MtGの呪文と共に旅する異世界ファンタジー   作:レアブルー

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チーム結成/Assemble the Team

森で拾った?金狐の少女、スズナについて、結論から言うと同じ宿ということなら許された。というのも、この村の人というか基本的にこの世界の他種族については基本的に不干渉らしく、獣人という種族に対してあまり知識がないとのこと。

で、一応刻印(エンチャント)された腕に関しては隠したものの、やはり問題が起きた場所から出てきた他種族ということで警戒されているらしい。幸い、自分に関しては依頼を解決した実績(荒れた山はゴブリンのせいにした)があり、何かあれば自分が拘束すると伝えることで許しを貰った。

特に友好的でも無いが敵対的でも無くて助かった。

 

「ぐぬ……会って間もないものと一つ屋根の下とは」

「……一応ご厚意で布団は二つ貰ってるから我慢してください」

「まあ、贅沢を言える立場では無いの……というかお前様、何故そのような口調になっておるのじゃ」

「いや、あの時はちょっと咄嗟だったので」

「別に改まって畏まる必要も無いのじゃがの。こちらが世話になっておるのじゃし」

「無理して取り繕っているワケではなく、むしろこちらが自然体なのでお気になさらず」

「む、そうか?ならよいのじゃが」

 

敵かどうかも分からない状況ならともかく、気心知れた人でもない他人に対してタメ口はちょっとハードルが……。俺は小さい子供相手でも敬語を使うタイプなので。

 

「……そうですね。できればその"お前様"というのは変えてもらってもいいですか。なんだかムズ痒くて」

「一応、わらわなりに敬意を込めておったのじゃが、本人から言われてしまえば詮無きことじゃな」

「名此でかまいません」

「では名此、改めて今回は世話になった。礼を言うのじゃ」

 

改めて正面から頭を下げて礼を言われる。正直そこまでのことをしたつもりは無いがとやかく言うのもあれだし素直に受け取っておく。

 

「わらわは明日になればこの村を出ることにする。あいにく手持ちがなく感謝の品も渡せないのは心残りじゃが、せめてこの村やおぬしに迷惑はかけとうない」

 

気丈に振る舞ってはいるが、悲痛な顔を見せまいと気を張っているだけなのはかすかに震えている腕を見ればなんとなく分かってしまう。

 

「……どうせ私も当ての無い旅の途中で明日にはこの村を発つつもりです。旅は道連れ世は情けといいます。貴女も当てがないのであれば同行しませんか?」

 

俺は気がつけばそう口にしていた。これは同情なのだろうか、いや異世界での旅仲間というものにどこか憧れがあったのかもしれない。もしくは一人旅が少し寂しくなってきたのもあるかもしれない。そう自分に言い聞かせても一度口に出した言葉は戻らない。どんな反応を返すか恐る恐るスズナのほうを見ると――

 

 

「――その道連れ情けというのは知らぬが、もしやわらわは口説かれておるのか……?」

「――――」

 

"あ、ことわざ通じないんですね"。"そうですね男一人旅に女の子誘うのってだいぶアレですよね"という二重の羞恥で思考が停止する。

 

「……」

「……どうやら無自覚だったようじゃの」

 

こちらの動揺の様子を見て、先の一言で鋭く警戒を帯びていた目つきが幾分か和らぐ。

 

「……すみません突然変なことを言ってしまいました」

「い、いや謝ることはない。わらわが邪推しただけじゃ。明らかに厄介ごとを抱えているわらわを連れる意味が見いだせなくての」

 

……確かに謎の組織に追われている彼女を連れて旅をするのは危険が伴うし、普通を人であれば遠慮願うところだろう。カードの力は強大で、それこそ物によっては地形の変動すら引き起こせる災厄ともいえる力だってある。いくら彼女が震えているとはいえ、その矛先が自分に向く可能性があるのであれば関わらないのが賢明といえるだろう。

――ただそれはその組織と関わらないつもりの人間であればの話だ。

 

「……俺はある遠いところから、恐らくカードによってこの地に飛ばされて来た」

「――」

「そのときはカードの力なんてよくわからず、がむしゃらに生きてきた。一応最近はなんとか力を使えるようになってきて、生きて行くにはそこまで困らなくなったんだ。この世界も悪くないと思えるようになってきた。……ただ、やっぱり偶に故郷が恋しくなるときがあるんだ」

「それは……」

「多分、俺の故郷にはカードを使わないと戻ることが出来ない。だから俺は各地でカードを探すためにも旅を続けているんだ。そのカードを集めている組織があるなら俺が故郷に帰るためにも関われるやつがいる方が好都合ではあるんだ」

「……そうじゃったのか」

「――なんて、こう言いはしたけどそこまで故郷に執着してるわけじゃ無い。本当に偶に帰りたいな、と思うだけだ。……やっぱり俺は旅仲間が欲しいだけなのかもしれないな」

「……全く、ころころ意見を変えよって。どっちが本当なんじゃか」

 

スズナは真剣に聞いていた表情を崩し、軽く笑う。言いながら自分もよく分からなくなってきた。でもそれぞれの理由は俺の本心のはずだ。そんなふうに考えていると彼女のほうは決心が付いたのか、改めてこちらに顔を向けて続ける。

 

「……そういうことであれば同行させて貰おうかの。おぬしの実力はよくわかったし、おぬしがそれを望むのであればわらわが言うことは何も無い」

 

そういう彼女の表情からは先ほどまでとは少し違う、柔らかな表情が見えた。……今思えば周りが敵で囲まれた状況から単身知らない土地でこの状況だ。警戒するのも無理は無い。少なくともこの先の旅の間だけでも、この僅かな信頼を裏切らないようにしたいものだな。

 

「……では、これからよろしくお願いします」

 

旅仲間としての挨拶のつもりだったが、先ほどのスズナの"口説き"云々を思い出して少し気恥ずかしくなる。スズナもそんな俺の様子を見て察したのか、笑みをこぼして返答した。

 

「……うむ、よろしく頼むのじゃ!」




隙間時間が出来たので投稿です。
改めて誤字脱字報告ありがとうございます。
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