「やはり彼女も持っていたか……」
島に上陸したセンゴクは、遠くで起こる覇王色の覇気のぶつかり合いを憎々しそうに見つめた。ロックスとサザエという強者同士の覇王色の衝突は、遠い場所にいるセンゴクの肌をも貫く勢いだ。とても、並大抵の海兵が近づける状況などではない。
更に厄介なことに、ロックスが上陸しているということは、ロックス海賊団の他の面々も上陸している可能性が高い。現在の海軍主力艦隊でどの程度相手にできるかーーいや、これきしのことで諦めていては世界の治安を守ることなどできない。センゴクは改めて自身に気合を入れる。
「おい、ガープにおつるさん、それにおかるさんはどうした?」
「は!ガープ中将はロックスがいると思われる市街地中心部に全速力で向かっています!つる中将とかる中将はストッパーとして同行中とのこと!」
「ガープめ……我慢というものを知らんのか!」
船を降り立ったガープは、真っ先に本能でロックスの方へ向かっていった。それをつるとかるが追いかけていき、ゼファーとセンゴクが残っている。彼の自由っぷりはいつものことだが、この非常重大な時にそれをやられては、流石のセンゴクも青筋を立てざるを得ない。
ゴッドバレー島は世界政府非加盟国であるため、海軍は当然この場を警護する義務はない。世界政府直々の命令であるために致し方なく上陸しているが、良くない噂を耳にしていたセンゴクは、この島への上陸を内心躊躇っていた。
「ひどい……」
センゴクの隣に立っていた一人の女性少将が目にしたのは、天竜人が連れてきたと思われる奴隷や島民、ロックスの襲撃によって殺されたと思われる天竜人、世界政府のエージェント達の死体の山だ。
彼らの血で染まり通りは赤く染まっており、身体から出た内臓や潰された脳髄の破片が散らばる様子が残酷さを物語っている。
(これは……公表できんな)
死体を横目に歩くセンゴクも、その悲惨さを世界政府加盟国の人々に晒すことを躊躇せざるを得ないと考えた。海賊の仕業ではないーーこれは恐らく天竜人によって齎された悲劇だろう。万が一、これが世界経済新聞社の聞屋共に嗅ぎ付かれては面倒なことになることも確実だ。
(“バスターコール”は避けられぬか)
世界政府がこの一件も揉み消すことが目に見えている。ロックスの仕業に仕立て上げたとしても、ここまで世界の闇が露呈しては面子が保てない。
「グラララ……センゴク、随分シケた面してやがるなァ」
センゴクたちが警戒を強めながら歩いていると、遂に敵らしき姿が靄の後方から現れた。
声の主の方に振り向いて見れば、ロックス海賊団の旗を掲げる史上最悪の海賊団の姿が目に映る。
巨大な薙刀、最上大業物12工『むら雲切』を持った『白ひげ』こと、ニューゲートはセンゴクの悩みを見透かしたように言った。
「白ひげか……ロックス海賊団、この悪行は見逃すことはできんぞ」
「ジハハハ!クズ野郎の横暴を見逃して、俺らの海賊稼業には口出しするってか!虫が良すぎるってもんだぜ、海軍本部元帥さんよ!」
「こいつらは女子供であろうとも容赦なくぶっ殺した。そんなバカをお前はいつまで守り続ける気だい?」
センゴクの忠告にも臆することないシキとリンリン。世界の海を脅かす大海賊たちも、この惨劇にはロックス海賊団の面々にも思うところはあったようで、特にリンリンは自らの子供と同年代の子供たちまで殺害した天竜人の死体に冷眼を向けた。
痛いところをつかれたセンゴクは、苦虫を潰した表情を浮かべる。
「後世の歴史では、この一件を全てお前らに着せられることになるだろう。信じやすい民は、難儀な真実よりも単簡な虚像を追い求めるからな」
「ジハハハ!そいつは虫のいい話だぜ!だが、お前らの思い通りに事が運ぶと思っちゃ大間違いよ!この場にいるのは、俺たちだけじゃねぇ!」
シキが指差した方向に全員が視線を向けると、そこには蠢く複薄の影。やがて、靄が晴れるとその姿が明らかになる。
サザエを除く海の幸海賊団だ。
「フィガーランドは逃げたようだな。全くけしからん若造だ。一度ガツンと言ってやらんと!」
「ええ、まったく。それに、私も一言言わなくてはならなくなりました」
「でもその前に海軍だよ、母さん。流石に世界政府と海軍全戦力を相手にするのは骨が折れるよ」
海岸からゆっくりと上がってくる一向。のんびりとした口調をだが、全員がしっかり武装しており戦闘態勢を整えていることは一目瞭然だ。
その中で海軍側の人物が1人、彼らに向かって声をかけた。
「おぉ〜、フグタくん。予想したけど、君もここにいたんだねぇ〜」
「その声はアナゴくんかい?久しぶりだね、奥さんは元気?」
「勿論だよぉ〜。毎日、飲んで帰るからカミさんに叱られる毎日さ。でも、愛妻弁当も作ってくれるから頑張れるってものよ!」
旧知の友人を見つけたマスオ。それは海軍大佐にして、マスオと同じ場所で働いていたかつての同僚、アナゴだ。
久しぶりの再会に沸く2人は互いに駆け出すが、センゴクが待ったをかける。
「再会を喜ぶのは別の機会にしてくれ、アナゴ大佐。今、彼らは敵だ。一切の容赦がいらぬ戦場で余計な感情を抱いて士気に影響させることがないようにしろ」
「あぁどうもすみません、センゴクさん。ってなわけでぇ〜フグタくん。大人しくお縄についてちょうだいよぉ〜。痛いようにはしないからねぇ」
「それは無理な話だよ、アナゴくん。君とは戦いたくはないんだよね。ーーところで、アナゴくんはこの惨状を見てどう感じた?」
マスオは周囲を見渡すようにアナゴに言った。周囲に倒れ散る一般市民や奴隷の死体。それを目にしたアナゴは横目に見ると、再びマスオに対峙する。
「ボクは天竜人のことを必ずしも良くは思ってないよ。だからこそ、この惨状は中々酷いことをしてくれたねって怒りすら覚えるってもんよ」
「……アナゴくん。これが現実なんだよ。天竜人は過去の栄光に縋り付くどうしようない人間たちの集まり。ご先祖の栄誉に甘える連中でもある。彼らをどうして見て見ぬふりができるとでも?」
「フグタくん、これが正義じゃないって言いたい気持ちは分かるよ。でもね〜、海軍が世界の海洋を守る最後の砦でもあるんだよ。だから、そう簡単には引けないんだよねっ!」
かつては同じ道を歩んでいた同志であり、立場が分かれた今でも交流は途絶えていない2人だったが、今日この時ばかりは対峙せざる道を選んだ。
世界政府や天竜人に怒りを向けるマスオと、あくまで大義に生きるアナゴでは、その考えに大きな差があった。
「……どうしてもかい?フグタくん〜?」
いつものようにのんびりとした口調だが、その本心には戦いたくないと願う彼なりの思いが見え隠れしている。
「アナゴくん。天竜人の行いを目にしてあっさり引くほど、僕はお人よしじゃないよ」
思うところが違うため、2人の衝突は避けられない。だが、2人は久しぶりに会う友人との殴り合いに期待もしていた。
また、マスオの近くでも重い空気で対峙する面々がいる。フネとかつての同僚ゼファーだ。
「お久しぶりですね、ゼファー。いや、今はゼファー大将とお呼びすべきですかね?」
「お前がどう呼ぼうが、もう海軍の人間じゃねェ。好きに呼びな、フネ。道を違えたお前にかける情けはねェ。俺はお前を捕まえるだけだ」
因縁のある二人。フネはかつてゼファーやセンゴク、ガープ、つる、そしてかるの同期であった。同期組の中でも最優秀な成績を叩き出し、史上最年少で海軍本部大将の座に就いた彼女は文字通り、海軍の星して期待されていた。
しかし天竜人が一般市民の子供を殺害する事件を機に、彼女は海軍を辞めてしまう。その事件では、天竜人の殺害に抗議した両親をフネ自ら逮捕することになり、彼女の心に現状への違和感を植え付けた。この一件を境に彼女は自分の信じてきた海軍の正義を疑うようになる。
これを機に、天竜人と世界政府に失望した彼女は辞職届を提出後、突如として行方をくらました。そして紆余曲折を経て、彼女は海賊の道を選ぶことになる。一方、フネと同期だったゼファーらは自らの正義を信じて海軍に残り、以前と同じく海賊逮捕に全力を尽くしていた。
そして再び、同期であり道を違えた者同士が対峙する。
「ゼファーの信じる正義が生きていただけでもよかった。これでも長い付き合いですから、貴方の身を案じていたんですよ?」
「余計なお世話だぜフネ。全く、敵に情けをかけられるとは俺も落ちたもんだ」
ゼファーがかけているサングラスの奥が光る。彼は固い表情は崩さず、朗らかな笑みさえ浮かべて立っているフネに対峙しているが、その目にはこの戦場に似合わない感情が見える。
「ふふふ、ご冗談はおよしになって。武装色の覇気を極限まで鍛え上げているあなたが落ちぶれているなんて絶対にないですから」
「言ってくれる。俺はお前の過ちを看過できねぇ。だが、それを許した俺にも責任がある。ここでお前を逮捕し、俺なりのケジメをつける!」
ゼファーの真骨頂、鍛え上げられた拳に纏う武装色の覇気。悪魔の実の能力関係なく、通用する武装色の覇気の中でも、彼の覇気は格別だ。そのことをよく知っているフネは、体を液体化させる。
「それでいいのよ、ゼファー。ーー今はお互いに命を取り合う敵同士、情けは無用です」
続けてフネは、ゼファーの隣に立つセンゴクにも声をかけた。
「センゴクさんもお変わりないようで。今や海軍本部の次期元帥すらも噂されているようですね。同期として誇らしいです」
「フネか……全く世界というのは残酷だ。この場でお前を逮捕せなければならないことに心が痛む」
センゴクはフネとの追想を振り返り、わずかに顔を歪ませた。だが、すぐにそれを顔の奥深くに隠す。
「職務熱心とは貴方らしいですこと。ですが、私は捕まりませんよ。私がいなくなると家族の料理事情が悲惨なことになりますからね」
「安心しろ、お前がいなくても海軍ならば食事を用意してやる。まあ、住む場所は快適ではないが、それでも衣食住は保障するぞ」
「残念ですがお断りします。ここが家族の、私の居場所です。譲りはしません」
「ならば、ここで倒すまでだ!フネ!!」
センゴクの言葉を切り口に、彼らとフネはぶつかり合う。ゼファー、センゴクとフネは共に同じ時代を生きた軍人同士であり、お互いの強さは誰よりも分かっていた。お互いの信念が籠る武装色の拳が、何度も何度も激しく衝突した。
「いくぞ!てめェら!」
「命令すんじゃないよ、ニューゲート!」
「来るぞ!」
「あわわ……こんな強い人との戦闘、緊張するけど頑張ろう……!」
「貴様全員、海賊稼業はここで終わりだ!」
ロックス海賊団、海の幸海賊団、そして海軍の主力は遂に激突した。双方が入り乱れ、覇気が飛び交い、島は大きく揺れ始める。
ここに、後にゴッドバレー事件と呼ばれる一大戦争が起こった。
「ザハハハハ!こんな激しい殺し合いは初めてだぜ!近頃のルーキーは骨のない奴らばっかりだからな!」
「相変わらず化け物みたいな強さね、ロックス!こんな可愛げな乙女に向かって、猛獣みたいな拳を繰り出して!」
「乙女だァ?お前、乙女って歳じゃねェだろ?」
「アタシが乙女じゃないですって!?殺す!!」
「わ、悪かったって!そんな怒るんじゃねェ!冗談だろ!?」
時折、コントを挟みつつロックスとサザエは何度もぶつかり合う。ロックスがサザエを茶化し、それにブチ切れたサザエが阿修羅のごとく、ロックスを追い回すのだ。逃げることが滅多に無いロックスでも、彼女の鬼気迫る覇気には思わず足を引かせるほどの覇気を、サザエは戦闘において何時間も出すバケモノじみた体力がある。
「ヒィー怖っ。サザエ、俺はお前を乙女じゃなくて美女って言おうとしたんだ!決して、美人さを否定したわけではなく……!」
「失礼ね!アタクシは永遠の乙女です!」
「アーソウカイソウカイ!乙女なら乙女らしく振舞えってもんだぜ!!」
彼らの覇気がぶつかり合う度に凄まじい暴風と地割れが起こるため、市街地は嵐が過ぎ去ったような凄まじさだけが残っていた。既に住居も死体も空中に巻き上げられ、既にどっかに飛んでしまっている。
「ところでロックス。こんなことをしてまで何を目指しているの?目的は?」
「目的ィ?そんなもん、俺らが求めてきた“自由”を手に入れるためだ!何百年と受け継がれてきた意思を、俺は実現する!人の夢は終わらねェのさ!」
一才の後悔なし、と言わんばかりに笑うロックスは両腕を高々と掲げる。似たようなことを言っていた奴が前にもいたな、とサザエは振り返りながらそれとは違うことも瞬時に察した。あれだけ海賊らしいロックスが掲げる自由など、碌なものではないはずだ。
「アンタの自由、私が両手を挙げて賛成できるものじゃなさそうね」
「あァ、確かにお前は納得しねェかもな。俺は世界政府とかいうクソみてぇな権力をぶっ壊して、俺たち海賊が頂点に立つ世界を実現する!暴力の世界をな!!」
血生臭い暴力による世界支配など、すぐに崩れる事など歴史が証明している。その証拠が
だが、この男は違う。過去の歴史においても誰もが諦めた夢をロックスは成し遂げようとしているのだ。
「その支配、私が受け入れるとでも?」
「だよな、お前はそんなこと望んじゃいねェ。それは承知だ。だからだ、ここで俺はお前を倒してそれを認めさせてやるぜ!!」
「本気の殺り合いをお望みみたいね!いいわロックス、そんな願いにアタシは付き合ってあげるわよ!」
ゴッドバレー島中心部。豊富な資源で栄えた国はもうここにはいない。天竜人の余興、ロックス海賊団の襲来、覇王同士の衝突によって見るも無惨な姿に様変わりしてしまった。
旧市街地では二人が衝突する度に覇王色の黒い稲妻があたりに走る。武装色で硬化した武器は両者の覇気が強すぎて近づけることができないのだ。その余波は次々に建物、そして地面を割っていく。
「サザエ!やっぱりお前の力は天下一だ!その凄まじい覇気、優れた剣術、化け物みてェな船員を率いるカリスマ性!どうだ!俺と一緒に世界を変えないか!?」
「言ったでしょロックス!アンタの物騒な支配はお断りよ!誰かに縛られる支配なんてごめんだわ!」
ロックスの拳が迫れば、サザエは武装色の覇気を体に纏いながら受け止め、逆にサザエの剣が迫ればロックスはカットラスに武装色と覇王色を展開し寄せ付けない。両者は一歩も譲らず、また誰一人もこの場に入らせない。
両者一歩も譲らぬ戦いーーそこへやって来る2人の気配、現る。ロックスとサザエは咄嗟に剣に覇気を纏わらせた。
「おいおい!面白ェ戦いやってるじゃないか!俺も混ぜてくれよ!」
「ロックス、サザエ!お前らの企みもここで終いだ!」
黒髪のボサボサ髪に三白眼、カイゼル髭が特徴的な海賊ゴール・D・ロジャーと、海軍きっての暴れん坊ガープが覇気全開に2人に迫ってきていた。ガープの背後には巨大な麒麟とその頭に乗るつるが見えている。
「ロジャーにガープ……こりゃ、また懐かしい面々が揃ったな!イイぞ!お前らも殺るか!」
「あら……ギャラリーが少し多すぎじゃない?」
ロックスとサザエは互いに距離を取る。2人の覇気のぶつかり合いで既に辺りは散々に破壊されており、気絶した天竜人や護衛は既にどこかに飛ばされてしまっている。
覇気の扱いに優れたロジャーと拳骨のガープが現れては、流石の二人でもきつい戦いを強いられることになるだろう。覇気は消耗する代物であり、長時間の使用は歴戦の強者でも息切れを起こす。
ロジャーはサザエを見つけると、まるで大好きなおもちゃが見つかった子供のように大はしゃぎしながら彼女に駆け寄っていく。
「サザエ!俺の船に来い!お前たちが船に乗れば、この先の冒険が楽しくなりそうだ!」
「いや空気読んでロジャー。アンタ、この状況分かってるの?」
「知らん!俺は、俺のやりたいように生きるだけだ!!」
満面の笑みで勧誘するロジャー。サザエに断られても全くめげずに勧誘し続ける様は、ロックスと似通った部分もある。
「なァ、サザエ。この出会いは運命だ!!俺と一緒に世界をひっくり返さねェか!?」
サザエはロックスから勧誘を受けていただけではなかった。つい最近、水先星島に辿り着いたと噂されているロジャー海賊団船長であるゴール・D・ロジャーからも「船に乗れ」と猛烈なラヴコールを送られていた。
案の定、先駆けは許さんとばかりにロックスがロジャーに詰め寄る。
「あァ?ロジャー、サザエは俺の船に乗るんだ。てめェら自由人にはもったいねェ逸材だ」
「うるせェロックス!仲間にすると言ったら、仲間にするんだよ!」
「てめェやんのかコラァ!?」
出会って早々言い争い始めるロジャーとロックスを尻目に、サザエはこの場にやってきたガープと向き合う。
「あなたもいると思っていたわ、ガープ」
「久しぶりだな、サザエ。やはり導かれていたか。ーーお前は何が目的だ?」
「この島に来たのはロックスが来ると思っていたから。そして、ロックスの提案を私が蹴ったら戦闘になった。ただそれだけよ」
ガープとサザエとの関係も浅いものではなく、海賊と海軍としてこれまで何度もぶつかってきた。ガープにとってもサザエはロックスやロジャーと並んで、自らの手で逮捕したい超大物海賊の一人でもあり、何度も追っかけていたのだ。
「男に言い寄られて困ってるようだな。どうだ?海軍に捕まればそんな心配なくなるぞ?」
「イヤよ。どうせ暗く狭い牢獄に閉じ込める気でしょ、アンタ。それに、豚どもの言うことしか聞けない組織なんてゴメンだわ」
サザエの主張にガープは沈黙で答える。事実、海軍は天竜人の非道な行いにも目を瞑らなければならず、これまで何度もそういった場面に出会した。ガープも彼らのことを嫌っているからこそ、長年大将就任を固辞し続けているのだから。
「ならば、大人しく縄につけェ!サザエ!」
誘いを拒否されたら即戦闘というのは、この時代の有力者ならば皆がすることなのか。と、サザエは半ば苛立ちと呆れを持ちつつ、ガープの拳骨を防御する。武装色で硬化しているとはいえ、その衝撃は骨まで響いた。
「くっ!想像してはいたが……!」
ロックスとサザエ、ロジャー、ガープの四つ巴の大乱闘が繰り広げられている中心街から離れた場所でも、海軍の多数の将官たちとロックス海賊団の幹部、そして海の幸海賊団の全戦力が激しく衝突を繰り返していた。
大将のみにとどまらず、多くの中将以下の将官たちをーーそれも、新世界の海賊であっても対抗できる精鋭の将官であったが、予想外の両陣営の粘り強さにセンゴクは頭を悩ませていた。
現在、ニューゲート対ナミヘイ、カイドウ対カッツォ&タラーオ、シキ対マスオ、リンリン対ワカーメ&ヒトーデ、猫のタマとの構図で戦闘は激化しており、海軍サイドではゼファー、センゴクのタッグがフネを相手にしていた。
それだけなら良かった。問題はこの場に全く関係のない第三者が乱入してきたことだ。
「ロジャー海賊団め!偶然にしては出来すぎたシナリオだ!」
「そう言うなセンゴク。我々も偶然通りかかっただけなんだ。それに船長は自由奔放な性格なんでね、相手になってもらうぞ!」
突如乱入してきたロジャー海賊団。目的は不明だが、この島にるナニカを奪いに来たのは確実だ。出会って早々に斬り掛かってきたレイリーを大仏と化したセンゴクが覇気で受け止める。ロジャー程ではないが、覇王色の覇気を持つレイリーと海軍で唯一覇王色の覇気を使えるセンゴクの覇気同士の衝突は、凄まじい衝撃波とともに耐性のない海兵を吹き飛ばしていく。
「グララララ!!衝撃波を剣で斬るなんて化け物じみてやがるなァ?」
「それはお互い様だニューゲート。空間を揺らすなぞ巫山戯た能力だ!」
海岸ではニューゲートとナミヘイによる最大大業物同士がぶつかり合う戦いが繰り広げられている。白ひげのグラグラの実を応用した振動を薙刀に込めて振り下ろす攻撃を、ナミヘイは武装色の覇気と覇王色の覇気で硬化した一本の刀で受け止める。
「ぶっ飛べやがれ!雷鳴八卦!」
「フン!力勝負なら受けて立つぞ、カイドウ!」
カイドウの持つ「八斎戒」とカッツォの「焼究死妖絶」が覇気を伴ってぶつかる。カッツォは自身の数倍の体格を持つカイドウに臆することなく立ち向かい、バットを両腕で持ち強烈な一撃を受け止める。
「ウォロロロ!!小僧がァ、やるじゃねェか!」
「カイドウ、僕もいること忘れるなよ!」
空を高く飛び上がり、自身の両足に武装色の覇気と覇王色の覇気全開の攻撃を振り下ろす。タラーオの足は頑丈自慢のカイドウの頭蓋骨にビビを入れるほどの強さで、思わずカイドウは視界が揺らいだ。
「ジハハハ!鬱陶しいなァ!その対空兵器は!」
「いやぁ〜、飛ぶ相手を落とすのは大変だよ〜」
体内からレーザーやら対空ミサイルをぶっ放しまくるマスオは空中を飛び回るシキを狙い続ける。ロックス海賊団の中で唯一自力で飛ぶことができるシキはフワフワの実で次々に船やら岩やら瓦礫を落としてくるが、マスオが容赦なく対空兵器で撃ち落とすため一進一退の攻防を続けていた。
「う〜ん、こりゃ参るね〜。そんな対空兵器をバカスカ撃たれちゃこっちが敵わないよ、マスオくん」
「そうは言っても余裕そうだけどね、アナゴくん!」
加えてアナゴがマスオの捕縛を狙って攻撃を仕掛けてくる。アナゴはアナアナの実を食ったアナ人間であり、空間どこでも自由に穴を開けることができる。
そのため、マスオが派手に火力をぶち込んでも、アナゴ自身に直接ダメージがいくことはない。
まさに、友としての相性は最高だが相性最悪なのだ。
「ハ〜ハハママママ!深海族の女王とここで会えるとはねェ!おれが勝ったらお前をもらっていく!」
「いやよ、ビッグマム!」
『結婚するなら私は選びたいなぁ〜。まぁ、カタクリくんならいいかもだけど〜』
深海族の力で体内を強化しビッグマムの強烈なパンチから身を守るとともに、白龍化したヒトーデから放たれるブレスがビッグマムに直撃する。
「な、なんだい!?その能力は悪魔の実ってわけでもなさそうだねェ!?」
『敵に簡単に情報をあげるわけないでしょ!リンリンちゃん!』
ヒトーデの口から放たれる力は、悪魔の実を無効化する海水と同じ力を持ったブレスだ。だが、そんな悪魔の実なぞ聞いたことのないリンリンは、その勢いに負けて吹き飛ばされていく。
「にゃ〜!」
「ね、猫かい!?」
勢いよく上空に吹き飛ばされたリンリンは、上空に浮いていたタマの強烈な一撃で、たちまち地面に叩き落とされる。猫でありながら覇気を使った拳は、巨人族以上のパワーでリンリンを殴った。
「相変わらず強ェな、フネ!
「……すまない、ゼファー。あの悪魔の実は、能力者の力を奪うらしい。本来の力が出せん!」
大仏と化したセンゴクとゼファーが向き合うその先には、
「悪魔の実の効力を無効化する貴方と対峙するのに、覇気を鍛えない人がどこにいますか?」
自身を含めた周辺一体を水に変えていくフネは拳を武装色で硬化させ、ゼファーと張り合う。センゴクも衝撃波飛ばすが、水によって自由自在に形を変えるため狙いが定まらない。
そんな中、海軍とも対峙しているレイリーはその剣をフネにも向けてくる。当然覇気を全開にしている点で、フネと言えども無視できない。
「相変わらずフネさんは怖いな。悪魔の実の力だけでなくしっかり覇気も鍛えているとは!」
「褒めの言葉は受け取っておくわレイリーさん。だけどそう言いながら、容赦なく剣を振るってくるのはどうなのかしら?」
「ハハハ!フネさんは本気で来ないと殺しに来るだろ?本気でやらないとこっちがやられる!」
三つ巴の戦い、ゴッドバレー島での決戦は尚も激しさを増すばかり。
ガーリング聖「あれ?俺は?」
サターン聖「人間が……忘れるとはどういうことだ」
↑
すみませんでした。ですがご安心ください、次回派手に暴れさせますので。
戦いの描写、難しいです。そもそもサザエさんキャラクターって数があまりにも多いので、全員の戦闘描写を入れるととんでもない難しさになります泣
……キャラの口調、合ってますよね?