アルティメット惑星封鎖機構によるコーラル焼却RTA 作:サンドフード
「カーラの依頼を受けたそうだな。もし俺に万が一があれば、あいつを頼れ。そして、海越えの前に、最後のミッションだ。
ルビコン解放戦線が、アーキバス占領下にある『壁』の奪還に向けて、
スウィンバーンは監視部隊の指揮官でもあり、『壁』の周囲には厳重な警戒網が敷かれている。俺達は存在を悟られることなく任務を遂行し、相打ちになったように見せかける。
これは初めての潜入任務になる。やれるな、621」
621は、『壁』へと接近する。
今の621のACには、『ゴースト』を解析して作成されたステルスシステムが搭載されている。『ゴースト』ほどの完全なステルス性はなく、また武装が減るというデメリットはあるが、闇夜に紛れれば非常に見つかりにくくなる。
「供与された試作ステルスシステムの調子は問題ないようだな、621。だが過信せず、監視装備MTには注意しろ。記録を取られればミッションは失敗だ。
目標推定座標を送る。気付かれることなく、監視できる位置まで接近しろ」
物陰の死角を利用しつつ、621は地上を静かに進んでいく。
『今、何か物音が……? 何もいない、気のせいか』
特殊任務に合わせ、腕部、脚部も静音仕様になっている。ブースターを使わなければ、ほぼ音がしない。
進んでいくと、MTが密集していてすり抜けるのは難しい箇所に当たった。
621は壁をガンと叩くと、構造物の反対側に回り込む。
『誰だ! ……誰もいない』
物音にMTが集まってきた後ろを、621はすり抜ける。
次に当たるのは、短いスパンでMTが巡回するエリア。タイミングよく進んでも抜けるのは容易ではないだろう。
すると621は、地面に何かを置いた。MTがそれを見つける。
『何だ? ……おおっ、これは……大豊娘娘ピンナップ!』
MTのアームでどうやったかは分からないが、それを拾い上げて気を取られている。621はその隙にその場を抜けた。
やがて警戒区域を抜けると、目標推定座標近くのポイントにたどり着いた。
「ターゲットを視認。監視しつつ、いつでも動けるようにしておけ」
621は、
身じろぎもせず、ただじっと待つ。
その時だ。監視部隊からの報告が入る。
『報告します。侵入機体のキャプチャーに成功』
ただその対象は、621ではないようだった。
『よくやった。処理は私がやろう』
そう言うと、スウィンバーンはブーストをかけ、どこかに移動する。
「動いたか。追跡しろ、621」
スウィンバーンは、発見されたことに気付いて逃亡する機体を追っているようだった。
『壁』から少し離れたところで、発砲音が響き始めた。
「交戦に入ったな……だが相手は六文銭ではないようだ。ベイラムの偵察隊か? いずれにせよ、警戒区域の外に出たのは解放戦線側にとっては好機のはず。このタイミングで動く可能性は高いぞ」
ヴェスパー部隊に抜擢されるだけあって、スウィンバーンもそれなりに腕は確かなようだ。偵察機体を、危なげなく追い詰めていく。
やがて偵察機体は、撃破された。
『次から次へと不法者……よくもまあ飽きないものだ』
スウィンバーンは撃破した機体を調査し始める。
『この機体構成は、解放戦線ではない……? なるほど、ベイラムか。時代遅れの斜陽グループめ……まとめて再教育センターにぶち込んでやればスネイル閣下も喜ばれるだろう』
そのスウィンバーンに、背後から近づく影があった。
『おい貴様、持ち場を離れるな。襲撃者ならこの私が……』
そこでスウィンバーンは気づく。監視部隊の機体ではない。
『!? なっ、何者だ!? 部下を装って近付くとは、なんという卑劣……』
『そちらが勝手に勘違いしただけであろう。恨みはないが、義によって、お命頂戴いたす!』
『黙れい! 貴様も再教育センターに送ってやろう!』
そして2機のACは、交戦状態に入った。
「現れたな。あれが独立傭兵『六文銭』だ。趨勢を見逃すな」
今でこそ解放戦線に身を寄せているが、六文銭は裏社会では名の知られた存在で、その腕は確かだ。
高速機動で動き回る六文銭を、スウィンバーンは捉えることができない。
『劣勢!? このスウィンバーンが劣勢だと!?』
『切り捨て御免!』
『や、やめっ』
言葉とは裏腹にブレードを装備しているわけではないが、六文銭のプラズマスロアーがスウィンバーンに突き刺さった。
スウィンバーンの機体が、爆散する。
『三途の渡しの六文銭、しかと受け取れ……』
スウィンバーンのACの残骸に向けて、六文銭は残心する。
だが、その背後に近づく影に、六文銭は気づかなかった。
今回の621は、武装も特殊仕様である。効果範囲も効果時間も極めて短く、連続使用も利かないという、格闘戦には使い物にならない性能の代わりに、アーマーを抜いて機体を破損させることに特化した、まさに暗殺用とでも言うべきパルスブレードを装備していた。
そして、その凶刃が背後から六文銭に振るわれる。
ズグリ、と。
背から腹に、パルスブレードの刃が突き出した。
『な、
六文銭のACが、ガクリと出力を失う。ズズ、とパルスブレードを引き抜くと、ドサリと力なく地面に倒れ込んだ。
そして、爆発四散する。
「ナムアミダブツ……ミッションは完了だ、621。帰投しろ。」
戦場に、諸行無常を体現するかのような風が吹いていた。
アーレア海に面した海岸に、何をするでもなく621の乗ったACが立っている。
惑星封鎖機構から連絡されたランデブーポイントが、ここだった。
「何もないが……座標はここで合っているようだな」
周囲には人工物一つなく、荒れた岩肌だけが広がっている。
ここに迎えが来る手はずになっているが、あたりには何の反応もなかった。
「まもなく、指定の時間か……621、上だ!」
621が頭部センサーを上に向けると、はるか高空から、大きな何かがゆっくりと降りてくる。
やがて、大規模ジェネレーター特有の重低音が、あたりに響く。
「こんなものまで、持ち込んでいたとはな。本来は封鎖圏内で使うものではないはずだが……」
それは、全領域対応型の空中戦艦の一種、強襲艦だった。
地上すれすれまで降りてくると、招き入れるようにゆっくりとハッチが開く。
ライトの光が、621を照らした。
『お迎えに上がりました。それでは、海越えと参りましょう』
もともとChapter2が短いのと、海越えの後に戻ってくるのもあれなので、スウィンバーン暗殺はここに移動しました。