推しの飯/絶望の未来から転生した戦士 作:Miurand
エメが修行していたところ、カカロットが地球に飛来。激闘の末、なんとかカカロットを倒すことに成功し、カカロットからフリーザを倒したいという話を聞く。
未来悟飯としての記憶を持つエメとしても、フリーザは倒した方が色々と都合がいいと考え、利害の一致で手を組むことに。
カカロットとの修行の過程で、星野家とカカロットが交友関係を持つようになったり、自身の正体や修行を隠す為に、演技指導を目的として有馬かなに弟子入りしたりもした。
その後、ベジータとナッパの襲来もあったが、これを見事に対処し、説得の末、一時的に仲間にした。
サイヤ人達と修行をして力を身につけ、いざフリーザ戦に突入。大ダメージを負ったり、死にかけたりしながらも、エメはなんとか覚醒し、フリーザを撃破することに成功した。
その後、ベジータとナッパはすぐに地球を去ってしまったが、カカロットとラディッツには、地球を修復するためにナメック星まで宇宙船を操縦してもらい、ドラゴンボールで全てが元に戻った。
地球に帰還し、カカロットとラディッツともここでお別れとなった。星野緑に転生した悟飯は、これからは未来悟飯の記憶を持つ星野緑として、普通とは少し違うが、平凡な生活を送ることとなるのであった。
※七〜十七話を未読で詳細が気になる方は、是非ご覧ください。8,9割ドラゴンボールでよろしければ……()
ちなみにナンバリングがリセットされている理由は、エメが
第1話 役者デビュー
ようやく悪の親玉フリーザを倒し、地球に平和が訪れたことによって、普通の子供として平凡な生活を送ることができるようになった。
しかし、ナメック星のドラゴンボールによって、一部の知り合い以外は、カカロットやフリーザとの激闘に関する記憶を消去されているため、この事実を知っている者はごく僅かだ。その僅かの中に、星野一家、斉藤夫妻、有馬かななどがいる。
有馬かなには、自身には前世の記憶があることを打ち明けており、全て信用されたわけではないものの、その時のエメの悔しそうにする表情を見て、その感情だけは信頼されている。
しかしながら、目の前でフリーザ達と戦っておきながら、家族であるアイ達には一切そのことを話しておらず、エメの力のルーツも知らない状態である。
「なあエメ。そういえば、前に弟子を置いて犠牲になったって言ってたよな」
「えっ?うん。確かに言ったけど、それがどうしたの?」
ある日、アクアが唐突に数年前のことを掘り返してきた。その時は前世は軍人か何かだったのだろうと推測し、特にエメは否定もしなかったので、それで合っているという認識だったが。
「もしかして、前世もあんな化け物達と戦っていたのか?」
「……まあね」
「そうか……。じゃあ、その力も前世から引き継いだものだったんだな」
アクアには既に一部とはいえ、前世のことを話していたため、理解は早かった。しかし、アイとルビーにもこのことを話すべきなのかどうか、エメは悩んでいた。
「ねえ、アクア。オレの前世のこと、アイさんやルビーに話すべきだと思う?」
「……ルビーも俺らと同じで前世の記憶があるけど……」
アイにはそういったものはないだろう。アクアとルビーのことならギリギリ理解できるだろうが、エメの場合は別世界から転生したという特殊な中でも特殊な事情を持っているため、アイの理解が追いつくかどうか……。
「……まあ、無理して話す必要はないんじゃないか?」
アクアがこう言うのには理由がある。フリーザとの戦いが終わって既に数日が経過しているが、アイはエメに何も聞いてこないのだ。エメに遠慮しているのかもしれないし、エメの戦いたくないという本音を聞いたから、戦いの時の記憶を掘り返したくないのかもしれない。
「アイに聞かれたら話せばいいんじゃないか?無理に自分から話すこともないだろう」
「……そうだね。そうするよ」
家族として過ごす以上は、隠し事をせずに話すべきなのではないかと考えてしまう。アイには隠し事をしたせいで、余計な心配をかけてしまった。これ以上心労を増やしてほしくない。
「あっ……」
部屋を出ると、そこには聞き耳を立てていたアイが座り込んでいた。アイもエメの存在に気づいたようだ。
「お、おかあさ……」
エメが呼びかけようとした時、アイが優しく抱きしめてきた。突然の行動に理解が追いつかずに固まってしまうエメだが、アイが優しく語りかける。
「エメ。家族だからって、全部話さなきゃいけないわけじゃないよ?私だって3人に秘密にしていることあるから……。無理しなくても大丈夫。例え、エメが誰かの生まれ変わりでも、前世の記憶があるとしても、私の息子であることには変わりないよ」
エメは、前世の記憶が露呈することによって、アイに拒絶されることを恐れていたのかもしれない。前世のことを話せば、家族として過ごせなくなってしまうのではないか。そんなことはしない人だと分かっていても、どうしても不安になるものがあった。
しかし、アイがそれを否定してくれた。真正面からエメの懸念を壊してくれた。だから、打ち明ける決心がついた。
決心がついたエメは、アクアとルビーも呼び、家族全員に自分の前世のことについて話すことにした。
まず、自分の出生。サイヤ人と地球人のハーフとして生まれたこと。幼少期から戦っていたこと。仲間と死にかけながらも、サイヤ人やフリーザと戦ったこと。フリーザとの戦いが終えた後、人造人間が現れ、それからは孤独に戦い続けていたこと。
そして、最初で最後の弟子に全てを託し、この世を去ったこと。
できるだけ理解してもらえるように、簡素に、分かりやすく説明したつもりだが、一般人の常識からは外れたものばかりだったため、全て信じてもらえるとは思っていない。だが、これはエメなりのケジメだった。
いつまで経ってもこのことを隠して生きていては、本当の意味で星野アイの息子として、星野アクアマリンと星野ルビーの弟として生きていける気がしなかったから。
「えっ…?えっ!?」
全てを話し終えた時、ルビーは号泣していた。
「ごめん。ごめんねエメ……。丈夫な体が羨ましいって少しでも思っちゃって……」
「えっ……?いや、えぇ……?」
何に対して謝罪されているのか分からず困惑してしまった。恐らくルビーなりの複雑な事情があるのだろうと、無理矢理自分を納得させることで強引に解決した。
「…………そっか。そんな人生を歩んでたんだ……」
アイは泣くわけでもなく、しかし変に励ますわけでもなく。ただ笑顔で、エメを抱えながらこう言った。
「じゃあ、今度はその分幸せに過ごさないとね!向こうの、悟飯君のお母さんのためにも!」
「……うん」
「にしても、カカロットさんがお前の前世の父親だったとは驚きだったぞ…。だから他のサイヤ人の人とは違う接し方をしていたのか……」
「えっ?僕そんなことしてた?」
「ああ、カカロットさんだけなんというか……。優遇?優しく?していたぞ?」
どうやらエメは自覚がなかったらしい。アクアに言われて自分の行動を思い返し、初めて気がついたらようだった。
「へぇ?じゃあ私がカカロットさんと結婚してあげようか?そうすれば、前世のお父さんが今度もお父さんになるもんね!」
「ママ!?何言ってるの!?」
ルビーとしても、カカロット相手なら別にいいと思っているものの、唐突な発言には流石に驚かざるを得なかった。娘ルビーとしては歓迎するが、ファンとしてはやはり独身を貫いてほしいという我儘があるのかもしれない。
「……お母さん。大丈夫だよ。孫悟空とカカロットは別人だから。そこはお母さんの意思で決めてほしい。決して僕の為じゃなくて、お母さん自身のために……」
「うん。分かった。やっぱりいい子だね〜エメは!」
頭を撫でられたのも、随分久しぶりに感じる。フリーザとの激闘は、実際には1日もかかっていないが、それだけ長く感じていたようだ。
「あれ?じゃあ、アクアとルビーも異様に賢いのって、そういうこと?」
アイはエメの話に関しては納得したが、今度は疑問の矛先がアクアとルビーに向かった。自分の子供が賢いのはエメだけではなかった。更に、エメが授乳を嫌がったようにアクアも嫌がっていたこと。アクアだけ自分のことを『アイ』と呼ぶこと。アクアとルビーが赤ん坊の頃から自分のファンであること。これらが前世の記憶があることに起因しているとするなら、すんなり納得できてしまう。
エメはまさか2人も巻き込んでしまうとは思わず、アイに抱えられながら思わずオロオロしてしまう。その狼狽えぶりがもう答えを言っているようなもので、アイもそうなのかと納得した。
アクアとルビーにも前世の記憶があることを知っても、嫌悪の感情のカケラも見せることはない。それも演技で隠しているわけでもなく。嘘という鎧を子供達の前では剥いでいた。
「エメにはさっきも言ったけどね、アクアとルビーも、前世の記憶があったって私の子供だよ!前世の記憶があるから嫌いになるなんて、そんなことあるわけないよ!!」
だって、とアイは続けながら、ルビーとアクアも引き寄せて、3人丸ごと抱きしめる。
「3人ともこんなに可愛いんだもん。嫌いになれるわけない!」
「アイ……」
「ママ……」
「あっ、でも流石にアイ呼びはちょっとなぁ……。その呼び方だと、どこか遠慮を感じちゃうというか……」
主にアクアに対する指摘だった。別にアイを母として認めていないわけではないのだが、どうしてもママとかお母さんと呼ぶのに抵抗があった。
「確かに。アクアだけママのことアイって呼んでる!」
「し、仕方ないだろ。外に出た時、万が一アイのことを母さんなんて呼んだら大変じゃないか」
「それは確かにそうだけど……」
これに関してはエメも同意する。万が一アイを母呼びしてしまえば、アイドル生命が終了し、苺プロも倒産一直線になるかもしれない。アクアの言い分は合理的にも思える。
しかし、それは外での話。家の中くらいは、自分のことを母と呼んでくれてもいいのではないかと思ってしまう。
「あれ〜?もしかしてお兄ちゃん恥ずかしいの?」
「別にそういうわけじゃ……」
「なら言えるでしょ!恥ずかしがらずにほら!」
アイに懇願され、ルビーに背中を押されては、もう引くに引けない。アクアは白旗をあげて、なんとか羞恥心と戦うことにした。
「あ、……か、母さん……。これでいいか?」
「〜〜〜っ!!アクアきゃわ〜〜っ!!!!」
「うわっ!!!?」
恥ずかしがりながら「母さん」と発言したアクアが余程可愛く見えたようで、アイはついアクアを抱きしめてしまった。
「あ〜!やっぱりウチの子可愛い!!賢いのに可愛いとか反則!!やっぱり産んで良かった!!」
こうして、3人の子供が前世の記憶を持っていることを知ったアイだが、特に気にしていない様子だ。寧ろウチの子達が特別で誇らしいとでも言いたげな嬉しそうな表情をしている。
正直、3人とも心のどこかで拒絶されることを恐れていた。アイは普通の子供を望んでいるのではないかと思っていた。だからこそ、3人とも打ち明けるのに躊躇していたのだ。
だが、打ち明けたことによって、この家族の絆はより深いものになったことだろう。特に、星野緑に転生した孫悟飯は、これからは孫悟飯の記憶を持つ星野緑として過ごすことができることだろう。
……とはいえ、アクアとルビーの前世の詳細はまだ誰にも教えていない。アイは前世の記憶があるという事実だけを知って満足してしまったので、今更掘り返すわけにもいかなくなってしまったというのもある。というか、エメが前世のことを詳細に話したのは、エメが持つ力のルーツを説明するためでもある。
そこを考慮すれば、アクアとルビーがそれぞれの前世の詳細を話さないことは別に何もおかしくないのだ。
「(せっかくいい雰囲気なのに、ここで俺は雨宮吾郎ですって言ったら絶対暗い雰囲気になるよな…‥。アイの出産当日に死んだとか、少なくとも今言える雰囲気じゃない……)」
「(前世はほとんど病院で過ごしていたとか、今更言える雰囲気じゃないよね……?まあ、ママは満足しているみたいだし、そこまで言わなくても大丈夫かな……?)」
この日を機に、3人はアイの子供としての自覚が強くなるのだが、それはまた別のお話。
その日の昼。今日は久々にエメの演技修行の日になっていた。有馬は徐々に売れる子役になってきたため、なかなか時間を取れなかったのだ。
「ねえ、あんた何かしたでしょ?」
久々に会って開口一番がこれである。エメにとっては急で一体何のことだか分からないのだが、その様子を察した有馬が説明する。
超噛み砕けば、何故かみんな先日の戦争のことを忘れているとのこと。母に話しても、変な夢でも見たのではないかと疑われ、クラスメイトや仕事先の人にそれとなく聞いてみても、今度撮る映画か何かの台本?と返されてしまったのだ。
あんな長くかつ鮮明な夢などあるわけがない。そう確信していた有馬は、エメに舞空術を使わせることで、自分の認識が合っていることを再確認すると、改めて何かしたかと問う。
どうやら、有馬かなも記憶を残す対象に選ばれたらしい。それを理解したエメは、ナメック星でしたことを懇切丁寧に説明した。
「……なるほど。確かに記憶を消した方が色々と都合がいいでしょうね。私みたいに事情を知らないまま記憶を残されたらたまったものじゃないけど」
「本当にごめんなさい…………」
「まあいいわ。これで私は電波じゃないことが証明されたわけだし。あれ?もう戦いは終わったんでしょ?なんでまだウチに来てるのよ?」
「……最初は、ただ戦闘で使えるかもっていうのと、外出する言い訳に使っていたつもりだったけど、なんというか、やっているうちに楽しくなっちゃったんだよね」
元々、演技や嘘は苦手だったものの、別に嫌いではなかったし、何より有馬といると、他の同年代の子どもよりも気を使わずに済むので、気が楽になるとのこと。それを有馬に話してみれば……。
「……あんた、将来女難に遭いそうね」
「えっ……?なんで……?」
しかも無自覚なので、対策のしようがない。天然タラシかつ鈍感になる可能性があると考えると、今後エメのことを好きになるであろう女子に早くも同情してしまった。
「まあ、私としても、あんたを育てて星野アクアを見返したいわけだし、続ける気があるなら断る理由もないわ」
こんな感じで、演技の修行も続行することになった。フリーザと戦った時のように、嘘を真実だと錯覚させる程の演技はできなかったものの、やはり天才子役に指導を受けていたことが大きかったのか、演技力は以前よりも遥かに上昇していた。
本人は未だに苦手意識を持っているようだが、血は争えないのだろう。あの星野アクアの弟なら、適切な指導を受ければ才能が開花するのは当然だと有馬は考えた。
「……あんた。ちょっと変わったわね」
「えっ……?何が……?」
「なんというか、憑き物が取れたような感じ……とでも言えばいいのかしら?前は使命感で練習している感じだったけど、今は楽しそうにしている」
「そ、そうかな……?」
実際、フリーザ討伐前のエメは、未来悟飯としての未練が強く残っていたこともあり、少しでも演技力を向上させ、敵を欺くために利用しようと考えていたので、エメにとっては普通の修行と変わらなかった。
しかし、今は修行としてではなく、自分が好きでやっているようなもの。好きでもない戦いのために練習するのとは訳が違うのは当然のことだろう。
「あんたみたいに演技を楽しめる人は伸びるわよ。将来は大物になったりして」
「いや〜それはどうだろう。そもそも、僕は学者を目指しているから、芸能界にいるとしても、多分高校生になった時点で辞めちゃうだろうし……」
エメがそう告白した途端、有馬の表情が一変。弟子が強くなって誇らしくなっている師匠の顔から、年相応に驚愕する表情に。
「はっ!?あんた学者なんて目指してたの!!?」
「うん。昔からの夢で、ずっと勉強してきたんだ。今、ようやく夢を追える環境が整ったところだから、これから本腰を入れて勉強するのもありかなって」
「いやあんたまだ小学生にもなってないのよ!?気が早すぎない!!?」
「そうかな……?みんなこんなものだと思うけど……」
「んなわけあるかッ!!!!」
有馬に夢の話をして、別に反対されたわけではないが、それはそれは驚かれた。演技の才能だけでなく、勉学にも才能があり、性格にも問題ないとなれば、万能型の天才になることは間違いない。天才子役の枠では収まらない大物になるかもしれないと、今更ながら有馬はとんでもない人材を弟子にしてしまったものだと、少々誇らしくも恐怖を感じていた。
そもそも、それ以前に惑星が平気で壊れる死闘を勝ち抜いた時点で、英雄と持て囃されるべき存在なのだが、それは今更だろう。
アイが仕事でいない日は、以前のようにミヤコが代わりに子育てをするが、3人とも前世の記憶があるということもあり、普通の子供に比べて手間がかからなかった。
しかし、やはりエメに対しては過保護になっているような気がする。もう怪我する要素などないのだが、あの日の戦いは今でも若干トラウマとなっているようだ。しばらくは何も手伝いすらせせてもらえなかったようだ。
さらに、今まではアクアの妹としての側面が強かったルビーも、最近になってお姉ちゃん面をするようになったとか。いや、ルビーが姉であることは間違いはないし、異論もない。しかし、肉体年齢的に同い年の子にここまで心配されるとはどういうことかと、少し抗議したくなってしまったが、今までの自分の行動を思い返し、それをやめた。
さらに、エメ達が小学生に上がる頃には、アイはアイドルを引退した。
そもそもアイドルの平均年齢は非常に低く、20歳になった時点で高齢扱いされるような業界だ。子供達が小学生になる前に引退というのは、ある意味丁度良かったのかもしれない。
無論、卒業ライブも行われた。そこでアクアとルビーは当然のようにサイリウムを振り、母を全力で推した。エメも2人のようにファン(奴隷)の領域に至ることこそなかったものの、何故かオタ芸を覚えてしまった始末。それをライブ中にやったら、後でアイに甘やかされまくったらしい。
B小町の卒業ライブは、ステージ中がそれぞれのメンバーカラーの色に染まりながら、幕を閉じた。
しかし、アイはアイドルをやめるだけであって、これからはマルチタレントとして活動するようだ。アイドル時代からその傾向はあったので、最早時間の問題だっただろう。
幼稚園に通い、遊んだり勉強したりして、空いてる時間で修行、有馬の演技指導等を毎日熟しているうちに、エメ達は小学生になった。
「やっぱりウチの子達はいつまで経っても可愛いね!」
アイドルを引退して、マルチタレントに転身したアイは、多忙なことに変わりないものの、アイドル時代よりはゆとりをもって活動できるようになった。そのため、空いた枠は子供達の為に使う。入学式に仕事は絶対に入れないと壱護に何度も念押ししていたらしい。
「アイ。お前の年齢を考えればまだ炎上する可能性はあるんだからな。いくらアイドルを辞めたからって、堂々とアイツらの母親だって公言するんじゃねえぞ?」
「ぶー。分かってるよそれくらい」
「ほんとに分かってんのか…?」
壱護の指摘はごもっともだが、やはりアイとしては、誰の目線も気にすることなく、3人の母親として堂々としていたいらしい。アイは少し歳の離れたお姉ちゃんとして入学式に参加。
「あっ!あそこにアクアがいるよ!あっちにはルビー!あ、あっちにはエメがいる!!」
「少しは静かにしろこの元クソアイドル……!!」
はしゃいでいるアイを見て、気恥ずかしくなってしまうアクアとルビーに、思わず苦笑いをしてしまうエメ。
「アクア、ルビー、エメ。入学おめでとう!!これからもずっと元気でいてね!」
「うん。母さんが生きている限りは、ずっと元気でいるよ」
「ママもずっと元気でいてね!」
「お母さんも、無理だけはしないでね」
「それ、エメだけには言われたくないな〜」
「ええっ!?僕もうそんな無茶してないよっ!!?」
「私知ってるんだからね?今でもこっそり修行していること」
「……えっ?」
「ママはなんでもお見通しだよ☆」
「おいどういうことだよエメ」
「お姉ちゃんに説明、してくれるよね?」
「あっ、そうだ!今日は有馬さんと約束があるんだった!僕急がなきゃ!」
「いいよ。でも家に帰ったら、ゆっくりお話ししようね?エメ?」
「そ、そんな〜…………」
「あはは!3人とも仲良いね!」
そんな感じで始まった小学校生活。特に人造人間やフリーザの親戚が現れるといったことはなく、エメ達は平凡な生活を送っていた。
平凡ではあるが、普通とは少し違う生活を送っている。芸能人の子供として生まれたためか、アクアは子役として少しずつ活躍するようになっていた。状況を把握し、求められている演技をすることができ、大人に気遣いもできるアクアは現場では重宝された。
ルビーはまだ芸能界での活躍はないものの、将来はアイドルになりたいと言っており、アイもその意見を尊重している。来るべき時が来れば、ルビーも芸能界に足を踏み入れるだろう。
そして、エメの演技力は、もう世に出しても問題ないと有馬に言わせるほどに向上していた。しかし、エメは今のところは芸能界に入ることは考えておらず、
「星野アクア……。どんどん売れるようになってきてるじゃない。やっぱりあの子は天才だったのね」
「アクアもいい師匠に恵まれているからね。ほら覚えてる?有馬さんとアクアが共演した時の監督」
「覚えてるに決まってるでしょ。なるほどね、あの人に仕込まれているってわけね」
有馬は子役として黄金期を迎えていた。クラスに入れば、昨日もテレビに出ていたね。あの映画にも出ていたよねと、クラスメイトからの賞賛の声は絶えることがない。
母も、活躍している自分を褒めてくれる。弟子が徐々に才能を開花させている。何もかもが上手くいっていたが、アクアが子役として邁進していることを知って、少しばかり焦っているようだった。
「あんたもそろそろ何かに出演してみたら?私が紹介してあげてもいいけど?」
「うーん……。僕はいいかな。流石にカメラの前に立つと緊張しちゃいそうで……」
「なんのために練習してきたのよあんた……」
いつまで経っても子役としてデビューしないことに、有馬は少々不満があった。そのため、少々強引な方法を取ることにした。
「そういえば、私が提案して見事にドラマ化することが決定した作品があるんだけど、この台本読んでみて」
「えっ?」
突然台本を渡されて若干混乱するも、言われた通りに目を通す。
すると、そのドラマの内容は、どこか既視感のあるものだった。
「……ねぇ。これって……」
「そう。もうみんな覚えてないけど、あんたが必死に戦っていたあの大猿が出る怪獣映画みたいなものよ。みんなの記憶が消し飛ばされていることを利用させてもらったわ」
そのドラマのジャンルは特撮でもあり、アクションでもある。有馬が提案したストーリーは、どこかファンタジー感があり、しかし妙にリアルだという評価を受けて、こうしてドラマ化するに至った。
「主人公は、ある日突然力を得てしまった、使命感の強い小さな男の子。どこかの誰かさんに似たキャラしてるわよね〜」
「……これに出ろと?」
「あんたは嘘をつくことが苦手だけど、感情演技は得意なのよ。だから、自分の過去に重なる部分が多いこのキャラを演じる分には、あんたの得意な感情演技を活かすことができると思うのよ。今は主役の子役を決めかねているらしいわ。どう?やってみる気はない?」
そもそも、エメに似たキャラを主人公として設定している以上、これ以上の適任はいないだろう。というか、有馬はとにかくエメを役者デビューさせたがっているようにも思える。天才と持て囃される子役も認める才能を披露することなく、そのまま学者というのも勿体ないと感じたのだろう。
恐らく、キャラ設定もエメが感情演技をしやすいようにした可能性がある。そのことを考慮すれば、このドラマは初めからエメが出演すること前提で話が進められていたのではないだろうか?
「………分かった。せっかくだしやってみるよ。何より、有馬さんがそう言うなら、多分できると思うし。……けど、前にコネは良くないって言ってなかったっけ……?」
「あー、あれね。まあ、あの時の私は芸能界を知らないお子様だったからね。実力だけで勝ち抜けるのは、余程運がいいか、飛び抜けた才能がある人よ」
「そ、そうなのか……」
数年前に、五反田監督が言っていたことを思い出し、芸能界はそう単純な世界ではないことを思い出した。今まで悟飯として戦闘をしていた時は、そこに媚やコネなどは関係なく、実力だけで勝負を決していた。
しかし、芸能界はお金が絡む。スポンサーの意向、監督の趣向、役者など、1人では到底成立し得ないもの。如何に他の人と協力できるのかが大事な業界になってくる。
「まっ、あんたなら大丈夫でしょ。素で気に入られそうな性格してるし、しっかりしてるから」
こうして、エメのドラマ出演が仮決定された。この作品はある程度の演技力を求められるため、コネだけでいきなり役を勝ち取れるということはないが、有馬が認めるほどの実力があるなら、オーディションなどあってないようなものだろう。
推しの子メインパートにはなりましたが、高校生になるのはほんの少し先のお話。ただ、あと1話くらいやったら、後は一気に高校生になる直前まで飛ぶかも。要所要所で過去を回想する形でもいいのかなとか考えていたり。とりあえずエメを芸能界デビューさせる話くらいは書きたいなと。