推しの飯/絶望の未来から転生した戦士   作:Miurand

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 期間が大分空いてしまった……。かと言って書き溜めができているということもなく……。
 地の文のおいて、エメラルドのことを悟飯とエメでごっちゃに表記しておりますが、これは一応意図的なものになります。例えば、戦士として彼と表記する時は悟飯。日常生活においては基本的にエメ……、みたいな感じです。

 今更ですが、推しの子を原作に設定している理由は、悟飯がアイの子として生まれ変わっていること、今後の展開を考慮してのことです。今は誰がどう見てもDBメインですが、少年期を過ぎるとと推しの子がメインになる予定なので。



第八話 復讐

この世界の孫悟空、カカロットとの死闘を繰り広げた悟飯は、苦戦しながらも見事に勝利した……はずだった。

 

ラディッツに不意を突かれて瀕死状態に。ところが、カカロットの野望によって、悟飯は一命を取り留めることになった。

 

しかし、カカロットも戦闘によるダメージが思ったよりも酷かったようで、悟飯の無事を確認すると同時に倒れてしまった。

 

ラディッツが二人をどこに運ぼうかと悩んでいる時……。

 

「あ、あなた!こんなところで何をしているんですか!?危険だから直ちに離れてください!!」

 

「あっ…?」

 

先程の防衛戦で生き残った隊員達だった。ラディッツの姿を確認するなり、変な格好をした一般人だと思い込み、早急に避難するように呼びかける。

 

「なあ、この星には治療できる施設はあるか?あるなら、このガキをどうにかしてくれ」

 

「えっ…!な、なんて怪我だ…!!直ちに手当を!!」

 

「そこの男性の保護も!!」

 

カカロットの戦いで重症を負って倒れたエメは、真っ先に隊員達に運ばれる。続いてカカロットも運ばれることになるのだが、ラディッツは難色を示す。

 

サイヤ人はタフだから必要ないと言うが、隊員達はその言葉に耳を傾ける気はない。とにかく人命救助優先という姿勢だった。

 

「あと、あなたもどこか怪我している可能性もあるので、念のため病院に…」

 

「いや、俺は必要ない」

 

「いえ、万が一何かあったら大変です!」

 

「お、おい離せ!!!」

 

自分の言うことを聞かない地球人に対して苛立ちを覚えるも、カカロットの企みを思い出して、それを堪えることにした。あの子供を復讐仲間として引き入れるなら、恐らく無駄な殺生は避けるべきだろうと判断した。

 

 

 

『突如現れた大怪獣!?自衛隊でも歯が立たない強さ!!』

 

『まるで怪獣!大きな猿が出現!!』

 

『諸外国、一時は核兵器の使用も検討…!?』

 

こんな感じの見出しの記事が何種類も発行され、テレビでも報道された。映像はほとんど残されておらず、あるのは一般人が撮影してネットにあげたもののみ。その映像データを解析したところ、編集した痕跡は見受けられなかった。つまり、その映像に映る光景は実際にあったものだということだ。

 

また、当時現場にいた人たちからの証言もある。俄かに信じ難いことではあるが、突然大猿が現れて、突然消えたとしか言えないのだ。現在、被害に遭った街は封鎖され、国主導による調査が行われているところだ。

 

ちなみに、エメがこの戦いに関わっていたことは公に出ていない。というのも、一般人が持っていたスマホのカメラではエメの動きを捉えることができなかったというのと、そもそも逃げるのに必死な人が多かったことも要因として挙げられる。

 

運は良かったのか悪かったのか、端的に言えば、エメは戦士バレすることはなかった。

 

「エメ!!?大丈夫!!?」

 

「あ、はは。うん。なんとかね……」

 

戦いがあった日の夜。悟飯が別の病院に搬送されたという情報を聞きつけたアイは飛び入る勢いで入室した。

 

仕事だというのに、連絡が入って飛び出してきてしまった。本当はいけないことだと分かっていたが、我が子の、特に、エメは何度も無茶をした過去があるため、心配になってしまったのだ。というか、『自衛隊に保護された』なんて連絡が行けば、心配にならない親はなかなかいないだろう。とはいえ、これは社長夫妻に向けた連絡だった。アイの実子であると見抜かれたわけではない。

 

「どうして病院を抜け出したの!?しかも怪獣がいるところに行ったんでしょ!?どうしてそんな無茶をするの!!!?」

 

「そ、それは…………」

 

言えるはずがなかった。地球を懸けて戦っていたなんて。仮にそんなことを言っても信じてもらえるはずもない。それに、悟飯はできるだけ自分の正体を隠しておきたかった。

 

「でもよかった……。生きててくれて、本当によかった……」

 

アイは説教を中断し、安堵のあまり思わず抱きしめた。その瞳からは涙が溢れている。搬送された当時は意識不明の重体だと聞かされていた。今度こそ死んでしまうかもしれない。あの時のようになってしまうかもしれない。それが怖くて、アイはエメが生きていることを実感するために、しばらく抱き続けた。

 

この様子を見て、悟飯は果たして明かした方がいいのか、明かさない方がいいのか迷ってしまった。

 

自分が戦士だと明かせば、子供が戦う必要はないと言われそうだし、明かさないと今回のように心配される。どうすればいいかが分からない。

 

「あ、あの〜…?そろそろ離してくれないかな……?」

 

「ダメ……。恥ずかしいの?でも心配させた罰だよ」

 

「いや、そうじゃなくて……」

 

もう慣れたから恥ずかしいわけではない。だが、痛いのだ。ラディッツが持っていた携帯型回復薬の効果が出たとはいえ、折れた骨はまだそのままだ。あまり強い力で抱きつかれると激しい痛みを伴うのだが、戦士故か、悟飯は微妙に耐えることができてしまった。そのため、長い間苦しむことになる。

 

「おい。そのガキは骨が折れてんだ。離してやれ。というか、見れば分かるだろ」

 

「えっ?そ、そうだったの!!?痛いなら痛いって言ってよ!?」

 

「あ、あはは……」

 

アイはその指摘を聞いてやってしまったと思った。子供のことを考えず、自分のしたいことを優先してしまった。これでは母親失格ではないかと落ち込んでしまった。

 

「ごめん…。でもオレは大丈夫。そんなに痛くなかったから」

 

「本当に…?」

 

「本当だよ」

 

そう言って、悟飯は慰めるようにアイの頭を撫でた。これではどちらが子供なのか分からなくなってしまうが、前世分の歳を足せば、悟飯の方が上なので問題はない……はずだ。

 

「……って、あなたは誰?どうしてエメと同じ病室にいるの?」

 

「……俺はカカロット。こいつと同じ場所で倒れたんだとよ」

 

カカロットも、悟飯ほどではないが死にかけるほどの死闘を繰り広げた。しかもメディカルマシンもないため、安静状態を余儀なくされた。

 

「……お前は、そいつの母親か?」

 

「えっ?違うよ?この子は社長夫妻の子供なんだ。エメラルドって言うの。素敵な名前でしょ?」

 

「そうか」

 

カカロットは興味なさそうな返事をする。先程、エメを心配しているアイは間違いなく母親の顔をしていた。カカロットは自身の母親を、一瞬だけとはいえ幻視した。だから小僧の母親だと思っていたのだが、どうやら違ったようだ。

 

地球人は母親でなくとも愛情を注ぐものなのかもしれないと、勝手に納得していた。

 

「これでまた入院期間伸びちゃったね〜。今度から24時間体制で看護師さんに監視してもらおうかな?仕事がなければ私がやるんだけど……」

 

「い、いや!流石にそこまでしなくても……」

 

「じゃあなんでエメはココにいるのかな?」

 

アイの目が一瞬だけ黒く光った。以前の怪我は完全にストーカーのせいだったが、今回は悟飯にも責任がある。素直に聞き入れるしかなかった。

 

「……お前、やっぱりそいつの母親だろ」

 

カカロットは小さく呟くが、アイとエメには聞こえなかった。

 

立て続けにアクアとルビーも入室してきた。

 

「エメぇ!!!何やってんだお前ぇ!!!」

 

「病院を脱走した挙句に大怪我をして別の病院に入院って、何してんのエメ!?もしかして反動で不良になったの!?ママを心配させるとか無期懲役レベルの有罪なんですけど!!」

 

「クソガキ共!!少しは静かにしやがれッッ!!!!」

 

カカロットの一喝によって、病室は取り敢えず静かになった。

 

 

 

「はぁ?外の空気を吸いたかった?ならわざわざ危ないところまで行く必要ないだろうが。何考えてんだ」

 

アクアの指摘はごもっともだった。上手い嘘も思いつかない悟飯は、ただ説教を聞き入れるしかなかった。自分が戦士であると公言しない以上は仕方ない。

 

「ほんとさ〜。エメはなんなの?もしかして甘え下手なの?」

 

「……ん??」

 

どうしてそんな発想になるんだ?という意味を込めて、悟飯は首を傾げた。

 

「ほら、あれだよ。私なんて死ねばいいんだって言って、敢えて構ってもらおうとするやつ!!エメのやってることはあれと一緒なのッ!!かまちょなの!!分かる!?甘えたいなら素直に甘えること!!分かった!?」

 

「何言ってんだお前?」

 

「なんだ〜。エメも甘えん坊さんだったんだね〜」

 

ルビーの熱弁によってアイにも勘違いされる始末。変に誤魔化した結果がこれだ。流石に想定外だったが、変に戦士だと勘付かれるよりはマシだと割り切った。

 

「じゃあね、エメ。今度はちゃんと大人しくしてるんだよ?」

 

「ちゃんと安静にしてろよ」

 

アイから無言の圧力がかかる。そんなことしなくても、今のエメは動ける身ではない。動きたくても動けない状態なのだ。

 

「……さて、邪魔者は消えたな」

 

同じ病室に入院しているカカロットがようやく口を開いた。先程までは親子で談笑している様子をボーッと眺めているだけだった。その時の表情は、どこか遠くを見ているような、懐かしむような、そんな戦闘民族らしくない表情だった。

 

だが、今は違う。流石に戦闘するときほど引き締まった表情はしてないが、先程よりは引き締まっている。どうやら真面目な話をするつもりのようだ。

 

「この前はラディッツに邪魔されちまったが、あの時の続きといこうか」

 

「仲間にならないか……。だったな?」

 

「ああ」

 

「却下だ。お前は理性を失っていたとはいえ、沢山の人を殺した。そんなやつと仲間になることはできない」

 

「いや、何もフリーザ軍に入れと言っているわけではない。あくまで、俺個人と仲間にならないかって言ってるんだ」

 

「……一緒に殺戮を繰り広げようと?」

 

エメは……否、悟飯はカカロットに対して警戒していた。同じ顔で、この世界における孫悟空だとしても、自分の父親ではないし、むしろ敵だ。悟空と同じ顔だからこそ、余計に警戒してしまうのだ。

 

「違う。俺はどうしてもぶっ殺してえ奴がいる。だが、俺達サイヤ人だけだとどうも厳しいんだ。そこでだ、地球人としては異例の戦闘力を持つお前に協力してほしいんだ。お前には可能性を感じる」

 

頭を下げるとまではいかないが、サイヤ人が珍しく下手に出て自分に頼み事をしてくる。その事実に、悟飯は詳細を聞いてみる気になった。

 

「……どうしても倒したい相手…?まさかフリーザか……?」

 

「その通りだ。あいつだけはどんな手を使ってでもぶっ殺してやりてえって思っている」

 

カカロットは今にも地球を滅ぼしてしまいそうなほどに険しく、憎しみの籠った表情になった。その様子に、悟飯は余程屈辱的な目に遭ったのかと聞いたが、どうやら違うらしい。

 

「俺は惑星ベジータという星に住んでいた。そこはサイヤ人達の故郷だったんだがな、フリーザにぶっ壊された」

 

悟飯は驚かなかった。何故なら前世の時と同じ歴史を辿っているから。悟空がカカロットとして生きているとはいえ、宇宙情勢は前世と大差ないように思える。

 

「……フリーザにこき使われるのが気に食わない……っていうことか?」

 

「違うな。それは俺じゃない。いや、正確には気に入らないのは確かなんだが、俺はただ復讐したいだけだ。俺の故郷を、父ちゃんと母ちゃんを殺したやつにな」

 

「……!!?」

 

思わず目を見開いてカカロットの顔を見た。地球人の感性に訴えかけているのか?いや、そうには見えない。そもそも典型的なサイヤ人がそんな感性を理解できるはずもない。どこか上の空で、だが確実に特定の誰かを恨んでいるような、そんな表情をしている。これはカカロットの本音なのは間違いない。決して自分を騙して良いように利用しようとしているわけではないことは、なんとなく分かった。

 

「……どういうことだ?サイヤ人が家族の死を気にするのか……?オレが知るサイヤ人というのは、家族だからと、身内だからと言って特別な情を抱くような種族ではないはずだ……!」

 

「ああ。サイヤ人はそれが普通だ。だけど、俺の母ちゃんは異常だった。お前ら地球人からすればマトモに見えるのかもしれねえが、サイヤ人達から見れば異端だったろうさ」

 

すると、カカロットはいつの間にか自身の母親の話題にすり替えた。カカロットは頼んでもいないのに、自身の母親、『ギネ』の話をしてくる。

 

悟飯はまたしても驚いた。母親を語る時のカカロットの顔は、戦士の顔ではなかった。戦闘民族の顔でもない。サイヤ人らしい顔でもない。

 

自分の知っている顔だった。かつての父親が、自分に見せてくれたソレと一致していた。否、下手するとそれよりも穏やかかもしれない。

 

カカロットは、サイヤ人でありながら愛を知っている。サイヤ人は男女が結ばれても、基本的に子供を授かることしか考えておらず、夫婦仲は良いことはほとんどない。それ故に、親子仲も悪くなる。なんなら親の戦闘力を超えた子供が親殺しをするなんてことも珍しくなかった。

 

「……父親の方は?」

 

だが、父親の話はしない。母親だけが特別だったのか?父親はやはりサイヤ人らしい人だったのだろうか?この際、悟飯は聞いてみることにした。

 

「ああ…。父ちゃんはちゃんとサイヤ人だった。なんなら、下級戦士達の憧れで、エリート戦士達に嫉妬されていたくらい、優秀で屈強な戦士だった」

 

カカロットの父親、バーダックも下級戦士ながら戦闘力は10000に到達していた。上級エリート戦士と並ぶどころか、殆どサイヤ人の頂点に立つ存在と言っても過言ではなかった。

 

元々は大したことなく、下級戦士に相応しい実力だったが、最前線に立ち続けたことによって、ここまで成長したのだ。

 

そんな好戦的なバーダックは、当然ながらサイヤ人としては典型的な性格だった。誕生したカカロットにかけた初めての言葉は、『クズが』。地球人基準で考えれば、毒親もいいところだが、サイヤ人基準ならば何もおかしくなかった。

 

「母ちゃんと違って素っ気ない人だったが、俺は純粋に憧れた。下級戦士だと馬鹿にしてくるやつを、実力で黙らせるその姿には、素直に憧れた……」

 

以来、カカロットはバーダックのような戦士に。実力で相手に示せるような戦士になりたいと強く願うようになった。そうしてカカロットは下級戦士として、確実に力を身につけていったその時……。

 

惑星ベジータは、小惑星との衝突によって消滅したと知らされた。

 

両親の所在を軍の者に聞いた。だが、運悪くサイヤ人は惑星ベジータに招集されていた。当然、バーダックもその招集に従って惑星ベジータに戻っていたはずだ。カカロットは特にフリーザに対して忠誠心はなかったので指示を無視し、仲間達と共に星を攻略していた。それが幸いし、生き残ったのだ。

 

「だが俺は不思議に思った。科学技術において右に出る者はいないフリーザ軍が、果たして小惑星の接近を見逃すのかってな。それよりも何十倍も速い宇宙船の接近を観測できるってのに。そこでフリーザに直接聞きに行こうとした、その時だった」

 

 

『フリーザ様。サイヤ人が何匹か残っていますが、どうしますか?処分しますか?』

 

『いいえ、まだいいでしょう。ベジータさんとカカロットさんもフリーザ軍によく貢献してくれますからねぇ。殺すのは反抗の意思が見て取れるようになってからでも遅くないでしょう』

 

『でしたら、利用するだけ利用してから惑星ベジータを破壊しても遅くなかったのでは…?』

 

『大勢が一気に大猿になって反抗されると流石に手を焼きますからね。優秀な方だけを残して数を減らしたかったんですよ』

 

 

 

『……はっ?』

 

 

「……」

 

「偶然聞いただけだった。その場で怒り狂いそうになったさ。だが、それでフリーザを倒せねえのは分かっていた。だから俺は力をつけてきた。今日までな」

 

悟飯はただ黙って聞いていた。カカロットが本当に打算なしでフリーザを倒したいだけなのか?両親の仇を討つ為に自分に協力を申し出たのか?それを見極めるために。

 

「……分かった」

 

「あん…?」

 

「オレも協力する。フリーザを倒すために」

 

「いいのか?俺はお前を利用して強くなるつもりだ。フリーザを倒した後、俺はお前を殺すかもしれねえぞ?」

 

「だったらオレがお前を殺す。それだけだ」

 

「言ってくれるじゃねえか、小僧」

 

悟飯は了承した。カカロットに少しだけ同情したのも理由の一つだが、やはり一番大きな理由として挙げられるのが、利害の一致。

 

フリーザは放っておけば地球にも手を出してくるかもしれない。それが何年、何十年、何百年後か分からないが、少しでも危険を排除しておきたかったし、自分はもっと強くなりたい。何があっても守れるように。そういった意味では、屈強なサイヤ人が修行相手として付いてくるのは、とても魅力的な提案だった。

 

「だが、仲間になるのはフリーザを倒すまで。そして協力するのは修行とフリーザ軍を相手にする時だけだ。それ以外はお前には協力しない。そして、お前の都合で人を殺そうものなら、すぐにオレはお前を殺す。それが条件だ」

 

「我儘なクソガキだな。だがいいぜ。フリーザを倒せる道筋が見えてきたんだ。俺の全財産でも何でもくれてやるさ。お前が望めばの話だがな」

 

カカロットは、悟飯の返事にまだ自分が信用されていないことを察する。それを上手く丸め込むために報酬のことを言い出したが…。

 

「そんなものはいらない。オレはこの世界が平和であれば、あとは何も望まない」

 

彼は贅沢を望まない。そもそも報酬が欲しくて、見返りが欲しくて戦士をやっているわけではないのだ。いや、強いて言うならば、『平和』という見返りを欲している。だが、カカロットではそれを報酬として差し出すことは不可能なのだ。

 

「そうかよ。クソ生意気なガキだな。いずれはお前をも超えてみせる。例えお前が突然変異で生まれた上位種だとしても、俺は必ず超える」

 

「ダメだね。少なくとも、お前が完全な善人になるまでは、超えさせてやるものか」

 

彼らは終始険悪だった。だが、お互いの強さは信頼し合っている。そんなやり取りだった。

 

「さて、気難しい話はここまでにしよう。トレーニングしようにも、今のお前じゃ厳しそうだからな」

 

そう言って、カカロットは無断で立ち上がった。看護師には安静にするように言われていたが、戦闘民族として育った彼が素直に聞き入れるはずもなかった。サイヤ人は無茶してなんぼの種族なのだ。

 

「……フリーザは必ず倒す。そして、二度とあんなことにならないようにする…!!」

 

星野緑は……。孫悟飯は、戦士として改めて気を張る。二度とあんな悲劇を訪れさせないために。今度こそ、世界に平和をもたらすために。

 

 

 

「あっ?なんだお前?あの小僧のつがいか?」

 

「張り倒すぞあんた」

 

なんと、病室のドアを開けると、エメの見舞いに来たであろう有馬かながいた。カカロットは当然ながら、天才子役の有馬かなを知らない。ただの子供でしかないのだ。

 

「ねぇ、エメが戦うってどういうこと?さいや人って何?聞いたことがないわ。ふり〜ざ軍って何よ?」

 

「てめぇに説明してやる義理はねえ。なんでガキのお守りを俺がしてやらなきゃならねえんだ」

 

カカロットは決して子供好きというわけではない。エメに対して興味を持っているのは、明らかに地球人離れした強さを持っているからに過ぎない。他の地球人は死のうが生きようがどうでも良かった。だからこその塩対応。

 

「何よあいつ…!きっと仕事も住む場所もないお先真っ暗な人間に違いないわ…!!」

 

去るカカロットに聞こえない声量で文句を言い、扉を開けた。

 

「あっ。有馬さんじゃん。こんにちは」

 

「なんでそんなに元気そうなのよ…」

 

声こそ元気そうだが、体を見れば包帯だらけ。とても健康と言えるような状況ではなかった。

 

「ねえ、あんた。戦うってどういうこと?」

 

「っ!?」

 

悟飯は固まった。まさか先程の会話が聞こえているとは思ってもいなかったから。そして、悟飯があからさまに反応するのを見て、有馬は確信した。あれは冗談でも厨二特有のものでもないということを。

 

何より、先日の対怪獣戦の一部始終を見ている時点で、エメが他の人とは違う特別な人間だということは、なんとなく分かっていた。

 

「またあんな怪獣みたいなやつと戦って死にかけに行くの?今回はたまたま運が良かっただけで、今度は死ぬかもしれないのよ?」

 

「そうかもね。でもオレは戦わなきゃいけない。そうしないと、後悔することになるから……」

 

「なんでよ?あんたはまだ子供でしょう?そういうのは大人に任せなさいよ!何もあんたが必死になってやることじゃないわ!!」

 

有馬はあくまで一般論を唱える。子供が戦うなんて、地球人の、少なくとも日本人の感覚ではあり得ないこと。子供は親に、大人に守ってもらって当然というのが、日本人としての常識だろう。

 

無論、悟飯はそれを否定する気はないし、実際にアイに言えば、戦いに出ることを断固拒否するだろう。悟飯の感覚がズレているわけでもない。

 

「じゃあ、なんで有馬さんは役者をやっているの?」

 

「えっ?それは……。やりたいからよ。私が子役をやって、人気が出ればママが喜ぶから……」

 

「そっか。つまり、君は役者をやりたいから役者をやっている。そういうことだよね?」

 

「それは、間違いないわ」

 

有馬の言葉は決して嘘ではない。喜ぶ母を見たいし、母を喜ばせたい。その為に子役を続けたいのも本音だ。決して無理矢理やらされているわけではない。

 

「じゃあ、オレも同じ。オレも戦いたいから戦う。それだけだよ」

 

「……はっ?つまり、あんたは戦いが好きってこと?」

 

そんなはずがない。悟飯は戦いを一度も楽しいと感じたことはない。自分が戦わなければ生き残れない。守れないから。人が殺されてしまうから。悟空やベジータのような純粋サイヤ人と悟飯は違うのだ。

 

「……そうだよ。()は戦いが大好きなんだ。強い相手と戦えることにワクワクする。自分が強くなるのを感じると、喜びを感じるんだ」

 

この時、悟飯の目が……、エメラルドの目の星の光が強く輝いた。それは、エメが戦う時に出る黄金の光ではない。アイが自分自身を綺麗に見せるために嘘を被る時の……、みんなを明るい光で照らして、目眩しをして誤魔化す。そんな白くて眩しい輝きだった。

 

この時、エメはスラスラと嘘をつけた。言い切った後には、自分でも信じられない思いだった。隠し事が苦手で、すぐに顔に出るはずだった。それが自分自身の認識だ。

 

実際、トランクスに稽古をつけていることはブルマに内緒にしているはずなのに、隠し通すことはできなかった。それはブルマの勘がいいからというのもあるが、悟飯が嘘をつくのが下手だったというのも大きい。

 

「とんでもない戦闘狂ね…。そういうことなら、いくら言っても無駄ね」

 

有馬はエメの説得を諦めて、お見舞いもほどほどにする。そろそろ仕事だから行かなくてはならない。これ以上母を待たせたくない。だが、これだけは言っておきたかった。

 

「あんた、死ぬんじゃないわよ」

 

「分かってる」

 

それだけ言って、有馬は病室を去った。

 

「……()()は、一体どうしたんだ…?」

 

息を吐くように出た嘘。無意識に出た発言だった。そのはずなのに、何故か違和感を感じない。いや、感じることはできなくても仕方ないのかもしれない。ただ、これだけは確かに言える。

 

星野エメラルドは、星野アイの息子。これだけは揺るぎのない事実。血は争えないという言葉を耳にする機会は少なくないだろう。その言葉は、何もエメだけが例外というわけではなかった。

 

 

 

「ちょ、ちょっと待てカカロット!!お前はまだ安静にしていろと指示されたはずだ!!ほら、早くベッドに…」

 

「うるせえ弱虫兄貴。せっかくの機会だから、お前も強くなれ。あのクソガキが復帰するまで暇で仕方ねえんだよ。弟の世話をしてやると思って、付き合ってくれよッ!!」

 

「待て待て!洒落にならん!お前の攻撃を喰らったら俺は……ぐわぁあああああっ!!!

 

「オラオラどうした!?仮にも戦闘民族がそんな体たらくでどうするんだ!!!?兄に勝る弟はいないんじゃなかったのかぁ!!?」

 

「俺はそんなことを言った覚えはないッ!!!!」

 

一方その頃…。少し離れた人気のない土地で、ラディッツは弟とのじゃれ合いに付き合わされていた。

 

 

 

 

「あれ?カカオさんは?」

 

「………どこ行ったんだろうね?それとお母さん。カカオじゃなくて、カカロットね?」

 

「あはは。相変わらず人の名前覚えるの苦手だなぁ…。もしかして、エメみたいに病室を抜け出して無茶してたりね!だとしたら親近感沸くけど」

 

本人に聞いたわけではないが、何をしているのかはなんとなく分かった。カカロットはラディッツを人のいないところに連れて行き、修行しているのだ。これは気を認識できるから分かるのだ。

 

「ところでエメ。……嘘つくの、上手になったね?

 

「……」

 

悟飯は本能で感じた。この母親には下手な隠し事は通用しないということを。

 




 アンケート見ましたが、メムが一位になってましたね。次点であかね。パッと見アクあかよりエメ(飯)あか派の方が多い……のか?この辺のプロットはまだできてないので悩みますなぁ…。
 ラディッツは主人公(悟空)の兄なのに不遇な扱いを受けているとのことで、こちらでは生存?ルートへ。一応悟空(カカロット)と血を分けた兄弟なので、それなりに才能はあるはず……。というか、サイヤ人という時点で大きなアドバンテージだと思っている。

 あと、プロットは20話分くらいまでできてると以前言いましたが、もうちょい短いかもしれないです。1話あたりの文字数が思ったより多くなっているので。区切りのいいところで終わらせようとするとこうなる()

 少年期まではテンポよく進めていきたい。
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