アルティメット惑星封鎖機構によるコーラル焼却RTA   作:サンドフード

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Chapter5
ルビコン脱出


 

 以前、621が探索した、洋上都市『ザイレム』。

 その正体は、かつての恒星間入植船である。最初の入植者たちは、このザイレムに乗ってルビコン3へと降り立ち、そこを拠点として暮らしつつ、ルビコンを開拓していったのだ。

 

「『生きてるなら笑え』っていうのが私の信条なんだが……今は苦笑いしか出てこないね」

「気持ちは分からんでもない」

 

 今、ザイレムは船としての機能を取り戻し、宇宙へと飛び立っている。

 シンダー・カーラとハンドラー・ウォルターは、そのザイレムに搭乗していた。

 

「まさか『パンドラ』とやらの言っていたことが、何もかも真実だったなどと、俺も予想していなかった」

「どうにか使命を果たせそうなのは、よかったけれどね。生きて帰れるなんてムシのいいこと、考えちゃいなかったんだが」

「だがこれで、あいつに次の人生を用意してやれる……」

 

 ザイレムは、その用途までも、かつてのものに近いものを取り戻している。

 惑星封鎖機構に捕縛された捕虜や、ルビコンを放棄することを受け入れたルビコニアンたちを、大量に乗せているのだ。

 コーラルの焼却に備え、ザイレムは入植時とは逆の、脱出船として機能していた。

 

 あえてルビコンに、残る決意を固めた者達もいる。

 彼らはシェルターに籠もり、二度目の灰を被ることを覚悟している者が多かった。彼らが生き残ることができるのか、それは分からない。

 

 

 621だけは、HALに乗り込み、ザイレムの甲板に立っていた。まだ、最後の仕事が残っている。

 地上を見下ろすと、氷床のドームを除去して、バスキュラープラントを露出させる作業が完了したところだった。

 

「621、最後の仕事だ。まだコーラルが集まり切っていない今の状況では、着火するのは容易ではない。衛星砲を使ったとしても、エネルギーが足りないだろう。

 だが、同じコーラルを使えば、話は別だ。アイビスに搭載されたコーラル照射装置を用いて、バスキュラープラントを狙撃し、破壊しろ。それが、コーラルを焼き払う火種となる。

 ……コーラルを焼けば……俺たちの仕事は終わる。再手術をして、普通の人生を……いや、今する話ではなかったな。

 最後までお前に頼りきりとなってしまうが、頼んだぞ、621」

 

 621は右腕の兵装を構え、地上に向ける。

 手順はあらかじめ、レクチャーを受けていた。あとはこれを撃つだけだ。

 

 だが。

 

「ビジターにウォルター! 高熱源反応!」

 

 カーラの警告に反応する間もなく、惑星封鎖機構の衛星砲が突如として発射され、ザイレムをかすめた。

 かろうじて被害はほぼないが、高エネルギー量によって船体が大きく揺さぶられる。

 

「どういうことだ。今更なぜ封鎖機構が? それに、これだけ大きな的を外したのは何故だ?」

 

 全員が戸惑っていると、『パンドラ』より連絡が入る。

 

『緊急事態です。衛星砲がハッキングを受けて、コントロールを奪われています。照準システムをダウンさせ一時的に妨害しましたが、対抗プログラムの構築が間に合いません。照準システムの再起動まで、あと5分』

 

 それは絶望的な状況の通達。だが、状況はさらに悪化する。

 

「! ウォルター! こっちもだ! ザイレムの制御権が奪われているよ!」

『武装関係も使用不能だ、ボス。大気圏再突入コースに入った。衛星砲に撃ち落とされる方が、先だろうが』

「これは……しかも、ハッキングされているのは、内側からだと。どういうことだ」

 

 さらなる混乱。そしてウォルターは気づいた。

 

「……! そうか、抗原機体の謎が解けたぞ。奴は……最初からずっと、このザイレムの中に潜んでいた……!」

「クソッ、間抜けか私らは! 敵の本拠地を使って、のんびり船旅しようとしてたってわけだ!」

 

 巨大すぎるザイレムを、くまなく調査できたわけではなかったことが、裏目に出た。ECMフォグに守られたザイレムは、身を隠すにはうってつけの場所だ。ECMの特定の周波数帯に穴を開け外部と通信することも、内側からならたやすい。

 

 そしてザイレムの内部から、その機体は現れる。

 青緑のブースターを吹かし、621の眼前に降り立つ。

 

「あれは……アイビス IB-07 SOL、なのか? だがジェネレーターからはコーラル反応がない。未知の反応だ」

 

 その機体はアイビスのうち1機のように見えたが、大幅な改造も受けているようだった。ウォルターの知識にあるものとは、各所が異なる。

 

『重ね重ね、よくも邪魔をしてくれたものですね、強化人間C4-621』

 

 その機体から、通信が入る。合成音声のような、不気味な声。だがその声からは、621への恨みが透けて見えた。

 

『我々の計画は大幅な修正を余儀なくされましたが、コーラルが存在する限り、何度でもやり直せる。コーラルを、焼かせるわけにはいきません』

 

 演説するかのように両手を広げ、その存在は宣告する。

 

『コーラルは、我々の目的のために、このオールマインドが手に入れる。ここでザイレム共々墜ちなさい、イレギュラー!』

 

 その言葉とともに現れるのは、シースパイダー改造機が2機に、無数の無人AC。

 ここは、すでに残留コーラルも存在しない高度まで上がってしまっている。アイビスといえど、いまやちょっと強いAC程度の性能しかない。

 

 絶望的な状況に、船内の二人も抗う。

 

「数が多いな……カーラ、すまないがこちらは頼めるか」

「ちょっと待ちなウォルター、あんたまさか……!」

 

 ザイレムの制御権を取り戻そうと奮闘するカーラに、ウォルターが声をかける。

 そして、621に呼びかける。

 

()()()()()()()6()2()1()()()()()

 

 ザイレムの格納庫から、発進する機体があった。

 それは、しばらく使っていなかった621のACである。

 そして搭乗者は、ハンドラー・ウォルター。

 

『歳を考えなよこの大馬鹿者!』

「ドルマヤンよりは若いさ」

 

 そして、621のHALの隣にウォルターが並び立つ。

 

「621、雑魚は俺が引き受ける。お前はSOL改造機に集中しろ」

 

 最後の戦いが、始まる。

 




明日12:00より、最終話とおまけ2本を連続投稿予定です。

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