アルティメット惑星封鎖機構によるコーラル焼却RTA 作:サンドフード
グリッド086防衛
621。俺達は、飼い猫ではない。
ベイラムへと秘密裏に欺瞞情報をリークして、ウォッチポイント・デルタへの襲撃を誘導した。結果として、惑星封鎖機構は自ら施設を破壊することとなり、コーラルの逆流が引き起こされた。
……見ろ、621。これは、ある友人から提供された観測映像だ。
逆流が誘起したコーラルの局所爆発。その拡散には一定の指向性がある。向かう先は……アーレア海を越え対岸に位置する『中央氷原』。
封鎖機構からの情報の、裏付けは取れた形になるな。集積コーラルは、そこにある。
企業はいまだこのことに気付いてはいないが、それぞれが調査を進めている。気付くのも、時間の問題だろう。
じきに、俺達の活動の場も中央氷原に移るはずだ。俺は野暮用で、少し外す。その間に、準備を進めておけ。
前回のミッションでの解析情報を共有します。
まずは、ステルス無人機について。その名称は『ゴースト』。
どうやらルビコン各地で秘密裏に情報収集を行っているようです。
そして、ACの名称は『TRANSCRIBER』、機種名は、『マインドβ』
操縦席の中身は、空でした。おそらくケイト・マークソンという人物は、実在しません。
その正体こそ、オールマインドであると推測されています。
オールマインドは、すでに中央氷原に集積コーラルが存在することを掴んでいるようです。
そして、ウォッチポイント・アルファの存在も。
あなた方の活動も、海を越えて中央氷原で行う時期が来ているでしょう。海越えの手段は、こちらで提供いたします。
準備が整うまで、自由に行動していただいてかまいません。
『初めましてだね、ビジター。私はRaDの頭目、シンダー・カーラ。おたくのウォルターの古い知人でもある。海超えの準備が整うまで、暇なようなら、ちょいと野暮用を手伝ってもらえないかい?
うちを目の敵にするドーザー集団、『ジャンカー・コヨーテス』。こいつらが企業にそそのかされて、うちに大規模な襲撃を仕掛けるつもりらしい。どうも企業はうちにある、大陸間輸送用カーゴランチャーを押さえておきたいらしいね。
企業にいいようにされるのは、あんたらも困るんだろう? ついでにこいつらも方付けてくれるとありがたいね。いい返事を期待しているよ!』
RaDが拠点とするグリッド086は、アイビスの火以前に建造された
『おい、ACが出てきたぞ!』
『見たことねえ機体だ。カーラの野郎、ビジターに金を積みやがったな!』
そのグリッド086に、雑多なMTが押し寄せていた。621はそれを順次迎撃していく。
「あんたたちが暴れたせいで、企業もずいぶんな人手不足みたいでね。ならず者に型落ちのMTを配って手足にしてるらしいよ。企業も落ちぶれたもんさね」
今更MTの群れなど、621の敵ではない。危なげなく、片付けていく。
半数ほどを撃破したところだった。
「まあ半分ぐらいは、闇市に流れたうちの製品なんだが……ん、何だいこの反応は」
カーラが何かに気付く。
「チイッ、悪いねビジター、状況が変わった。いつの間にか忍び込まれて、ハッキングドローンを仕込まれていたらしい。陽動とは、らしくない味な真似をしてくれる。
あんたは奥に戻って、ハッキングドローンを探して片付けてほしい。雑魚共の相手は、こっちで引き受けるよ」
そう言うと共に、地響きを立てて何かが近づいてくる。
壁を突き破って、巨大な重機が姿を現した。移動式溶鉱炉に大型の回転破砕機を取り付けた、異様な姿。無人重機『スマートクリーナー』がコヨーテスに襲い掛かった。
『ぎゃあああああ!』
回転破砕機に巻き込まれたコヨーテスの悲鳴が響く。
「壁の修理費を考えると、頭が痛いね。ハッキングドローンは頼んだよ、ビジター」
621は引き返し、ハッキングドローンの捜索を行う。
奥に進みながら、順次ハッキングドローンを破壊していく。
5機目を破壊したところで、再度カーラから連絡が入った。
「ハッキングドローンは片付いたようだね。だが、悪い知らせだ、ビジター。さっきのスマートクリーナーが、撃破された。どうやら後詰めの企業ACが表に出てきたらしい。あれを撃破できる腕利きとなると、うちの連中じゃ歯が立たない。悪いがこいつも迎撃にあたってほしい」
カーラに告げられ、621は表側にとんぼ返りする。
表に出た621は、飛来するACと鉢合わせした。
『ああ? てめえはガリア多重ダムの……』
現れたのは、
『ドーザーどものお守なんざ下らねえ仕事かと思ったが……野良猫を潰せるなら、悪かねえ』
『傭兵登録が見つかりません、ですがベイラムの情報データベースに合致する情報を見つけました。未登録傭兵『リンクス』……』
イグアスの呟きに、答える声があった。イグアスの脳内だけに響く、謎の声。
『おい、勝手にデータベースにアクセスしてるのかよ、てめえ!』
『あなたのIDを使用していますから、問題ありません』
『余計に大問題だ!』
『来ます! 気を付けてくださいイグアス!』
『誰のせいだ!』
もちろん621にはイグアスの声しか聞こえていない。謎の一人芝居を始めたイグアスに、621は襲い掛かる。
『チッ、あの時のようにはいかねえぜ!』
実際、バルテウスを撃破したことで一皮むけたのか、格段に動きが良くなっている。あるいは、脳内の声のサポートによるものか。
『ラッキーパンチだったってことを証明してやる! くたばりな野良猫!』
ミサイルや銃弾の応酬が繰り広げられるが、どちらも致命打にはならないまま、目まぐるしく位置取りが変化していく。
まったく同時にアサルトアーマーを展開し、パルス波が相殺し合う。
このまま膠着状態に陥るかと思われた、その時。
『新たな敵性反応! 後ろですイグアス!』
『ああ!?』
621とイグアスに、同時にレーザーが襲い掛かる。
いつの間にか、所属不明機が近づいてきていた。
『何だこの……訳の分からねえ機体は……!』
『ステルス性を備えた無人機のようです。識別信号なし。どの企業製品にも合致するものがありません』
621とイグアスは飛び離れ、所属不明機に応戦する。
「あれは……例の『ゴースト』かい。なんだってこんな所まで現れて、しかもわざわざ姿を晒して攻撃してくるのかね。よっぽど恨みを買ったのかい、ビジター?」
たしかに、ゴーストからは621を狙った攻撃の方がずっと多かった。
『邪魔すんじゃねえ!』
自然と共闘するような形になるが、イグアスはそれも気に入らないようだ。
さほど時間をかけずに、ゴーストは全滅した。
『邪魔者は消えた、次はてめえだ!』
間を置かず、イグアスは621への攻撃を再開する。
再びミサイルと銃弾の応酬となるが、機体の性能差もあってか、徐々にイグアスのダメージが蓄積していく。
『AP残り30%、リペアキット残数なし。これ以上は危険です、イグアス!』
『クソッ、邪魔さえ入らなけりゃあ……これで勝ったと思うんじゃねえぞ!』
捨て台詞と共に、イグアスはブーストをかけて撤退していった。
「終わったみたいだね。……あれについては、うちの技師たちでも調べておこう」
そうしてグリッド086は、静寂を取り戻した。
調子はどうだい? ウォルター。
こちらに現れたゴーストの解析だが、封鎖機構の解析結果と概ね一致した。これも裏付けが取れたと言っていいかね。
あと、仕掛けられたハッキングドローンなんだが、外装こそ相応だが中身はコヨーテスの技術力からするとやけに高度だった。
ひょっとすると、こいつにもオールマインドの息がかかっていたのかもしれないね。
それと、ビジターの命を狙っているのは予想された通りだが、他にも気になる点があった。
連中、あそこに現れた
レッドガン部隊の一員に、オールマインドがどんな用があるのかは分からんがね。
それじゃあ、そっちも気張りなよ、ウォルター。
イグアスがウォッチポイントにいたの、ウォルターの仕込みの結果でした、という。
封鎖機構「何してくれとんねん」