推しの飯/絶望の未来から転生した戦士 作:Miurand
ここに来た人は、ドラゴンボール要素満載のお話も見たい人だよね……?
第七話 死闘
ある日のこと。
エメはもうすぐ退院できそうだと担当医から告げられた。だが、入院した時の状態が状態だったため、念の為もう一度検査をすることに。それで問題がなければ無事退院できるようだ。
「やったね!じゃああと少しでウチに帰ってくるんだね!」
「うん。そういえば引っ越したんだよね?」
「そうだね〜。だからエメにとっては初めての新居になるのかな?私達はもう慣れてきたけど」
ストーカーのリョースケを裏で操っていたとされる真犯人に住所が知られてしまったため、アイは再び引っ越しすることにした。真犯人は三人の父親だとほぼ確信しているらしい。アイは二度と自分達の住所を伝えないことにしたようだ。
「あっ、もうこんな時間!仕事に行かなきゃ!じゃあね、エメ!また明日!」
「うん。また明日」
アイが退出して、悟飯の病室は静かになった。悟飯はこの隙に勉強をする。前世からの夢は今でも変わっていない。前世は戦いに身を投じなければならないから、夢を諦める必要があった。しかし遂にその夢を叶えることはできなかった。
今世の母親は、子供のしたいことは基本的にやらせるスタンスだ。アイに話せば、きっと快く受け入れ、応援してくれるに違いない。
「(今日もアイさんの周りに怪しい気配は感じない…。大丈夫そうだな…)」
一方で、悟飯は警戒を欠かさなかった。悟飯は真犯人が誰なのかは見当もついていない。新居に引っ越したとはいえ、まだ気は抜けない。
悟飯は安心して本格的に勉強に取り掛かろうとした。その時……。
「……!!?」
久方ぶりに
地球に住む一般人ではあり得ないほどの大きさの気を持つ者が近づいてくる。それも高速で。
「……そうか」
夢なのか、はたまた本当に死に際で再会したのかは今となっては分からないが、その時悟空は確かにこう言った。
『いいか、悟飯。地球に敵はいなくとも、他の星から来るかもしれねぇ。どんな敵が来ても追い返せるように、おめぇは強くなれ。そして、今度こそおめぇの生きたいように生きるんだ……』
「僕は、オレは勘違いしていた。あの日、アイさんを助けることがオレの生まれてきた意味だと思っていた。だけど、まだ役目は終わっていなかったんだ…。オレは、この世界に来る脅威を払って、この世界の平和を守る…。きっと、それがオレが生まれてきた意味なんだ……!」
徐々に気を高めていく。一体どれほど強くなったのかは分からない。ただ、前世の力を完全に取り戻したとは言えないことだけは分かっていた。だから今日まで人の目を盗んでは修行に励んでいたのだ。
『いいか悟飯。甘えるなとまでは言わねえ。けどな、そっちの地球を、アイ達を守れるのはおめぇだけなんだ。それだけは忘れるな』
「えっ、ほ、星野君!?そんなところに立ってちゃ危ないよ!!!」
巡回に来た看護師が病室を除いてみれば、なんと窓から飛び降りようとしているエメラルドがいる。側から見れば自殺しようとしているようにしか見えない。それは焦って当然だ。
「看護師さん。今から見ることはどうか内密に…。特に、アイさんには」
子供らしからぬ真剣な顔でそう言うと、窓から足を離した。だが、落ちることはない。普通なら重力に従って落ちるはずだ。だが、エメは羽もないのに浮いていた。当の本人はこれができて当たり前だと主張するように、冷静だった。
「(この世界にはドラゴンボールがない。だから、街が壊れたら、人が殺されたら戻ることはない……!!)」
轟音を立てながら戦士は発進する。その速度は音速ミサイル顔負けの速度。光速の域にまで到達していないとはいえ、この地球に存在するどの飛行物体よりも早い速度で飛行していた。
邪悪な気は一直線に進んでいる。途中で曲がることはないだろう。記憶及び推測が正しければ、宇宙船は墜落するように着地するはずだ。場所が悪ければ被害を出してしまう。そうなる前に、悟飯は手を打った。
「はぁっ!!!」
右手を突き出し、そこから光の球が放出される。これこそが"気"によって生成されたエネルギー弾だ。自分の身に宿る生命エネルギーを一点に収束させることによって、攻撃手段にもなれば防御手段にもなる。使い熟せれば使い熟せるほど、便利なものだ。
光は突き進む。光速で地球に飛来する物体目掛けて。
ズドォォオオオンっ!!!!
気功波は宇宙船に命中した。爆発と共に轟音をあげた。周囲にいた人は何事かと音が聞こえた方に目を向けると、何故か空中で煙と炎が上がっている。その光景に首を傾げる者が大半だった。
「……くそ」
だが、その程度でやられるほど貧弱な相手ではなかったようだ。煙越しに人影が見えるし、気も残存している。どうやら仕留め損なったようだ。
「やってくれるじゃねえか。まさか先に挨拶されるとは思っていなかったぜ」
「……!!!?」
悟飯は驚いた。何に?今更自分以外に宙に浮いている人間に驚いたわけでもない。宇宙船が爆発しても尚生き残っていることに対してでもない。ならば何に驚いたのか……?
「まさか地球にこんなやつが潜んでいたとはな。しかも、お前は俺が来ることを事前に察知していた……。どういうわけか知らんがな」
また夢を見ているのか?いや、ここは現実のはずだ。あの世とこの世の狭間でもないはずだ。ならば、何故……?
「お、お前は……!」
「あん?なんだ?俺の顔に何かついてるのか?
顔をじっくりと見る。やはりそうだ、歪なほどに似ている。自分が尊敬している人物と。髪型も、声もそっくりだった。
だが、よく似た別人かもしれない。敵は敵だ。容赦してはならない。
「さて、地球人のガキ。覚悟はできてんだろうな?お前が宇宙船を破壊してくれたお陰で、俺はこの辺境の星に隔離されちまった。せっかくだ、俺様が相手してやるよ、この
「カカ、ロット……?」
その名前は、前世の父の別の名前……サイヤ人としての名前だったはずだ。何故この男が名乗る?同姓同名か?だが容姿も似るなんてことがあるのか?
邪悪なものだから分かりづらかったが、気もよく似ている。他人の空似ではこんなことはあり得ない。気は極めれば指紋のように人を判別することも可能だ。故に、悟空と赤の他人ではないことは確かだ。
「余所見かガキ?」
「うごっ…!!!!」
隙を作ってしまった。だが急所だけは避けた。体勢を整えるために一旦距離を取った。
「すばしっこいやつだな。一体どれほどの戦闘力だ……?」
カカロットと名乗った男は左側に取り付けられた装置、スカウターで戦闘力を計測する。無機質な機械音がしばらく鳴り続け、スカウターの画面に数字が表示された。
「戦闘力、1万だと……?馬鹿な…!地球人は文明が大したことがなければ、戦闘力も大したことがなかったはずだ…!!」
カカロットは少し驚いているようだった。だが、その声とは裏腹に、口角が上がっているようにも見えた。そして体が震え出した。表情からして、恐怖からくるものではない。恐らく、武者震いの類いだろう。
「10000…か……」
数値を聞いて、悟飯はやはりと納得した。気をコントロールできるようになったとはいえ、前世ほどの力がないとは思っていたが、まだその程度だったとは。確かフリーザが変身していない状態で53万だったと記憶している。前世は超サイヤ人に覚醒していたことから、間違いなく53万どころか100万や200万は軽く超えていたに違いない。
やはり、まだまだ鍛える余地はあるようだ。
「まあいい。退屈凌ぎには丁度いいか」
そう言うと戦闘体制に入ろうとしていた。悟飯はダメ元で叫んだ。
「待て!戦うなら場所を変えろ!!!ここでは犠牲者が出てしまう!!!」
はっきり言って、これで素直に聞いてくれるとは思っていなかった。あくまで聞いてくれたらラッキー程度の認識だった。だが、カカロットの動きが止まった。
「……お前は、ここでは全力では戦えない…。そう言いたいのか?」
「あ、ああ……」
「……そうか。邪魔者がいなければいいんだな?」
カカロットは不適な笑みを浮かべた。その表情を見て悟飯は警戒する。
「(こいつ、まさか街ごと消し飛ばすつもりじゃ……!!)」
「ついてこい。こっちには地球人はいなそうだ」
だが、悟飯の予想はいい意味で裏切られることになった。
「……えっ?なんでだ……?お前は、街を消し飛ばそうとは思わないのか?」
「……やけにサイヤ人に詳しいようだな、お前。確かに他の奴等ならそうしただろう。だが、俺はどうでもいい。最高のコンディションの相手を打ち負かしたいんだ、俺は」
実は、このカカロットというサイヤ人は、サイヤ人らしく戦闘狂人なのだが、人の生死に拘ることはない。死んでも生きてもどうでもいいのだ。ただ、上官に殺せと命令さえされればしっかり殺す。戦いは好むが、虐殺に関してはどうでもいいというスタイルなのだ。
「ここなら、他の奴らを気にすることなく戦えるだろう?」
「……ああ」
調子は少し狂ったが、これは都合が良かった。ここなら全力を出しても被害は少ない。
「じゃあ、試合再開と行こうじゃねえか…!宇宙船をぶっ壊しやがったんだ。少しは楽しませてくれよな…!!」
「その前に、一つだけ聞かせてくれ」
「なんだ?今更命乞いか?言っとくが、俺は戦う相手には容赦しねぇぞ?」
「今更しないさ。聞きたいことはただ1つだけだ……。お前は、赤ん坊の頃にこの星に来たことはあるか?」
この質問は、確認だった。この世界が自分が元いた世界のパラレルワールドだとすれば、目の前にいる人物はこの世界における『孫悟空』ということになる可能性が高い。元より地球にいたとなれば、その可能性はさらに増す。
「何故お前がそのことを知っている?正確には、本来送還される予定だったのがドタキャンされたらしいがな。ったく、俺のストーカーか?気色の悪いガキだぜ」
これで確定した。目の前の人物は、この世界における孫悟空。そして、地球で記憶を失うことなく、そのままサイヤ人として生き続けたのだろう。
性格こそはサイヤ人らしく凶暴なものになってはいるが、自分が知るサイヤ人よりも穏やかに思える。もしかすると、仲間にできるかもしれない。かつてベジータだって敵だった。だが色々あって味方とまではいかないが、敵ではなくなった。それなら……。
『もしもオラにそっくりなやつがいても、敵なら容赦するな。遠慮することはねえ。思いっきりやれ』
……そうだ。そうだった。甘さはとっくに置いてきた。まだ出会ったばかりなのだ。容赦してこいつを見逃せば、街を破壊するかもしれない。地球は無事だとしても、他の星を無茶苦茶にするかもしれない。自分の目の前に来た以上、見逃すわけにはいかない。
「はぁっ!!!!」
「……!!!!!」
覚悟を決めた悟飯は、一気に今出せる最大限まで力を引き出した。それによって、カカロットのスカウターは計測許容値を超えて爆発した。
だが、カカロットは焦るどころか、寧ろ嬉しそうだった。
「こいつはデカい獲物を見つけたもんだな。ただの暇つぶし、思いつきで来ただけだったが……」
カカロットが地球に来た理由は、特にない。本当にただの暇つぶしのようなものだ。上官に命令されたわけでもなければ、個人的に資源や星を求めたわけでもない。
ただ、もしかしたら強いやつがいるかもしれない。誰にも認知されていないような戦士がいるかもしれない。戦いを求めて、彼はここに来たに過ぎないのだ。
「ふははは…!!お前は思ったよりも使えそうだ。屍となって俺の踏み台となれ。俺がのしあがるためのな…!!」
上機嫌にそう言ったカカロットもまた力を込める。
悟飯は確信した。この戦いは一筋縄ではいかないと。今の自分は恐らく目の前の相手とほぼ互角。それも戦闘力だけならの話だ。経験はもしかすると向こうの方が上かもしれない。なんならこの世界の『孫悟空』にあたる存在だ。環境は違えど、天才的な戦闘センスは変わらず持っているかもしれない。
自分の父親がどれだけ戦闘の天才か知っているからこそ、悟飯は警戒する。手を抜く気は全くない。
お父さんが味方でよかった。窮地から助かる度に何度も思ったことだ。だがまさか敵になって現れようとは…。人生とは何が起こるか分からないものである。
しばらく睨み合った後に……。
「だぁああああっっ!!!!!」
「はぁああああっっ!!!!!」
拳と拳がぶつかり合う、爆音に近い音が辺りに響いた。それを合図に、孫悟飯としては久々の、星野緑としては初の死闘が幕を開けた。
悟飯は事前に悟空の施しを受けていたため、以前よりも明らかに戦士として強くなっていた。主に戦闘力面ではなく、技能的な面で。
対して、カカロットの技術もなかなかのものだった。下級戦士でありながら、戦闘力は16000だ。サイヤ人の階級は、基本的に誕生時の戦闘力によって決まる。カカロットが下級戦士として扱われているということは、生まれた時点での戦闘力は低め、つまり、潜在能力はほぼないと判断されたのだ。
そんな状態からここまで伸ばしてきたのだ。きっと幾つもの死線を潜り抜けてきたに違いない。
そんなこんなで、技術戦闘力共にほぼ互角の両者。エメが攻撃を当てれば、カカロットが返す。エメが避ければ、カカロットも避ける。完全に互角の勝負だった。
カカロットは楽しそうだ。この死闘を心の底から楽しめている。サイヤ人は戦闘民族という特性もあり、戦闘意欲はある上に、死と隣り合わせになることは日常茶飯事だ。それに、カカロット自身の戦闘狂要素も相まって、全力で楽しめていた。
だが、悟飯はどうだろうか?彼は地球を守ることに必死で、戦いを楽しむ余裕などない。仮に余裕があったとしても、彼は戦いを楽しむことなどない。彼が戦う時は、何かを守る時のみ。こうしてカカロットと対峙しているのも、地球を守るために過ぎないのだ。
「はぁ!!!!」
「ぐっ…!!!」
だが、互角だと思われていた勝負は、傾き始めた。
「どうした小僧。少しギアが下がってきてるんじゃねえか?」
致命的な差。それは体力だった。いくら気を取得したとはいえ、子供の体力には限界がある。既に成熟したと思われるカカロットと比べると、これは大きなハンデとなっていた。これが悟飯に圧倒的な戦闘力があれば話は別だった。互角だからこその致命的な要素だった。
「くっ…!!」
「どうした?攻撃が届かねえぞ?もっとこうして、腕を伸ばすんだよ!!」
「がっ…!!!!」
致命的な要素その2。それはリーチの差。悟飯はまだ4歳児。カカロットに比べて背丈が低ければ、手足も短い。普通の物理攻撃はなかなか通らない。
「……仕方ない…!」
こうなっては、遠距離戦に持ち込むしかない。気の消費が格闘よりも激しくなってしまうが、このまま不利な状況を強いるよりは遥かにマシなはず…。
そう考えた悟飯は、一旦距離を取り、振り向くと同時に魔閃光を放った。
「魔閃光!!!」
「……!!!」
カカロットは間一髪で回避した。あれを食らえば、流石にタフなサイヤ人と言えども、無傷では済まされなかっただろう。
「やるじゃねえか、こぞ…」
「おりゃあッ!!!!」
ドカッッ!!!!!!
「かはっ……!!!!」
悟飯の狙いはこれだった。魔閃光はあくまで陽動。カカロットに隙ができたと同時に、小さい身体を利用して高速で接近。その勢いを殺さぬまま、右手に気を集中させ、鳩尾に強力な一撃を入れた。
「ちきしょ…!最初から、これが狙いだったのか……!!!」
動きが鈍った隙に一気に畳み掛ける。カカロットはできる範囲で防御するが、強烈な痛みによっていつもより体の動きが鈍い。
ある程度畳み掛けた悟飯は、そのままカカロットを地面に叩きつけた。
「ちっ……!!舐めるなよ、クソガキがぁ!!!!!」
「なっ…!」
カカロットの堪忍袋の尾が切れた。彼は怒った。強い悟飯に対してではない。サイヤ人の癖にして、戦闘民族のくせに、無様に地球人如きに負けている自分に対して。
自身のエネルギーを利用して、周囲を爆発させた。当然至近距離にいた悟飯もこれに巻き込まれるが、咄嗟に気を防御に回したことによって、ダメージを最小限に抑えることができた。
爆発が収まれば、辺りに煙が漂ってお互いに相手の位置が把握できない。カカロットはこれを狙っていた。この隙に上からエネルギー弾の雨を降らす。そうすれば、混乱している相手に対して有効打を与えることができるはずだ。
「小僧。お前は地球人にしてはよくやった方だ。できれば名前を聞いておきたかったが、お前のことは忘れねえ。恨むならてめぇの中途半端な強さを恨むんだな、!?」
両手にエネルギー弾を作り出し、今まさに連射を開始しようとした、その時だった。煙の中から突然光がこちらに向かって猛突進してくる。
「ぐおおおっ!!!?」
まさかピンポイントで命中させてくるとは思ってもいらず、カカロットは回避する体制にすら入れずに直撃を受けることになった。
「やっぱりそうだ。ここのお父さん……いや、カカロットは気を読むことができない…!!今がチャンスだ!」
気で相手に魔閃光が命中したことは確認済だ。こちらが基本スペック的に不利を強いられている以上、手に入れたチャンスを無駄にするわけにはいかない。
「はぁあっ!!!!!」
気弾を連射して、一気に畳み掛ける。カカロットも魔閃光を食らったダメージによって動くことができない。断続的に命中している。これは勝機が見えてきた。このまま相手が力尽きるまで気弾を連写すれば……。
「……!!!」
だが、そう上手くはいかなかった。カカロットは全身に力を込め、そこから巨大なビームを繰り出した。気弾の連射は全て当たれば大ダメージとなるが、1つ1つの威力は大したことがない。故に、一撃が強力なエネルギーには負ける。
気がつけば、先程まで悟飯がいた場所の地面は抉り取られていた。その光景から、威力の高さを物語っている。
ここで、ようやく煙が晴れて視界良好になった。目視で確認すれば、カカロットの体には至るところに傷を確認できた。なんとかチャンスをものにできたようだ。
「クソが…!!くそがぁああああっ!!!!!」
「……!!!!」
カカロットが右手に渾身の力を込める。それを悟飯は気によって確認する。カカロットはここで勝負を決めるつもりだ。最後の最後に大技を仕掛ける気だろう。
「俺はお前に…!地球人の、ましてやガキ如きに負けるわけにはいかねえ!!」
右手にあるエネルギー弾が少しずつ大きくなっていく。ただ大きくなっていくわけではない。それと同時にエネルギーの密度も上がる。今の時点で既に地球を破壊できるほどのエネルギーを有している。
「ま、待て!!それを放ったら地球はなくなるぞ!!そうなれば、お前も死ぬぞッ!!?」
「知るかッ!!地球人のガキに負けるくらいなら死んだ方がマシだッ!!!てめぇに負けるようじゃ、意味がねえんだよッ!!!!!」
カカロットは完全に頭に血が昇っていた。地球人如きに自分がいいようにやられているという始末。それもまだ生まれてそう経っていない子供に。カカロットのサイヤ人としての誇りに傷がついた。このまま負けて、最悪生かされるかもしれない。そんな無様な人生はごめんだった。
カカロットが地球を破壊する気が満々だということを確信した悟飯も、迎え撃つことにした。残った自分の力の全てを振り出す。出し惜しみはしない…。
「かー…!めー……!」
この周囲だけがなくなるならまだいい。ここにはほとんど人がいないから。だが、地球がなくなるとなれば話は別だ。
「はー……!!めぇぇ〜…!!!」
これで確信した。相手は孫悟空ではない。似て全く異なる人物。もう悟空と面影を重ねることをやめた。相手を一人の凶暴なサイヤ人として認識した。
地球を守るため、みんなを守るため。アクア、ルビー、アイを守るため…。
「波ぁあああああああッッ!!!!」
悟飯は、父親から伝授された技、かめはめ波を繰り出した。
「な、なに!?ベジータのギャリック砲に瓜二つじゃねえか…!?」
カカロットも一瞬度肝を抜かれた。だがその程度で矛が収まるほど大人しい性格ならば、最初から地球を破壊しようと思い立ちすらしない。
「だが、それがどうした…!!くたばりやがれぇええええッッ!!!!!!」
カカロットもまた、自分の父親の必殺技を右手から繰り出した。単純なエネルギー量ならほぼ互角だった。
バチッ!!!!
お互いの大技がぶつかり合った。最初こそ拮抗していた。互いに譲る気配がなかった。
だが、数十秒すると、その状況も変化した。
「な、なに!?」
カカロットのスピリッツキャノンが徐々に押され始めた。スピリッツキャノンはエネルギーの密度が高いため、大きさの割には強力な一撃を繰り出すことができる。
だが、かめはめ波のようにエネルギーを放出し続ける技ではない。悟飯は気で相手の技の威力を計っているので、スピリッツキャノンに押されないように調整している。そもそも、手を抜く気は一切なかった。だからこその拮抗。そこからの前進。カカロットは悟飯の覚悟を舐めていたのだ。
カカロットに譲れないものがあるように、悟飯にも譲れないものがある。そのことを考慮していなかったのだ。
「ま、負けるわけには、いかねぇ!!」
カカロットも負けじとエネルギー砲を放って応戦する。しかし、かめはめ波の前進は止まらない。止めることができなかった。
「お、押される…!!このままじゃ…!!」
カカロットは自身の限界のことなど忘れ、一気に力を込める。それによって拮抗状態に持ち込むことに成功。だが…。
「波ッッ!!!!!!」
先にも述べた通り、悟飯は手を抜く気など一切ない。より確実に相手を仕留めるため、限界以上の力を引き出した。
「なっ…!!!」
遂にかめはめ波がスピリッツキャノンを飲み込む。対抗する技がなくなれば、かめはめ波が一気に前進することは想像するに容易い。
「がぁああああッッ!!!!!」
カカロットはかめはめ波に飲み込まれ、大爆発を起こした。周囲に強風が発生し、木々を根こそぎ吹き飛ばしていく。一気に周囲は荒野と化してしまった。
「はぁ……!はぁ………!」
悟飯は気をほとんど使い果たしてしまった。まだ戦えないことはないが、さっきまでのような戦闘を続行することは不可能に等しかった。
「くそガキが……!!」
カカロットはかめはめ波を受けても尚生きていた。だがプライドはズタボロだった。これなら死んだ方がマシであった。
同じサイヤ人やフリーザに負けるならまだ納得できた。だが、名も知れない民族の、それも子供に負けるとなれば、戦闘民族の名に傷がつく。
もう、カカロットはエメを殺すことしか考えていなかった。普段の彼なら相手の生死に興味はない。ただし、それは自分が勝利した場合の話。彼はほとんど敗北したことがなかった。上司の采配が良かったのもあるが、彼は戦いの中で確実に成長していた。それ故に、最近は負け知らずだった。
とにかく奴が許せない。そのことしか考えられなかった。奴を倒せるなら何でもいい。何か方法は……。
「……そうだ。この星には……」
カカロットはゆっくり飛び立った。向かったのは上空。雲を突き抜けて、ある方向を見る。
今日は運悪く満月。本当ならこの方法は使いたくなかったが、相手に負けたままよりはよっぽどマシだった。こうなれば徹底的に地球を破壊し尽くしてやる。そんな思いでカカロットは満月を見た。
見た瞬間、鼓動が大きくなる。自分の中に眠る本能が目覚める感覚。段々と理性が弱まり、本能が強くなっていく。
腰に巻かれていた尻尾も解かれ、体が肥大化していく。それと同時に戦闘服も伸びていく。身体中に毛が生え始め、顔は人間のそれとはかけ離れたものに変化していく。
血走った赤い目。突き出る鋭い歯。何より、何よりも大きいその巨体。
カカロットは、大猿に変身した。
最近、仕事が減り始めたような気がする。別に極端に減ったわけではない。ただなんとなく、だ。天才子役と持て囃される私だが、アイツの忠告を一応聞き入れていた。
確かに、傲慢な態度を取られれば、私も不機嫌になる。それを私が周りの人にやっていたのだ。もしかしたらもう遅かったかもしれない。でも、今からやればまだどうにかなるかもしれない。
少し、周りのことを考えるようになった。それによって演技の幅も広がったように見える。以前はとにかく自分が目立つように演技していたが、今は主役以外を務める時には、自分の演技を抑えるようにしている。できるだけ主役を引き立てるような、そんなかませ役。
私の方が上手いのに。私の方がもっと輝ける。そんな本音を押し殺した。
休憩時間になった。最近はアクアともエメとも会っていない。あのアイドルとも共演していない。前にニュースで見たけど、苺プロの社長の子供が刺されたらしい。確かアクアは苺プロの社長の子供だったはず。エメはその弟だと言っていた。だから、アクアかエメ、はたまたその妹らしき子の誰かが刺されたんだろうと思っている。心配しようにも、連絡先を知らないし、個人的な事情で苺プロに電話をかけるわけにもいかない。
苺プロの住所を調べて直接行くこともやろうと思えばできたけど、私はとにかく忙しい。一応死亡したと報道されていないし、星野アイも復帰に向けて練習しているとの報道も入ったので、きっと助かったのだろう。だから今はあまり心配していない。
だけど、もし時間ができれば会いに行こう。そんなことを考えていたら、あっという間に休憩時間が終わりを迎えてしまった。
「きゃっ!!!!」
突然、地面が大きく揺れた。地震ではない。何の前兆もなく、突然揺れたのだ。
スタッフ達は突然のことに呆然としている。一部の冷静な人が机の下に隠れるように指示していた。
少しすると、外から悲鳴が聞こえてくる。それと同時にスタッフ達が避難するように呼びかけていた。
これは訓練ではないことを悟った。何か異常があったのだろう。スタッフの慌てている顔を見ればよく分かる。私は他の人達と、お母さんと一緒に外に出た。辺りを見渡せば、特に異常があるようには見えない。もしかして近所で火事でも発生したのだろうか?だとするとあの振動は爆発によるもの?
「…………えっ?」
みんながある一点を見つめていた。それに釣られて私も同じ方向を見る。すると、そこには目を疑う光景が広がっていた。
怪獣を連想するほどの大きな猿が、口からビームを出して街を蹂躙していた。ビルが破壊される。自衛隊と思われるヘリも腕を振るわれるだけで吹き飛ばされ、爆発する。
戦車は、まるでアリのようにあっさり潰され、爆発する。爆発した跡を大猿が痒そうにしているだけ。
撮影の現場に携わってきたからこそ分かる。これは特撮ではない。では?CGか?否、違う。
これは、現実だ。
私が駆け出したのは、みんなとほぼ同時。只事ではないことを察して、とにかく怪獣がいない方に逃げる。怪物がこちらに気づいていない今がチャンスだ。今逃げなければ、確実に死ぬ。
『グォオオオオオオオオオッッ!!!!!』
大猿の雄叫びが響いた。轟音にも近いその大声に思わず耳を塞ぐ。塞いでも耳に痛みを感じるほどだ。それとほぼ同時に、恐怖に支配された。立ち上がることもできない。
「かな!逃げるよ!!」
でも、ママは私を抱えてくれた。本当なら自分だけでもひと足先に逃げたいだろうに…。
ふと、怪物の方に目をやると、目が合った。血走った赤い目でこちらを見据えてくる。本能的に察した。
「グォオオオオオオオオオッッ!!!!!」
今、私は獲物となった。その巨体が全力で走れば、あっという間に追い付かれる。あの大猿にとって、私達人間は蟻も同然。ただ踏みつけるだけで殺すことなど簡単だろう。
ああ、私は死ぬんだな……。子供ながらにそれを実感した。
「はぁあああッッ!!!!!」
「はっ……?」
目の前を何かが横切った。その直後に大猿がバランスを崩して横に転倒する。それと同時にビルも薙ぎ倒されてしまった。
「な、なに……?」
「君達、逃げろ!!!」
目の前に現れたのは子供。私と同じか、少し年下か。そんな子供があの化け物相手に睨みを効かせている。しかもその子供は……。
「エメ……?えっ?星野エメラルド!?」
「……君は…」
「私よ!10秒で泣ける天才子役!有馬かな!!覚えてる!?」
「もちろん覚えてるけど、とにかく今は逃げるんだ!!死ぬぞ!!!」
分かりやすい警告。他の人がここに駆けつけてきたのなら、すぐに逃げたと思う。でも……。
「あんた、どうする気?私達を逃したところであんたは?ヘリや戦車でも歯が立たない怪物なのよ!?これは撮影でもなんでもない!現実なの!!死ぬわよ!?」
知り合いが死ぬのは目覚めが悪い。せめてこいつには生きてほしい。そんな思いで叫ぶ。
「確かに、死ぬかもな…。でもオレは死なない。少なくとも、あいつを倒すまでは!!」
そう言うと彼は飛び立った。人間が空を飛んだことに対して驚いた……はずだった。でも、それよりも心配が勝ってしまった。無理よ、あんな怪物に勝てるわけがない。それは勇気じゃない。無謀よ。早く戻ってきなさいよ…!!
「かな、逃げるよ!!」
「ま、ママ!でもエメが…!!」
「いいから!!」
悟飯はしくじったと後悔する。きちんとカカロットの死体を確認するべきだった。まさか大猿に変身するとは……。すっかり失念していた。サイヤ人の変身は超サイヤ人だけではないことを。しかも、今のカカロットには理性がないように見受けられる。真っ先に自分に襲いかかるようなことはない。とにかく生き物がいたら蹂躙する。そんなイメージだ。
しかも、先程の大技の撃ち合いの余波によって、カカロットは街中まで吹き飛ばされてしまったのだ。だから余計に被害が拡大している。
「(確か尻尾を切れば、大猿化が解除されるはずだ…!!)」
先程から尻尾を狙ってはいるのだ。しかし今のカカロットの戦闘力は膨大。恐らく16万ほど。消耗によって戦闘力が減少していたとしても、10万は超えるだろう。今の自分にはあまりにも身が重すぎる。理性がないからまだどうにかなっているに過ぎない。だが、理性はなくとも本能で尻尾を守るようにして動いている。だからなかなか切りにいけないのだ。
口にエネルギーを溜め始めれば、口を叩いて無理矢理抑える。踏み潰そうとするなら、バランスを崩して転倒させる。転倒させた隙に尻尾を切りにかかろうとするが、手が伸びてくるため回避する。掴まれれば恐らく助からない。早く尻尾を切りたいが、焦ると自分が死ぬ。自分が死ねばこの怪物を止められる者はいない。
故に、行動は慎重になってしまう。
「くそ……!」
そして、悟飯も消耗している。恐らく戦闘力にして1万もないだろう。あまりにも理不尽な戦いだが、諦めるわけにはいかない。自分以外ではこの化け物を止めることはできない。
「グォオオオオ!!!」
「ぐわっ!!!」
とうとう大猿の攻撃が当たってしまった。それによって地面に叩きつけられた。今の一撃で骨を何本か折ったかもしれないほどに痛みを感じている。
すぐに立ち上がって体制を立て直そうとしたが…。
「ぐわっ…!!ああ…!!!」
掴まれてしまった。
「うわぁああああああッッ!!!!」
今にも握り潰されそうだ。大猿の力は強い。動きも鈍そうで案外素早い。このままでは、悟飯が死ぬ。自分が死ぬ。
「ッッ!界王拳ッッ!!!!」
「グォ!?」
ここで、悟飯は界王拳を使用した。これは狭間の世界で悟空に教えてもらったものだ。しかし、今の悟飯が使うにはあまりにも都合が悪すぎた。
界王拳は戦闘力を大幅に上げることができる便利な技……と言えば聞こえはいいが、厳密には無理矢理戦闘力を引き上げる技だ。これは気の精密なコントロールと頑丈な肉体の両方がないと、使用者に相当な負担を強いることになる。
悟飯は潜在能力そのものは悟空より優れていたが、繊細な操作等の技術は悟空の方が格上だった。そこに関しては狭間の世界で修行をしたことによってなんとか調整できているのだが、体の負担に関してはどうしようもない。
子供の身体では、大人の時よりも体力が少ない上に繊細だ。子供が界王拳を使用するとなると、大人の時よりもリスクが高くなってしまうのだ。
「ッ…!!はっ!!!!」
「グォオオオオオオオオオ…!!!」
界王拳による負担を誤魔化しながら、悟飯は気弾を大猿の片目に命中させた。
大猿が苦しそうに雄叫びをあげる。しかし、やっと隙ができた。ようやく切ることができるが、まともな気円斬を繰り出せるほど気が残っていない。必死の思いで生み出した気円斬は極小のものだった。これも悟空によって教えてもらった技。元々クリリンが生み出した技だった。
今後のことを考えて色々な技を教わったのは正解だったようだ。その小さな気円斬でも、弱点の尻尾を切るには十分だった。
「グォ………!!?」
尻尾が切られたと同時に、動きが止まった。すると徐々に縮んでいき、毛も抜け、最終的には普通の大人と大差ないサイズにまで小さくなっていた。
「ちくしょう……!大猿になっても勝てねえとは……!理性さえ維持できれば…!!」
カカロットはエリートサイヤ人顔負けの戦闘力を有しているにも関わらず、大猿化すると理性を失う。戦闘力はあれど下級戦士。これこそがエリートとの差なのかもしれない。
だから使いたくなかった。でも負けるよりかはマシだった。だが、その苦肉の策すらも通用しなかった。
残った体力で歩けば、悟飯が倒れていた。気円斬を放って本当に力を使い果たしてしまったのだろう。立つこともできない様子だ。
トドメを刺そうとしたが、やめた。殺したところで、自分はここから脱出することができない。メディカルマシンもない。
「……はっ?」
だが、悟飯は立ち上がった。もう体力は残っていないはずだ。骨も折れているはずだ。なのに、悟飯は立ち上がった。
「お前、正気か……?」
「お前を倒すまで、オレは死なない…!!」
最早死を覚悟している様だ。戦闘民族である自分がここまでの決意で戦ったことがあっただろうか?自分より、相手の方がよっぽど戦闘民族ではないか…。そう感じて、怒りを感じつつも、認めた。認めざるを得なかった。
「……俺の負けだ」
「えっ……?」
「降参だ。もう俺はお前を殺す気はない」
「何を言っているんだ……?」
「ところで……、ひとつ提案がある。俺の仲間にならないか?」
「……なんだって?オレは…!」
ビッ!!!!!
「……!!?」
突然、悟飯の胸を一本の光が貫いた。幸いにも心臓がある左側ではなかったが、それでも致命傷は免れない。
血が止まらない。気も消耗していることもあって、意識が薄れていく。悟飯は遂に立つことも不可能になった。
「(しまった…!今まで必死に戦っていたから、もう1人の存在に気づかなかった…!)」
誰がやった?カカロットではない。
カカロットはプライドをかなぐり捨てて、自身の野望……というより、復讐を完遂するために、悟飯と個人的に同盟を結ぼうとした。そうでもしなければ奴は殺せないから。
だが、無情にも完遂から遠のいた。
「は、ははっ!!大丈夫かカカロット!!助けにきてやったぞ!!」
やった本人は本気で助けたつもりなのだろう。だが、この時ばかりは余計なお世話というレベルの話ではない。自身の野望に一歩どころか10歩ほど近づいたかと思われた矢先にこれだ。
仮に、本当に助けられたとしても、それはそれでプライドが傷付けられる。どちらにしろカカロットにとっては愉快なことではなかった。
「……ラディッツか」
悟飯を撃ったのは、カカロットの実の兄、ラディッツ。弟と同じく下級戦士という扱いだが、戦闘力は1500ほど。対してカカロットは16000。普通なら下級戦士はラディッツ程度の戦闘力になるのだが、カカロットは特に強者との戦闘を好む。強者相手には逃げるラディッツとは違い、成長する機会を一つも逃さなかったようなイメージだ。
「貴様はなんてことをしてくれたんだッッ!!!!」
「ぐぁっ…!!な、なにを……!!」
カカロットは今出せる最大限の力でラディッツを殴った。せっかく奴を倒す道筋が見えたのに、余計なことをされたせいで台無しだからだ。カカロットは人生で2番目に苛立っていた。
「俺はこいつを利用しようとしていた!仲間にしようとしていたのに、貴様が殺した!!弱虫の癖に余計なことをしやがってッ!!!!」
「お前…!俺がこいつにトドメを刺していなければ、お前が殺されていたんだぞ!?分かっているのか!!?」
「てめぇみたいな臆病者に助けられるくらいなら死んだ方がマシだッ!!!」
実の兄に対してとんでもない言い様である。だが、カカロットは臆病者が嫌いだ。特に、戦闘民族でありながら、強者を前にして真っ先に逃げるラディッツは。同じ血を分けた兄弟であることを恥じてるくらいには。
「畜生…!!どうしてこうもうまくいかねえんだ…!!畜生…!!畜生…!!!」
「か、カカロット。そいつを仲間にしてどうする気だ?この惨状を見るに、こいつはとてもじゃないが仲間になるとは思えんぞ?」
恐る恐るラディッツは聞く。何故わざわざ地球人なんかを勧誘するのか?確かにカカロットと互角の戦いを繰り広げられる相手ならば、フリーザ軍に入れれば大手柄かもしれない。だが、カカロットはフリーザ軍に貢献する気など、あの時以来から全くないのだ。寧ろぶっ壊してやりたいという思いだった。
「いいぜ、答えてやる。だが…」
カカロットはラディッツからスカウターを取り上げると、
「なっ…!なにを…!!」
ラディッツが確認した時には、すでに使い物にならない状態になっていた。
「スカウターが機能してちゃ聞かれるだろ?今の段階でそれは避けたいんでな」
「聞かれてまずいようなことでもあるのか?まさか、ベジータを倒してサイヤ人の頂点に君臨するつもりか…?」
「そいつも悪くねえな。だが、
「上……?ま、まさか………」
ラディッツは戦慄する。いくら下級戦士としても、サイヤ人としても規格外の強さを持っているカカロットでも、それは無謀ではないかと感じた。ラディッツは自分の勘違いであってほしいと心から願うが…。
「俺はフリーザをぶっ殺す。そのために強くなりたかった。だからそいつを敢えて生かして、トレーニング相手にするつもりだった」
サイヤ人は戦えば戦うほど強くなる種族だ。死にかけから立ち直れば戦闘力は数倍にもアップする。その特性も併せて利用して、いずれはフリーザを倒してやろうと模索していたのだ。
「な、何故そこまでフリーザ様を…?」
「様付けとは…。てめぇは相変わらずフリーザの犬ってわけだ…。呑気なもんだな」
「貴様…!さっきから好き勝手言いやがって…!!」
「お前は、自分の父親と母親を殺したやつに尻尾を振るのか?」
「…………なに?」
ラディッツは耳を疑った。自分の両親を殺した?誰が?会話の流れからしてフリーザがだ。
「な、なんだって?そんなはずは……」
「俺はこっそりフリーザ達の会話を盗み聞きしたんだよ。いや、偶然知ったって言い方の方が正しいな。単刀直入に言うぜ、ラディッツ。いつまで俺達の故郷をぶっ壊したやつに尻尾を振るつもりだ?」
ラディッツは納得した。カカロットがこの地球人を利用しようとする理由を。フリーザに固執する理由を。どうして強者から逃げずに挑み続けたのかを。
「お、俺は、良いように働かされてたってことか……?」
「そういうことだ」
ラディッツはショックを受けているようだった。今まで尽くしてきたと思っていた上司が自分の故郷を、両親を殺したという事実に。カカロットがわざわざこんな嘘をつくはずがない。それに今までの行動にも納得がいく。
ラディッツは、ポケットからあるものを取り出した。
「……!!そいつは!!」
「ああ。携帯型の回復薬だ。メディカルマシンの成分と同じものが含まれている。傷口に塗れば、取り敢えず死は免れるだろう」
「急げ!さっさと塗るんだ!!」
カカロットの死闘を繰り広げ、死にかけてしまった悟飯。
一方で、カカロットは自分の復讐を完遂するために、悟飯を利用しようとしている。打倒フリーザ。その高い目標を達成するためには、この地球人が必要だと直感で感じたのだ。
運良くラディッツが持っていた携帯型の回復役で一命を取り留めることができそうだが、これからどうなる?
*後書き長文注意
まさかの悟空が敵サイドとして登場。本編にもあった通り、この世界の悟空は頭を打たずにそのままカカロットとして、サイヤ人として生きています。その為、決していいやつではありません。だが、戦闘好きという点と、無闇に人を殺さない(戦いさえできれば生死は問わない)部分は原作悟空(未来悟飯の知る悟空)と同じっちゃ同じではあります。
今後の予定としては、幼年期〜少年期で一気にDBメインのストーリー、つまりバトルパートをやって、悟飯が中高生になる辺りで一気に推しの子パートに切り替えようかと考えております。
バトルパートをやらずにそのまま推しの子パートでもいいかと思ったんですけど、それだと未来悟飯はいつまで経っても安心して日常生活を送ることができないんじゃないか?と思ってしまったんですよね。
理想は人造人間を出して撃破させることなんでしょうけど、この世界にレッドリボン軍はいないし、仮にDr.ゲロもいたとして、恨みの対象がいないので強力な人造人間が生まれることはほぼないしょうしね。
幼年期〜少年期のバトルパートを経て、安息を手に入れさせ、ようやく夢に専念できるって状況を作り出したいのです。『孫悟飯』という戦士としてではなく、『星野緑』という一人の人間としての人生を送らせる為には、バトルパートは必要不可欠なのではないかと思いました。
また、元いた世界のトランクスに顔向けできるようにする、逃げてきたわけではないことを証明するという意味合いでもバトルパートは必要だと判断しました。
もう少し辛い目にあうが、それは今後の幸せのためには必要なことなんだ…。悟飯が報われるためには…。えっ?元いた世界の人造人間?それはトランクスが倒してくれたからセーフ。
カカロット:戦闘民族サイヤ人の下級戦士だが、度重なる死闘によって、戦闘力16000まで成長した。自身の故郷と両親を殺したフリーザを憎んでおり、いつか殺してやろうと考えていたところ、地球人としては異例の戦闘力を持つ
星野
ラディッツ:基本的に原作と同じ。弟が何故地球に行ったのか気になり、追跡したところ、大猿カカロットが敗北して戦慄するも、カカロットを助ければ評価が上がるのではないかと思い、エメに不意打ちを仕掛けた。結果、弟にブチギレられた。
ここからは個人的な解釈。カカロットは惑星ベジータで育った場合でも、母親にはきちんと育てられるだろうと推定。ラディッツは、幼少期よりベジータと同じチームに組まされていたことにより、ギネという母親がいながら、弟にも容赦ない性格になったと推定。ただし、ここのラディッツは弟相手にビビり散らかしている。
カカロットはギネに愛情を注がれて育ったが、バーダックの影響を受けて戦闘員気質になる。だが、ギネの影響により、家族に対して愛着を持っている。ラディッツもなんだかんだで家族として扱っています。それはそれとして、サイヤ人のくせにビビりなのが気に入らない。
……てな感じのイメージでございます。一応一区切りついたものの、まだまだエメの戦士としての役目は終わりませぬ。ちなみに今回の大猿戦の場所は東京ではない、微妙に
有馬かな距離バグ幼馴染化計画は確実に進行しております。