推しの飯/絶望の未来から転生した戦士   作:Miurand

17 / 40
 あまりにも長くなりすぎたので分割投稿いたします。そのため、今回は第十七話(1)、次は第十七話(2)という表記になります。


第十七話(1) 決戦(後編)

不思議な感覚だ。超サイヤ人に非常に近い感覚だが、少し違うような気がする。

 

無力で、逃げを選択しようとした自分への怒りと、大切な人たちを守らなければという使命感が強くなった時、この力が漲ったような気がする。

 

これが超サイヤ人なのか、それに近い亜種なのかは気になるところだが、今はどうでもいい。

 

この力が自由に行使できるとは限らない。時間制限があるかもしれない。ならば、手っ取り早くフリーザを倒すべきだ。

 

歩き始めてみた。先程までは界王拳の反動で、少しでも体を動かそうものなら、意識が刈り取られそうになる程の激痛に襲われた。しかし、今はそれが嘘だったかのように体の調子がいい。寧ろさっきよりも力が漲っている。

 

今なら、フリーザを倒すことができる気がする。いや、圧倒できる。フリーザを倒せる。そう確信した。

 

「くっ…!くくくっ…!!ふはははっ!!地球人は痩せ我慢が上手いようだな。だが歩くだけでも精一杯なのだろう?僕には分かるよ。もう無理することはないさ。今すぐ楽にしてあげるよ」

 

フリーザの指からデスビームが放たれる。今回放たれたそれは、今までに比べて段違いのスピードとパワーを持ち合わせていた。それだけフリーザが本気を出しているということだ。

 

しかし……。

 

ダンッ!!!

 

「…………」

 

1発、直撃した。しかし平然とした顔をしている。弾いたわけでも、気で防御したわけでもないのに、無傷で平然としている。一応本気を出しつつあるのに、涼しい顔をしているエメに腹が立った。

 

「ふっ…!ふふふっ…!演技の才能でもあるのかな?それとも、マゾヒストなのか?足りないならもっとくれてやるよ」

 

少し余裕そうに振る舞うも、その表情には僅かに焦りも見える。そりゃそうだ。自分を殺すこと最優先で行動している暗殺に特化したようなやつが、自分の攻撃を受けても無傷で佇んでいる。いくらフリーザと言えども、少しは焦るものだ。

 

フリーザはその焦りに身を任せ、デスビームをマシンガンのごとく連射する。エメに当たると連鎖的に中規模な爆発を引き起こす。断続的な爆発でエメの姿を確認できない。しかし、その爆発は少しずつこちらに向かってきている。

 

デスビームを受けながら前進していることになる。しかし、フリーザはその事実を受け入れられずにそのまま……ということはなかった。

 

「(ならこれでどうだ!!)」

 

フリーザは円盤型の斬撃……。気円斬に酷似したものを作り、それを放った。もしこれが気円斬ならば、エメは防御したとしても、触れたら胴体が切断されて死亡する。

 

流石に受け止めることは不可能と判断したのか、エメに動きが見られた。ただ歩くだけの行動を中断し、腕を振るだけ。

 

「…………!!」

 

エメはその場に動かなかった。フリーザに接近してから振ったわけでも、気弾を放ったわけでもない。本当に、ただその場で腕を振っただけ。

 

ドグォオオオオオンッ!!!!

 

「なっ……!?」

 

しかしその直後、気円斬に非常に似た技は粉砕された。エメは拳を振っただけで拳圧を繰り出したのだ。それも、フリーザの技を消滅させるほどのものを。

 

「(まずいな……。これはフルパワーを出すべきか……?確実に遊んでいる場合ではない……)」

 

フリーザはスカウター無しでもエメの強さをなんとなく察した。自分と互角、最低でも自分のフルパワーのうちの9割の力は持っていると確信した。

 

しかし、フルパワーを引き出すためには少々時間がいるし、その間は隙を作ることにもなる。そんなことをしてしまえば、先程の剣のようなものであっさりと切り裂かれるに違いない。故に下手にフルパワーを引き出すこともできないのだ。

 

フリーザはエメと距離を離しながら遠距離攻撃を仕掛ける。様々な技をエメにぶつけるが、どれも効果がない。生存本能に従うなら、この場で逃げてしまった方がいいのだろうが、名実共に宇宙の帝王として君臨しているフリーザにとって、それは非常に屈辱的な行為。

 

敵前逃亡など言語道断。宇宙の帝王としてはあるまじき大恥である。

 

「……そうか」

 

フリーザは効果的な作戦を思いついた。エメを一時的に行動不能にして、自分がフルパワーを引き出すための時間稼ぎをする方法を。その作戦は至ってシンプルだった。

 

「はっ!!」

 

フリーザはデスビームを放った。エメは相変わらずそのまま前進するだけ。しかし、今回はエメに当たらずそのまま通り過ぎる。不審に思ったエメは振り返る。すると、デスビームの軌道上にアイ達がいた。

 

「……貴様ァ…!!」

 

一瞬フリーザを睨んだ後、瞬間移動かと見間違えるほどの超スピードでアイの目の前に移動。

 

「らあッ!!!!」

 

凄まじい轟音と共に、デスビームを弾き飛ばした。

 

「え、エメ……?」

 

「大丈夫?怪我はない?」

 

先程までのエメは鬼も泣いて逃げ出すほどに険しい顔をしていた。しかし、今ではそれが嘘のような、正反対の、子供らしく親を心配するような表情をしていた。無事だと分かると、安心して優しい顔つきになった。

 

しかし、再びフリーザに向き直れば、表情は一変。怒り、殺意が強く感じ取れる表情に戻った。

 

「……!!?」

 

だが、向き直ると、目の前には無数のデスビーム。

 

「ぐっ……!!」

 

その場で受けるだけでも問題なかったが、爆発して近くにいるアイ達にまで危害が及ぶのは避けたかった。ある程度鍛えている者なら死にはしないが、アイを始めとした一般人はほぼ確実に死ぬ。

 

そのため、エメは弾くことに全神経を注ぐことになった。ただ無作為に弾くのもアウト。アイや、もう少し後ろにいるアクア、ルビー、ミヤコ、壱護にも危害が及ばないように気を使いながら弾かねばならない。

 

「(いいぞいいぞ…!思った通りだ。やつは極端に仲間を庇う。ならばその甘さを利用するまでだ)」

 

フリーザは器用なことに、片手でデスビームを放ちつつ、フルパワーになるために力の解放を進めていた。

 

少しずつではあるが、筋肉が大きくなる。100%まで引き上げるにはまだ時間が必要だが、この調子なら問題ない。

 

 

 

 

 

 

そう思っていた。

 

「はっ!!!!」

 

突如、エメは気弾を放った。何の変哲もない、ただのエネルギー弾。しかし威力は凄まじいもの。

 

その気弾は、アイ達を狙う全てのデスビームを押しながら猛進する。

 

「……!!?」

 

フリーザもその存在に気づいた。力を解放することを一旦中止し、防御する姿勢に入った。

 

しかし、それをエメは好機と捉えた。フリーザは目の前の気弾から身を守ることしか考えていない。デスビームに押し勝ちながら、しかしスピード重視で気弾を放ったのはこのため。

 

ドゴォッ!!!!!!

 

重く鈍い音が辺りに響いた。

 

「かはっ……!!」

 

背中を強打されたフリーザは、口から血のような液体を吐き出し、その激痛に怯む。

 

と同時に、エメが放った気弾が直撃。

 

「ごあっ…!!?」

 

スピード重視とはいえ、フルパワーではないフリーザには相当効いたようだ。

 

だが、エメの猛攻はこの程度で終わるはずがない。

 

……お前のせいで…

 

何かを呟きながら、エメはフリーザの尻尾を掴んだ。それに気づいたフリーザは、痛みに悶えることを後回しにしてエメの腕を振り払おうとする。が、それよりも早くエメが動いた。

 

「お前のせいで…!!」

 

片手で鞭を振るように腕を振り上げた。それと同時にフリーザの身体が宙に浮いた。

 

お前のせいで!!!!

 

ドンッ!!!!

 

直後、フリーザの身体が地面に強く叩きつけられた。

 

「がっ……!!!!」

 

「お前のせいで、沢山の人が死んだッ!!!!」

 

ダンッ!!!!!

 

「ギッ!!?」

 

「お前が、殺したッ!!!」

 

ゴシャッ!!!!

 

「グォッ!!!?」

 

「お前が、めちゃくちゃにしたッ!!!!」

 

半円を描くようにして、エメは尻尾を掴んでいるのをいいことに、フリーザを力の限り叩きつけまくった。己の怒りに任せ、しかしフリーザに痛みというものを教えるように、どれだけの人がこの痛みを、それ以上の苦しみを味わったのかを、理解させるために。

 

「どうしてお前らは無実の人達を傷つけるんだ!!その人達が、お前に何かしたのかッ!!!!」

 

フリーザの身体が叩きつけられるたびにクレーターが発生し、その都度強い振動が発生する。

 

だが、フリーザもただやられるだけでは済まない。

 

「キッ…!!!」

 

何度目だろうか、地面に叩きつけられた瞬間、フリーザは両目を見開いて、瞳孔からビームを放った。

 

「……!!」

 

しかし、エメも同じように見開くと同時に、自分の身体に物凄い圧力がかかった。

 

エメが放ったのはただの気合。それだけでフリーザのビームを相殺してしまうどころか、フリーザをその場に強制的に跪かせた。

 

「貴様ぁ……!!頭に乗るなッ!!!!」

 

あまりの仕打ちに激怒したフリーザは、飛び上がると同時にエメの顔面に狙いを定めた。

 

が、ただのビンタでフリーザの拳は弾かれた。

 

「はっ……?」

 

そして、ビンタのために広げていた手が、丸められる。ありったけの力を込めて、フリーザの顔面にそれをぶつけた。

 

「ぐぁあああっ!!!??」

 

フリーザの顔面は歪み、吹き飛ばされていく。が、エメはすぐにフリーザに追いつき、顔を地面に押し付けるようにしながら、フリーザを引き摺り回した。

 

そして、フリーザの顔を掴んだまま…。

 

「……魔閃光」

 

ドグォオオオオオンッ!!!!!

 

気功波を放った。

 

「ぐわぁあああああああッッ!!!!!!」

 

フリーザは情けない声をあげながら、その攻撃を受けるしかなかった。エメは防御することも避けることも許さなかった。

 

フリーザ達によって多くの人々が苦しみ、なんなら死んだ者もいた。

 

エメがすぐに殺さずにフリーザが苦しむように仕向けているのは、フリーザ軍によって犠牲になった人たちの仇を討つためであり、自分が救えなかった人達への償いでもあるのだ。

 

大爆発した直後、無傷でその場に立っているエメと、ボロボロになったフリーザの姿が見えるようになった。

 

「く、くそぉ……!!」

 

フリーザはまだ生きていたが、もう虚勢を張れるほどの体力と余裕は残っていないようだ。それほどに、今のエメは強かった。

 

フリーザは何か策はないかと頭をフル回転させる。取り敢えず距離を取らないことには何も始まらないのだが、エメの鋭い眼光はフリーザから目を離さない。フリーザの一挙一動を絶対に見逃さないという強い意志を感じる。

 

余計なことをしようものならすぐ殺すと。そう言っているようにも見えた。

 

あり得ないことに、最強であるはずの自分の命が、突然変異でもなければ、戦闘民族ですらないただの地球人に握られている。

 

 

 

 

「ふ、フリーザ様が……!!」

 

「ば、馬鹿な……!たかが地球人如きに負けるなど……!!」

 

フリーザの側近、ザーボンとドドリアは驚愕する。先程まで圧倒していたはずが、今は逆に圧倒されている。しかもエメの周りから攻撃しようとしている様子を見ると、余裕もないように感じる。

 

「こ、このままではフリーザ様が敗北してしまう……。殺されてしまうのではないか……?」

 

「どうするって言うんだ……。今更俺らに何かできるとは到底思えないぞ?」

 

「……ならば、こうするしかない」

 

ザーボンがドドリアに提案する。エメは恐らくだが仲間意識が強い。仲間がピンチになれば庇う。それも、弱い者ほどその傾向は強くなるだろうと。

 

「つまり、人質を取って無力化しようってことか?お前……」

 

「分かっている。この行動は、我々がフリーザ様の強さを信用していないことと同義だ。最悪フリーザ様に殺されてしまうかもしれない……。だが、このままフリーザ様が負けるのを待っても、俺達はサイヤ人達に殺される。ならば、フリーザ様に殺された方がよっぽどマシだろう……?」

 

長年側近を勤めてきたドドリアとしても、ザーボンのこの言葉は説得力がある。地球人やサイヤ人なんかに殺されるよりは、尊敬するフリーザに殺された方がよっぽどいい。

 

「……そいつもそうだな」

 

決心がついたので、早速行動を移すことにした。既に意識がないナッパ、ラディッツ、辛うじて意識はあるが、ダメージで動けないベジータは、2人が怪しげな行動をしても止める力はない。

 

というか、ベジータはエメの覚醒に驚愕していた。一応理性はあるものの、怒りに任せて強敵を圧倒している姿、どんな天才でも超えられない壁を簡単に超えてしまった存在を見て、ある可能性を見出した。

 

「……まさか、この俺やカカロットではなく、やつが先に超サイヤ人になるとは…………」

 

エメの話では、一応はサイヤ人の血が混じっていることは聞いている。正直半信半疑ではあるし、仮に血を引いていたとしても、実質地球人のようなやつが先に伝説の存在、もしくはそれに近いものに到達したことが、気に食わなかった。

 

そして、側近2人が一番後ろにいたミヤコに近づいて……。

 

「おっと、何を企んでいやがる?」

 

「……!!?」

 

「か、カカロット……!!」

 

だが、カカロットに先回りをされた。いつの間にか敵が真後ろにいたことにミヤコは驚くが、そんな彼女に構うことなくカカロットは続ける。

 

「フリーザと小僧の戦いに水を差そうってか?させねえよ」

 

「ま、待て…!俺達はただ……!!」

 

 

 

「ぎゃっ……!!」

 

「がっ……!!」

 

「……!!?」

 

突如、何か悲鳴のようなものが聞こえたため、フリーザはそちらに視線をやる。すると、何故か首から下の肉体が存在しないドドリアとザーボンの姿があった。

 

「な、何故このタイミングで……?」

 

今意識があるのは、エメを除けばカカロットだけ。ただ勢力を減らしたかっただけなのか、無謀にもカカロットに挑んだのか。詳しい経緯は分からないが、側近2人も殺されてしまった。

 

「お前の手下は本当に忠実だったようだな。恐らく、アイさん達を人質にして、少しでもお前に貢献したかったんだろう」

 

つまり、不審な動きをしたからカカロットに始末された……。ということだろう。

 

それに、ザーボンやドドリアは、その行動がフリーザのプライドを傷付けることは分かっていたはずだ。その上でそんな行動を取ろうとしたということは、フリーザの敗北を確信、もしくは予感したのだろう。

 

それほどまでに、エメとフリーザの差は圧倒的だった。

 

「く、くそぉおおおおッッ!!!!」

 

その差を痛感しながら、自分を超える存在を許すことはできない。フリーザは怒りに任せてエネルギー弾を放つが、当然のように効き目がない。

 

「お前は傷つけ過ぎた。罪のない人達を殺し過ぎた。例えお前が泣いて土下座したとしても、オレはお前を許すことはできない」

 

「くっ……!」

 

本来なら永遠にフリーザに苦しみを味わわせてやりたいところだが、下手に追い詰めて厄介なことをされてからでは遅い。もう既にエメはフリーザを殺す準備に入っていた。

 

それはフリーザも理解していた。だがそれにしては妙に表情が明るい。

 

「……貴様が突然変異であろうと、地球人であることには変わりない」

 

「……何が言いたい?」

 

「こういうことだッ!!」

 

フリーザは速攻でデスボールを作り、それを地面……否、地球に向けて放った。

 

フリーザは宇宙空間でも生きることができる生命体。星の酸素を必要とする民族を相手にするなら、惑星を破壊してしまえばこっちのものだ。

 

惑星の爆発で自分もダメージを受けてしまう可能性はあるが、エメの攻撃を受け続けるよりは遥かにマシだと判断した。そこからの行動は早かった。

 

バンッ!!!!

 

「…………はっ?」

 

しかし、そのデスボールもエメの足によって弾かれてしまった。

 

「な、なんだと……!?」

 

威力は必要最低限にして、スピード重視で不意打ち気味に放ったはずだ。この行動が読まれていない限りは、対応することなど不可能なはず……。

 

だが、フリーザは焦りで失念していた。目の前の地球人は、奇妙なほどに自分を知っていることを。あれだけ自分の秘密を知っているなら、先程の行動を予知されていても不思議ではない。

 

「くっ……くそぉ…!!フルパワーになりさえすれば…!!貴様なんか…!!」

 

「……だったら出してみろよ。お前の本気を」

 

「…………なに?」

 

まさかの猶予。自分を殺害することを最優先で行動するような奴が、こんな提案をしてくるとは思いもしなかった。

 

「……どういう風の吹き回しだ?」

 

「ただの気分だ。それ以外の理由はない」

 

「……そうかい」

 

自分のことを気持ち悪いくらい知っているやつが、自分にフルパワーを出せと言っている。それはつまり、『フルパワーの貴様など恐るるに足らん』と言われているのと同義。少なくとも、フリーザはそう解釈した。

 

「俺に猶予をやったことを後悔するなよ?ベジータみたいにな……」

 

エメは返事をしないが、フリーザにとっては逆転の絶好のチャンスが到来した。これで安心して力を解放することができる。いくら時間をかけても、エメが攻撃してくることはない。

 

「かぁああああ……!!!!」

 

フリーザの肉体にある筋肉が、徐々に隆起する。確実に筋肉が肥大化している。

 

その様子をエメは後ろで手を組んで眺めている。瞳の中にある()()()()()()が、自分を照らしている。

 

次はお前の番だ。そう言ってスポットライトを当てているようにも思えた。

 

「……?」

 

しかし、エメが動きを見せた。笑顔のまま、ゆっくりと右腕を前に出した。

 

先程までは、後ろに手を組んでいたため、フリーザからは見えなかったが。

 

指先にエネルギーが集中していた。あまりの高エネルギーを含んでいるためか、既に指先付近にはプラズマが発生している。

 

「魔貫光…………」

 

その指先がフリーザに向けられた。エメが何かを発すると、そのエネルギーは徐々に光が強くなり、プラズマの発生頻度も高くなる。

 

何かをしようとしている。今まで放たれたことのないような大技を放とうとしている。それを理解したフリーザは困惑する。エメは自分がフルパワーになるのを待っていたのではないか?楽しみとでも言わんばかりの笑顔だったではないか。

 

「ま、待てッ!!」

 

フリーザは力の解放を中断することはできなかった。脳が判断する前に、口から声が出た。エメに制止を求める声が。脳が逃げろと命令した時には、もう既に手遅れだった。

 

殺法ッ!!!!!!!

 

「………!!!!!!」

 

指先から莫大なエネルギーが放たれた。しかし自分は意識がある。痛みも感じない。どうやら隙を作って自分を殺すつもりだったらしいが、失敗に終わったようだ。

 

恐らく、奴が奥義の準備をしている間に、自分の方が強くなってしまったのだろう。まだフルパワーには達していないのにこれなら、もう怖いものなどない。

 

「ふっ!ふははははっ!!!!見掛け倒しの技だったか?それとも、俺の方が強くなってしまったかな?残念だったな!!貴様は自分の力を過信したあまり……に?」

 

意気揚々とエメを煽っていたはずだった。急に自分の視界がふらつき、宙に浮くこともままならなかった。

 

重力に従って落下した。その際に、液体が何かにぶつかるような音がする。どうも体の感覚がなくなっているように感じる。試しに自分の体を触ってみる。

 

しかし、身体に触ることができない。手は無慈悲にも肉体があるはずの場所を通り過ぎた。

 

「はっ……?」

 

おかしい。何かがおかしい。不思議に思ったフリーザは、自分の身体を見ようとした。

 

な、なん……だと……?

 

少し離れた場所に、自分の両足と思われる物体があることを確認した。

 

ば、馬鹿な……。まさか……

 

今度こそ、自分の身体を見る。

 

自分の下半身が……。自分の胸から下の肉体が、綺麗さっぱりなくなっていた。そこから大量の血が滝のように流れ出ていた。

 

痛みが感じなかったのは、こういうことだ。度が過ぎた痛み。死を回避できないほどの肉体の損傷。もう助かることはないから、脳が痛覚を遮断してしまったのだろう。

 

話が……違うぞ……!

 

フリーザは、今出せる精一杯の声量でエメに言う。そこに怒りを込めるが、声が出ないため全く威厳がない。

 

「お前は、俺のフルパワーを待っていたんじゃないのか……?」

 

「……何か勘違いしていないか?」

 

エメの瞳の中にあった白い星が、一瞬にして元の金色に戻った。

 

その金色と緑色(エメラルド)緑色が混じった鋭い眼光で、弱ったフリーザを射抜きながら、こう告げた。

 

「本気を出してみろとは言ったが、待ってやるとは一言も言っていない。お前が勝手に勘違いしただけだ」

 

フリーザは騙されてしまった。冷静に考えれば、エメがそんな猶予など与えるはずがないことは分かるはず。しかし、エメのあの振る舞い……。戦いを楽しむような素振りに騙されてしまった。

 

有馬によって磨かれつつあった演技の才能が、フリーザにとっては最悪の場面でいかんなく発揮されたのだ。エメの嘘が本当だと錯覚させられる光に照らされ、エメの狙いが見えなくなり、

結果としてフリーザ自身が大きな隙を作ることとなった。

 

そして、直前までバレないように魔貫光殺砲の準備をして、先程放ったというわけだ。

 

このままでは死ぬ。もう帝王のプライドなどどうでも良くなった。

 

「頼む……。助けてくれ……」

 

「…………」

 

「助けて、くれぇ……!!」

 

フリーザは必死に助けを求める。先程まで殺し合いをしていた敵相手だろうと関係ない。とにかく自分は生き延びたい。その一心で、藁にも縋る思いで助けを求めた。

 

「……分かった。助けてやる」

 

「ほ、ほんとう……か?」

 

「ああ。どんなに強いやつだろうと、苦しいものは嫌だからな」

 

そう言うと、エメは表情こそ変えないが、フリーザに手を差し伸べる。その手をフリーザは掴もうとする……。

 

 

 

 

 

 

 

「だから、今すぐ楽にしてやる……」

 

そして、エメの手から蒼白の光が放たれた。フリーザは悲鳴をあげる暇も、走馬灯を見る間も無く、肉体は散り一つ残さずに消滅した。

 

「……念の為こっちも」

 

そう呟き、エメは魔閃光を放った。フリーザの両足も消滅した。

 

フリーザには再生能力が存在しないため、足が残っている程度では生き返ることはない。しかし、エメは容赦なかった。フリーザが生きた証を消し去るように、容赦なく切断された足も消し飛ばした。

 

「……お前がやるべきことはたった一つ。地獄で己の罪と向き合うことだ」

 

フリーザの気が完全に消失した。犠牲は多く出てしまったが、フリーザを倒すことはできた。幸い、家族も死んでいない。家族も、世界も守ることができた。

 

「……もし、罪を償うことができたら、来世はあるかもしれないな……」

 

フリーザに救いがあるとすれば、罪を償った後に魂を浄化されて、次の人生を歩むこと。エメはこれくらいしか思いつかなかった。

 

とはいえ、フリーザはあまりにも大勢の民族を滅ぼしてきた。恐らく、罪を償えるとしても、気が遠くなるほどの年月はかかることだろう。だが、同情などしてやらない。

 

「……え、エメ?終わったの?」

 

「……うん。全部終わったよ」

 

「本当に……?もう敵はいない?エメは戦わなくていいの?」

 

「うん。もう戦う必要はないよ。だって敵がいないんだもん」

 

アイの問いに、一つ一つ丁寧に答えていく。しかし、それと同時に力が抜けていく。先程までは超サイヤ人のように力が漲っていたが、膨らんだ風船が萎むように、力が抜け落ちていく。

 

「あれ……?」

 

「エメ……?エメ……!!」

 

変身が解除されると、エメの意識も途絶えてしまった。

 




 未来悟飯がフリーザに気を分け与えるはずもないので、さっさと始末して試合終了。肉片も残ってないので、メカフリーザ化することもなくなりましたっと……。味方ながら恐ろしい……。カカロットが超サイヤ人に覚醒した方が熱い展開にはなったのでしょうが、このタイミングで激しい怒りを感じる場面がそうそうないし、未来悟飯の容赦のなさを表現したかったので、タイマン勝負にしました。

 ちなみに最初期プロットだと、アイが犠牲になってエメが超サイヤ人に覚醒。半ば暴走気味でフリーザを倒すって展開を考えていますたが、普通に原作DBをそのままなぞるだけになるので変更しました。こっちの方が地球を守る戦士としての覚醒に相応しいのかなと。

 連続投稿って思ったより疲れますね。なんで前はできたんだろう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。