アルティメット惑星封鎖機構によるコーラル焼却RTA   作:サンドフード

6 / 16
ヴェスパー7排除~海越え

 

「カーラの依頼を受けたそうだな。もし俺に万が一があれば、あいつを頼れ。そして、海越えの前に、最後のミッションだ。

 ルビコン解放戦線が、アーキバス占領下にある『壁』の奪還に向けて、V.(ヴェスパー)VII スウィンバーンの暗殺を計画しているという情報を得た。実行者は、事実上の解放戦線専属となっている独立傭兵『六文銭』。そして俺達は、共倒れを狙うことになる。生き残った方を、横合いから仕留めろ。

 スウィンバーンは監視部隊の指揮官でもあり、『壁』の周囲には厳重な警戒網が敷かれている。俺達は存在を悟られることなく任務を遂行し、相打ちになったように見せかける。

 これは初めての潜入任務になる。やれるな、621」

 

 

〈 メインシステム、ステルスモード起動 〉

 

 621は、『壁』へと接近する。

 今の621のACには、『ゴースト』を解析して作成されたステルスシステムが搭載されている。『ゴースト』ほどの完全なステルス性はなく、また武装が減るというデメリットはあるが、闇夜に紛れれば非常に見つかりにくくなる。

 

「供与された試作ステルスシステムの調子は問題ないようだな、621。だが過信せず、監視装備MTには注意しろ。記録を取られればミッションは失敗だ。

 目標推定座標を送る。気付かれることなく、監視できる位置まで接近しろ」

 

 物陰の死角を利用しつつ、621は地上を静かに進んでいく。

 

『今、何か物音が……? 何もいない、気のせいか』

 

 特殊任務に合わせ、腕部、脚部も静音仕様になっている。ブースターを使わなければ、ほぼ音がしない。

 

 進んでいくと、MTが密集していてすり抜けるのは難しい箇所に当たった。

 621は壁をガンと叩くと、構造物の反対側に回り込む。

 

『誰だ! ……誰もいない』

 

 物音にMTが集まってきた後ろを、621はすり抜ける。

 次に当たるのは、短いスパンでMTが巡回するエリア。タイミングよく進んでも抜けるのは容易ではないだろう。

 すると621は、地面に何かを置いた。MTがそれを見つける。

 

『何だ? ……おおっ、これは……大豊娘娘ピンナップ!』

 

 MTのアームでどうやったかは分からないが、それを拾い上げて気を取られている。621はその隙にその場を抜けた。

 やがて警戒区域を抜けると、目標推定座標近くのポイントにたどり着いた。

 

「ターゲットを視認。監視しつつ、いつでも動けるようにしておけ」

 

 621は、V.(ヴェスパー)VII スウィンバーンを発見し、その監視を始めた。

 身じろぎもせず、ただじっと待つ。

 

 その時だ。監視部隊からの報告が入る。

 

『報告します。侵入機体のキャプチャーに成功』

 

 ただその対象は、621ではないようだった。

 

『よくやった。処理は私がやろう』

 

 そう言うと、スウィンバーンはブーストをかけ、どこかに移動する。

 

「動いたか。追跡しろ、621」

 

 スウィンバーンは、発見されたことに気付いて逃亡する機体を追っているようだった。

 『壁』から少し離れたところで、発砲音が響き始めた。

 

「交戦に入ったな……だが相手は六文銭ではないようだ。ベイラムの偵察隊か? いずれにせよ、警戒区域の外に出たのは解放戦線側にとっては好機のはず。このタイミングで動く可能性は高いぞ」

 

 ヴェスパー部隊に抜擢されるだけあって、スウィンバーンもそれなりに腕は確かなようだ。偵察機体を、危なげなく追い詰めていく。

 やがて偵察機体は、撃破された。

 

『次から次へと不法者……よくもまあ飽きないものだ』

 

 スウィンバーンは撃破した機体を調査し始める。

 

『この機体構成は、解放戦線ではない……? なるほど、ベイラムか。時代遅れの斜陽グループめ……まとめて再教育センターにぶち込んでやればスネイル閣下も喜ばれるだろう』

 

 そのスウィンバーンに、背後から近づく影があった。

 

『おい貴様、持ち場を離れるな。襲撃者ならこの私が……』

 

 そこでスウィンバーンは気づく。監視部隊の機体ではない。

 

『!? なっ、何者だ!? 部下を装って近付くとは、なんという卑劣……』

『そちらが勝手に勘違いしただけであろう。恨みはないが、義によって、お命頂戴いたす!』

『黙れい! 貴様も再教育センターに送ってやろう!』

 

 そして2機のACは、交戦状態に入った。

 

「現れたな。あれが独立傭兵『六文銭』だ。趨勢を見逃すな」

 

 今でこそ解放戦線に身を寄せているが、六文銭は裏社会では名の知られた存在で、その腕は確かだ。

 高速機動で動き回る六文銭を、スウィンバーンは捉えることができない。

 

『劣勢!? このスウィンバーンが劣勢だと!?』

『切り捨て御免!』

『や、やめっ』

 

 言葉とは裏腹にブレードを装備しているわけではないが、六文銭のプラズマスロアーがスウィンバーンに突き刺さった。

 スウィンバーンの機体が、爆散する。

 

『三途の渡しの六文銭、しかと受け取れ……』

 

 スウィンバーンのACの残骸に向けて、六文銭は残心する。

 だが、その背後に近づく影に、六文銭は気づかなかった。

 

 今回の621は、武装も特殊仕様である。効果範囲も効果時間も極めて短く、連続使用も利かないという、格闘戦には使い物にならない性能の代わりに、アーマーを抜いて機体を破損させることに特化した、まさに暗殺用とでも言うべきパルスブレードを装備していた。

 

 そして、その凶刃が背後から六文銭に振るわれる。

 

 ズグリ、と。

 背から腹に、パルスブレードの刃が突き出した。

 

『な、(くせ)も、の……』

 

 六文銭のACが、ガクリと出力を失う。ズズ、とパルスブレードを引き抜くと、ドサリと力なく地面に倒れ込んだ。

 

 そして、爆発四散する。

 

「ナムアミダブツ……ミッションは完了だ、621。帰投しろ。」

 

 戦場に、諸行無常を体現するかのような風が吹いていた。

 

 

* * * *

 

 

 アーレア海に面した海岸に、何をするでもなく621の乗ったACが立っている。

 惑星封鎖機構から連絡されたランデブーポイントが、ここだった。

 

「何もないが……座標はここで合っているようだな」

 

 周囲には人工物一つなく、荒れた岩肌だけが広がっている。

 ここに迎えが来る手はずになっているが、あたりには何の反応もなかった。

 

「まもなく、指定の時間か……621、上だ!」

 

 621が頭部センサーを上に向けると、はるか高空から、大きな何かがゆっくりと降りてくる。

 やがて、大規模ジェネレーター特有の重低音が、あたりに響く。

 

「こんなものまで、持ち込んでいたとはな。本来は封鎖圏内で使うものではないはずだが……」

 

 それは、全領域対応型の空中戦艦の一種、強襲艦だった。

 地上すれすれまで降りてくると、招き入れるようにゆっくりとハッチが開く。

 ライトの光が、621を照らした。

 

『お迎えに上がりました。それでは、海越えと参りましょう』

 




もともとChapter2が短いのと、海越えの後に戻ってくるのもあれなので、スウィンバーン暗殺はここに移動しました。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。