月の少年と新緑のラルゴ   作:ゆるポメラ

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ゆるポメラです。
前回の続きになります。

それではどうぞ。


第4話 向き合うこと、その形

「セイヤーッ! メーーーン!」

「まだまだ! 声が小さいっ!」

 

体育館で剣道部の見学をする事になった3人。部員と剣道部の顧問の先生の声が響く。

 

「……もの凄い気迫。でも、まだ足りないんですね」

「そうですね……十分……こわいくらい、なのに……」

「…まぁ、初めて見る人は燐子ちゃんと同じ事を言う人が多いよね……」

 

紗夜、燐子、悠里がそれぞれの意見を言う。

 

「次っ! 若宮さん!」

「はいっ!」

 

顧問の先生の声にイヴが前に出る。どうやら次は彼女の出番のようだ。

 

「若宮さんが小さく見える……随分と背の高い方がお相手なんですね」

「はい……すごく、強そうです……」

「……(イヴちゃんも背の高い方だけど、相手も背が高いな)」

 

相手の方は、紗夜の言う通り、イヴより背の高い人物だった。

 

「では……始めっ!」

 

顧問の先生の合図で、練習試合が始まった。

 

「メーーーン!」

「……っ!」

「やめ!」

 

試合は一瞬で、相手側の勝利だった。

 

「……! そんな、一瞬で……」

「は……速すぎて……見えませんでした」

「ええ、私もです」

「……(一瞬、ねぇ……)」

 

紗夜と燐子は相手の動作が速すぎて見えなかったらしいが、悠里には逆にそれが遅すぎるように見えたのだ。

 

……まぁ、自分が見た場合の感想なのだが。

 

「……っ……もう一本、お願いします!」

「いいでしょう。では2人とも、もう一度構えてください」

 

イヴのやる気を見た顧問の先生が2人に構えを合図する。

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……はぁ……」

「開始から30分。ずっと同じ方と打ち合っていますね」

「…そうだね」

 

最初の試合から30分が経過し、イヴはまだ同じ相手と打ち合っていた。

 

「相手の方には、まだ余裕が見られますが、若宮さんの方は……隙を作ろうと動き回ったせいで体力を消耗してしまってるみたいです」

「もう……一本ですっ!」

「……どう見ても、若宮さんが不利な状況なのに……」

「…そうでもないよ?」

 

紗夜の言う通り、イヴの方が圧倒的に不利な状況に見えるが、悠里がそうでもないと言った。

 

「…イヴちゃんの相手、余裕そうに見えるけど、手首が僅かながらに震えてる。構えも微妙に定まってない。初段の大振りと竹刀での受け止めのし過ぎの反動が出てきた証拠だよ」

 

さて。どうなるやら?と悠里が紗夜と燐子に説明する。

 

「…………わたしって……ダメだよね……ずっと……逃げてばかりで……」

「「え?」」

 

燐子の言葉を聞いて、彼女の方を見る紗夜と悠里。

 

「若宮さんは……どんなに、苦しくて……怖くても……何度も……何度も立ち向かって……」

「……私は、自分が『逃げている』と認める事すらできませんでしたよ」

「え……?」

「……(紗夜ちゃんの場合は色々あったからね……)」

 

驚く燐子に対して、悠里は紗夜が何に対しての事を言ってるのかは、予想できたが。

 

「白金さんが、悩んでいる事は知っていました。実は昨日、宇田川さんと悠里さんとの話が、少し聞こえてしまって」

 

黙っていてごめんなさいと2人に謝る紗夜。

 

「白金さん。貴方は怖い事から逃げてしまっていたとしても、自分が逃げているという事を知っていますよね」

 

それはつまり、自分自身から逃げずに、ずっと向き合い続けている証拠だと紗夜は言う。

 

「自分からは……逃げてない……? わたしが……?」

「…ずっと自分を見つめ続けてたからこそ、このままでいいのか不安になった。…昨日、燐子ちゃんが悩んでいたの……そんなところじゃない?」

「わたし……は……」

 

悠里にもそう指摘され、悩んでいた時……

 

「メーーーン……! ……っ……!」

「「「……!」」」

 

イヴの試合にも動きがあった。消耗しているせいか、彼女の動きがさっきよりも鈍くなっていた。

 

相手との体格差もあるせいで、このままでは負けると思った時……

 

「わ、若宮さん…………っ……頑張って……あ、諦めないで……ください……っ」

「「!」」

 

なんと燐子が大きな声で、イヴに声援を送ったのだ。

 

「……っ! ……メーーーン!!!!!!」

「一本! やめ!」

 

そして声援がイヴに届き、相手に勝利したのだ。

 

「……っ……やった! やりました! リンコさんの声、バッチリ聞こえましたよー!」

 

私達、2人でとった一本です!と大喜びなイヴ。

 

「そ、そんな……あ、あれは……思わず声が出ちゃった、だけで……」

 

そう言う燐子だったが、紗夜と悠里にもイヴと同じ事を言われるのであった。

 

 

 

 

「なんだか、とても充実した時間でしたね」

「は……はい……で、でも……まさか、あんなに喜んで……もらえるなんて」

「燐子ちゃんの気持ちが、イヴちゃんに伝わったんだと思うよ」

 

見学を終えた3人は、イヴや顧問の先生にお礼を言い、体育館を出た。帰り際に顧問の先生から『水無月君も剣道やらないかい?』と悠里は言われたが遠慮した。

 

「それじゃあ、そろそろ帰りましょうか」

「そうだね」

「……はい…………あ……あのっ」

「「?」」

 

そろそろ帰ろうとした矢先、燐子が紗夜と悠里を呼び止めた。どうかしたのだろうか?

 

「あの……わたし…………」

「燐子ちゃん、ゆっくりでいいから。ね?」

「う、うん……」

 

何か言いたそうなのを察した悠里が、ゆっくりでいいからと燐子のペースに合わせる。

 

「わ、わたし……()()()()()()が……したいです」

「「……え?」」

 

彼女が発した言葉に、思わず悠里と紗夜も少し反応が遅れてしまうのであった。




読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。
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