Mobile Suit Gundam person who picks seeds 作:武者ジバニャン
ジンガがクルーゼを退けた頃、ヘリオポリスでは一隻の戦艦がコロニー内に着陸しており、そこで人が集まっていた。
「ラミアス大尉!」
「バジルール少尉!」
二人の女性、一方は作業用のつなぎ服を着ているのはマリュー・ラミアス大尉で地球軍の技術士官である。
もう一方はナタル・バジルール少尉、代々続く軍人家系の出身で、優秀な戦闘指揮官である。
二人は互いに敬礼、そのまま無事な姿を安堵し合う。
その際、彼女らの背後に膝をつく1機のモビルスーツが鎮座していた。
ザフトの襲撃より強奪から逃れた残されたG計画の最後の機体、GAT-X105ストライクである。
その機体から一人の少年が降りてきた。
「おいおい何だってんだ?子供じゃないか!あのボウズがあれに乗ってたってのか」
整備士のコジロー・マードック曹長が唖然としつつ、目の前にいる少年に信じられないと目を向ける。
他にもこの場にいる地球軍士官たちが皆彼に視線を向ける中、ナタルはこれはどう言うことなのかストライクと共にアークエンジェルに合流したマリューなら何か知っていると思い問いただす。
「…ラミアス大尉…これは?」
「それは…」
その時、上空よりアークエンジェルに接近する三つの物体をアークエンジェルの面々は目撃する。
「あれは…モビルスーツ?!」
「まさかもうザフトが!!」
「いえ違うわ!!」
ナタルの言葉にすぐに訂正するマリューは、目を細めてジッとそれを凝視する。
そこには2機の見慣れぬモビルスーツと、地球軍のモビルアーマー・メビウスゼロが共にやってきた。
敵であれば地球軍のモビルアーマーが追随するはずがない。
マリューは警戒は解くよう命じる。アークの前に3機は地面に降り立った。
その時、ストライクから降りた少年…キラ・ヤマトが、エクストリームガンダムを見て呟いた。
「ストライクと、同じ……」
3機より降りてきたのは三人。一人は見慣れた地球軍のパイロットスーツだが、残りの二人のは見たこともないパイロットスーツである。
彼ら三人が真っ直ぐマリューたちの前に立つと、最初にヘルメットを外したのは彼らからしたら見たこともないパイロットスーツ……ロンド・ベルのノーマルスーツを身に纏う男・ジンガがヘルメットを外し、敬礼する。
「初めまして。俺は地球軍第13独立部隊ロンド・ベル指揮官、ジンガ・オウマ大佐だ」
彼に続くようにラミアとムウもヘルメットを外した。
「同じくロンド・ベル所属、ラミア・ラヴレス大尉です」
「俺は地球軍第7軌道艦隊所属、ムウ・ラ・フラガ大尉。以後よろしく」
彼らが素性を明かすとマリューとナタルは急ぎ敬礼する。
「第2宙域、第5特務師団所属、マリュー・ラミアス大尉です」
「同じく、ナタル・バジルール少尉であります」
彼女らが敬礼し名乗る時、ラミアが脳量子波でジンガに話しかける。
普通の人間にはまず聞こえないので、このやり方は実に便利と言える。
「《マスター》」
「《どした?》」
「《第13独立部隊とは?軍籍は貰いましたが、部隊は未だないでしょ?》」
そう。階級と軍籍は確かに提供されたが、しかし正式な部隊はまだない。
しかしそんなことジンガにとっては些細な問題である。
現にネェル・アーガマやモビルスーツ、そしてパイロットも揃っているのだ。
「《あとでアズラエルにどうとでも言うから安心しろ》」
「《わかりました》」
自分の主であるジンガの言葉をラミアは素直に信じ、大人しく従う。
そこで脳量子波による会話は終わる。そんな彼にマリューが話しかける。
「あの、オウマ大佐」
「ん?どうしたかね?ラミアス大尉」
マリューはずっと気になっている後ろの2機のモビルスーツのことを問いかける。
「あの、後ろのモビルスーツは…」
「あー、後ろの機体は我々が極秘開発した最新鋭のモビルスーツだ。白いのがエクストリームガンダム、黒いのがゲシュペンストと言う」
ジンガの説明にマリューらは納得しつつも釈然としない様子である。
彼らからすれば、ヘリオポリス以外で地球軍がモビルスーツを開発するなど聞いたことはない。
しかも精巧に作られているようにも見える。
何処で作られたのかマリューたちはそれが知りたいが、これ以上は聞くことは難しいだろうと諦めた。
「で、だ。ラミアス大尉、他の正規軍人は?この艦の責任者はどこにいる?」
ジンガが問いかけると、マリューの代わりにナタルが一歩前にでた。
「艦長以下、艦の主立った士官は皆、戦死されました。
よって今は、ラミアス大尉がその任にあると思います……」
「艦長が……そんな」
彼女の話にマリューは衝撃を受ける。主だった正規軍人がもう自分たち以外此処には居ないとは信じられない様子。
この話を聞いてジンガは、少し考え込むようにしつつ決めた。
「ほうほう。そうかそうか………んじゃあ、そうだな。マリュー・ラミアス大尉」
「は、は!」
ジンガに呼ばれ反射的に敬礼し、返事する。
「本日付けで貴官は、このアークエンジェルの艦長に任命する。いいな?」
マリュー本人は突然の艦長を任命に困惑しているが、彼女はいずれ名実共に優れた艦長になることを知っているジンガとしてはこの判断は的確と言える。
「は!…え!?わ、私が、でありますか?」
「そうそう。で?この艦にモビルスーツは?………お!」
ジンガの視界にストライクが映ると目を輝かせ、嬉々として周りの人間を退かせて機体の傍に近寄る。
「おうおう!いやー、ほんとカッコいいねぇ!ストライクぅー!」
まるで子供のようなリアクションで、大の大人が目の前のストライクを好奇心で触りまくる。
そんなジンガの様子にマリューたちは呆気になる中、1人ため息を吐きつつもラミアは主である彼に代わりマリューに声をかける。
「………ラミアス大尉。あのストライクのパイロットは?どこに?」
「え?あ、そ、それは……」
マリューは言いにくそうにしながらも、視線をある方向に向ける。
ラミアがその方向に向くと、そこに学生とおぼしき少年少女たちがいた。
その中で少年……キラ・ヤマトが1歩前にでた。
「ぼ、僕……です」
その言葉に周囲が彼に視線を向ける。そしてストライクにずっと夢中だったジンガがゆっくりと振り向き、笑顔を見せながらキラに近づく。
キラは反射的にジンガを警戒しながら1歩下がった。そんな彼にジンガはニコリとしたまま声をかけ、名前を尋ねた。
だがジンガは既にこの少年を知っている、だが敢えて尋ねたのだ。
「君、名前は何て言うのかな?」
「……き、キラ...キラ・ヤマト、です」
「ふむふむ」
ジンガはまじまじとキラの顔を見る。やはりキラ・ヤマトだと…以前訪れたコズミックイラの世界と全く同じ姿、同じ声、紛れもない本人だと。
「あ、あの……」
「ふむふむ、うん!君があのストライクを動かして戦ってくれた、そうだね?」
「え、あ、えっと…は、はい。そうです」
キラは呆気になりつつジンガの問いに頷く。そこにマリューが話を補足する。
「彼のおかげで先にもジン1機を撃退し、あれだけは守ることができましたが、他4機のGは奪取されましたが………」
「ジンを撃退した!?あの子供が!?」
マリューの話にナタル含め、生き残った下士官たちは唖然とする。見た目まだ10代の少年がモビルスーツを操り、ザフトのモビルスーツを撃退したなど俄に信じられなかった。
だがムウがそのキラに尋ねる。
「君、コーディネーターだろ」
「……はい」
ムウの問いかけにキラの顔が歪む。その時、銃を携帯していた兵士たちがキラにその銃口を向ける。
コーディネーターと知って警戒心を強くしてしまったのだ。
だがそんな行動に身勝手だとキラの友人の1人トールが、憤りを露にして彼らに対して声を荒げる。
「な、なんなんだよそれは!」
「トール…」
「やめさ…「おい」…え?」
マリューが兵士たちを諌めようとしたその時だった。
「誰の許しでそんなことをしている?下ろせっ、死にたいのか?」
「ひぃい!!」
兵士の一人が悲鳴を上げる。先ほどまでストライクやキラに対してニコニコとしていたジンガが、今は人が発して良いものではない殺気と怨霊めいた声音で兵士たちやマリューたちをビビらせた。
マリューたちだけではなかった。キラや彼の友人たちも突然の豹変に怯えてしまう。
そこにラミアが冷静にジンガの頭を小突く。
「なに味方をビビらせてるんですか?アホマスター」
「あだっ!…つぅ!ちょっと痛いってラミアちゃ~ん」
「アホ言ってないで次どうすべきか、皆に指示を」
ラミアに小突かれ陽気な性格に戻るジンガ。その変わり様に皆唖然とするが、ジンガは気にせずマリューたちに指示を飛ばす。
「よぉし、ではでは。アークエンジェルに詰め込める物があるなら急いで作業してくれ。このコロニーから出ていく。さぁさぁ仕事だ!仕事!GOGO!!」
「は、はい!!み、皆!大佐の指示通りに!」
切り替わりの早さに呆気になるマリューだったが、しかし艦長を任命されたが故かジンガの言う通りにしろと周囲に促す。
皆いそいそと行動に移る中、ジンガはキラに近づく。
「怖がらせてごめんね、キラ・ヤマトくん」
「は、はい…い、いえ!」
まだビビっている節があるキラに対して、ジンガはニコニコと優しい笑みを浮かべ内心ではーー
「(ほんと、また会えるとはねぇ~…キラくん♪)」
その笑みの瞼の奥はどうなっているのか…。