ウマ娘忍たまダービー   作:223系新快速

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利吉さん登場です。


第11話 利吉対三人組の段

利吉「仕事も終わったし、久し振りに忍術学園を訪ねてみるか。」

 

山田利吉が仕事を終えて忍術学園へ向かっていると、女性二人が話をしながらすれ違う。

 

「今日はあの三人組の舞が見られるわよ。」

「あら、なら早く行かないと。」

利吉「三人組の舞?調べた方が良さそうだな。」

 

利吉は女性二人に声を掛ける。

 

利吉「すみません、舞を踊る三人組って、なんのことですか。」

「あら知らないの。とっても上手に舞を踊る三人組よ。」

「あの子達の事を知らないなんて、貴方、ここの者じゃないのね。」

利吉「いやー、遠くへ出張していて、ついさっき帰って来たばかりなもので。」

「まあいいわ。一度見れば、あの子たちの凄さが分かるわよ。」

利吉「分かりました。是非ご一緒させてください。」

 

 

利吉が街に着くと、(やぐら)が組み上げられている。受付に見物料を渡し、中に入ると、さっきの受付が戻ってきて、舞を踊り始める。

 

利吉(確かに上手いな。だが、これだけの踊り子がこれまで噂すら聞かなかったというのは変だ。)

 

やがて踊りが終わるが、観客は帰らない。

 

利吉「あれ、皆さん帰らないのですか?」

「耳寄りな話をしたら、次に使える券をくれるのよ。」

「その話、基本的には何でも良くて、私達が井戸端でする内容でも認めてくれるのよ。」

利吉「成程。ですが私はそういう話がありませんので、これで。」

「あら残念ね。」

 

利吉はその場を離れ、忍術学園へ向かう。

 

利吉「どこかの忍者が町に潜り込んで情報収集をしている。これは父上に報告した方が良いな。」

 

だが、デジタルが利吉の事を観察していることには気づかなかった。

 

 

~忍術学園~

 

利吉「父上、お久し振りです。」

山田先生「おお、利吉じゃないか。」

利吉「随分とご機嫌ですね。何かあったのですか。」

山田先生「実は、一年は組に優秀な忍たまが編入してな。ただ優秀なだけでなく、他の者の指導もするので、手間が減って大助かりだ。お陰で最近は仕事が片付くのが早くなって、家に帰る見込みがついた。」

利吉「それは母上もお喜びになりますね。話は変わりますが、ちょっと気になる三人組を見かけましてね。」

山田先生「気になる三人組?」

利吉「はい。町で踊り子をしていまして、舞が終わった後に色々と情報を仕入れているのを見て、どうも怪しい感じがしました。」

山田先生「(それはおそらくデジタル達の事だな。)利吉、それの対応は土井先生にも話す必要がありそうだから後にしよう。まず編入した忍たま三人を見てはどうだ。」

利吉「それもそうですね。それで、その三人は?」

山田先生「もうそろそろ帰ってくるはずだ。出迎えてくる。」

 

 

クリスエス「今日もいいお話が聞けた...。」

ファイン「土井先生に毎回メモを取ってもらうのは、ちょっと申し訳ない気もするけどね。」

土井先生「そうでもないな。きり丸の無理に詰め込むバイトに比べればずっといいし、忍者の本分だからね。それに、君達のうち誰かがこっそり聞き耳を立てているとなると、皆が君達の事を信用しなくなる。でも私が記録しているのを見ても、財務が記録しているとしか思わない。」

クリスエス「きり丸にはやらせないのか...。彼は、金については詳しいはずだが...。」

土井先生「きり丸は、ドケチの習性で金を手放せないんだ。だから、こういう事には向かないんだよ。」

デジタル「成程。でも、ちょっと気になる事がありました。」

土井先生「どうした、デジタル。」

デジタル「今日、若い男の人が観客の中にいたんですが、その人は舞を楽しむというよりも、私達の事をじっと見ていました。もしかして、私達の事を忍者だと気付いたのでしょうか。」

土井先生「気にする必要はあるが、まだそれ以上の事をしていないなら、動く必要はないかな。」

デジタル「それでいいのでしょうか。」

土井先生「下手に相手を忍者だと疑って、もしそれが違ったら、逆に私達が忍者だと疑われる。それに、こうやってこちらに疑念を抱かせて、動いた瞬間を狙っている可能性もある。」

デジタル「成程、分かりました。」

 

そこに、山田先生がやってくる。

 

山田先生「土井先生、デジタル達、すぐに職員室に来てくれ。利吉が来ているから紹介する。」

土井先生「おお、利吉君か。」

デジタル「誰でしょうか。」

土井先生「山田先生の一人息子で、フリーの忍者をしているんだ。」

クリスエス「プロの忍者…。」

ファイン「それは会うのが楽しみだね。」

 

 

山田先生「利吉、連れて来たぞ。」

利吉「き、君達は…。」

デジタル「あ、さっき私達のことをいろいろと調べていた人です。」

山田先生「お互い、そんなに警戒しなくてもよい。まあ、まずは自己紹介からだ。」

 

お互い、警戒しながらも自己紹介をする。そして、山田先生と土井先生が行動の背景を説明したことで、誤解は解けた。

 

デジタル「成程、お互い忍者であることを隠して行動していたが故に、警戒してしまったわけですね。」

利吉「忍者同士が同じ町にいると、それが普通なんだけどね。一年は組は、どうも間延びした空気だから。」

山田先生「どうだ利吉、プロの忍者として、彼女達三人の実力を見てはどうかな。」

利吉「いいですね。次に忍術学園に協力するときに、どれだけあてに出来るか参考になります。」

 

利吉は忍び装束に着替え、運動場に出る。

 

利吉「よし来たな。って、なんでお前達までいるんだ!」

 

いつの間にか、は組を中心に忍術学園のメンバーが勢揃いしている。

 

乱太郎「だって、利吉さんの真剣勝負を生で見られると思うと、いてもたってもいられなくて。」

利吉「自分が出来るようにすればいいのに…。」

きり丸「えー、おせんにキャラメル、おせんにキャラメル、いかがっすか~。」

利吉「きり丸、お前か!」

 

きり丸が売り子をしているのを見て犯人だと見破る利吉。

 

きり丸「だってー、折角の対決ですしー、盛り上げないとー。」

利吉「まあいい。」

デジタル「利吉さん、まずは三対一でどうですか。」

利吉「それは断る。」

デジタル「幾ら忍者の卵でも、三対一は怖いですか。」

利吉「確かにそれもあるけど、それだけじゃない。君達は三人で行動することが多そうだから、一人ずつにした時の行動を見てみたい。」

ファイン「じゃあ、まずは私から行くね。」

 

利吉とファインが構える。

 

山田先生「それでは、始め!」

 

ピィィーッ

 

ファイン(隙がない。流石プロの忍者だね。だとしたら、一旦離れて追撃してきたところを攻撃する。)

 

ファインが後ずさりする。だが、すぐに利吉が詰める。

 

ファイン(なら。)

 

ファインが前へ詰めると、今度は利吉が後退する。

 

ファイン(私の考えが読まれている?)

 

ファインが追えば下がり、引けば追う。手裏剣を構えれば苦無で待ち構え、鍵縄を持ち出せば縄を掴み取る構えをする。

 

ファイン「うう、私が何をやっても、それをやってもカウンターされちゃうよ。」

利吉「行動が単純だから、対処すれば防げてしまうんだ。」

ファイン「私は未熟者なんですね。」

利吉「あ、いや、プロの忍者から見たら、の話だ。忍術学園の一年生としてなら破格の実力だよ。むしろ、二年生や三年生じゃないのがおかしいくらいだ。」

山田先生「実力を見ろとは言ったが、容赦ないな。」

利吉「いえ、詰めが甘いと泣きを見るのは自分ですので。」

 

デジタル「次は私です。」

 

デジタルが構える。それを見て、警戒する利吉。

 

利吉(これはかなりの曲者だな。基本が出来ていて、しかも変則が加わる。よし、先に動かすか。)

デジタル(いきなり攻撃しても良いですが、それだと(こら)え性がないと取られかねないので、まずは睨み合いです。)

 

デジタル、利吉共に警戒したまま動かない。

 

きり丸「なんで動かないんだよ、飽きちゃうぜ。」

金吾「きり丸、駄目だよ、そんなこと言っちゃ。」

きり丸「どうして?」

金吾「あれは、先に痺れを切らして動いた方が負けなんだよ。」

三郎次「そうだ。こういう手練れ同士の戦いで、安直に先に動いたら、そこに隙が出来る。そこを相手に付け込まれたら、あっという間にやられてしまうぞ。」

左近「ま、小銭とお菓子で釣られるきり丸としんべヱには、絶対無理なことだな。」

きり丸「な、なにおう!」

 

は組と二年生が喧嘩を始める。

 

山田先生「あー、外野が騒がしいのは置いておくとして、確かに睨み合いも重要ではあるが、時間がかかるので両者動くように。」

デジタル「それでは。」

 

デジタルが鎖鎌を投げつける。

 

利吉「おっと。」

 

利吉が躱すと見るやすかさず手元に手繰り寄せる。

 

利吉「そこだ!」

デジタル「なんの!」

 

利吉が手裏剣を投げるが、デジタルは左に飛んで躱す。

 

山田先生「流石數碼(デジタル)だな。」

乱太郎「山田先生、どういうことですか?」

山田先生「今數碼(デジタル)は右手で外から鎖鎌を投げた。だから鎖鎌は右から左に向かって弧を描いて飛ぶ。手裏剣を躱す際に、左へ避けることで、鎖鎌を早く回収し、次の動作に移ることが出来るのだ。」

庄左ヱ門「でも、利吉さんは數碼(デジタル)のやや左に手裏剣を投げていましたよね。」

山田先生「そう。數碼(デジタル)が鎖鎌を回収するのを遅らせるか、諦めるようにな。だが、數碼(デジタル)はその軌道を読んで、手裏剣の軌道を避けるように回り込んで鎖鎌を回収した。」

藤内「す、凄い、僕でも予習していないと出来ない動きを、あんなにあっさりと…。」

 

利吉「中々やるな。だがこれはどうかな。」

 

利吉が手裏剣を複数枚投げる。しかも、変化させる。

 

乱太郎「凄い、手裏剣が曲がった!」

きり丸「手裏剣が真っ直ぐ飛ばないなんて、忍たまではお約束じゃん。」

山田先生「何を言うか。お前達と違って、利吉はちゃんと計算して投げているぞ。」

三次郎「でも數碼(デジタル)は全部苦無で弾いているじゃないですか。」

山田先生「それも読みだ。相手が手練れだからこそ、次にどう攻めてくるか分かる事もある。そして、分かっていても、次に繋げるためには、それを止めるわけにはいかない事もな。」

 

利吉もデジタルも攻めはするが、お互いに決め手がない。

 

山田先生「あー、そこまで。これ以上続けても埒があかないので引き分けとする。」

デジタル「た、助かりました。正直、もう目いっぱいだったので…。」

利吉「忍者の本分は戦う事ではないとはいえ、これだけ厄介な相手と相対するのは久し振りですね。味方で良かったと思います。」

デジタル「と言いますと?」

利吉「一度見せた攻撃は通用しない、何なら初めて見せたやり方も見切られる、そんな相手とやりたくないですね。」

 

クリスエス「私は、火縄銃の腕前を競いたい...。利吉さんは、銃の腕前はどれほどか...。」

山田先生「利吉以上の腕前となると、火縄銃を専門に扱う者を呼んでくる必要があるな。」

クリスエス「相手にとって不足なし...。ならば、どちらが火縄銃の命中精度が上か、それで競いたい...。」

利吉「良いだろう。」

山田先生「よし、ならばあの的にどちらがより多く当てられるかだ。まずは5間(1間は約1.8m、9m)からだ。」

利吉「では私からでいいかな。」

クリスエス「構わない...。」

 

ダァン ダァン

 

利吉は難なく的の中心に当てていく。

 

山田先生「利吉10点10発。次クリスエス。」

 

利吉から火縄銃を受け取り、クリスエスも射撃を始める。

 

ダァン ダァン

 

山田先生「10点。10点。10点。」

きり丸「すげえ、一発も外さねえぞ。」

乱太郎「凄い集中力だ。」

久作「お前達に一番欠けているものだな。」

きり丸「なにおう!」

 

だがその途中で、

 

しんべヱ「へっ、へっ…。」

乱太郎「ああ、不味いよ、しんべヱがくしゃみしそうだ。」

きり丸「しんべヱの鼻水がかかったら、クリスエスが負けちゃう。」

庄左ヱ門「しんべヱ、我慢するんだ。」

しんべヱ「む、無理…。」

 

ギロリ

 

その瞬間、クリスエスがこちらを向いて、しんべヱを睨みつける。

 

しんべヱ「ひいい~!ハクシュン!」

 

しんべヱが驚き、腰が抜けて倒れる。鼻水が真上に飛び出し、同時に魂が抜ける。

 

きり丸「うわあ、鼻水が真上に!」

乱太郎「皆逃げろ~!」

 

それがしんべヱの体に降り注ぐ。

 

乱太郎「た、助かった…。」

きり丸「けどしんべヱは鼻水でべとべとだぞ。おまけに魂が抜けているし。」

山田先生「やれやれ全く。」

 

山田先生がしんべヱの魂を回収する。

 

しんべヱ「うえ~ん、怖かったよ~。」

利吉「しんべヱ、射撃を邪魔されそうになったら、クリスエスがあんな顔をするのも当然だぞ。短気な人間なら、銃口まで向けている。」

クリスエス「しんべヱ、大丈夫か...。」

しんべヱ「う、うん、何とか…。」

クリスエス「驚かせてすまなかった...。」

しんべヱ「なんでクリスエスが謝るの?」

クリスエス「くしゃみの影響で風が巻き起こる...。その影響を計算に入れようとしていた...。」

利吉「クリスエスは自分の任務に忠実であるが故に、起きてしまったという訳か。」

山田先生「さてと、今回の結果は、利吉、10点10発。クリスエス、10点10発の引き分けだ。流石に5間では短すぎたな。では次は10間だ。」

 

ダァン ダァン

 

山田先生「引き分け。次は20間だ。」

 

ダァン ダァン

 

山田先生「引き分け。次は40間だ。」

 

ダァン ダァン

 

山田先生「引き分け。次は60間、つまり1町(約109m)だ。」

 

それを聞いて忍たま達の間に動揺が走る。

 

虎若「1町先の的に正確に当てるのって、熟練じゃないと無理だよ。」

三木ヱ門「佐竹鉄砲隊か、照星さんじゃないと無理だな。」

 

ダァン ダァン

 

山田先生「利吉、10点10発。クリスエス、10点8発、6点2発。よってこの勝負、利吉の勝ち!」

利吉「なんとか実力で差がつく範囲で決着がついて良かったですね。これ以上の距離となると、風による誤差が大きくなりますから。」

クリスエス「火縄銃の有効射程距離はもっと長い...。私もまだまだということか...。」

 

二人の感想を聞いてぞっとする忍たま達。

 

三木ヱ門「私でも1町先の的に正確に当てるのは難しい。それをあのクリスエスは…。」

クリスエス「田村先輩、私は火縄銃以外の火器についてはまだまだだ...。火縄銃についても、似た武器を扱っていたから適応出来たに過ぎない...。」

三木ヱ門「うわ~ん、一年生に気遣われた~。」

山田先生「これは三木ヱ門、照星の元で再鍛錬が必要だな。」




書いていて三木ヱ門が不憫枠になってきました。
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