「なにとぞ、よろしくお願いいたします」
「近隣で山荒らしですか、わかりました調査しましょう」
「おお、ありがとうございます。報酬ですが……」
「はい、ここに保管してある魔道書を」
「村には魔法使いはもうおりませんし、無用の長物でございますゆえ、こんな物でよろしければどうぞご活用ください」
この世界では魔法使いという存在は希少な存在であり、そのため何かしら手に余る問題が起きたときに魔法という未知の力を頼ろうとする人は少なくない。そのため、立ち寄った村で魔法使いということを明かすと度々現地の人から依頼を受けることがある。もちろん魔法は万能では無く出来ないこともあるのだが、俺の場合、MtGの魔法とこの世界の魔法を合わせるとかなり手広く対応できる。
とはいってもMtGの魔法は戦闘に関する物が多いため、大抵は荒事にしか使えない。さらに土地の
ただ、この世界の魔法は荒事以外の、いわば生活魔法のような物が多い。何かを生み出したり、改変したりと便利な物が多いのだ。例えば――
「――対象:
指先で空に魔法陣を描く。描いている材料は
「……
この『探索』の魔法は文字通り入力した対象を探索する魔法だ。範囲は術者の込めた
ちなみに魔道書に嘘を書いている可能性については『証明』の魔法が周知されているので問題ない。
「村長は森の木が何か強い力で折られてたって言ってたな。こんな森に
魔法使いが希少、とはいったものの一般的ではないだけでそこそこいることはいる。ただ、この中世ファンタジーと評せるような文化ではそこらへんの村だと見たことがない人が珍しくない。それに魔法使いと言ってもピンからキリで、魔法使いと呼べるのは魔法陣を起動できる者であり、
というのもこの世界には魔法学校のようなものがないから、魔法使いの師匠を持つか独学で学ぶしか方法がない。その上で才能も必要とされるので必然的に数が少なくはなるのだが、偶に失敗のリスクを無視して独自に魔法を開発して成功した魔法使いがいる。
大半が師匠や魔道書を持てずに自力で魔法使いになろうとしたはぐれ者か、リスクを度外視する魔法狂いなので余り関わり合いたくない存在ではあるが。
「遠方から様子を見てみるか」
先ほど『探索』で引っかかった場所の近くまでやってきた。一応姿を隠しては居るが、相手にも探知系の魔法がある場合、余り意味をなさないので奇襲の警戒はしておく。
「くぅ!貴様ら!わらわを誰だと思っておる!!」
「「「ゲゲゲッ!!」」」
覗いて見えたのは金狐の獣人……?とそれを囲む3匹のゴブリン、いや1匹はシャーマンか?。……ん?おかしいな、
「くっ、失せよ
金狐の少女は文様の書かれた腕を振るうと、その軌跡の延長上から嵐のような力が発生し、ゴブリンから"少しズレた"位置にある樹木を粉砕した。
「くそっ、やはり上手く当たらぬ……!」
それを嘲笑うかのようにゴブリンたちは叫び声を上げ、金狐の少女を囲んでいく。あれは魔法陣を腕に
「……流石に助けるか」
"欺きの静寂、古き意志は紡がれる"
「《発掘された壁/Excavated Wall》*1」
地中から壁がせり上がってくる。森の中に突然出現した人工物を警戒して、魔狼たちも標的をこちらに変えたようだ。意地でも少女を狙う場合は守る呪文を考えなきゃだったから助かった。
「ギギァ!?」
近くに居た一匹が飛び込んでくる。壁とはいってもこちらも
"無為なる選択、須く死を与える"
「《二股の稲妻/Forked Bolt》*4」
掲げた腕から稲妻が走る。一度上空に流れた稲妻は空で二つに分かれ壁に阻まれているゴブリンと近くに居る方のゴブリンをそれぞれ打ち抜く。
そして遠距離にいるシャーマンについてだが……
「■■■!!」
良く聞き取れない呪文を唱えると火球を構築し始める。
「《呪文貫き/Spell Pierce》*6」
人差し指から放たれた一筋の光が火球に小さな小さな穴を開ける。異変に気がついたシャーマンは慌てて呪文の再構築を行おうとするも、不安定になった呪文を保てなくなり火球は霧散した。
「現実で打ち消しを構えるっていうのは、相手の後の先を取るってことだ。まあ、赤単色だろうお前には難しいかもだけどな」
"降り注ぐ悲痛、響いて再び死が落ちる"
「《棘平原の危険/Spikefield Hazard》*7」
シャーマンの上空から茨の棘が槍となって放たれ、その身体に次々と突き刺さる。ゴブリンは叫び声を上げるも致命的な部分を貫かれ消滅していった。
「……でそこの狐さんはこの森で何をしていたんですか」
「――っは!わらわのことか!」
呆然と消えていったシャーマンの方を見ている金狐は、声をかけてようやく我に返ったように返事をした。
「他にいないでしょう」
「くっ、もう追っ手が来てしもうたか。かくなる上は……」
「は?いや、なんのこと……」
「問答無用じゃ!食ら――」
「――《物語の終わり/Tale's End》*8!」
いきなりヒートアップした金狐が腕を振るおうと
「なっ!!」
こちらの呪文により金狐の腕の文様が光を無くし、先ほどのような嵐は発生しなくなっていた。
「き、貴様!何をした!」
「……そちらの代わりにゴブリンを撃退したのにずいぶんなご挨拶だな」
「うぐっ、それはそうなんじゃが……」
……なにやら訳ありのようだ。獣人は本来
「とりあえず腕にあった
「……これはわらわが拾ったこの札に勝手に刻まれたのじゃ」
「――!それは……」
少女が見せたのは《嵐の束縛/Stormbind》*9のカード。なるほど、このカードの能力でさっきの嵐を起こしていたのか。
「やはり知っておるのか」
「知っている、というか俺が使っている呪文は殆どそれ関連の魔法だ。俺はそのカードや魔法を集めながら旅をしている」
「……どうやらあやつらの仲間じゃなさそうじゃの――済まんかった!わらわはスズナという。今とある集団から逃げておっての。つい先日襲われたばかりだったから気が立っておったんじゃ、どうか許してくれぬか……」
「俺は
そう聞くと金狐、スズナは少し悲しげな表情をして語り出した。
「そやつらは札狩りの集団じゃ」
「札狩り?……カードを収集している奴らがいるのか」
「うむ。ところで獣人は
「ああ、それもあとで聞こうと思ってた」
「わらわはそんな中何故か
スズナはカードを手に取ると
「
「突然、刻印が腕に宿りびっくりしたわらわが腕を振るって、周りに被害をだしてしもうたのじゃ」
「それから腫物を扱うような態度で過ごされる日々が続く中、ある日、この札と同じようなものを集めているという集団にあっての。そやつらから札を狙われているのじゃ」
カードを集めている集団……確かにずぶの素人の俺でもカードの力の一端を引き出せたんだ。この世界の住人がカードを手に入れればその力を集めようとする奴らがいてもおかしくはない。ただでさえこの世界の魔法は暴発や失敗の危険のせいで戦闘向けの魔法が開発されにくい環境なんだ、お手軽に強力な呪文を使えるカードは喉から手が出るほど欲しいだろう。
「カードを渡すだけではだめだったのか?」
「む、これに詳しそうな割に知らんのじゃな。これは最初に力を引き出した者が所有者となり、そのものが死ぬまで所有者は変わらず、札の力も引き出せないそうじゃ」
「なるほど、そういうことか」
俺も《願い/Wish》以外のカードを見たことがなかったから知らなかった。それに俺が使っているのはいわば逐一カードを衝動的ドローで創出*10しているようなものだ。本当は実際にカードを使用するのが普通なんだろう。
「そういえば、ナコレじゃったか?お前様は札を使っておらんかったのに札の呪文のようなものを唱えておったが、どういう仕組みなのじゃ?わらわと同じような刻印も見当たらぬし」
「まあ少し特殊でな、それはまた今度話そう。とりあえず一度俺が来た村に戻ろうか。少し
「む、それはすまなんだ。だが、しかしわらわは――」
「獣人が1人で
「……そうかの、ではお言葉に甘えさせてもらうのじゃ」
しかし、ここ数年旅をしてきたが初めて《願い/Wish》以外のカードの存在を知った。秘密裏に集めている組織がいるのならば仕方ないかもしれないが、俺も良く見つからなかったものだ。たまたま運が良かった上に、普段使用する呪文がカードじゃ無くて思考内で完結していたのも良かったのだろう。カード頼りを止めておいて良かった。
とりあえず、今日のところは帰って休もう。手持ちの魔道具の
そうして俺は村長にスズナのことを曖昧に説明しつつ、宿に戻って休むことにした。
思いついた端から書いているので矛盾点があればこっそり教えてください。
直したりゴリ押したりします