アルティメット惑星封鎖機構によるコーラル焼却RTA 作:サンドフード
『我々、惑星封鎖機構が中央氷原における主拠点としている、バートラム旧宇宙港。そこに、アーキバスを中心としたグループが襲撃を計画しているという情報をキャッチしました。
宇宙港を押さえるとともに、強襲艦を鹵獲して惑星封鎖に穴をあけ、応援を呼び寄せて戦力の増強を行うつもりと思われます。
防衛部隊を展開して防衛を行いますが、その最終防衛ラインをあなた方に任せたい。この宇宙港が失陥すれば、我々にとって大きな損失となります。防衛の成功を、期待しております。
そして──』
かつてルビコン3の玄関口であった、バートラム旧宇宙港。そこは今、惑星封鎖機構の強襲艦隊の母港となっている。追い詰められた企業が狙うには、格好の標的だ。
HCに搭乗した621はその奥、強襲艦の駐機場の手前で待機していた。
薄く雪の積もった宇宙港は、今は静かなものだった。
だが、変化は唐突に訪れた。
『コード23。敵性ACを確認。1機だけです。ですが、これは……』
『優先排除対象です! 奴が単機で突入してきました!』
『くそっ、1機にいいように……ぐあっ』
戦闘音が響き、それは収まらない。封鎖機構の機体が次々撃破されているようだった。
『コード5。敵機確認』
『ここを通させるな!』
迎撃部隊が集中砲火を浴びせるが、当たらない。たった1機を止められない。
精鋭の執行機体さえも、撃破されていく。
『いよいよ、我々のターゲットの一人が姿を現したようです。登録番号Rb-32 登録名『レイヴン』……このルビコンに企業を招き入れた元凶です』
やがて、1機のACが飛来した。
漆黒の2脚機体。着地すると621の方を向き、ヘッドパーツが展開する。
『聞こえている? レイヴン。惑星封鎖機構に与する凄腕の傭兵が存在することは掴んでいたけれど、ようやく見つけたわ。──あれこそが『ルビコンの破壊者』、そして『自由意志の敵』。我々が倒すべき存在、『リンクス』』
そしてレイヴンが、襲い来る。
「あれが、コーラルの情報をリークしたという独立傭兵か。相当な腕だぞ。警戒しろ621」
『ハンドラーの猟犬が、封鎖機構の飼い猫に堕ちた。ならばここで、墜ちてもらいましょう』
近づくレイヴンに621のHCも接近し、ブレードを振るった。
『接近戦!? 気を付けてレイヴン。容易な相手ではないわ』
距離を取ろうとするレイヴンに、ブースターの出力に物を言わせて強引に食らいつく。
レイヴンの銃撃をシールドで受け流しつつ、ある程度の被弾は無視して近距離でミサイルを撃ち込む。
『ええ、レイヴン、私も感じているわ。この傭兵には、可能性がある。でもその可能性は、あまりに危険な方向に向いている』
レイヴンがアサルトアーマーを展開し、621はバックステップで回避した。
追撃で発射されるグレネードを、クイックブーストで躱す。体勢が、わずかに崩れる。
『意思の表象として、これだけは、ここで落とさなければならない』
「自由のためならば、何を犠牲にしてもよいと思っているのか。必ずここで落とせ、621」
突き出されるパイルバンカーを、左腕のシールドで受け流し、その軌道をそらした。
そのまま流れるようにシールドを突き出し、621はシールドバッシュを打ち込む。
姿勢を崩したレイヴンに、ブレードが突き刺さる。
『そんな! レイヴン!』
そしてレイヴンの機体は、無言のまま爆散した。
宇宙港に、静寂が戻ってくる。
「鴉は、山猫に食われるものだ……任務は終わりだ、621」
時は少し遡り、レイヴンが621と接敵した頃。ベリウス南部、ガリア多重ダムに接近する2つの影があった。
『連絡があったわ。レイヴンの方が、当たりだったようね』
『それじゃあ、こっちはハズレか。しょうがねえ、とっとと仕事を片付けて、撤収するぞ』
『そうね……待って、様子がおかしい。これは……』
二人組のACの片割れが、何かに気付く。
『ダムの設備が、すでに破壊されている……?』
『どういうことだ。依頼の重複でもあったか? いや待て』
もう片方が、周囲を警戒する。
すると隠れていた機体が、姿を現した。
『どうやら罠にはめられたのは、俺達の方らしい』
エクドロモイが4機。正面装甲を強化した、カタフラクト改が4機。
『なんてこと。どうにかして、突破するわよ』
だが、包囲はそれにとどまらない。
追加で現れるのは、バルテウスが4機。さらに無数のLC機体。
『くそ、ここまでか』
上空には、多数のドローンを伴った強襲艦隊までもが現れていた。
時は戻り、旧宇宙港近傍。
通信基地を破壊したアーキバスの別動隊が、宇宙港へと向かっていた。
「先行した独立傭兵は、撃破されたか。あれほどの腕利きでも敵わないとは」
そう言うのは、
「だが、相応に消耗はしているはずだ。何としても撃破し、宇宙港を押さえるぞ」
指揮するMT部隊にそう伝達し、宇宙港へと急行する。今回の作戦には、アーキバスの残存戦力の相当な割合が割かれていた。逆に言えば、それほど追い詰められているということでもある。
「俺にはまだ、ルビコンで成すべきことがある。封鎖機構、何が何でも、破らせてもらうぞ」
決意を固めた声で、ラスティは呟く。今だけは、スパイとして星を出る前、一人のルビコニアンだった時の口調に、戻っていた。
だがその時、ラスティは何かに気付いた。
「まて、何だこの振動は。地震か? いや、地下……?」
警戒して速度を緩めるラスティ。だがそれは、結果的に悪手だった。
真下から地面を突き破って現れた、巨大な何か。
その頭に装備された巨大な3つの回転するボーリングビットに巻き込まれ、ラスティのACは、金属の挽肉に変えられた。
『──そして、ミッション後半では、IA-02 アイスワームを投入します。この技研が作り出した巨大C兵器は、我々も完全には掌握できていません。特に、技研都市とコーラルを防衛するという最上位命令がプログラムされており、この解除ができません。今はまだ休眠させることができていますが、このことは、後々に障害となる可能性が高いでしょう。
そこで、これを企業戦力とぶつけ、双方の戦力を消耗させたのち、タイミングを見計らい我々の手で破壊します』
出会えなかった戦友…