前回の続きになります。
それではどうぞ。
イヴの誘いで茶道部に体験入部する事になった燐子。紗夜と悠里はその付き添い。
「以上が、お茶会の流れになります。本来、お茶会では亭主のみがお茶を点てますが、せっかくですし、みんなでお茶を点ててみましょうか」
茶室で顧問の先生から説明を受ける3人。そしてみんなでお茶を点ててみようと言った。
「え……み、見るだけじゃないんですね……あの……わ、わたし……お茶って、初めてで……」
「燐子ちゃん、そんなに緊張しないで。まずは私がお手本を見せるから、それをそのまま真似してみて」
緊張してる燐子にそう言ったのは、同じ2年生の
「……松原さんの、ですか……? 本当に、そのまま……同じようにすればいいんですか?」
「はいっ。今日は細かいお作法よりも、お茶を楽しむということを知ってほしいんですっ」
お招きした人に、楽しいひと時を過ごしてもらいたい、そんなオモテナシの気持ちこそがお茶の心ですから。と3人に言うイヴ。
「うん。イヴちゃんの言う通りだよ。今日は難しい事は考えずに、お茶を楽しんでいってほしいな」
「でも……いえ。これ以上お断りするのは、寧ろ失礼になってしまいますよね。松原さん、若宮さん、よろしくお願いします」
「…花音ちゃん、イヴちゃん、よろしくお願いしますです……」
なので紗夜と悠里も2人によろしくお願いしますと言う。
「うんっ。立派なお手本になれるよう頑張るね」
「私も、カノンさんと一緒にお茶を点てさせていただきますっ! よろしくお願いしますっ」
「それじゃあ説明しながら、私とイヴちゃんでお茶を点ててみるね」
そして花音がお茶の点て方の説明に入る。
「まずはお釜から、お湯をお茶碗に注いであっためるんだ。お茶碗が温まったらお湯はこっちに捨てて、それから……」
◇
「手順はこれで全部だよ。みんなが持ってるイメージほど、複雑じゃないと思うんだけど……」
手順を一通り説明しながら、どうかな?と言う花音。
「はい。これなら大丈夫そうです。白金さんと悠里さんは……」
「「……」」
「白金さん? 悠里さん?」
「……え? あっ、す、すみません……!」
「……あっ、ごめん……」
紗夜が燐子と悠里に声を掛けるが、反応が遅れる2人。
「あの……つい……集中してしまって……」
「……右に同じく……」
「いいえ、気にしないでください」
どうやら集中していたようだ。花音とイヴの手元を、瞬きもせずに見ていた燐子と悠里の集中力の凄さを感じた紗夜。
「じゃあ、次は3人に点茶をお願いするね。分からないところは、聞きながらで大丈夫だから落ち着いて、ゆっくりやってみて」
「は……はい……」
「……」
「! 悠里くん、大丈夫? そんなに緊張しないで?」
「…う、うん……大丈夫、うん……」
「「……((ゆうりくん(悠里さん)が携帯のマナーモードみたいに……))」」
燐子が返事をするのと同時に、悠里が緊張してるのに気づき傍に行く花音。いつもの表情で返事をする悠里をよく見ると、携帯のマナーモードのように震えてた。
なんかレアな彼を見た気がすると思った燐子と紗夜。
その様子に直ぐ気づく花音も凄いと思った。幼馴染みだからなのだろうか?
悠里が落ち着いた?ところで、3人は点茶を始める。
「……まずはお茶碗を温めて……ゆっくり、ゆっくり……お茶碗が温まったら……抹茶を……そっと、落として……」
「…柄杓でお湯をすくって……量が確か、4分の1くらいにしてた筈……」
「お茶碗を温めて……抹茶は、これくらいでいいのでしょうか?」
燐子、悠里、紗夜はそれぞれの点茶を進める。
「……(松原さんは、5本の指で……茶筅を支えてた……それから……)」
「……(手首で軽く……けど、指先含めてしっかりと……花音ちゃんとイヴちゃんがやってた感じだと、加減は……)」
「(……白金さんと悠里さん、とてもスムーズな動きだわ。私ももっと、しっかりと点てなくては)」
「「「……」」」
そして更に集中力が増す3人。
「3人とも、流石だね。1回見ただけで、大事なところをちゃんとおさえてる」
「はいっ。とても上手です」
「(特に燐子ちゃんと悠里くん。力加減も速さも絶妙。指先まで意識出来てる……)」
本当によく見ててくれたんだなぁと思う花音。
「お疲れ様。すっごく素敵なお点前だったよ」
そして点茶を終えた3人にお疲れ様と言う。
「3人とも、落ち着いてお茶を点てる事が出来ましたね。特に白金さんと水無月君。とても見事なお点前でした」
「……あ、ありがとうございます……!」
「…えっと、その、ありがとう……ござい……ます……です」
顧問の先生に褒められる燐子と悠里。悠里に至っては、褒め慣れていないのか、緊張気味に返す。
「私も、とても素晴らしかったと思います」
実はところどころ、白金さんと悠里さんをお手本にさせていただきましたと紗夜も答える。
「私は、松原さんの真似を……しただけで……なんとか、できてよかったです……」
「…僕も……その、教えてもらった通りに真似しただけだから……」
「ふふっ。燐子ちゃん、悠里くん、そんなに謙遜しないで」
それだけ、よく出来てたって事だよと花音が言う。
「ええ、本当に。特に水無月君は松原さんと若宮さんの力加減や、他にも微妙な違いにも気づいていたようですしね」
「…まぁ、どのお茶もそうかもしれませんが
やっぱり顧問の先生にはバレてたかとばかりに苦笑いで返す悠里。
「なんと! そこまで見抜かれていましたか……!」
「悠里くん、もしかしてお茶を習った事があるの?」
花音にそう聞かれた悠里は、ちょっと悩んだが、隠す事でもないし話す事に。
「…高校1年の時……えっと、
「捕まっちゃったと」
「……はい」
顧問の先生はオチが解ったのか、悠里の言葉を引き継いだ。
「有名な方なんですか?」
「ええ。月ノ丘高等学院の先生方は、理事長含めて凄い経歴をお持ちの方々なの。私も学生の頃に何度かお点前を見ていただいた事があるの。『生徒に教えたい評価なら、あなたはひよっこね』って言われちゃったけど」
「「「「ひ、ひよっこ……?」」」」
「そうよ~。今ではちゃんと先生から『生徒に教える分には問題ない』って、お墨付きをいただいてるわ」
紗夜の質問に顧問の先生は、あの頃が懐かしいわ~とのほほんとした表情で言ってるが。悠里以外の4人は『ひよっこ』という単語にポカンとしているが。
「…それでいきなり『今月末にお茶会があるの。あなた、亭主と主客をやりなさい』って言われて……」
「あら。凄いじゃない! 先生が生徒に両方を任せるなんて。亭主はやらせても、主客は滅多にやらせてもらえない人だったし」
「……それを僕が入学して1週間と2日目に言われたんですよ? どう思います?」
「先生……やり過ぎです。何考えてるんですか……」
それを聞いた顧問の先生はこの場に居ない恩師に突っ込む。
「僕が飲みたい時にだけ点ててただけですし……結果的にお茶会は上手くいったんですが、それ以来、『お茶会を開きたいなら、遠慮なく言ってね?』と会うたびに言われちゃって……」
だから自分は別にお茶を習ってた訳じゃないし、分類するとしたら、趣味寄りの独学に近いかもと悠里は話した。
「…だから……その、本格的な茶道部で……しかも茶室で点茶をすると、さっきみたいに緊張しちゃって……」
点茶を始める前に彼が緊張してたのは、それが原因だと言う。
「「「……(((お茶会を仕切るゆうりくん(悠里さん(くん))……見てみたいなぁ(ですね)……)))」」」
同時に、お茶会を仕切る悠里を見てみたいなぁと思う燐子、紗夜、花音なのであった。
読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。
※今回少しだけ判明した悠里が高校1年生の時に通ってた高校、
・教師は全員、理事長含めて経歴が凄い。
・花咲川女子学園の茶道部の顧問の先生も、その昔、月ノ丘高等学院の茶道部に所属していた。
・顧問の先生曰く、自分が学生時代に月ノ丘高等学院の茶道部の先生に『生徒に教えたい評価なら、あなたはひよっこね』と評価される。
・悠里曰く、『お茶会を開きたいなら、遠慮なく言ってね?』と会うたびに言われる。