推しの飯/絶望の未来から転生した戦士   作:Miurand

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 またまた大遅刻。ペース上げたいけどなかなか上がらねぇ……。東ブレ編はアニメが先になりそうですねこれ()



第19話 無責任な師匠として

黒川姉弟を家に招き入れたアイだが、何故か碧が突然泣き出してしまった。あかねはエメなら碧をどうにかできると言い、弟のケアは彼に一存することになった。

 

そして、残ったメンバーはリビングで話すことになるのだが……。

 

「それじゃ、あかねちゃんとは初めて会うよね?私は苺プロのアイ……っていうのはあくまで芸能人としての肩書きだから、ここは本名がいいよね?私の名前は星野アイ。ご存知の通り、元アイドルで今はマルチタレントだよ!」

 

「エメから話は聞いてると思うが、俺は星野アクア。本名は星野愛久愛海だ。ルビーとエメの兄だ」

 

「そして私がつい最近アイドルになったばかりの星野瑠美依!アクアの妹でエメのお姉ちゃんです!」

 

「有馬かな。今は新人アイドルになったエメのお姉ちゃんよ」

 

「ちょっと待て先輩。またしれっとお姉ちゃんの座を横取りしようとしたでしょ!?というかここは私達家族が自己紹介する場でしょ!?空気読もうよ!?」

 

星野家で自己紹介かと思いきや、急に有馬も名乗りあげたため、思わずルビーかツッコんだ。

 

「……そもそもなんだけど、なんでかなちゃんがここにいるの?」

 

「……?なんでエメの姉である私がいちゃいけないのよ?」

 

「とうとう存在しない記憶が芽生え始めたね!?」

 

何を当たり前のことを聞いてるんだと言わんばかりに、悪気が全くないと言った表情であかねを見ながらそう答えた。

 

「まあ、冗談抜きで言うと、あんたをエメの彼女として認めたくないからよ。ここにいる3人のセ○ムやアル○ックがぶっ壊れたから、私が最後のマカ○ィーとしてここにいるのよ」

 

「私ウイルス扱いなの……?」

 

「別にかなちゃんがエメのお姉ちゃんを名乗るのは私としてはいいんだけど、今はその話置いといて欲しいな☆」

 

「あっ、ハイごめんなさい……」

 

流石に話が進まないと判断したのか、アイは笑顔で有馬を説得し、取り敢えずその話題は後回しにしてもらうことにした。ちなみに目は笑っていない。

 

「……というか、アイさんとあんた達って名字同じだったのね。もしかして普通に実の家族だったりするの?」

 

「「……」」

 

有馬にそう聞かれ、アクアとルビーは同時にアイの顔を見る。見るからに不安に感じているようだが、アイは微笑んで2人を安心させる。そして、アイから口を開いた。

 

「うん。この子達は、私にとって可愛くて、愛おしくて、かけがえのない大切な子ども達だよ。勿論エメもね」

 

「……ん?子ども……?」

 

「そうだよ。3人は私の子どもなの」

 

「えっ?子ども?あの3人がアイさんの?」

 

あまりにもあっさりカミングアウトされるものだから、有馬は現実を受け入れるのに時間がかかっているようだ。

 

「いやうっそだ〜!!そんなわけないじゃない!だってアイさんは今30前半で、3人は16歳なのよ?」

 

「それはそうだよ。だってこの子達は私が16の時に産んだんだもん」

 

「…………マジで?」

 

「大マジだよ?」

 

年齢差的にアイと三つ子が親子ではないと有馬は豪語するも、アイがそれをキッパリと否定した。実は血の繋がっている姉でしたオチだと読んでいたが、その読みは大きく外れることとなる。

 

「えっ?つまり、アイさんはあの3人の母親なわけ……?」

 

「だからさっきからそう言ってるじゃん」

 

「いや流石に無理があるわよ!ねえアクア!流石にこれドッキリよね?もしかして私に内緒で新しい動画のネタでも考えてたのルビー!?」

 

「……かなちゃん。アイさんが言っていることは本当だよ」

 

やはりアイが母親であることは考えにくいと改めて思った有馬は、アクアやルビーに聞き直すも、あかねがアイの発言を支持する。

 

「……やっぱりあかねちゃんは驚かないんだね。"私"の再現度が高かったから、なんとなく分かっていたけどね」

 

「……多分、アイさんには隠し子がいるだろうなとは思っていました。アイさんの演技をしているときは、何故かエメ君に対して庇護欲みたいなものを感じていたし、エメ君の反応を見るに、なんとなくそうじゃないかと思っていたんですけど……」

 

あかねもまさかアイの口から聞くことになるとは思ってもいなかったようだ。流石にそこまで想定できなかったようである。

 

「えっ?待って?現役アイドルが男を作るだけに留まらず、密かに子どもも出産してたってこと……?」

 

「そうだよ〜。3人は昔から賢かったし、社長達も色々頑張ってくれたからなんとかなったけどね〜」

 

「えっ、なにそれ……。ちょっと信じ難いんだけど……」

 

確かに、エメはまだしも、アクアやルビーはアイに対して異常に信仰心のようなものを持っていたような気がするが、もしやそれは単にマザコンを拗らせていただけの可能性もあるわけだ。

 

というか、アイがやたらとエメに彼女ができることを嫌がっていた理由が分かってしまった。自分も好きだからではなく、単に息子に彼女ができてしまうのが嫌だったのだろう。

 

ならなおのこと、何故あかねのことを認めているのか。

 

「……もしかして、今日私をここに呼んだのって……」

 

「そう。いつかあかねちゃんには話したいなって思ったから呼んだんだ」

 

「……なんで私に?もしこのことが世間に知れたら大騒ぎですよ?それこそ、アイさんの芸能生命だけじゃなくて、3人の芸能生命にも影響が及ぶかもしれないのに……」

 

「それに関しては、信頼かな?あかねちゃんなら無闇に言いふらさないだろうなって思ったから。あと、変に疑いを持たれるくらいなら、さっさと解消しちゃった方がいいかと思って」

 

「いくらなんでも買い被りすぎですよ……。もし私がお金に目が眩んで、アイさんの情報を週刊誌に売ったら……」

 

「そこも大丈夫」

 

そもそも、そんな悪い性格をしているのなら、炎上した際に誹謗中傷を受け止めて、自殺を考えるようなことはしないはずだ。また、エメから聞いた話では、あかねの演技は憑依型演技だと聞いている。B小町のアイではなく、星野アイを理解している彼女ならば、何故自分が子を産みつつアイドルも続けていたのか分かっているだろう。

 

それに……。

 

「万が一そうなった場合は、エメとの交際を禁止すればいいだけだし。いや、接触を禁止すればいいかな?なんなら共演もNGにしてもらえばいいかな?」

 

多分アイの言っていることは冗談だろう。そのはずだが、どうも冗談を言っているようには聞こえない。仮にそうなった場合には、マジで有言実行してしまいそうである。そんな雰囲気をかなとあかねは感じ取った。

 

「……ごめんね先輩。今まで隠してて」

 

「いや、これに関しては仕方ないでしょ。私も同じ立場なら、寧ろ暴露することにも全力で反対するくらいよ……」

 

ルビーは今までアイとの関係に嘘をついていたことに罪悪感を覚えていたようだが、流石に隠し事が隠し事なので仕方ないと判断した。

 

「……とまあ、私達星野家はこんな感じ。じゃあ本題に入るんだけど……」

 

「えっ?今のが本題じゃなかったの?」

 

アイドル時代に出産して子育てしていたなんて爆弾を投下するくらいなので、これが本題だとばかり思っていた2人だったが、まさかのそれは前座に過ぎないことに驚きを隠せていない。

 

「いや、さっきのも本題っちゃ本題だけど、私としては次の方が重要というか〜。まあ早速始めちゃおう!」

 

陽気な声でそう言うと、アイはあかねの方に向き直す。

 

「じゃあ、これからあかねちゃんには彼女面接を受けてもらいます!」

 

「えっ……?め、面接……?」

 

「ごめんねあかねちゃん。エメはあかねちゃんのことを知っていても、私達は全然知らないから……」

 

「あかねちゃんの人柄を知るために、面接を実施します!」

 

「……ということだから、付き合ってやってくれ」

 

アイとルビーは何故かノリノリだ。そもそもアイの話を暴露している時点で結果など確定しているようなものなのだが、普通にどんな人物なのかは気になるのだ。だが、唐突に面接なんて決定された日には、受ける側はたまったものではない。

 

「あ、そういうことなら私もそっち側に」

 

「えっ?かなちゃんも…?」

 

「当たり前じゃない!だって私はエメのお姉ちゃんだもの!というわけであんたは採用見送り。今後の活躍お祈り申し上げます。そして今すぐエメと別れてください。はいバイバイさよなら〜」

 

「先輩!真面目にやってよ!」

 

「有馬、ふざけている場合じゃないんだぞ」

 

「いや、私は至って真面目なんだけど……」

 

「じゃああかねちゃんがエメの彼女に相応しいか多数決で決めようか!」

 

「ママが言うならそうする!」

 

「えっと、あの……」

 

「絶対に私勝てないじゃないの!!」

 

面接とは、面接官が受験する人に質問し、その人の人柄や考え方を知るものである。そのはずなのだが、何故か多数決で今後の方針を決めるようである。なんだこれ、ガバガバにも程がある。星野家の人事は案外雑なのかもしれない。

 

 

 

それからどれくらい時間が経っただろうか。結局多数決は有馬が惨敗する結果となり、面接という名のただの雑談が続行されることになった。

 

否、あかねにとっては拷問かもしれない。どういう経緯でエメのことが好きになり、どんなところが好きなのか。これからをどう考えているのかなど、根掘り葉掘り聞かれた。別に好きなところなどいくらでも言えると自負しているあかねだが、流石に他人にそれを言うのは恥ずかしい。

 

「いや〜、私の息子愛されすぎ!それでもまだビジネスの関係だなんて信じられない!」

 

「でも、エメだって初めての恋愛だろうし、そこは仕方ないと思う」

 

そもそも、前世からそういうこととほぼ無縁だったのだ。もし今ガチに出演していなければ、エメが恋愛について考えることもなかったかもしれない。そういう意味では、ビジネスの関係に漕ぎつけただけでも奇跡といえよう。

 

「……にしても、碧君とエメ遅いね?」

 

いつまで経っても自室からエメ達が出てこない。エメと碧の性的指向から、そんなことにはなっていないであろう。なら何故こんなに時間がかかっているのだろうか……。そう考えているところに、扉が開かれた。

 

「しっかし、まさかお前もこっちに来ているとは思わなかったぞ。てっきりオレしかいないのかと……」

 

「それは……。すみませんでした。悟飯さんが人生を謳歌している姿を見てしまったら、どうしても俺の存在が邪魔になってしまうような気がして……」

 

「邪魔だなんて、そんなことあるわけないだろう?オレにとって、君は唯一無二の弟子なんだからな」

 

……無茶苦茶親しげに話していた。この小1時間で一体何が起きた?2人の会話を聞いた者は皆この考えが頭に浮かんだ。

 

「え、エメ?随分仲が良さそうだけど……」

 

「ん?まあ、色々あってね」

 

 

 

遡ること、約1時間前……。

 

突然泣き出してしまった碧を自室に招いたが、はてさてどうしたものか。あかねに言われ、その言葉を信じてみたはいいものの、どう声をかければ彼の気が済むのだろうか。所謂ファンサをすべきなのだろうか?いや、それも違うような気がする。

 

「えーっと……」

 

「……すみません。お見苦しいところを見せてしまって……」

 

だが、碧は思ったより大人だったようだ。年齢的には中学生くらいだろうが、しっかりしている。最も、エメは前世の幼少期からしっかり者だったが、それは棚に上げることにする。

 

「あの〜……。なんかごめんね?僕のせいで辛いことでも思い出させちゃったかな……?」

 

「と、とんでもない!!これは俺の問題ですから、気にしないでください!!」

 

自分の姿を確認した途端にあの様子だったので、自分のせいかと疑えば、本人はそれを否定した。本当にそうなら、益々彼が泣き出した意味が分からない。

 

「あの、付かぬことをお伺いしても?」

 

「あー、構わないよ?」

 

否定はしても、恐らく原因は自分にあることはなんとなく分かっている。そのお詫びも兼ねて、答えられることならできるだけ答えようと意気込んだ。

 

「あなたは、()()()()なんですか?」

 

すると、何やら要領を得ない質問だった。自分は昔から『孫悟飯』という芸名を用いて活動している。それは自分が出演するドラマなどを見る彼なら分かっているはずだ。

 

ならば、別の意味か?自分の推しが目の前にいることが信じられないからこその質問なのか?それとも違うような気がするが、これ以外にこの質問の意図が見えてこないのである。

 

「まあ、君もご存知の通り、僕は孫悟飯って名前を使って活動させてもらっているよ」

 

「何故その名前を……?」

 

確かに、普通ならこんな名前を使うことはないだろう。本名を聞いたら尚のこと。兄が星野アクアを名乗っているのに、自分は孫悟飯と来た。明らかに系統が違う名前である。疑問に思うのも当然かもしれない。

 

「これはまあ、説明するとすごくややこしくなるんだけど、昔の自分を忘れないためにね」

 

「昔の自分……ですか?」

 

「そう。成長するに連れて、昔の自分の記憶がどんどん遠のいていくんだ。その記憶は辛いことばかりだったけど、決して楽しかったことがなかったわけじゃないんだ。だから、忘れたくないって意味も込めてね……」

 

こんな説明をしたところで、普通なら理解してもらえない。ちゃんと理解をしたのは、アイ、アクア、ルビーの3人のみだ。これは自分の前世を知っており、その事情も併せて説明しているからこそなのだが。

 

「……そうなんですか。昔の自分を忘れないために……」

 

「あはは……。今の説明だけだと理解してもらえないよね……。ただまあ、それなりに複雑な過去があったと思ってくれればいいよ。逆に聞きたいんだけど、君は何か悩みでも抱えているのかい?君のお姉さんが言うには、どうやら僕が相談役として打ってつけらしいんだ。君さえ良ければ、悩みを打ち明けてくれないかな?」

 

言うか言わぬか迷うように口をダンマリとさせたが、少しして決心したのか、再びくちを開いた。

 

「実は、その孫悟飯って名前は、俺にとって特別な名前なんです」

 

「へぇ?それまたどうして?」

 

「その昔、俺を鍛えてくれた、憧れの師匠の名前なんです」

 

師匠という響きに、どこか懐かしさを覚える。今では有馬を師匠に、弟子として稽古を受ける日々を送っているが、前世では弟子を取っていた。それは今世のような演技ではなく、戦いに於いての弟子だ。

 

人造人間によって滅茶苦茶にされる様を見過ごせない。自分にもサイヤ人の血が流れているのだ。だから黙って見ているわけにはいかない。当時幼かった弟子の覚悟を聞き、悟飯は彼を弟子にすることにした。

 

修行していくうちに、自分よりも彼の方が才能があることに気づき、最終的には彼1人を残して死んでしまったが、狭間の世界で悟空に行末を見せてもらい、その弟子が見事に平和を勝ち取ってくれた様を見て、自分は今前を向いて生きていけるのだ。

 

本当に、トランクスには感謝しなければならない。

 

「……ん?師匠?」

 

「はい。ちょうどあなたと同じような服装をしていました」

 

「ちょ、ちょっと待った!!」

 

孫悟飯という名前で、師匠。しかも服装はこの道着?いくらなんでもおかしい。そもそもこの服は一般販売されておらず、オーダーメイドで作った品だ。つまり、この世界で一番最初にこの服を作ったのはエメなのだ。だから碧が言っていることはおかしい。自分と同じ名前の人ならまだいるかもしれないが、服装まで同じだとは考えにくい。

 

これが、トランクスが人造人間に打ち勝ったという事実を知らなければ、トランクスが転生してきたのだと納得できた。しかし、現にトランクスは人造人間を倒して、平和な世界を獲得したはずだ。そのトランクスが死んでこの世界に来ているはずもない。

 

ということは、天文学的な確率を引き、自分と同じ名前でかつ、同じ服装を愛用していた師匠と面識があったということになるのだろうか?

 

「お、同じ服装だって?それはあり得ないはずだよ……!だってこの服は、オレの記憶を頼りに作った特注品だ……!他の人がこれを着ているとはとても思えない…!」

 

そもそも、前世界でも亀仙人の道着自体はあっても、『飯』と刻まれた物は自分しか使っていないはずだし、自分しか所有していないはずだ。前世ですら自分しか持っていなかったものを、今世で他の人も同じ物を持っているとはとても考えにくい。

 

「そ、そんなはずは……。だって、トランクスは確かに……」

 

碧に聞こえぬよう、小声で独り言を呟いた。まさか悟空が嘘をついたとでも言うのだろうか?それこそあり得ない話だ。下手な慰めのために嘘をつくような真似はしないはずだ。

 

……こうなったら、意を決して聞くしかない。

 

「……まさか、君はトランクスなのか……?」

 

「……!やっぱり、悟飯さんなんですね……」

 

なるほど、ようやく理解した。一番最初の質問、『悟飯さんなんですか?』

 

これは、芸能人孫悟飯のことを聞いていたわけではない。孫悟空とチチの息子の孫悟飯かどうかを聞いていたわけだ。ここに来て、芸名が非常にややこしい働きをしていた。

 

「本当に、申し訳ございません…!!!」

 

「えっ!!?」

 

碧……否、トランクスが悟飯の存在を認めるなり、突然土下座をしてきた。何故そんなことをされるのか意味が分からず、エメはとりあえず顔をあげるように促すが……。

 

「俺は、悟飯さんに使命を託されたはずでした……。確かに17号と18号は倒すことができました。でも、よく分からない謎の化け物に奇襲を受けて……」

 

「な、なんだって…………」

 

人造人間17号と18号は倒した。しかしその後にまた別の刺客によって殺害されてしまったのだと言う。それならば、悟空が見せてきた水晶の映像と矛盾することはないが……。

 

もし、その化け物も人造人間のように悪人ならば……。否、そもそもトランクスを奇襲している時点で善人ではないことが確定している。そんな化け物があの世界にいるのだ。人々を守る戦士が不在のあの世界で……。

 

「いや、君が謝る必要はない。本当は、オレがもっと強くなって、オレが倒すべきだったんだ……。それを、君はオレの身勝手な願いを聞き入れて、実際に叶えてくれたんだ……。それだけでも十分だ……」

 

「でも、俺がいなくなったことによって、その化け物が……!!」

 

やはり、彼は戦死してしまったことに罪悪感を覚えているのだ。せっかく救ってもらった命を無駄にしてしまったから。悟飯の行いを無駄にしてしまったからと、常に自分を責め続けていたのだろう。

 

「……トランクス。意志ってのは、誰かに必ず受け継がれるものなんだ。君がオレの意志を継いでくれたように、きっと誰かが君の意志を継いで、その化け物を倒してくれるはずだ……。だから、過ぎたことはもう気にするな」

 

実際、ここの悟飯とトランクスが知る由もないが、セル(その化け物)は、別世界の孫悟飯らによって倒され、跡形もなく消滅した。エメが言っていることは、きっと正しいことなのだろう。

 

「……いいんですか?こんな俺を、無力な俺を許してくれるんですか?俺は何もできなかったのに……!」

 

「できてるじゃないか。君はしっかり人造人間達を倒したんだろ?そんなことを言ったら、オレはトランクスよりも長年ずっと戦い続けてきたけど、致命傷すら与えることができなかった。本来ならオレのやるべきことだったのに、お前が全部やってくれたんだ。むしろ、謝るのはオレの方だ……」

 

「そ、そんな……!悟飯さんは何も悪くありませんよ!!」

 

薄々分かっていたことだが、この2人は似た者同士だ。人一倍強い責任感を持ち、何か失敗すれば、まず自分を責める。誰よりも自分が悪いと決めつけてしまう悪癖がある。

 

そんな共通点を持つ両者が話し合えば、きっと責任の奪い合いによっていつまで経っても話が終わらないだろう。だから……。

 

「そうだな。元々悪いのは人造人間であり、お父さんに復讐を企てたDr.ゲロだ。オレ達は何も悪くない」

 

「えっ……?」

 

まさか"悟飯"がそんなことを言うと思っておらず、トランクスは固まってしまう。彼の知る悟飯なら、真っ先に自分が悪いと言い出すはずなのに。

 

「そうさ!大体オレは学者になりたかったのに、人造人間のせいでその夢は滅茶苦茶になった!本当はやりたくもない戦いを強いられてきたんだ!そもそもDr.ゲロが復讐なんて考えなければ、こんなことにはなってなかったんだ!だからお前も悪くない!!」

 

冷静に考えれば、世界を滅茶苦茶にした極悪人の方が悪いに決まっている。責任感が強い彼らだからこそ忘れがちだったが、世界を守る戦士達が力不足で世界を守れなかったからといって、彼らを責める人はいない。

 

(……昔のオレなら、そんな発想にならなかっただろうな……)

 

『あんたはまだ子供でしょう?そういうのは大人に任せなさいよ!何もあんたが必死になってやることじゃないわ!!』

 

昔、カカロットと初めて対峙し、大怪我をした際に言われた言葉を思い出した。

 

自分達の周りには戦える人ばかりだった。だから自然と自分も戦わねばならないという発想が浮かび、それが当たり前となっていたのかもしれない。

 

そして、そんな悟飯の背中を見てきたトランクスも同様だ。

 

『そんなこと言わないでよ…!君の帰りを待つ人だっているはずだよ!それこそ、君の家族とか!友達とか!!』

 

昔、MEMに言われた言葉を思い出した。

 

前世では常に自分の身は二の次にして、世界を守ることを優先していた。それは万人にとっては非常にありがたいことなのかもしれないが、自分達のことを大切にしてくれる人達もそう感じるとは限らない。

 

星野エメラルドとして決して短くない時を過ごしてきたことによって、一般人らしい感覚が身についてきたのかもしれない。

 

「だから、昔のことはもう気にするな。大事なのは『今』だ。君はトランクスではなく、黒川碧だろう?今の人生を謳歌しないでどうするって言うんだ。せっかく平和な世界に生まれてきたんだから、お前のやりたいことをやれ。いつまでも過去(トランクス)に縛られるんじゃない」

 

そう言って、エメは優しく"碧"を抱きしめた。少しして嗚咽が聞こえるようになったが、それは聞こえないふりをして、ただただ背中をさすってやった。

 

「今までお疲れ様、トランクス。本当にありがとう。もうゆっくり休んでいいぞ……」

 

今なら理解できる。あの時、何故悟空が過去(悟飯)に縛られるなと言ったのか。

 

 

 

「……すみません、お見苦しいところを何度も……」

 

「気にするな。オレの中じゃ、お前はまだまだ子どもなんだからな」

 

あれから数分は経っただろう。彼はすぐに泣き止んだ。更に事情を詳しく聞いて分かったことがある。

 

まず、トランクスはブルマの開発したタイムマシンで過去へ行き、そこで悟空が心臓病で死なない世界を造り出し、17号と18号の設計図を持ち帰り、ブルマに停止装置を作ってもらった。

 

そして、その装置を利用して2体を破壊したようだ。エメが見た水晶の映像とは少々内容が食い違っているように思えるが、自然と納得した。

 

このトランクスは、恐らく並行世界のトランクスだ。タイムマシンで悟空が死なない世界が爆誕したとなれば、そこから幾つもの歴史に分岐しても不思議ではない。その中で、非常によく似た歴史を歩んだ並行世界の師弟が再会を果たした……ということだろう。

 

厳密には、悟飯のよく知るトランクスではないが、境遇が境遇なだけに、悟飯の弟子のトランクスと言っても差し支えがないだろう。

 

「全く……。まさかそれでこの世界に生まれた時からずっと悩んでいたんじゃないだろうな?」

 

「…………」

 

「図星だったみたいだな……」

 

思ったより重症かもしれない。とは言っても、自分もアクアの言葉で今世を前向きに生きられるようになったと言っても過言ではなかった。あれ以来悪夢も見ることはなくなったのだから。

 

ならば、彼が前向きに生きるために尽力しよう。それが、幼い彼を遺し亡くなってしまった、無責任な師匠の努めというやつだろう。

 

「よし!なら、これから一緒に修行をするか!」

 

「……えっ?あの、悟飯さんって、今も戦えるんですか?」

 

「まあね。でも、昔は今のトランクスみたいに碌に力を扱えなかったよ。まあ、色々あってなんとか解決したけどね」

 

実はあの世とこの世の狭間の世界というところで修行をつけてもらったからなのだが、そこはややこしいので伏せておくことにする。

 

「トランクス。この世界は基本的に平和だから、無理に修行しろとは言わない。でも、お前が望むのなら、また前みたいに稽古をつけてやる。でも、本当に無理しなくていい」

 

人造人間のように、即座に地球を脅かす強大な極悪人はいないのだ。それに、万が一何者かが現れても、サイヤ人達がなんだかんだで協力してくれるだろう。戦力としては、前世よりも寧ろ良い方だ。

 

だが、エメは彼がなんと答えるか、始めから分かっていた。

 

「是非、お願いします……!!」

 

「分かった。言っておくが、甘やかすつもりはないからな?」

 

「はい!!」

 

こうして、未来の師弟が再会を果たした。かつてエメがそうなったように、トランクスにも、前を向いて生きてもらいたい。そのためにも、エメは尽力するつもりである。

 

 

 

時は、アイ達にエメ達2人が合流したときにまで進む。

 

「……ありがとうエメ君。碧があんな明るい表情を見せるのは初めてかも」

 

「それは良かったよ。でも、まだまだあの子の悩みは完全に払拭されたわけじゃないけど、時間をかければどうにかなるはずさ」

 

かつて自分がそうであったように。

 

「……あの子?」

 

あかねはエメの碧に対する呼び方に違和感を覚える。まだ会ってそんなに経っていないのに、まるで昔から接していたかのように……。

 

「……ところで悟飯さん。アクアさんとルビーさんがここにいるのは理解できるのですが、こちらは有馬かなさんにアイさんですよね……?何故お二方がここに……?」

 

「あー、アイさんはね……」

 

あかねがなんとか誤魔化そうとするが、エメが手でそれを制止した。

 

「え、エメ君?」

 

「大丈夫」

 

あかねとしては、アイが自分と有馬に真実を話したのは、自分の子ども達と関わりが濃いからだろう。それに加え、あかねの分析能力が高いから、変に勘繰られるくらいなら話してしまおうという発想になったと解釈している。

 

ならば、比較的関わりの薄い碧には話しておくべきではないと判断したのだ。だが、(トランクス)に関しては、エメ(悟飯)の方がよく理解している。

 

「彼女は、僕の母親なんだ」

 

「なるほど。そういうことでしたか」

 

「えっ?碧、なんかあっさりしすぎじゃない?」

 

「ここはこう、もうちょっと驚くところじゃないの?」

 

あまりの反応の薄さに、あかねとルビーが思わずツッコんでしまった。しかし冷静に考えてみれば、碧が特段驚かないのも当たり前のことである。

 

何故なら、前世のトランクスは父親が宇宙人なのだから。それを母から聞いた時の方が驚きは大きかっただろう。

 

まあ、簡単に言えば、アイドルだから子どもがいるのがおかしいという発想がないのである。

 

「いえ、むしろあなたのお陰で悟飯さんと会えた(再会できた)のですから、寧ろ感謝しています」

 

「えっ?ど、どういたしまして……」

 

急にお礼を言われたため、アイも困惑してしまった。推しに会えた喜びとは完全に別種である。てっきりエメのファンかと思っていたのだが、どうやらそれとは違うようだ。

 

「アイさんについては理解しましたが、有馬さんは何故ここに……?」

 

「それは、私がエメのお姉ちゃんだからよ」

 

「……えっ?」

 

躊躇なくそう述べた有馬に対して、碧は少々フリーズして……。

 

「ま、まさか有馬さんもアイさんの子どもだったんですか!?」

 

思いっきり間に受けてしまった。

 

「違うよ碧君。これは先輩が勝手に言ってるだけだから」

 

「何よ勝手にって!!エメの写真ばら撒こうとしたあんたよりはよっぽどお姉ちゃんしてるでしょうが!!」

 

「……?ど、どういうことでしょうか?」

 

「あー、有馬さんは僕の師匠なんだ。勿論、演技の方のね。小さい頃からお世話になっているから、幼馴染とも言えるし、姉みたいな存在とも言えるかもしれないね」

 

「なるほど、そういうことでしたか……」

 

エメ本人からの説明でようやく理解できたはいいものの、それでも何故ここに有馬がいるのか理解できなかった。そもそも、一応はあかねがエメの彼女として星野家に挨拶に行くという話だったはず。有馬も星野家の真実を知らなかったことを考慮すると、不安だから付き添ったということでもなさそうだ。

 

「……まあいいか。有馬さんもいてくれた方が、姉さんも嬉しいんじゃない?」

 

「何言ってるの碧!ぜんっぜん嬉しくないよ!さっきだって一方的にエメ君と別れろって迫ってきたし!」

 

「あ、あー……」

 

碧は一応交友関係が広い。そのため、友人の中には妹を溺愛している者もいるのだが、妹に彼氏ができるようなことがあれば、殴り込んででも引き剥がしてやると豪語していた。

 

多分、うちの娘はやらん!というのと同じようなものなのだろうと、碧は勝手に納得した。

 

「えっ?嬉しいって何?なんで私がいると嬉しくなるのよ?」

 

犬猿の仲だと認識していた有馬だったが、碧の発言がどうしても気になってしまった。自分の認識が正しければ、あかねも自分のことを嫌っているはずである。それなら、いたら寧ろ嫌がるのではないか?

 

「あれ?ご存知ないんですか?姉さんは有馬さんに憧れて役者になったんですよ」

 

「あ、碧!!!?」

 

あかねが止めようとした時には、すでに遅かった。碧からその事実を聞けば、明らかに気分を良くした表情であかねの顔をニマニマと見つめていた。

 

「へぇ〜?私に憧れて役者始めたんだ?ふーん?もしかしてあれ?ツンデレってやつ?やーねー!それならそうと素直に言いなさいよ~!」

 

「あ、碧ッ!!」

 

「えっ?ご、ごめんなさい!?」

 

何故責められているのかも分からずに謝罪する碧に、からかう有馬に、顔を赤くしながら全力で否定するあかね。星野家は珍しく星野家の人間以外で騒がしくなっていた。

 

「あはは!かなちゃんとあかねちゃん、仲良さそうだね!」

 

「えっ?どこが……?」

 

こうして、一悶着二悶着あったものの、なんとか丸く収まった。ただ、あかねのメンタルが削られることになるのだが、碧の長年の悩みに解決の兆しが見えたことを考えれば、安い代償だろう。

 

 

 

「エメ君!あくまで私は"今"のかなちゃんのファンじゃないから!!元ファンだから!!そこだけは勘違いしないでね!!」

 

「あっ、はい……」

 




  というわけで、思ったよりも早めに暴露回となりました。ここから時間をかけてトランクスを鍛えていくわけですが、その過程でカカロットやベジータに会う可能性は十分にあるので、余計にややこしいことになりそうですな……。

 というわけで、ここからようやく推しの子原作エピソードを進めてまいりたいと思います。これ、狙ってるわけではないんですけど、時期的に推しの子二期と思いっきり被るよなこれ……。
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