アルティメット惑星封鎖機構によるコーラル焼却RTA 作:サンドフード
『ごきげんよう、特務エージェント『リンクス』。惑星封鎖機構より、あなた方に、依頼したいミッションがあります。ルビコン解放戦線が保有する武装採掘艦『ストライダー』。これを破壊していただきたいのです。
ルビコン解放戦線の戦力を大きく落とすことにはなりますが、我々が危惧しているのはストライダーの戦闘力ではなく、その本来の用途です。すなわち、もし本来の用途であるコーラル採掘に使用されることがあれば、星外へのコーラルの拡散につながりかねません。破壊することで、そのリスクをゼロにしてください。
巨大ですが、無理な改造を重ねていますので、頭部に設置されたレーザー砲『アイボール』を誘爆させれば自壊するでしょう。サブジェネレータによるシールドで守られていますので、先にサブジェネレータを破壊することを推奨します。それでは、良い結果を期待しています』
ベリウス西部 、ボナ・デア砂丘。無人の荒野に、その巨大な影はあった。
武装採掘艦『ストライダー』。6脚の大型採掘艦を強引に武装し、疑似的な移動要塞に仕立て上げた、ルビコン解放戦線の大規模戦力である。
『パンドラ』の言葉通り、レーザー砲台『アイボール』が設置されているのが目立つ。
『所属不明のACだと? 企業の犬か。アイボール起動、焼き払え!』
『了解、ルビコンと共にあれ!』
接近する621に向けてアイボールから強力なレーザーが発射されるが、発射タイミングが分かっているかのようにクイックブーストで左右に避けていく。
『クソ、なぜ当たらない!?』
『落ち着け、よく狙え!』
何度目かのレーザーをギリギリで躱すと、ストライダーの足元に取り付き、アイボールの死角に入る。
「足場が必要だな。まずは脚を破壊し、体勢を崩せ」
言うが早いか、621は装甲の欠落した後脚に攻撃を叩き込み始める。
機銃やミサイルが621を狙うが、これも当たらない。
『駄目だ、右後脚がもたん! 倒れるぞ!』
早くも脚部が重量を支えきれなくなり、最後部が崩れ落ちる。
ブーストをかけつつ、621はその巨体を駆け上がっていく。
『やむを得ん、後部車両を切り捨てろ!』
後部が切り離されるが、その時にはすでに621は中央の2両目に乗り移っている。
アイボールの死角を維持しつつ、ブースターで飛び回りながらサブジェネレータにハンドミサイルを叩き込んでいく。4基のサブジェネレータが破壊されるまでは、あっという間だった。
「すべてのサブジェネレータを破壊したようだな。アイボールのシールドの消失を確認」
『クソ、戦士の意地を見せろ! ルビコンと共にあれ!』
すぐさま621は一両目に飛び、両肩のグレネードをアイボールに叩き込む。
苦し紛れのアイボール発射も、放たれるミサイルも、かすりもしない。
やがてアイボールは爆発し、逆流したエネルギーがメインジェネレータを破壊する。それは連鎖的に、ストライダー全体を崩壊させていった。
「見ろ621。ストライダーが自壊していく。破綻した設計の、妥当な末路だ……待て、621。」
ストライダーから退避する621を、ウォルターは引き留めた。
「何だこの反応は。高速で接近する動体反応が2つ。これは解放戦線のMTなどではない……これは」
人型だが、既存のMTでも、ACでもない。ウォルターは、その存在を知っていた。
「これは、C兵器……!」
かつてルビコン調査技研が製造した、コーラルを利用した兵器群。それらを総称して、C兵器と呼ぶ。
それらは、アイビスの火と共に失われたと思われていた。だが……
「なぜC兵器がこんなところに……対処しろ、621。手強いぞ」
コーラルの証である赤いブーストを散らしながら、通常のMTでは考えられない機敏な動きで地面を走る。
連携により、621でもミサイルや砲を完全には避け切れない。それらの威力も無視できないものだった。
なりふり構わぬハンドミサイルの連射で、どうにか2体を仕留める。
「やったか? ……待て、何か来る」
それは、バケットホイールのホイール部分だけが自走するような、奇妙な車輪型の何か。それが4体。
「ヘリアンサスだと……こんなものまで」
本来の用途は自律破砕機であるが、開発者の意向によってミサイルや火炎放射器で武装化されており、下手なAC以上の脅威だ。
「巻き込まれるな、削り取られるぞ」
トリッキーな動きと数の多さに、さしもの621も対応に苦慮する。ハンドミサイルの残弾も、心もとない。
「レーダーに反応。さらに増援だと?」
戦場に現れるのは、ヘリアンサスの追加が2体と、先ほど倒したのと同じ人型C兵器がさらに2体。
621は、合計8体に囲まれることになる。
「この数は、偶然ではありえない。これを放った何者かは、お前にどうしても消えてもらいたいらしいな。……だが、生き残るぞ、621」
その言葉と共に、621は行動を開始する。
転がりながら向かってくるヘリアンサスの動きを誘導し、2体のヘリアンサス同士を衝突させる。破損し、動きが止まったところにグレネードを叩き込み、破壊する。残り6体。
ハンドミサイルで動きを誘導しつつ、ノーロックのグレネード置き撃ちで側面に続けざまに直撃させていく。やがて耐えられずにヘリアンサスは停止する。同じ方法で2体を処理する。残り4体。
突進で迫りくるヘリアンサスをギリギリで躱すと、側面に蹴りを叩き込み強引に引き倒す。倒れて動きが止まったところにグレネードを連続して叩き込む。残り3体。
ミサイルと突進をブーストで上に飛んで躱すと、近くにある大きな岩に向けてグレネードを撃ち下ろす。岩は爆砕し、大きな破片が残りのヘリアンサスの側面に直撃した。
その質量により姿勢を崩したヘリアンサスへとグレネードを放つとともに、ブースターを完全に切って急降下する。そしてダメージを受けて倒れるヘリアンサスの側面を、ACの脚で踏み砕いた。残り2体。
最後に残った人型C兵器2体に、ハンドミサイルの残弾のありったけを叩き込むと同時に、621は吶喊する。
振り抜かれた621の拳が、人型C兵器のジェネレータを貫いた。残り0体。
「……よくやった、621。戻って、休め」
静寂だけが、荒野には残された。
ベリウス中部、解放戦線が誇る難攻不落の防衛拠点、通称『壁』。
その周囲に集まったアーキバスMT部隊の中に、そのACに乗った男はいた。
「こちら
こちらが手配した独立傭兵も、奮戦したが全滅したようだ。これより本命の、我々の部隊で突入する」
ラスティはそう通信を送ると、ヴォルタのACの残骸へと、数秒だけ黙祷する。敵ではあったが、嫌いな男ではなかった。
「我々も、どれだけ死ぬかな」
通信には乗せずに、ラスティはそう言った。
「聞こえるか、『パンドラ』」
『どうしました? ハンドラー・ウォルター。あなたから連絡してくるとは珍しい』
「提案、あるいは忠告といったところだな。ウォッチポイント・デルタについてだ」
『ほう』
「あそこは、今主戦場になっているベリウスから近いわりに、守りが薄い。あそこをお前たち封鎖機構から奪取して、そこから得られる情報を上手く使えば、本命のコーラル集積地の位置をかなり正確に割り出せるだろう。俺ならば、あそこを狙う」
『なるほど、興味深い意見です』
「企業に奪われる前に、守りを固めるか、思い切って破壊した方が良い。提案というのはそれだ」
『ご忠告ありがとうございます。確かに、対処するようにいたしましょう』
「621を使うか?」
『いえ、あなた方には別にやっていただきたいことがあります。ウォッチポイント・デルタの対処は、こちらで手配するようにいたしましょう』
「そうか。それならいい」
ウォルターはそう言って、通話を切る。端末から耳を離したウォルターには、最後の呟きは聞こえなかった。
『……リンクスを、ここで使うわけにはいかないのですよ』
今更ですが、めちゃくちゃ独自設定混じっているのでご注意をば。