あらかじめ言っておきますが、前回に引き続き今回も戦闘シーンは全くと言っていいほどありません。ご了承下さい。
「優衣、ちょっと出てくる」
「あ、うん、気を付けてね。」
……………………………………
先程から止まない耳鳴り。
……………………………………
だがそれは、何処かで聞いていた様な、懐かしい感じがする。
『……………そうだ、こういう時くらい行ってみるか』
心中でそう呟きつつ、バイクに跨り、花鶏を後にする蓮。
ガラスに映る蜘蛛の怪物はその姿を見据えていた。
「えーと、一軒目、江島均さん、ここか」
真司は目撃者が住む家の一軒目に到着していた。
今日彼が大久保から取材を命じられたのは、『金色の蟹』についてだ。小耳に挟めば何ともロマンを感じさせる取材テーマではあるが、大久保のメモを開いた真司は、一瞬にしてそれが自分の想像していた男心をくすぐる様なものではないと知った。
ここ最近、巷である噂が密かに広がっているのだ。
——————『金色の蟹』の姿をした『怪物』が突然現れて人を鏡の中に引き摺り込むのだと。
そんな怪物の目撃談を取材するべく、バイクを走らせてここまで来たのだ。
「何か、すっごい豪邸だな…………………」
一面に広がる庭や季節外れのプールを尻目に、インターホンを押す。
『………………はい』
「あの、OREジャーナルの城戸です。今日は江島均さんに取材をさせて頂くために伺いました。江島さんはいらっしゃいますか?」
『少々お待ち下さい…………………………どうぞ』
その声を区切りに、門が自動で開いた。
一面に広がる立派な邸宅の庭を通り過ぎ、ドアの前に立つと、少し年配のメイドの女性が現れ、30畳位はありそうなかなり広めの応接間に案内された。
しばらくして、紅茶が置かれ、高貴な身なりをした夫人が真司の前に現れた。
「今日はようこそおいでらっしゃいました。確か、OREジャーナルの………………」
ここで初めて名刺を出していなかったことに気付き、慌てて取り出す真司。
「あ、申し遅れました。OREジャーナルの城戸といいます。」
「私、江島の妻です。大変申し訳ないんですけど、夫は数日前に大学に行ったまま戻らず、音信不通なんです。」
「音信不通?」
「ええ。夫は4日程前、何時も通りの時間に出勤したのですが、その日以来、連絡が取れていないんです。結婚以来一度でも約束せずに帰って来なかった日なんて無かったのに……………………」
沈黙が流れる。
「あ、すいません、ちなみに、旦那さんの職業は?すいません、職業の事とかメモに書いてなくって。あと、捜索願は出されましたか?」
「夫は、清明院大学という大学の教授です。それと、捜索願は出しておりません。大学教授が行方不明だなんて騒ぎになってしまうかも知れないので………………」
暫く間を置いてから、江島夫人はこう切り出した。
「貴方、ジャーナリストさんでしたよね。こちらとしては、この事実はなるべく公表して頂きたくないのですが…………」
「ええ、そういう事情でしたら、分かりました。」
「わざわざ来て頂いたのに………主人が迷惑をかけてしまって、何のお役にも立てずすみません。」
「いえいえ、こちらこそわざわざお邪魔してしまってすみませんでした。それではこれで。」
「なるほど、大学教授だからこんな豪邸に住んでる訳だ……………」
ベッドに横たわる女性を見つめる蓮。
「恵理………」
そう、蓮が見つめている女性は恋人である小川恵理だ。
清明院大学の生徒であった彼女は、所属していたゼミの仲間と「ある実験」を行っていたのだ。
しかし、ある日————————————————————————————
その日も実験自体は成功したらしいが、途中で「想定外の事態」が発生したらしく、恵理を含む3人の生徒が被害を受け、内2人が犠牲となるという惨事になってしまった。
だが真相を聞こうにも、その際の担当講師と残り2人の生徒が失踪してしまったのだから、話の聞き様がない。
警察は当初殺人の疑いで失踪した3人の素性を調べ、結局何の手がかりも見つからなかったが、残り3人の体には有毒性物質は見受けられなかったものの外傷が見つかった為、結局殺人の線で捜査が進められた。だがやはり証拠が少ない故に捜査は進展せず、今現在は恵理の回復を待ち、証言を得る事だけが真実に辿り着く方法である。
……………………………………
「!?」
……………………………………
『またこの音だ………………一体何なんだ!』
2軒目と3軒目の取材を終え、真司は4軒目の取材場所に到着していた。
着いてみればそこは少しボロいアパートだった。
インターホンを押す真司。
「………………はい」
「えーと、先日OREジャーナルに目撃情報のご提供を約束して頂いた、須藤雅史さんでよろしいでしょうか」
「そうですが。」
「OREジャーナルで記者をしている城戸と申します。」
「ああ、OREジャーナルさんでしたか。どうぞ。多少散らかってますが。」
「えーと、職業を聞いてもよろしいですか?」
「私、小竹署という所で刑事をしています。」
「なるほど、刑事さんですか…」
見た感じ、悪い人ではなさそうだ。
「それでは単刀直入に、そのー、『金色の蟹』の特徴とかお願いできませんか?」
「どうぞ。」
「『金色の蟹』、いつ、どこで、どういった状況で目撃されたんですか?」
「数週間前、私は署の近くのアウトレットパークにあるお店でお昼ご飯を食べていました。そしたら、店内からは見えるけど人目に付きにくいショーウィンドウから、蟹のような怪物が現れて、私は一瞬目を疑いました。でもその怪物は、私の視線に気付くと、鏡の中に消えて行ったんです。」
「なるほど、つまりあなたは、怪物が現れてから消えるまでの一部始終を目撃した訳ですね」
「はい。もうこれでいいですか。そろそろ夕飯の支度をしなきゃいけないので。」
「分かりました。目撃情報、ありがとうございました」
真司は今日の取材を終え、一旦会社に戻る為に再びバイクを走らせるのだった。
書き終えまして、筆者です。
今回、内容としてはそこそこ充実していると思われます。
やっぱり小説書くのって難しいなー。
私自身まだまだ未熟で、次の投稿にも時間がかかると思いますが、読んで頂けると幸いです。
活動報告の方もよろしくです。
それでは。