勝手にセイバーマリオネットJ   作:ニラ

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02話

 

 

 惑星テラツーは地球からの移民船メソポタミア号に乗ってきた6人の生き残り達を祖先とする、クローニング技術によって栄えた男だけの惑星である。

 そしてその6人の直系クローンを元首とする6つの都市国家が存在し

 

 徳川家安《とくがわいえやす》を祖とする『ジャポネス』

 ゲルハルト・フォン・ファウストを祖とする『ゲルマニア』

 アレクサンドル・キーシンを祖とする『ペテルブルグ』

 ジョイ・ヒューリックを祖とする『ニューテキサス』

 王庸平《おうようへい》を祖とする『西安《しーあん》』

 ヴィレイ・メディチを祖とする『ロマーナ』

 

 これら6つの都市が、其々の文化を持って国家を運営しているのだった。

 

 だが惑星への不時着から300年。

 遺伝子操作やクローン技術の発達などはあるものの、星の影響かどういう訳か? 彼らは一向に女を創りだすことには成功していない。

 この惑星は300年言う短い期間で、それこそ途轍もない進歩をした星ではあるが、それと同時に刻一刻と滅びの道へと突き進みつつもあった。

 女の居ない歪な世界。そこで代わりに造られたのが機械の乙女、マリオネットである。

 

 当初は正に、『女の代わり』として存在したマリオネットだったが、今ではその役割を失くし、人の手の届かない所への労働力ととして使われるように成っている。

 それは軽作業から重作業、または介護から軍事と多岐に渡る。

 マリオネットはその本来の意味を亡くしてはいても、人にとって『大切なモノ』という事に関しては、今尚受け継いでいるのだった。

 

 ジャポネス城・天守閣・謁見の間

 

 そこには恰幅のいい体格をした初老の男……第十五代将軍・徳川家安《とくがわいえやす》と、

 そして幕臣の一人である大江久保彦左衛門《おおえくぼひこざえもん》、更に二体のマリオネットが居た。

 マリオネット達ははそれぞれが妙齢な女性の姿で造られており、いずれも美しい顔立ちをしている。

 

 一方は白み掛かった薄紫色の長い髪の毛をしており、つり目がちな瞳をしている。

 手には薙刀を持ち、また着流した赤い着物の胸元からは肉つきの良い胸が見え隠れしていた。

 

 もう一方のマリオネット、こちらは翠色の髪の毛を後ろ手に縛り上げ、背中に二本の長刀を差している。

 丸みを帯びた瞳をしていて、全体的に青や緑を基調とした着物を身につけた……前者に勝らずとも劣らない肉体の持ち主である。

 

 とは言え、それでもこの二体はマリオネットである。

 その為か両者の瞳には力ない光が宿るだけだった。

 

 家安はその場に居る者達に軽く視線を向けると、ゆっくりと口を開いた。

 

「さて彦左《ひこざ》よ……ゲルマニアの、ファウストめの動きはどうじゃ?」

 

 部屋の最奥、上座に位置する場所に座っている将軍が、正面で正座をしている彦左衛門に尋ねた。

 彦左衛門は軽く頭を下げると、キッと真面目な視線を家安へと向ける。

 

「はっ!……ゲルマニアの動きを、此処に居ります『梅幸《ばいこう》』と『玉三郎《たまさぶろう》』に調査をさせましたところ、どうやら上様の御言葉通り」

「むぅ……」

 

 彦左衛門の言葉に、家安はその後方へと控えていた二人のマリオネットに目を向ける。

 するとその内の一体、薄紫の髪の毛をしたマリオネット『玉三郎《たまさぶろう》』が一歩前にでてくる。

 

「御報告いたします。ゲルマニア領内に間諜《かんちょう》を放ち、情報を集めましたところ……どうやら大規模な軍事行動が取られている模様でございます」

「軍事行動とな?」

「御意に。恐らくは、他国への侵略準備ではないかと」

 

 す……と頭を下げながら言った玉三郎の言葉に、家安は口元に手をやって唸ってみせた。

 

 そして思う……「やはりな」と。

 

「やはり動き出したか……。年初めに行った、我々元首6人による会談の時から、何やら怪しいとは思うておったが」

 

 唸るような声を挙げながら、家安は当時のことを思い出して言った。

 

 ゲルハルト・フォン・ファウスト

 

 惑星テラツーに降り立った6人の生き残りの内の一人、ゲルマニアと言う国を作り上げた男、そして嘗ての――

 

 家安はそこまで考えると、頭を振って考えを止めた。

 すると間を見てのことだろうか、彦左衛門が家安に向かって問い掛けてきた。

 

「上様、ゲルマニアへの対処……如何がいたしましょうか?」

「うむ……恐らく、ゲルマニアと他の国家間の地理関係を見るに、最初に攻めるのはペテルブルグであろう」

「アレクサンドル・キーシン殿の……」

「念のため、アレクサンドル殿には『ゲルマニアに危険な予兆有り』と伝え、警戒を促しておくとしよう」

 

 家安はそう言ったが、内心『恐らく余り意味は無いのだろうが……』と付け加えていた。

 

 無論、家安はペテルブルグとゲルマニアの戦力を全て把握している訳ではない。

 しかし其れでも尚、家安はペテルブルグがゲルマニアに勝利出来るとは思えなかった。

 恐らくペテルブルグのアレクサンドル・キーシンにゲルマニアの事を伝え、迎撃準備をしたとしても陥落までの時間が幾分遅くなる程度だろう。

 

「玉三郎、儂から言伝じゃと開発部に伝えておけ、『菊花《きっか》の量産体制を急げ』とな」

「御意」

 

 家安が玉三郎に向かって言うと、玉三郎はスッと小さく一礼をして後ろへと退がった。

 その事を確認すると、家安は視線をもう一方のマリオネットへと向ける。

 

「では続いて……梅幸《ばいこう》よ、ジャポネス領内の方はどうじゃ?」

 

 するともう一人のマリオネット、翠色の髪の毛をした『梅幸』と呼ばれたマリオネットが一歩前に出た。

 

「……はい。現在までの間に他国からの侵入者、並びに間諜の類は発見されてはおりません。それ以外に調査中の案件ですと、マリオネット製作に欠かせませぬ『ジャポニウム鋼』の密輸を行う者達が居るという程度ですが……とは言え、そちらの方も鋭意捜索中で御座います」

「密輸団……か」

 

 『ジャポニウム鋼』とは何か?

 惑星テラツーで採掘する事が出来る金属の一種で、主にマリオネットの骨格部分や内部機構を作るために使用される鉱石である。

 この金属はその特性として、アホみたいに柔らかく、アホのように硬く、そしてアホのように軽いと言う、ある種インチキめいた特性を持っていた。

 

 その為、人の形に作る事になるマリオネット製作には、どうしても欠かすことの出来ない鉱石なのである。

 普通に鉄などで作っては、とても数十㎏では済まないからだ。

 家安は梅幸の報告に考えるような素振りをしてから軽く手を上げると、

 

「玉三郎、梅幸。御主達二人はジャポネス領内に目を光らせよ。こう成った以上、ゲルマニアの手の者が入ってこぬとも限らん。またその密輸団の事じゃが……何処と繋がりが有るかも解からんからな。背後関係をしかと洗え……良いな?」

「はッ!」

「御意!」

 

 シャッ

 

 玉三郎と梅幸の二人は、跳躍するようにしてその場から消えた。

 二体のマリオネットが居なくなった部屋で、家安と彦左衛門は互いに顔を見合わせる。

 

「あ奴らも、あれでもう少し愛想と言うものがあれば良いのじゃがな……」

「それは上様、あの者達には酷と言うもので御座居ます」

「そうじゃな……それもそうじゃ」

 

 家安の言った言葉を彦左衛門は何の気なしに返答を返したのだろうが、だが当の家安は心なしか気を落ち込ませているようにも思える。

 しかし、彦左衛門の言葉はむしろ正しいものではあった。

 

 確かに遙か昔のマリオネット達は人間の女を元に作られており、その頃は今とは違い『心』を持っていたらしい。

 だがそれもやはり過去のこと。

 マリオネットが労働力として使われるように成ってから彼女達は『心』を奪われ、今ではその技術さえも失われてしまっていた。

 

 初代の頃から記憶を受け継ぐ直系の子孫で有る、十五代目将軍・徳川家安。

 彼はその事を半ば『仕方が無いこと』と理解しつつも、そのことをまた『哀しい』とも思ってしまうのだった。

 

「時に彦左よ……覚えておるか?」

「は?……『覚えて』と、申しますと?」

「3年前の事じゃ」

 

 家安の言う『3年前』との単語に、彦左衛門は成程と納得をした。

 

「3年前……と申しますと、ジャポネス郊外に落着したと思われる『飛行物体』の件、ですかな?」

「そうじゃ」

 

 家安はコクリと頷いて返すと、その場から立ち上がり壁に向かって歩き出す。

 そして窓を開け放つと外を見つめた。

 

「この星は階層惑星……幾つもの大地が折り重なるようにして、その地表を構成しておる。

 しかし、3年前のアレはそんな階層を幾つも破壊しながら落下してきた。間違いなく高々度からの落下によるものじゃろう」

「上様は……もしやそれが、ゲルマニアの手によるものだとお考えで?」

 

 彦左衛門は眉間に皺を寄せて家安に尋ねるが、とうの家安はその言葉に首を左右に振ることで答えた。

 

「正直それは無い……とは言い切れぬが。まぁ、可能性は低いじゃろうな。お主も知っていよう? この惑星テラツーの上空では、絶えず強力なプラズマ雲が発生しておる。そんな中で、わざわざ空を飛ぼうなどと考えたりするなど有る訳が無い」

 

 惑星テラツーの上空には地下から発生した強力なプラズマが上空に舞い上がり、電離層として絶えず存在する。

 それは人々からプラズマ雲と呼ばれ、地上から宇宙へ向かうのを邪魔し続けている状態にあった。

 また宇宙に行かずとも空を飛んでいればその猛威に晒される事になり、テラツーの大地から飛び立とうと言うものは例外なくその洗礼を受けることになる。

 そもそもプラズマ電離層などが存在していなければ、彼らの始祖で有る6人はこの惑星テラツーに降り立った時点で地球に救難要請をしていることだろう。

 

「それにじゃ彦左……仮にもその様な大それた実験を、わざわざ自国の領外で行う意味がなかろう?」

「確かに……もしその事が他国に知られれば、それだけで自国にとっての不利益へと繋がりますからな」

 

 他国への無断侵入、そして明らかに軍事転用可能なシステムの開発など、知られれば避難を浴びる程度で済むことではない。

 その事を踏まえて考えれば、話の種となっている3年前の事件とやらが他国によるモノでは無い……と、伺うことが出来る。

 だが――

 

「ですが、それでは……アレは一体……」

 

 『何だったのでしょうか?』との言葉を飲み込んで、続きを尋ねる彦左衛門に家安は

 

「そうさの……皆目見当はつかぬ」

 

 と返事を返した。

 

 他国の物ではなければ、自国が行ったものか? だがそれは無い。

 

 家安とて馬鹿ではない。当然その可能性も考慮に入れて調査を行ってきた。

 だが、ジャポネス領内で『その様な事』が行われていた形跡は全く無かったのだ。

 

 更に、家安の予想通り現場に何かしらが落着したのであれば、

 それを回収するためにそれなりの数の人――又はマリオネットが動員される筈である。

 にも係わらず、そのような痕跡は露程も見られなかったのだ。

 

 他国の兵器実験でもなければ、それこそ自国の事でも無い。

 その事が、3年経った今となっても家安が気に留めてしまう要因となっていた。

 

「彦左よ……当時、あの近辺に住んでおった者達は、その事を何と言うておったかの?」

「は……確か報告によりますと、『緑に光る流れ星が落ちてきた』……と」

 

 調査を行なった際に、近隣住民に聞き込みをした結果の事だ。

 『凄い揺れを感じた』『とんでもなく大きな音が聞こえた』等の当然あったが、それ以外の証言で多かったのが『緑に光る流れ星が落ちてきた』といったものなのだ。

 

 普通に考えると訳が解らない内容ではあるが、それが一人二人なら兎も角、次から次へと同じ様な証言をする者達が現れては話は別だ。

 

「流れ星……か。船が故障して不時着でもした、宇宙人かのぉ?」

「上様、あまり笑えませぬな」

 

 微笑みを浮かべながら言う家安に、彦左衛門は苦笑を浮かべるのであった。

 

 

 

 ※

 

 

 

 

 

 ダダダダダダダ――――!!

 

「ちっきしょうっ! いい加減にしやがれってんだ、花形っ!!」

 

 ジャポネスの街中大通りを、小樽はそんな悪態をつきながら全力疾走していた。

 そしてその後方から、これまた全力疾走しながら

 

「小樽君ーーーっ! そんなに照れなくたって良いじゃないかぁ!」

 

 と、花形が両手一杯に薔薇を持って追いかけてくる。

 一見すると、ただのヒョロヒョロの優男にしか見えない花形の、いったい何処にこれだけの体力が存在するのだろうか?

 逆に逃げている小樽には、若干の疲れの色も見えている。

 

「照れてんじゃねぇっ! 嫌がってるんでぃ!!」

 

 とは言え、花形の愛の告白(?)に律儀にも答えながらも、小樽は一向に速度を緩めずに走り続けていた。

 

 前を行く人、向かいから来る人、それらを上手くよけながら小樽は走る。

 逆に花形は小樽が人を避ける度にちょっとした道が出来るため、なんら問題なく真っ直ぐ向かって走っていた。

 まぁ、単純にその違いだろう、二人の疲れ具合の理由は。

 

 そんな二人に対する、街の人達の反応は? と言うと

 

「あぁーあ、またやってるよ、あの二人」

 

 といったところだ。

 どうやらこの騒ぎ、ジャポネスのこの辺りの地域では取り立てて珍しい光景ではないらしい。

 

 さて、女の居ない男だらけの惑星テラツー。

 そこに女が居なければ当然……と言うか何と言うか、恋愛の対象はどうしても同性である男へと向くことになる。

 まぁ皆が皆でそうだと言う訳ではないが、花形のように男が男に愛を語るのも取り立てて珍しいことではないのだ。

 

 21世紀の地球でも一部の地域……国家では、同性間の婚姻を認めている所もある。

 

 女が居ても、そんな社会が出来たりしてしてしまうのだ。

 その場所に男しか居ないのであれば、そう成ってしまうことを一体誰が止められようか?

 

 まぁついでに言うのなら、花形美剣が間宮小樽を追い回す姿は珍しい訳では無かったりする。

 自他共に認める優男、変な髪型と変な服装をする人物ではあるが、この花形美剣という男――紛れも無く金持ちで有る。……親が。

 

 ジャポネスに住んでいれば知らない者など居ない――と言うような、巨大百貨店の一人息子だ。

 しかも大人しくしているのなら兎も角、こうも街々で騒ぎを起こしていれば嫌でも有名になる。

 そして、そんな人物が毎日のように一人の男を追い回しているのだ。

 周りで見ている者達も慣れようというモノ。

 

 とは言え、追われる側からすれば堪ったものではないだろう。

 現に、こうして逃げ惑う小樽からは少しばかりの照れも感じず、ただただ本気で嫌がっているとしか感じられないのだから。

 

「あーもぅ、畜生! いい加減に!!」

 

 今まで人ごみの中を縫うようにして全力で走り続けていた小樽だが、急にブレーキを掛けるように足の動きを止めると、グンッと身体を半回転させた。

 そして――

 

「小樽君、やっと止まってくれ――ごべびゃっ!?」

「――しやがれっ!!」

 

 振り向きざまに振るった右ストレートが、花形の頬を貫くのだった。

 小樽に抱きつこうと両腕を広げた状態に成っていた花形は、当然それに抗うことが出来るはずも無く、正にカウンターの要領で受けるハメになったのだった。

 

 衝撃で花形は地面を滑走するかの様に滑っていき、通りの八百屋の中にダイブする。

 

「良いかっ花形! こっちはお前の所為で、えれー迷惑してるんでぃ! 新しい仕事もクビになるしよ!」

「何を言うんだい、小樽君! 大体、仕事なんてマリオネットでも買ってソイツにやらせれば良いじゃないかっ! その為のお金が必要ならさ、そんなの僕が幾らでも――」

「うるせーっ! 俺はそういうのが、でぇ嫌いなんでぃ!!」

「あ、待ってよ小樽君!!」

 

 小樽は花形に強く言い切ると、視線をそらしてズンズンと歩いていってしまった。

 

「あぁ、小樽君。今の君の心は、先の見えない悩みという名の袋小路に閉じ込められてしまっているんだ。 いつの日か必ず、その君の心を僕の愛で救い出してみせるよ。……兎に角、その『いつの日か』が今日に成るように……」

 

 花形は一人そんな事を口にすると、先に行ってしまった小樽を再び追いかけようと立ち上がるが――

 

「ちょいと待ちなよ、上州屋の美剣《みつるぎ》坊ちゃん」

「へ?」

 

 グイっと肩を掴まれて、花形はそちらの方へと顔を向けた。

 見ると小樽に殴られた拍子に突っ込んだ店の店主が、何やら額に青筋を浮かべて花形を睨んでいる。

 頭にはねじり鉢巻を巻き。髪の毛はジャポネスでは珍しく、髷では無くパンチパーマだ。

 

「これはこれは結構な被害を出して頂いて……お買い上げ、有難う御座います」

「お、お買い上げ……?」

 

 眉間に皺を寄せ、目を細めて言ってくる店主。

 花形は周囲を確かめるように見渡すと、自身を中心に大根、人参、きゅうり、ゴボウ、トマトなどの野菜がばら蒔かれており、またそれらの野菜はみないい具合に傷物となっていた。

 正直、とても店頭に並べられるような状態では無い。

 

「はは……ははは、えーと――」

「まさか、そのままトンズラしよーってんじゃ……無いでしょうね?」

 

 ギンッ!

 

 とでも聞こえそうな程、強烈な視線(メンチビーム)を花形にぶつける店主。

 明らかに堅気には見えなさそうな雰囲気をしている。

 

「ひ、ひぇええええっ! と、とととんでも無い! ――コホン、お、お幾らかね?」

 

 情けない声を挙げながらも、花形は体裁を取り繕うように言って懐から財布を取り出した。

 すると店主はそれをすかさず奪い取り、中身の確認をし始める。

 

「ほうほう……流石は上州屋の跡取り息子。結構持ってるじゃねーか。……ちょいと足りねーが、毎度あり。取り敢えず今日の所は『コレ』で勘弁してやらぁ」

 

 と、店主は『財布』を握り締めながら言ってきた。

 

「そ、そそそんな、まさか全部!?」

「あん! 全部で本当は幾らすっと思ってんだ!!」

 

 まるで地球に居たヤッちゃん(ヤ○ザ)の様な店主に、胸ぐらを掴まれて睨まれた花形は、「アワアワ」と奇妙な擬音を発しながら涙を流していた。

 

「お、おおおおおお――小っ樽君!! 助けてーーーっ!!」

 

 悲痛な叫び声を挙げる花形。

 だが当然というか何と言うか……それに応える者は何処にも居ないのだった。

 

 

 

 

 

 

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