。子供ができれば、愛を知れると思った。だから子供を産んだ。

 

実際、子供が生まれ、しばらくしたら愛というものが分かった。そんな気がする。しかし、それと同時に幸せの代償が訪れる気がしてならなかった。

 

もし、今起きていることが代償だとしたら、なんと残酷なことか。もし神という存在がいるならば、それこそ復讐心を抱いてしまうほどだ。

 

「お、お兄ちゃん……」

 

「……ルビー」

 

ルビーは、縋るようにアクアに泣きついた。だが、アクアには何もできない。前世の記憶がある。医者の知識がある。

 

だからなんだ?それがあったら、何ができるというのだ?あの太陽なものを跳ね返せるのか?そんなこと、できるわけがない。できるとすれば、規格外の力を持つエメやカカロット達だけだろう。しかし、頼りになる人達は皆戦闘不能。

 

冷静に状況を把握できるからこそ、死を確信して絶望するしかなかった。

 

「……そうだ。これだけは絶対に言わなきゃ。アクア、ルビー」

 

推し(母親)に呼ばれた。2人はそれに応える。アイはエメを抱えながら、2人に優しい目線を向ける。

 

「アクアとルビーには面と向かって言えてなかったよね…。でもちゃんと言わないとダメだよね。伝えられないまま死ぬなんて、絶対に嫌だ」

 

死が近づいているというのに、アイは冷静だ。いや、もうどうにもできないと分かっているからこそ、冷静になっているのかもしれない。この例えは適切ではないかもしれないが、遅刻が確定した時と似たようなものなのだろう。

 

「ルビー、アクア……。愛してる。この気持ちは嘘じゃないよ、絶対に……」

 

この土壇場で言うのは場違いだろう。もっと然るべき時があっただろう。しかし、その可能性は一体の化け物によって覆された。突如未来を奪われた。日常を奪われた。

 

この機を逃したら、永遠に言葉で伝えることはできないかもしれない。そのことを後悔したくない。だから、場違いだとしても、この場で伝えたかった。

 

「アイ……」

 

「ママ……」

 

2人はアイに近づき、抱きしめる。アイはそれを優しく受け入れる。

 

「ごめんね……。言うのがこんなに遅くなっちゃって……」

 

せめて、あの世では一緒に過ごせるように。そんなことを考えているかのように、3人は穏やかだった。

 

 

 

 

 

 

 

ドンッッ!!!!!

 

何かが当たる音がした。それに驚いて咄嗟に振り返る。すると、無謀にも太陽のような何かを抑えようとする者がいた。無茶の代名詞とも言えるエメはアイの腕の中。それも気を失う寸前だ。できるわけがない。

 

ベジータ、ラディッツ、ナッパも戦闘不能状態だ。こちらも可能性はゼロ。

 

「ちきしょぉおおおおおッッ!!!!」

 

「カカロット……さん?」

 

カカロットだけは、安否が確認できていなかった。どうやらただ吹き飛ばされただけのようだ。悪足掻きとして、スーパーノヴァを食い止めようとしているが、そんなことできるはずがない。

 

「諦めの悪いやつだ。本当に父親そっくりだね」

 

フリーザは静かに嘲笑い、スーパーノヴァを更に押し出す。

 

「ぐぬぬぬっ……!!ぐがぁっ…!!」

 

カカロット1人では食い止め切れない。実は、カカロットは赤いオーラで纏われている。これは言うまでもなく界王拳なのだが、彼は誰にも教わっていない。ただ、エメが使用しているのを見よう見真似で再現したのだ。しかし、コントロールの仕方を知らないため、身体に大きな負担が襲い掛かる。

 

だが、自分はタフなサイヤ人。サイヤ人でもない地球人の子供が身体を張っているのに、自分はそれをしないことに、戦闘民族として思うところがあった。

 

別に地球を守りたいわけではない。アイ達を守りたいわけでもない。ただ、少しでもエメに、地球人に負けたくないだけ。ただそれだけのために、自らスーパーノヴァに突っ込んだのだ。

 

「カカロットさん……」

 

エメを抱えながら、不安そうに見守っている。彼が希望となってくれれば、どんなに良いことか。しかし、フリーザ相手には歯が立たない。戦えないアイでも、それはなんとなく分かってしまった。

 

 

 

 

 

意識が遠のいていく。行かなければ。食い止めなければ。巨大な何かが迫っているのは分かっている。しかし、体が言うことを聞かない。思うように動いてくれない。

 

でも、カカロットがいる。彼は孫悟空の名を与えられてないが、それでも孫悟空に通じる何かを感じる。サイヤ人にしては穏やかで、言葉遣いこそ悪いが、他人や他民族を見下すような言動や態度も見られない。

 

そして、自分達家族を見る目は、どこか懐かしいものを見るような、優しい目で……。彼は孫悟空ではないはずなのに、孫悟空がいると錯覚させられる。

 

そんな彼なら、超サイヤ人になってフリーザを倒してくれるのではないか?孫悟空はいつだってピンチの時に僕(悟飯)を助けてくれた。なら、今回もきっと助けてくれる。なら、ここは彼に任せてしまおう。もう眠たい。力が出ない。

 

……ああ、やっぱり、守れない約束なんて、するもんじゃないな。

 

 

 

 

 

 

『何をやっているんだ、悟飯!!』

 

『!?』

 

しかし、背後に山吹色の道着を着た孫悟空が現れる。幻覚か?それとも映像か?カカロットはあそこで頑張っているのに、何故こっちに悟空が……?

 

『この世界にオラはいねえ!アイや地球を守れるのはおめぇだけだって言っただろ!!しっかりしろ!!』

 

でも、無理だ。フリーザとの戦いに備えて、できる限り手を尽くしてきた。にも関わらず、今はこの様だ。自分ではどうしようもない。もう、カカロットに全てを託すしかないのだ。

 

『甘ったれてんじゃねえぞ!!あいつはオラにそっくりなだけでオラじゃねえ!!おめぇ(エメ)の父親じゃねえんだぞ!!』

 

『……!!』

 

『おめぇは今まで何の為に戦ってきたんだ?苦しむためか?足掻いて死ぬためなのか?』

 

違う。そんなわけない。オレは戦いが嫌いだ。学者になりたくて、平和な世界を生きたくて、大切な人たちを守りたくて。

 

だから、修行に励んだ。敵を倒した。痛みだって、苦痛だって受け入れた。全ては平和な世界を実現するために。

 

『だったらこんなところで諦めてんじゃねえ!おめぇの力はまだまだこんなものじゃねえはずだ!!おめぇの本当の力を見せてみろ!!』

 

それができるならやっているさ。でも今の身体では、それができない。サイヤ人の身体ではない以上、超サイヤ人になることはできない。界王拳では対応しきれない。こればっかりは、どうしようもない。

 

『ああ。確かに、おめぇの体は純粋な地球人になっちまったかもしれねぇ。だがな、前世の記憶をそのまま持ってるってことは、魂はそのままってことだ。何が言いたいか分かるか……?』

 

魂はそのまま……?それはつまり……。

 

『もう一度言うぞ。おめぇの真の力を見せてみろッ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

「がぁあああああッッ!!!!」

 

「はっはっはっ!!!!諦めろカカロット!!!君ではもう止められない!!この星と運命を共にするがいい!!!」

 

スーパーノヴァが、地面に接触する寸前。カカロットは最後の力を振り絞って抵抗するも、とうとう地に足がついてしまった。

 

これ以上はどうしようもない。身体の悲鳴を誤魔化しきれない。いくら強靭な肉体を持とうとも、無敵ではない。

 

「こんなところで……!!俺は死ぬわけには……!!!!」

 

「ふはははははっ!!!!はーっはははははっ!!!!」

 

フリーザは勝利の高笑いを挙げた。厄介なやつがようやく死ぬ。星ごと殺してしまえば、自分を恨む暇もなく死ぬ。そうすれば勝利は確実のものとなる。

 

そういえば、部下がこの星に降り立っていた。今更思い出したが、もうどうでも良かった。

 

「ふぅ…。新しい側近を探さないといけないね……」

 

 

 

 

 

ブワッ……!!!!

 

「……!!!?」

 

突如、空気が震えた。大気に稲妻が走った。地球中が揺れた。

 

スーパーノヴァが、押し返された。

 

「ぬおっ……!!?」

 

物凄いスピードでこちらに戻ってきた。まるでブーメランのようだ。フリーザは咄嗟に反応して避け、空に昇っていく自身の技を見届けることしかできなかった。

 

「ば、馬鹿な……。あれを押し返せるはずがない……!!一体どうやって……」

 

フリーザは仕組みを特定するべく、地面に目をやる。スーパーノヴァの衝撃で浅いクレーターができていた。途中から悪足掻きをしていたカカロットがそこにいるのは当然として……。

 

激痛に悶えていたはずのエメが、何故かその場に立っていた。

 

「あ、あの地球人……!!またしても……!!」

 

「お、おい?小僧……?大丈夫なのか……?」

 

サイヤ人かつ大人のカカロットでさえ、界王拳数倍程度で相当な負担がのしかかっている。エメは30倍という無謀な倍率に引き上げていたにも関わらず、それがなかったかのように平然と立っていた。

 

いや、それだけならカカロットはここまで驚いていない。真に驚いているのは、その異常なパワー。

 

髪は少々逆立ち、金色のオーラを身に纏っている。その状態で、金色に強く輝く星の瞳でフリーザを睨みつける。

 

髪の色は変わっていない。いつもの紫がかった黒髪だ。しかし、金色のオーラのせいで、金髪だと錯覚してしまいそうなほど、光が強い。

 

彼がサイヤ人の血を引いているのなら、それの正体は超サイヤ人なのだろう。しかし、彼の肉体は純粋な地球人だ。

 

超サイヤ人になるには、サイヤ人特有の細胞、S細胞というものが必要になる。これはサイヤ人にしか存在せず、ある特定の条件を満たすと増える。一定量に達し、一定の基礎戦闘力を持った上で、穏やかな心を持ちながら激しい怒りによって初めて目覚めることができるのだ。

 

穏やかな心に激しい怒り。そして一定以上の基礎戦闘力。これらの条件をエメは満たしていた。しかし、肝心のS細胞が存在しないため、覚醒することはできない……はずだった。

 

ここで、本来ならあり得ない彼の出生が大きく関係することになる。彼は孫悟飯(未来悟飯)の魂がそのまま星野緑の肉体に入り込んだことによって誕生した。

 

孫悟飯の魂はそのままだったため、魂だけはサイヤ人と地球人のハーフなのだ。しかし、先にも述べた通り、これは本来ならあり得ない状態。地球人の肉体にサイヤ人の魂が含まれることなどあり得ない。

 

そのあり得ない状態が、彼の覚醒を齎したのだ。超サイヤ人に似て異なるもの。しかしその性質は超サイヤ人に非常に近い。

 

彼の変身を敢えて名付けるとするなら……。

 

 

 

超サイヤ人()()()。こう名付けるのが相応しいのではないだろうか?

 

「え、エメ……?」

 

「……」

 

「大丈夫なの……?さっきまであんなに苦しんでいたのに……。まさか、相打ちを狙って……?」

 

「……言ったでしょう?敵も倒す。家に帰る。みんなで一緒に平凡な日々を過ごしたいって」

 

界王拳30倍を使った時点で、エメは自分が生き延びることは諦めていた。自分が死ねば家族が悲しむのは分かっていたが、それでも地球を失うわけにはいかない。

 

しかし、それでは満足しなかったようだ。やはり自分も生き延びたい。家族を悲しませたくない。敵を倒して平和にしたい。

 

自分の人生か、世界の未来か。前世は後者を選んで犠牲になった。それでいいと思っていた。しかし、今はそう思えない。自分の人生も、世界の未来も、どっちも取りたい。

 

魂こそ別人だが、肉体は歴とした星野アイの息子。そんな子供が欲張りになるのは、最早自然の摂理と言っても過言ではなかった。

 

「……覚悟しろ、フリーザ。これ以上、地球を無茶苦茶にさせてたまるか…!」

 




 今作オリジナル形態、超サイヤ人アースについて軽く解説。
 本編中にも語っている通り、性質は超サイヤ人に近いので、超サイヤ人に変身するのと同程度のパワーアップが可能。しかし覚醒条件は超サイヤ人よりも厳しいものになっているのですが、それは後程。ちなみに厳しいというのは、フィジカル面ではなく精神的な部分のことです。また、この形態は地球人特有の変身でもなければ、サイヤ人特有の変身でもありません。純粋な地球人の肉体を持ちながら、サイヤ人の魂を持っていないとなれないので、実質エメ専用です。というか、サイヤ人が地球人として転生しないと無理ですね、はい。

 最初期プロットでは、エメも超サイヤ人にしようと企んでいましたが、それだとS細胞とかその辺が非常にややこしくなるので、こんな新形態を出したわけでございます。バーダックがたったひとりでフリーザに挑んでいることを考慮すると、カカロットが倒すのが綺麗なのですが、このバトルパートのテーマ的なものを考慮すると、エメが倒さなきゃ意味がないんですよね。ということで、新形態が出ました。

 こんな感じなので、アクアとルビーも同じ変身ができるのかと言われると、NOです。

 さて、明日(今日)も投稿するかぁ()
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