アルティメット惑星封鎖機構によるコーラル焼却RTA 作:サンドフード
『独立傭兵リンクス、貴方に引き受けてもらいたい作戦がある。作戦内容は、虜囚となった戦士たちの救出。我々はヘリ単機突入による奪還を決行する。救出対象の同志は3名。我々にとっての重要人物も含まれる。
独立傭兵リンクス、貴方が我々に共鳴してくれることを願う。コーラルよ、ルビコンと共にあれ』
ベリウス南部の汚染市街に築かれた、ベイラムの捕虜収容所。ターゲットはその施設だった。
『壁』の陥落によって脱出した解放戦線の残存勢力の一部が、ベイラムに捕捉され、捕虜として捕らわれた、ということのようだ。
「重要人物と言うわりに、出す戦力がヘリ1機とはな。解放戦線も一枚岩ではないらしい」
この場所にルビコン解放戦線の帥父ドルマヤンが捕らえられていることを、ウォルターは事前に掴んでいた。
かつてのルビコン解放戦線の前身は、コーラルを独占しルビコンを支配する『ルビコン開発技研』に反抗する、反企業レジスタンスとして始まった。若き宗教指導者、師父ドルマヤンの統率の元、宗教的性質も帯びており、規模もさほど大きいものではなかった。
だが、アイビスの火によって事態は一変する。
技研は崩壊し、隠れ潜んでいたルビコン解放戦線だけが比較的少ない被害で生き延びた。そしてその時にはもう、滅びかけたルビコンを統治できるような組織は解放戦線以外に残っていなかった。
やがて解放戦線は、ルビコニアンを統治し、抑圧する惑星封鎖機構に対抗する現地政府のような性格を帯びるようになる。
規模の拡大に伴って、過激な宗教指導者であったドルマヤンは徐々に求心力を失い、また同時にドルマヤン自身の活動も減少していった。
今ではドルマヤンを慕うのは、一部の古参メンバーとその一派だけで、他の大多数のメンバーからはすでに過去の人物としてとらえられている。
ヘリ1機だけというのは、そんなドルマヤン派の現状を表しているように思われた。
621はヘリと合流し、収容施設に突入する。
『敵襲! 解放戦線のヘリと、他にACが1機!』
『お仲間を助けに来やがったか。迎撃するぞ!』
たかが収容施設に大した戦力が置かれているわけでもなく、621は容易に返り討ちにする。
『着陸準備。同志ツィイーの救出を開始する』
「621、周辺の安全を確保しろ」
621は近づくMTやヘリを撃ち落としていく。
やがて、救助が完了した。
『助けに来て……くれたんだね』
『待たせてすまない、ツィイー』
『大丈夫さ、ちょっと休んで、またやり返そう……』
ヘリと621は、次の地点に向かう。だが次の対象は、すでに事切れていた。
『同志メッサムを、収容した。間に合わなかったようだ……』
『畜生、メッサム……』
『最後の地点に向かう。引き続き、護衛を頼む』
防衛戦力を蹴散らしながら、最後の地点に向かっていく。
そこにはドルマヤンが収容されているはずだ。
『同志ドルマヤンの救出を確認』
『師父、ご無事でよかった……! コーラルよ、ルビコンと共にあれ』
だが、ドルマヤンはやや様子がおかしい。
『その警句の、何を知っているというのだ……全ては、消えゆく余燼に過ぎない』
『……目標を達成、これより本機は作戦領域を離脱する』
作戦指揮官はそれを見て見ぬふりをしながら、帰還を指示する。
だが、その時ウォルターから連絡が入る。
「621、新たな敵影を確認した。レッドガン部隊のACだ。これは、俺達にとっては好都合だ。ここで落とすぞ」
やがて、そのACが姿を現す。
『捕虜奪還に単機で護衛とは、その蛮勇は認めるが。通らんよ、それはな』
黒い2脚ACが、通信でそう告げた。
「識別信号を確認した。
『ヴォルタとイグアスを退けたのはお前だな? 独立傭兵『リンクス』とか言ったか。その力、確かめさせてもらおう!』
その言葉と共に、ナイルはミサイルを斉射する。
621はクイックブーストで咄嗟に回避するが、全ては避け切れずにダメージを負った。
621は回避運動を取りつつ断続的にプラズマライフルを発射するが、ナイルには当たらない。
『どうした、そんなものか!?』
リニアガンを撃ちながらナイルは621を追い詰める。
だが、その時ふと、味方MTからの応答がないことに気づいた。
『……まさか』
味方MTが、全滅している。621は、ナイルを狙ってはいなかった。ナイルを牽制しつつ、背後のMTを確実に仕留めていたのだ。ヘリを攻撃させないために。
そのことに気づいたナイルの動揺を、621は見逃さなかった。
一転、ナイルに急接近するとゼロ距離でショットガンを撃ち込んだ。
『ぐ、この!』
ナイルがミサイルで迎撃しようとしたところに、621がアサルトアーマーを展開する。
パルス波に打ち据えられるナイルの機体に、さらにダメ押しのショットガンが着弾する。
そして至近距離から撃ち込まれる、プラズマキャノン。
『なるほど、あいつらが為すすべなくやられるわけだ……』
その言葉を最後に、ナイルのACは爆散した。
それを確認して、退避していたヘリが離脱を再開する。
『これ以上の追撃はなさそうだ……独立傭兵リンクス、協力に感謝する』
「護衛対象の戦域離脱を確認。ミッション完了だ」
そして最後に、ヘリからの通信にドルマヤンの声が混じる。
『『
『ごきげんよう、特務エージェント『リンクス』。あなた方に、新たなミッションを依頼したい。
ルビコン現地の兵器製造企業BAWS。その第2工廠において、禁じられたコーラルの井戸を隠し持っている疑いが持たれています。そのため惑星封鎖機構は、BAWS第2工廠への強制監査の実施を決定いたしました。あなた方はこれに同行し、抵抗があればそれを排除して頂きたい。僚機として、特務機体カタフラクトと、エクドロモイ2機が随伴します。
また、BAWSは各勢力へのMTの主要な供給元であり、第2工廠を制圧することで、この供給を断つことができます。これは我々の計画にとってもプラスの要素となるでしょう。
良い結果を、お待ちしております』
今回は正式な惑星封鎖機構の任務ということで、最新鋭の高機動型HC、AA22A HEAVY CAVALRY HMが供与されている。
LCおよびHCは、ACほどのカスタマイズ性を持たず、手持ちおよび両肩の兵装のみが換装可能となっている。代わりに、最適化された本体性能は一般的なACよりもはるかに高性能に纏まっており、個人技能よりも集団戦力を重視する封鎖機構に適した機体と言えるだろう。
採用技術そのものはACと類似しており、腕利きのAC乗りがHCに乗れば、当然強い。
「コーラルの井戸か。あそこは地理的には大した規模は無いはずだが、封鎖機構は小さな物も見逃さないつもりのようだ。621、ひとつ助言を送ろう。『不測の事態を予測しろ』」
ベリウス北部に位置する大規模な兵器工場である第2工廠へ、封鎖機構の僚機を伴って621は突入していく。
だが、想定されたような抵抗はない。それどころか、なんの反応もなかった。
「さすがに静か過ぎる……様子がおかしいぞ、621」
『こちらでもスキャンしていますが、完全に無人状態になっているようです。しばらく散開して捜索しますか?』
「そうしよう。621、警戒を怠らずに捜索を続けろ」
しばらく捜索を続けるが、何も見つからない。製造中の兵器なども、放置されたままだった。
そして封鎖機構から、連絡が入る。
『こちらで破壊されたMTの残骸を発見しました。おそらく所属は、BAWSのものです。発見しにくい死角に、1体だけ残されていました。
どうやらこの工廠はすでに制圧され、そして隠蔽工作まで行われた後のようです。危険ですので、一旦合流しましょう。目標合流ポイントを送信します』
「了解した……避けろ! 621!」
突然のレーザー攻撃を、621はすんでのところでクイックブーストにて回避する。発射地点に、見えない何かがいる。
「ステルス機体か……! どうやら待ち伏せされていたらしい。まだいるはずだ、スキャンを活用しろ」
堰を切ったように、四方八方からレーザーが発射される。
「殲滅し、カタフラクトとの合流を目指す。気合を入れていけ、621!」
621がステルス所属不明機を殲滅して合流ポイントに到着したときには、すでにカタフラクトは交戦状態に入っていた。エクドロモイは1機撃破されてしまっている。
同じようなステルス無人機に加え、見慣れない構成のACが1機。
「どのパーツも見たことがないものだ。あれがステルス無人機たちの親玉か?」
様子を伺っていると、ACから通信で話しかけてきた。
『貴方が特務エージェント『リンクス』ですか。コーラルは企業にも封鎖機構にも渡すわけにはいきません。貴方達には、ここで消えて頂きます』
「俺達の素性が知られているのか。少し待て、相手の識別コードを探っている。……独立傭兵、ケイト・マークソン? 知らない名だ。それに、これは……経歴情報が、ほぼ白紙だ。確実に裏があるぞ」
そしてケイトは621に攻撃を仕掛ける。
想像以上に、洗練された動きだ。少なくとも、企業のエース級か、それ以上。
連携の取れたステルス無人機の援護射撃も、的確で鬱陶しい。
こちらもカタフラクトとエクドロモイが援護射撃を行うが、双方が連携に不慣れでぎこちない。621の動きに、付いてこれていない。
「状況が良くないな。『パンドラ』、そちらはステルス無人機を抑えてくれ。ACはこちらで対処する」
すぐさまカタフラクトとエクドロモイは、ターゲットをステルス無人機に切り替えて攻撃を行う。621と所属不明ACの、一騎打ちに持ち込む。
ACの右肩のレーザーオービットが展開し、自動制御とは思えぬ動きで621のHCを追尾する。だが、621にとって追えないほどではない。照射をパルスシールドで防ぐと、パルスキャノンでオービットの動きを止め、レーザーブレードで大部分を撃墜した。
『チイッ!』
予想外の行動に、中距離戦では分が悪いと思ったのか、ACは一気に距離を詰め、レーザーダガーを振り抜く。621はレーザーブレードで受ける。
ヂインッ、と音がして激しい火花と共に双方の刃が弾かれる。打ち合う、打ち合う。その度に散る火花が、両者の機体を照らす。
『埒があきませんね……!』
何度目かの鍔迫り合いの後、HCのレーザーブレードを強く弾くとケイト・マークソンのACは後ろに大きく飛びすさる。
そして、右手の大型のエネルギーライフルをチャージし始めた。
だがそれは、それまでの動きに似合わぬ大きな隙だった。
それを見逃す621ではない。
アサルトブーストで一気に距離を詰めると、ライフルごとACを断ち切るようにレーザーブレードを振り抜いた。そしてダメ押しに、回し蹴りも加える。
ライフルのエネルギーが、行き場をなくして爆発する。
『そんな、バカな……大き、過ぎる……』
ノイズ混じりの音声を残し、所属不明ACは機能停止した。
「やったか……」
『お疲れ様でした、『リンクス』。これらの機体は回収して、こちらで解析に掛けておきます。後始末も、こちらでやっておきましょう。戻って、お休みください』
彼は僚友である
予定通り壁越えに参加したヴォルタは、何も成せずに死んだ。
『壁』は結局、大きな犠牲を出しながらも、アーキバスの部隊が漁夫の利を得る形で攻略したらしい。
コーラル争奪戦で不利に立ったベイラムは、形振り構わず挽回するため、惑星封鎖機構を敵に回すのも厭わずにウォッチポイント・デルタを占拠する作戦に乗り出した。
そこにアサインされたのが、イグアスだ。
管理棟はまだ守りも薄く、制圧は容易だったが、観測棟に向かおうとしたところで、独立傭兵スッラに襲撃された。
そこまでは、まだよかった。強敵だったが、まだ勝てない相手ではなかった。
だが、戦闘中に封鎖機構のバケモノ無人機バルテウスが横から突っ込んできて、すべて台無しにされた。スッラは轢き潰されて、一瞬で死んだ。
イグアス自身は何とか観測棟に逃げ込んで撒いたが、味方MT部隊はおそらく全滅しているだろう。考えなしに奥に進んでいるが、ここからどうすればいいのか。
「クソッ、あのダムの乱入者が、ケチの付き始めだ」
文句を言ううちに、最奥の、センシングバルブにたどり着いた。元々の目標地点ではあったが、外のバルテウスを何とかできなければ、どうにもならない。
だがその時、さらなる嫌な予感がイグアスを襲った。
次の瞬間、天から降り注いだ巨大なレーザーが目前の制御装置を貫いた。
これは封鎖機構の、衛星砲だ。
「畜生、敵の手に渡るぐらいなら、ってことかよ」
イグアスは吐き捨てるが、周囲の様子がおかしいことに気付いた。
金属パネルの隙間から光るコーラルの赤い光が、異常に強まっている。
「こりゃあ……」
次の瞬間、イグアスはコーラルの逆流の巨大な奔流に飲み込まれた。
『あなたは……?』
『第4世代、旧型の強化人間……』
『あなたには、私の『交信』が届いているのですね』
『私は、ルビコニアンのエア』
『目覚めてください』
『あなたの自己意識が……コーラルの流れに散逸する、その前に』
そして急速に、イグアスの意識は覚醒した。
「う……何だ、こりゃあ。どうなってる……」
『イグアス、敵性機体の接近を確認しました』
「誰だ、てめえは……いつもの耳鳴りと、同じ感じがする……」
『あなたの脳波と同期し、『交信』でサポートします』
そして襲い来る、特務機体バルテウス。
「畜生、やってやる、やってやるよ……!!」
『メインシステム、戦闘モード再起動』
エア×イグ!?
ここまででChapter1終了となります。引き続き、Chapter2以降もお楽しみください。