推しの飯/絶望の未来から転生した戦士   作:Miurand

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 最近は更新が遅めで申し訳ない……。感想や評価大変励みになります。



第3話 当たり前になった日常

エメが初出演したドラマが終わってから更に数年が経ち、エメは立派な中学生3年生になっていた。一方で有馬は高校1年生。有馬はまだあどけなさが抜けておらず、幼い印象を受ける。

 

エメもまた、あどけなさこそ残っているものの、アイの遺伝子故か、既に大人の男としての魅力も漂わせていた。とはいえ、エメの性格が性格であるため、容姿はともかく中身はイケメンというよりは可愛い系で収まっている。

 

そんなうら若き男女の2人は、幼少期と変わらず有馬の家で談笑する日々を過ごしていた。以前ほどは演技稽古はしないものの、定期的に指導を受けている。

 

「あーあ。仕事がない私と違って、あんたはまだまだ仕事があって羨ましいわね。一応私が師匠なんだけどね」

 

有馬は子役時代に数々の功績を残したものの、有馬かなは子役というイメージが強かったこと、少し活躍に陰りが見えてきたところで、有馬の母が営業に出張ってきて、無理な要求をしたことなどが起因し、小学校を上がる頃には有馬かなのメディア露出は露骨に減っていた。

 

一方でエメは、ミヤコが無理な営業を持ちかけることもないし、エメは最初から礼儀正しく、気遣いができる子役として認知されていたこと、他の役者には真似できないフィジカル、演技の領域を飛び出している戦士の演技が評判となったことから、活躍領域は広くなかったものの、芸能人としてはそこそこ活躍していた。

 

「有馬さんはまだ役者やってるんでしょ?分からないなぁ。なんで出番が減ったんだろ……」

 

「……私は子役ってイメージが強かったからでしょうね。それに比べて、あんたは子役の域を飛び出している演技が評価を受けていたからね。というか、フィジカルがチートなのよ。フィジカルが」

 

ちなみにだが、有馬の母親が無理な営業を持ちかけたことによって、夫婦仲が悪くなって離婚。更に有馬がある程度大きくなったことから、母親は自身の母親、つまりかなにとっての祖母の面倒を見ると言って、1人で実家に戻ってしまった。

 

小学生にして、有馬は一人暮らしを強制されるような状況になってしまったのだ。

 

そうなった有馬は、当然ながら落ち込んだ。母の前では平静を装っていたが、自分が必要とされていないことを痛感してしまった。そんな中、それを知らずに呑気にいつも通り有馬の家を訪れたエメが現れた。

 

エメが色々慰めてくれたお陰で、有馬は完全とは言えないが持ち直した。

 

「でも、ようやく主役級の仕事をもらえたのよ!!これで子役のイメージから脱却できるわ……!!」

 

「へぇ?ちなみに今回は映画?それともドラマ?」

 

「今日は甘口で、を実写化したドラマね。エメは知ってるの?」

 

「あ〜。確かアクアの部屋にあった漫画だ。あれ読んだけど面白かったな〜」

 

ちなみにアクアには許可をちゃんと取った上で読んでいる。余談だが、ルビーも読んでいるのだが、こちらは無許可だったりする。まあアクアはシスコンなので結局許すのだが。

 

「そうだ。今日も泊まっていきなさいよ。どうせあんたは暇でしょ?」

 

「いや、勉強するつもりなんだけど……」

 

先程、エメも芸能界でそこそこ活躍していると記述したが、最近は受験を理由にして仕事を減らしてもらっている。エメの成績ならばどこでも行けるのだが、彼は真面目で用心深い。例え前世のアドバンテージがあるとしても気は抜かないのだ。

 

「いいじゃないの。どうせ勉強道具は持ってきてるんでしょ?」

 

「それはそうだけど、あまり頻繁に泊まるとルビーとお母さんがねぇ……」

 

「別に仕事の打ち合わせとか、相談してたとか、いくらでも言い訳作れるでしょ?」

 

「うーん……。分かったよ……」

 

エメがここまであっさり折れるのには理由がある。有馬の母が実家に帰ってしまってから、かなは1人で広い一軒家で暮らしているため、簡単に言えば寂しいのだ。家に招くほど親しい関係にあるのはエメくらいで、エメならば自分の事情も理解している。その為、有馬は特に遠慮したり見栄を張ることなくエメに甘えることができるのだ。

 

一方で、エメもまた有馬が寂しがり屋であることを知っており、事情が事情なので無理に突き放すこともできないのだ。彼女の境遇からどうしても甘やかしてしまうのである。また、かなは自分の前世のことや、幼少期に戦士として強敵と戦ってきたことも知っていることから、変に気を使わずに済むのだ。要はお互いに気を使わない気楽な関係というわけである。言ってしまえば、恋人というよりは家族に近い。それこそ姉弟や兄妹という表現が一番的確だろう。

 

そのため、同じ屋根の下で過ごすことはあっても、身体を重ねるようなことはしないし、それをする気もないのがお互いの心情である。まあ、エメに関しては、前世は勉強と戦いしかしていなかったため、恋愛方面にはそもそも疎いのだ。そのため、恋愛系のドラマに出演するのは少々抵抗がある模様。

 

そして、有馬の家に泊まった翌日はそのまま登校するのだが……。

 

「あっ……」

 

「エメ〜?」

 

校門でルビーが仁王立ちをしながらエメを待ち構えていた。エメの姿を確認するなり、ズンズンと歩いてこちらに近づいてくる。

 

「エメ!またロリ先輩の家に泊まったでしょ!!昨日は家族全員でご飯食べようって言ったじゃん!ママとアクアも揃う日だったのに!!」

 

「いや〜、約束を忘れてたわけではないんだけど〜……」

 

「お姉ちゃんはエメをそんなプレイボーイに育てた覚えはありません!!ママも寂しがってたんだからね!」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

こうしてルビーに叱られる光景は定期的に見られていた。エメは容姿が良く中学校でもモテていたのだが、美人かつ過保護の姉がいたこと。ロリ先輩という、恐らくエメの彼女と思われる人物が会話の中で出ていることにより、大半の女子は身を引いていた。

 

ちなみにルビーもアクアによってほぼ同様の状態に陥っている。ルビーはアイの娘であることを誇りに思っており、アイに絶対的な信頼を置いている。にも関わらず、アイ似の自分がモテないことに不満を漏らしていた。

 

全てはシスコンアクアとかいうやつの仕業である。ちなみに彼もモテているが、それとなく対処して今日まで過ごしている。

 

 

 

休み時間になると、ルビーとアクアと合流する。昼食の時間は毎日とはいかないものの、兄弟姉妹でご飯を食べる約束となっている。星野家は家族の時間を大切にする方針のようだ。

 

美男2人と美女1人が共に食事をしている光景は、男女共に目の保養になるとかならないとかで、目黒川中学校の名物になっていた。

 

 

「前から気になっていたんだが、エメは有馬かなとは付き合ってないんだよな?」

 

「……?うん。特にそういう関係ではないよ」

 

「でも頻繁に泊まりに行ってるじゃん!それで付き合ってないとか嘘でしょ」

 

「そう言われても……」

 

「炎上の可能性とか考えろよ?有馬はアイドルじゃないからまだマシかもしれないが、恋愛が禁止されていない女優でも、男の影が見えるだけで炎上することもあるからな」

 

このアクアの発言は実体験から来ているものである。以前共演した女優と食事に行ったのだが、その時に交際だの熱愛発覚だの、ネット上で色々言われプチ炎上したのは記憶に新しいようだ。まあ、相手が共演者だから大事にならずに済んだのだが。

 

「ああ、それに関しては大丈夫だよ。僕と有馬さんは幼少期から共演することが多かったから、幼馴染だからセーフって認識が広がっているみたい」

 

しかし、エメもアクアやアイほどではないにせよ、芸能界に携わってきた人間だ。その辺の配慮は怠っていない。そもそも、アクアはそこそこ知名度があるが、エメの知名度はまだそんなにない。とはいえ、知る人ぞ知る子役からやってる役者という立ち位置である。

 

「そうそう。有馬さんと言えばね、久しぶりに主役を勝ち取れたみたいなんだよ。そのドラマがなんと、あの今日あまなんだよ!」

 

「へーっ!あれ実写化されたんだ!お兄ちゃんの部屋にあったけど面白かったよあれ!」

 

「勝手に読むなよ。というか勝手に部屋に入るなよ」

 

今日あまに有馬が出演するということで、有馬の実力を知る3人はドラマを楽しみにしていた。

 

 

 

数ヶ月が経ち、そして、めでたく第一話がネットの動画配信サービスにて公開されたのだが……。

 

「……あれ?」

 

「………」

 

「これ今日あま?本当に今日あまなの?」

 

ところが、実際に見てみれば唖然。有馬の演技がセーブされていることはなんとなく分かったが、それにしても主に男子生徒役の演技のアラが目立つ。台詞は基本棒読み、原作にいないオリキャラが多数登場。肝心の主役の鳴嶋メルトの演技も、まあフォローが難しい状態だったわけである。

 

ルビーが見ていられなかったのか、途中でノートパソコンを閉じてしまった。

 

「……これは……」

 

「多分、これはモデルの宣伝も兼ねたドラマなんだろうな。無理矢理オリキャラを作って配役を少しでも増やそうとしているのがよく分かる」

 

「……ん?じゃあなんでロリ先輩がこのドラマに出てるの?先輩なら知名度はあるはずだよね?わざわざ宣伝する意味なくない?」

 

「恐らく、ドラマとしての質を保つ為の実力派枠だろうな。だとしても、有馬の演技はこんなものだったか………?いや、他の役者を浮かせないためにあえて抑えているのか……?」

 

まあ、一言で言ってしまえば、原作を侮辱しているようなドラマだった。有馬が努力してなんとか見れるものになっているものの、原作を知っている者は勿論のこと、原作を知らない人でも違和感を拭えない作品となってしまっていた。

 

「ねえ?今からでもアクアかエメが代役やればよくない?そうすれば……」

 

「いや、それは無理だろうな。そもそもこのドラマは駆け出しモデルの宣伝に使っていることを考えると、そこそこ知名度がある俺とエメを使うことにメリットはほぼない」

 

「え〜?」

 

芸能界はそんな単純な世界ではない。例え有馬が最高の作品を作る意思があったとしても、スポンサーや監督の意向に左右されてしまうものである。しかし芸能界との関わりが薄いルビーはその事情を知らないためか、納得いかない様子だった。

 

 

 

その日の夜。エメは一日ぶりに帰宅した。本日は母親のアイは朝早くから仕事があったため、代わりに帰宅も早かった。故に、既に帰宅しているわけである。

 

「あっ、エメお帰り〜!またかなちゃんの家に泊まってたんでしょ?昨日はみんなで食べようと思ってたのに」

 

「すみません……」

 

「ん〜、でも仲の良い友達がいるって意味では喜ぶべきなのかなぁ?」

 

アイとしても、かなとエメが恋仲ではなく、友愛もしくは家族愛に近い関係であることは察しているようで、そこまで咎めるようなことはなかった。

 

ちなみに、エメは有馬の家庭環境に関しては一言も話していない。そもそも本人の許可なしで話すことは論外だし、仮に許可されても簡単に口に出せるようなものではない。

 

というわけで、アイが女優、アクアとエメも役者をやっている関係で、なかなか一家全員が夕食時に揃うことはなかったのだが、今日は久しぶりに集まることができた。

 

もっとも、本来なら昨日も集まれるはずだったのだが、エメが有馬の我儘を聞き入れたためにその機会は逃がされたというわけである。

 

ちなみにアイは昔から料理ができるようである。というのも、これは子供達には話していないが、自分が作る料理なら安心できるからなのだとか。今では苦手だった白米も食べられるようになったとはいえ、やはり白米を食べる時はどうしても思い出してしまうらしい。が、それは子供達には見せない。

 

「じゃーん!星野アイ特製のオムライスだよ!」

 

「わーっ!おいしそー!」

 

全員で食事開始の合図、『いただきます』を言った後に、食事は始まる。

 

一般家庭らしく、家庭料理に舌鼓を打ちつつも、何気ない会話を楽しむ。この時間がエメは好きだった。前世の時も、唯一の休息は食事の時だっただろう。ブルマに作ってもらったご飯を食べながら、トランクスやブルマと何気ない会話をするあの時間が好きだった。

 

だが、今では戦いの合間の休息ではなく、当たり前と化した日常の一部に過ぎない。当たり前になったとはいえ、やはりこの時間が好きだった。

 

「……そういえば、カカロットさん全然帰って来ないね」

 

不意に、アイが呟いた。エメがまだ前世の未練に囚われている時は、サイヤ人としての記憶を失わないまま成長したこの世界の悟空……もとい、カカロットとも食事を何度か共にしたことがある。

 

アイはどこかカカロットを気にしているようで、たまにこんなことを口にしていたので、アクアとルビーも今更驚いたりはしない。今年も来なそうだねとか、どうせ戦ってるんだろとか、そんな返しをする。

 

こんな話をすれば、想い人を待つ三児の母親というイメージが生まれそうだが、アイのカカロットに対する気持ちはそういう類のものなのかは、アイ本人も分かっていない。ただ、アイの中では親しい人間のうちの1人であるのは間違いない。

 

「エメ、こっそり一緒に修行してたりしないの?」

 

「いや、あれからまだ一回も会ってないよ。きっと今も宇宙を彷徨っているんじゃないかな?自分をワクワクさせてくれる強敵を求めて」

 

「まあ、サイヤ人って確か戦闘民族なんだろ?戦闘好きなら仕方ないな」

 

「でも偶には帰ってきても良くない?」

 

「と言っても、そもそもあの人たちの故郷はここじゃないからね……」

 

そんな話をして、久々の家族全員の夕食は終わる。

 

とはいえ、みんなやることは終わっているので、あとはこのままお風呂に入るなり、歯を磨くなりして寝るだけだ。雑談するだけならまだいくらでも時間がある。

 

「ママ〜!一緒にお風呂入ろ〜!」

 

「いいよ〜。ルビーは大きくなっても甘えん坊さんだね?」

 

「えへへ」

 

ルビーは中学生に上がっても一緒にお風呂に入りたがるのだ。ちゃんとマザコンのまま成長している。とはいえ、昔のようにアイの四肢を舐め回すように見るようなことはしなくなった。今ではアイのことを推しとしてではなく、母として見ている側面の方が強くなっているのかもしれない。

 

「そーだ!アクアとエメも一緒に入る?たまにはみんなで!」

 

「いや、僕はまだ勉強するから」

 

「つか、中学生にもなって親と一緒に風呂に入るやつがあるか」

 

「ここにいるけど?」

 

いくら親子と言えども、成長した親子、それも異性で一緒にお風呂に入りたがる子供はいないだろう。というか、普通に恥ずかしがる。ルビーならまだ同性ということを考慮して、まだマシではある。

 

「相変わらずルビーはお母さん大好きだね〜」

 

「気持ちは分かるが、流石にそろそろ風呂は別にした方がいいだろ」

 

「いやいや、そんなことしたらお母さん悲しむかもよ?」

 

 

 

エメがこう言っている背景として、過去に似たような事例があったからである。

 

アクアが小学校中学年に上がった時、お風呂には1人で入りたいと言い出したのだ。

 

精神は前世の記憶持ちでアラサーの医師でも、感情は肉体に引っ張られることがあるようで、どうしても未だに母と一緒にお風呂に入るのに抵抗があった。というか、恥ずかしくなってきた。これに関してはエメも薄々感じていたようで、アクアの意見に賛同すると……。

 

『えっ……?もしかして反抗期……!?ちょっと早くない!?それとももう独り立ちする時期なの…??もしかして家を出ていっちゃうの!?やだよー!!もっとみんなと一緒にいたいよ〜!!』

 

『いや、家は出て行かないよ……』

 

……と言った感じで、それはそれは反対された。アクアとエメが一般常識も交えて何とか説得し、ルビーは自己申告で一緒に入りたいと元気よく言ったことから、今でもアイとルビーだけは一緒に入る、という習慣が続いているのである。

 

 

 

「……ありそうだな。だけど、母さんもいい加減子離れしてもらわないと困る。子供はいつか自立して独り立ちするものなんだから」

 

「あはは……。まあいいじゃん。仲が良いのは決して悪いことじゃないよ」

 

「それはそうだが、それとこれとは別だろ」

 

 

 

土日。一般的には休日として扱われる曜日であり、学生だけでなく社会人にとっても基本的には嬉しい曜日となっている。しかし、芸能関係の仕事をする人にとっては、曜日などあってないようなもの。とはいえ、本日は奇跡的に全員休みだったため、一般家庭らしく家族全員が揃っている。そのはずだが……。

 

「ねえおかしくない!?今日は家族みんなが揃っているのに勉強なんてさ!旅行とかショッピングとかに行こうよ!!」

 

「ダメだよルビー。もうすぐ受験なんだから、しっかり勉強しておかないと!」

 

そう言ってルビーに勉強を続けさせるのは、なんとあのアイだった。事情が事情なだけに、彼女の最終学歴は中卒となっている。しかし、彼女は芸能界を通して、勉強することは将来の選択肢を広げることに役立つことを学んだ。そのため、ルビーにもしっかり勉強してもらいたいと考えているのだ。

 

ちなみに、アクアは前世が医者で国立医大に合格経験もあるため、ちょっと復習する程度で偏差値は70越え。エメもまた、前世の幼少期から勉強していた上に、今世もしっかり勉強しているため、アクアよりも高い77となっている。場合によっては80に到達することもあるが、偏差値の性質上、高校受験で80を上回ることは極めて稀である。

 

「というかさ〜、なんでお兄ちゃんとエメは勉強できるの?おかしくない?人並みにできる程度なら全然分かるけどさ、どっちもおかしいって!!なんで2人とも偏差値70超えてるの!?」

 

「ほらほら、口を動かすのは質問する時だけだよ〜」

 

「わーん!!ママがスパルタだぁ!!」

 

何故ルビーだけが強制的に勉強させられているかと言うと、実は少し前にこんなことが……。

 

『私はアイドルを目指しているわけだし勉強しなくてもいいよね!陽東高校の芸能科は面接重視だし、事務所にさえ所属すれば問題なし!』

 

ルビーが最初からアイドル一本でやっていこうと考えていたのか、後先考えない発言が出てきたことによって、アイの発案によって勉強しているというわけである。

 

ちなみに、ルビーは何も自習しているわけでなく、特別講師がついている。と言っても、外部から家庭教師を雇ったわけではない。というか、外部から雇えばアイとルビー達の関係が露呈してしまうため、あり得ない話である。

 

「でも、ルビーは1時間くらい頑張ったわけだし、そろそろ休憩でもいいんじゃないかな?」

 

「えーそうかな?まだいけるんじゃない?ダンスの練習みたいに体を動かすのとは訳が違うし」

 

アイは体力を使わないなら別に大丈夫だろ、という意味を込めて発言する。これはアイが勉強してこなかったから出てきた発言とも言える。

 

「ううん。勉強も詰め込み過ぎはよくないんだよ。こまめに休憩を挟んであげた方が、特に暗記系は効果が出るからね。無理に長時間続けても集中力がなきゃ、ただ時間を使うだけになっちゃうから」

 

「なるほど〜」

 

エメの発言にアイは納得し、ルビーの家庭教師をエメに一存することにした。

 

そう、ルビーの専属家庭教師はエメになった。ちなみに何故アクアがこれに任命されていないかというと……。

 

シスコンだからである。

 

というのは半分冗談で、マジレスすると、アクアは飴と鞭の加減があまり上手くないのである。ちなみにこれは相手がルビーもしくはアイの時限定である。不思議なこともあるものですね。

 

「にしても、エメって家庭教師もできちゃうんだね。もしかして前世でもバイトとかで家庭教師してたの?」

 

「いや、そんなことはないよ。こうしてちゃんと教えたのはルビーが初めてだよ」

 

「そうなの?俄かに信じ難いなぁ…」

 

「そこまで疑う……?」

 

あまりにも教え方が上手なため、エメが初めてではないかと疑ってしまうルビー。そこにアイが口を挟んだ。

 

「ふと思ったけど、エメが家庭教師のバイトを始めたら大変なことになっちゃいそうだよね〜。特に担当が歳の近い姉妹だったりしたら……」

 

「えっ?どういう意味……?」

 

「あ〜!!姉妹でエメの取り合いになる!!修羅場が発生する!!」

 

「本当に何を言っているの?」

 

「なにせ私の息子だからね〜。全然あり得る話だよね〜」

 

「しかもその姉妹が一卵性の双子とか三つ子だったりしたら……」

 

「いつまでこの話を続けるの……?」

 

その後もエメがモテるという趣旨の話に花を咲かせていた女性陣だったが、休憩時間が普通に終わってしまったため、再びルビーは勉強に戻る。

 

ここまで、アクアが一度も会話に入っていないのには理由がある。家族全員揃っているとは言っても、それは誰も仕事が入っていないという意味だ。アクアはこの日、ルビーが勉強することを確認すると、ある場所に外出していた。

 

アクアは子役時代から五反田監督の下で演技指導、及び裏方の編集、演出等の指導も受けているのだが、今日はそちらには行かない。

 

「社長はいるか?」

 

「おお、アクアじゃねえか。どうした?今日は久方ぶりの家族全員のオフだぞ?変装さえしてもらえれば、家族で出掛けてもらっても構わないぞ?」

 

「いや、もうすぐ受験だからそういうわけにはいかない。特にルビーの成績は芳しくないからな」

 

「相変わらずのシスコンなこって…。それで?今日は何しにここにきたんだ?」

 

「苺プロはいつになったら活動を再開するんだ?」

 

この言い方は多少、というか大分誤解を生みかねない発言だが、アクアと社長の間では、ある種の合言葉のように意味が通じている。要は、アイドル部門はいつ復活させるのか?ということである。

 

アイがアイドルを引退したと同時に、B小町は解散となった。B小町は伝説的なアイドルグループとして世に知らしめた反面、同じ事務所で後継のアイドルグループを作ろうものなら、必ずと言っていいほどB小町と比較される。過度な期待から失望されかねないし、失敗しかねない。だからこそ、B小町熱が冷めるまではアイドル部門は一時的に廃止、という措置を取ったのである。

 

だが、もうB小町の熱は一部の熱狂的なファンを除けば大体冷めているし、ルビーももうすぐ高校生になることもあり、そろそろ頃合いだろうと壱護は考えていた。

 

「分かってるって。そろそろアイドル部門を復活させるつもりだっての。わざわざ催促しなくても忘れねえって」

 

「早くしないと、ルビーが別の事務所に引き抜かれかねないぞ」

 

「分かってるって」

 

ルビーはアイの容姿を色濃く受け継いでおり、幼少期からダンスも抜群に上手だったことから、アイドルとしての才能があるのは重々承知だ。もしこのまま放置しておけば、ルビーは他の事務所に取られかねない。

 

しかし、アクアとしては事務所に特に拘りはない。ただし、安心してルビーを預けられる事務所でなければルビーをアイドルにする気は全くないようだ。しかし、ルビーは本気でアイドルを目指している。ならば、その信頼できる事務所に任せたいと考えているのである。

 

「この前だってスカウトされたらしいからな。少し調べたら、贔屓はあからさまだし、メンバー間の空気は最悪だったけど」

 

「それで裏で突き返したと……。相変わらずのシスコンぶりだな……。確か出願する時までに所属していれば問題なかったよな?」

 

「ああ。頼むぞ」

 

実際、ルビーには苺プロのアイドル部門復活についてはかなり前から話しているため、例えスカウトされたとしても基本的に入ることはない。何故ならルビーはアイのようなアイドルを目指しているから。所属する事務所も同じところにしたいと考えているのだろう。

 

 

 

「うは〜……。疲れた〜…………」

 

「お疲れ様。前より大分できるようになってきたね」

 

場所は戻って星野家。ルビーは取り敢えず午前中の勉強スケジュールを終えてグッタリしているところである。

 

「エメ〜疲れた〜。お菓子取ってきて〜」

 

「それくらい自分で取ってきなよ…」

 

とは言いつつも、なんだかんだでルビーの言う通りに適当なお菓子を持ってくるエメ。

 

「は〜生き返る……!!やっぱり頭を使った後は甘いものに限るよね〜!」

 

「それは良かった……。あっ、もうこんな時間か。ちょっと修行に行ってくるよ」

 

「ええ?あんなに勉強してたのに?」

 

エメはルビーに教えるのと同時並行で、自分の勉強も進めていた。たった今それが終わったのにも関わらず、休憩せずに今度は身体を使うと言うのだから、ルビーが驚くのは無理もない。

 

「お昼ご飯までには戻ってきてよ〜?」

 

「うん!行ってきます!」

 

アイに軽く返事をしたエメは、修行をするために外に出た。と言っても、都内で修行をするわけにもいかないので、人気のないところを見つけ、そこから飛び立っていつもの場所に向かうのだった……。

 




 ここでも生存要素を遺憾なく発揮します。せっかくアイもいるのだから、じゃんじゃん出番を用意したいところ。多分だけど星野家は家族ぐるみで距離感がバグっているものと思われる。

 ちなみに、エメがある程度大きくなったこと、戦士バレしたこともあって、以前のような過保護制作は実施されていないものの、アクアやルビーに比べるとやはり過保護気味。と言ってもアイは家族全員に対して過保護気味だし、ルビーは二重の軽いブラコン、マザコン、アクアは重度のシスコン、マザコン、軽度のブラコンを拗らせております。エメだけはそういうのは拗らせていない模様。とはいえ、家族相手なら距離感バグってても気にしない。というか、鈍感なので距離の近さとか分からない。
 また、身長に関しては、基本的にみんな原作と同じ。エメは170cmと、まだ成長途中。しかしまだまだ成長期は終わってないので、今後伸びる可能性大。

 また、学力に関してですが、作中にも明記した通り、アクアよりもエメの方が高くなっております。アクアは役者活動に力を入れ、勉強は少ししかやっていない反面、エメは気を抜かずに勉強し続けていたのが大きいです。というか、前世のアドバンテージがあると言っても偏差値70のアクアは普通に凄い。そして前世のアドバンテージなしでエメをも超えるあかねって一体……。

 久方ぶりにアンケートを設置しました。質問の趣旨は皆さんの解釈次第。例のごとく、暇つぶし感覚でどうぞ。

アイの今後

  • 子どもたちさえいれば十分
  • カカロットとくっつく。アイは欲張りなんだ
  • ああ…、命の重みを感じる……!
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