アルティメット惑星封鎖機構によるコーラル焼却RTA   作:サンドフード

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Chapter3
観測部隊殲滅~無人洋上都市調査


 

『いよいよ我々、惑星封鎖機構も表舞台に立つことになります。まず最初に狙うのは4つ。

 中央氷原において、アーキバスに占拠された『ヒアルマー採掘場』、ベイラムに占拠された『ヨルゲン燃料基地』。そしてベリウスにおいて、アーキバスに占拠された『壁』、ベイラムに占拠された『ウォッチポイント・デルタ』。これらの重要拠点について、強襲艦隊にて同時に制圧を行います。

 各所の戦力に余裕を持たせるため、中央氷原にある2か所のいずれかを、あなた方にお任せしたいと考えております。『ヒアルマー採掘場』のアーキバス調査キャンプの殲滅、もしくは『ヨルゲン燃料基地』に駐留するベイラム部隊の排除と基地の接収、どちらを選ばれますか?』

 

「少し待て。どうする、621。──そうか。俺達は『ヒアルマー採掘場』を選ぶ」

 

『了解いたしました。今回もHCを供与し、また強襲艦2隻を随伴させます。こちらは接収する必要はありませんので、調査キャンプはすべて破壊してかまいません。いっそ、再利用を不可能にするぐらいが望ましいでしょう。あなたなら問題ないでしょうが、任務の成功をお祈りしております』

 

 

〈 メインシステム、戦闘モード起動 〉

 

 HCのジェネレーターとブースターは、低出力であれば無制限の連続稼働が可能で、フライトユニット装備により長距離飛行が可能となる。そのため目的地まで、HC自身で飛行することができた。

 両脇には、海越えで迎えに来た強襲艦と同型のものが2隻、随伴している。

 

「見えてきたな……アーキバスの、調査キャンプだ。企業は中央氷原にも手を伸ばし始めている。確証は持っていなくとも、すでに疑いは持っているのだろう。今はまだ調査は本格化していないが、いずれアーキバスはここを橋頭保に中央氷原の大規模な調査に乗り出すはずだ。そうなる前に、潰すぞ」

 

 すり鉢状の採掘場の中に残された建造物を利用して、調査キャンプは構築されている。その地形ゆえ、アイビスの火から燃え残ったのだろう。

 そこへ向けて、621のHCは高度を落としていく。

 

「殲滅しろ、621」

 

 放たれた大量のプラズマミサイルによる爆撃が、着弾した。

 

『ぐああああ!』

『敵襲か!? どこだ!?』

『上だ! あれは、HCに……強襲艦!? 惑星封鎖機構か!?』

『強襲艦からも対地レーザーが……うわああ!』

 

 621のHCがミサイルに加え、レーザーライフルとリニアガンも連射し、地上目標を破壊する。

 そして、強襲艦の多条対地レーザー砲とレールキャノンも放たれる。

 

『ルビコンに不法侵入した全ての勢力に告ぐ。ただちに武装解除し、封鎖圏外へと退去せよ』

 

 とってつけたようなアナウンスが、強襲艦から周囲に響く。

 MTも、建造物も、持ち込まれた調査ドローンも、すべてが均等に均されていく。

 

『これ以上の進駐は、惑星封鎖機構への宣戦布告と見なし、例外なく排除対象とする』

 

『くそ、これ以上やらせるか!』

 

 警護に当たっていたらしき、旧型ACがブーストで上昇してくる。

 だが、621に近づくこともできずに撃墜された。

 

『繰り返す、例外はない。ただちに武装解除し、封鎖圏外へと退去せよ』

 

 出払っていたヘリが、急ぎ戻ってくる。

 しかし、621のレーザーライフルと強襲艦のレールキャノンが着弾し、中身のMTごと完全に破壊された。

 

『これ以上の進駐は、惑星封鎖機構への宣戦布告と見なし、例外なく排除対象とする』

 

 この進撃を、止められるものはいない。

 ヒアルマー採掘場が更地に変わるのに、さほど時間はかからなかった。

 

『繰り返す、例外はない』

 

 

* * * *

 

 

「重要拠点を同時に失ったことで、企業たちもしばらく大人しくしているだろう。その間に、野暮用を済ませるぞ。これはある友人からの、私的な依頼だ。

 かつてルビコン調査技研が建造した洋上都市『ザイレム』。あの災害を経て無人となった、捨てられた都市だが……今は都市全体がECMフォグで欺瞞されている。友人が先んじて飛ばした調査ドローンも、濃霧の中で消息を絶ったらしい。そこで、お前の仕事だ。

 調査継続の障害となるECMフォグ制御装置を停止してこい。企業と封鎖機構が互いに睨み合っている今であれば、他に気取られずにこの都市の調査を行えるはずだ。

 ECMフォグを無効化するまで、お前との通信はできなくなる。調査ドローンが残したビーコンを目印に進め」

 

 

〈 メインシステム、戦闘モード起動 〉

 

 無人の洋上都市を、621は行く。

 思えば、誰の声も聞こえないミッションというのは、初めてだった。

 

『不明な侵襲を確認。恒常化プロセスE』

 

 警備システムがまだ活きていたようで、警備ドローンが放出される。調査ドローンはこうした相手にやられたのだろうか。

 今の621にとって大した脅威ではなく、容易に撃墜し先に進む。

 

『不明な侵襲が継続。恒常化プロセスA』

 

 警戒レベルが上がったのか、ドローンの数が増えてくる。

 そうこうしているうちに1つ目のフォグ制御装置を見つけ、アクセスして停止させる。

 

『侵襲を確認。恒常化プロセスC』

 

 攻撃が一層激しくなるが、621を傷つけることは叶わない。

 2つ目の制御装置も、停止させた。

 

『侵襲を確認。恒常化プロセスB2。抗原機体投入』

 

 無人MTが投入されるが、それもたやすく撃破した。

 ただ、この抗原機体と、『ゴースト』の見た目がよく似ていることが少し気にかかった。後でウォルターが戦闘ログを確認するだろう。

 

 少し離れた位置に3つ目の制御装置があった。それも停止させると、ウォルターとの通信が回復した。

 

「ECMフォグを停止したか、だが警戒しろ、621。お前が霧に突入した直後、後を追って霧に進入した存在があった」

 

 そうウォルターが告げると同時に、近くのドローンが何者かに撃墜された。そしてその火線は、621にも向かってくる。

 とっさに躱して、621は乱入者に向き直る。

 

『灰かぶりて、我らあり』

 

「接敵したか。情報を分析中だ。機体名はアストヒク。搭乗者は……ルビコン解放戦線の帥父、サム・ドルマヤン」

 

『ルビコンの脅威よ、ここで朽ちるがいい』

 

 

* * * *

 

 

 ドルマヤンと、交戦する。

 今更恩知らずなどと非難するつもりはなかったが、ドルマヤンがここにいる意味は分からない。

 

『ルビコンの脅威よ。素質を持ちながら、選ばれなかった者よ』

 

 その言葉の意味も分からないが、何故かそれは621に刺さった。

 

『私もまた、選べなかった者だ』

 

 ドルマヤンがかつて軍事指導者でもあり、凄腕のAC乗りであったことを621は知らない。耄碌した今も、その腕だけは衰えていないことも。

 そしてドルマヤンが何を思い、企業や封鎖機構と戦って来たのかも、知らない。

 

『ルビコンの脅威よ。我々の警句には続きがある』

 

 ドルマヤンのグレネードを回避し、ガトリングを撃ち込む。だが、ハンドミサイルの発射によって中断を余儀なくされる。

 

『コーラルよ、ルビコンと共にあれ。コーラルよ、ルビコンの内にあれ。その賽は、投げるべからず』

 

 621のレーザーを、ドルマヤンは回避する。返しの銃撃を、621も避ける。

 

『だがその警句は、賽を焼くことを意味してはおらぬ!』

 

 ドルマヤンの叫びが、通信越しに耳を打つ。

 

『このルビコンの地を、二度も焼かせはせぬ!』

 

 振り抜かれたレーザーブレードをギリギリで回避した621のカウンターのブレードが、ドルマヤンの機体を切り裂いた。

 

『セリア……臆病な私を、許してくれ……』

 

 その言葉を残して、ドルマヤンのACは爆散した。

 まだ残っていた霧が、完全に晴れていく。

 

「撃破したか……ドルマヤンが、どこから情報を得ていたのかは気になるが、それは後だな。

 まずは621、戻って休め」

 

 

* * * *

 

 

 シンダー・カーラとその相棒チャティは、自らACに乗り込み、『ジャンカー・コヨーテス』の本拠地であるグリッド012に攻め入っていた。

 

「さあ、ここで始末をつけるよ、チャティ!」

『了解だ、ボス』

 

 相対するは、コヨーテスの頭目、オーネスト・ブルートゥ。

 ブルートゥは、かつてはRaDの所属であったが、資金と技術を持ち逃げし、コヨーテスのトップに収まった人物である。

 

『ああ、新しいご友人を紹介いただけなかったのは残念です、カーラ。ですが、貴女と踊るのもまた、素敵だ』

 

 だが、ブルートゥは重度の虚言癖を備えた人格破綻者だ。まともな会話は、成立しない。

 

「せっかくビジネスが順調なんで、私もそろそろ海を越えようかと思っていてね。その前に、不確定要素にはここで消えてもらうよ!」

 

 ブルートゥのAC、『ミルクトゥース』もまた、かつてカーラの作ったものだ。相当なおふざけが入った機体にもかかわらず、それを使いこなし異様な強さを発揮するのがブルートゥの油断ならないところだった。

 その火炎放射を躱しながら、カーラは言う。

 

「それに、盗まれた玩具も返してもらう。よくも持ち逃げしてくれたね、この裏切り者が」

 

 その言葉に、ブルートゥはピタリと動きを止めた。

 不審な動きに、カーラ達も思わず止まる。

 

『裏切り者、ですか。それはどちらのことなのでしょうね?』

「……どういう意味だい」

 

 芝居がかった口調と仕草で、ブルートゥは言う。

 

『裏切り者は、貴女なのではないですか? シンダー・カーラ。それも、すべてのルビコニアンに対しての』

 

 その言葉に対し、一瞬だけカーラは言葉に詰まる。

 

「何のことだか、分からないね。だが、あんたを始末する理由が増えたよ」

 

 カーラは苦々しく、そう答える。

 

『フフ、笑いを忘れていますよカーラ。さあ、もっと笑いましょう!』

『耳を貸すな、ボス。実力で黙らせてしまった方がいい』

 

 相棒の言葉に同意したのか、カーラは無言でミサイルを斉射する。

 

『ああ、レールキャノンも啼いている……親元を離れ、恋しがっているのでしょうか。それとも、己の生まれを嘆いている?』

 

 もうAPもろくに残っていないはずなのに、まるで気にせずブルートゥは嘯く。オーバードレールキャノンこそ、かつてブルートゥに盗み出され、そして今カーラが取り戻そうとしているものだ。

 チャティとカーラの十字砲火がブルートゥに刺さり、ついには機体を破壊した。

 

『贈り物を、くれるのですね……素敵だ……』

 

 そう最後に言い遺すと、ミルクトゥースは動きを止めた。

 

『機能停止を確認した』

「……死んだみたいだね、よかったよ」

 

 カーラの言葉が、虚しく響いた。

 




出会えなかったご友人…

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