あなたは人肉の味の虜だ   作:Seair

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何故か続いたよ



あなたは白状する

 あなたが目を覚まして最初に見たのは見覚えのない木目調の天井だった。

 

 あなたはベッドから起き上がり、自分に何が起こったかを思い出す。

 確か、ギルドの建物に入ったところでとても良い匂いが漂っており、それによって空腹感を刺激されそのまま餓死したはずだ。

 

 あいにくとすぐさま取り出せるような食料が無かったせいでこのようなことが起こってしまった。

 これからは、ふかふかパン1つはバックパックから取り出せるようにしておこうとあなたは決めた。

 

 さて、とにもかくにも現状の確認である。

 あなたは自分が餓死した後、どうにかして這い上がり、ここで目覚めたと思っていたが、どうにも違うようだと思い至った。

 

 現にあなたの持ち物は何一つ無くしていないし、所持金も減ってはいない。

 ということはつまり、あなたは死んでもいないし、這い上がってもいないということだ。

 そして何より、今いる場所は見知らぬ部屋であり、あなたが家と認識している訳でもないのにこうして目覚めた。

 

 これは一体どういう事なのか。

 あなたは不思議に思ったが、考えるよりも行動すべきと思考を切り替えた。

 ベッドから降りようとしたとき、突然部屋の中から聞いたことの無い声が聞こえた。

 

「よう、目ぇ覚めたみたいだな。おはようさん」

 

 声が聞こえた方向に顔を向けると、そこには深い蒼に染められた甲冑に身を包んだ男が一人椅子に座っていた。

 その傍らにはその男の身長以上に長い槍が壁に立て掛けられている。いったい何者だろうか。

 

「俺のことを知らねえ、か。まぁ予想はしていたがな。なんつうか……俺はあんたを助けた人からあんたの見守りを頼まれたんだ」

 

 男はそう言って立ち上がると、腹減りで倒れたんだって? それ、ちゃんと食っておけよ。といい、あなたが座っているベッドの隣のサイドテーブルに載っている皿を指差した。

 そこには何かの肉をパンで挟んだ、よく見かける一般的なサンドウィッチがあった。

 

 あなたは男に言われた通り、その朝食を手に取って食べつつ、部屋の壁にある窓に近づいた。うん、いつも通り味が薄い。

 

 部屋の窓辺に向かい窓を開けると、眼下には人々が往来する通りが見え、眩しい朝日が部屋の中に飛び込んで来た。

 

 そう、朝日。

 

 フムン、とあなたは納得した。

 つまりは、あなたが飢餓により倒れてから日を跨いでおり、また男が頼まれたという人物が自分をこの部屋へと運び、瀕死の状態から救ったということか。

 

 大体の成り行きを予想したあなたは、取り敢えず自分を助けてくれた人物にお礼を言うことにした。

 

 甲冑の男に、あなたを助けた人物について話を聞くと、

 

「ああ、いい人だろ? 何せどこぞの馬の骨とも知らねぇ奴を介抱してくれたんだからな。きっと今頃受付で大量の冒険者連中に押しかけられてる。ま、しばらく経ってから行ってみな」

 

 と返された。話を聞く限り、あなたのような冒険者を相手にする仕事をしているらしい。

 ギルドでということは、やはりギルドトレイナーのような役職なのだろうか。

 いずれにせよ、仲良くしておくに越したことはなさそうだ。

 

 フードを深く被り、男に朝食と見守りの感謝を伝え、部屋から出たあなたは、建物の内装からここがギルドの内部であると気づく。

 どうやらこの建物は宿場も兼ねているようだ。

 

 であれば、食事はここで摂ることが出来るだろうとあなたは考えた。

 と、そこまで考えた時、またもやあなたは空腹を感じた。どうやらサンドウィッチだけでは物足りなかったようだ。

 昨日の二の舞は御免だと、あなたは四次元ポケットの中からふかふかパンを2つ取り出し、1つはバックパックへしまい、もう1つはそのまま食べ始めた。相も変わらず可もなく不可もなくといった味わいだ。

 

 朝食を摂りながら建物内を移動し、階段を降りるとそこは見覚えのある景色だった。

 建物の1階に立ったあなたは手近な人に対して話を聞こうとしたが、どうにも様子がおかしい。

 フロアの一角に大勢が集まり、何か騒いでいる。

 声をかけようにも全員が全員こちらからの問いかけに答えない程に何かに集中している。

 

 仕方なくその場を離れたあなたは、他に話を聞けそうな人はいないかと見渡すと、1人、壁際に設置されたテーブル席に座っている人物を見つけた。

 ちょうどよさそうだとあなたは話しかけることにした。

 

「何か用か」

 

 男性のくぐもった声が兜の中から聞こえた。

 恐らく鉄製と思われる鎧に身を包んだ彼は、顔だけをこちらに向け答えた。

 

 あなたは自分の状況を伝え、助けてくれた人物を探していることを手短に話した。

 

「お前を助けた奴については知らん……だが、冒険者ギルドの中で人が倒れたとしたら、職員が放っておくわけがない。受付で聞いてみろ」

 

 そう告げた彼はあなたから顔を逸らし、再びテーブルに向き合った。

 

 あなたは彼に感謝の言葉を伝え、その場を離れた。

 

 考えてみれば簡単なことだった。

 ここがギルドという組織によって運営されている以上、それを構成する人達は存在するわけで、その人達ならばあなたが倒れたところも目撃しているはずだった。

 

 あなたは人だかりが散るのを待ってからカウンターに近づいた。

 

「あっ、目を覚まされたんですね。おはようございます。お加減はいかがですか?」

 

 淡い茶髪を三つ編みにまとめている受付嬢と思われる女性が、あなたが近づくのを見て声を掛けた。

 その口ぶりから、あなたは彼女が昨日の出来事を知っている人物だと推察した。

 あなたは昨日助けてくれた人物を探しており、その者にお礼をしたいと伝えた。

 

「お礼、ですか……」

 

 受付嬢は少し不自然な間を含んで俯いた。

 しかしすぐに穏やかな笑みを浮かべてあなたに向き直った。

 

「それはつまり、世話になった人に対して感謝を伝えたい。もしくは恩に報いたいということでしょうか?」

 

 概ねその認識で間違いない。

 しかし、それがどうかしたのか。

 

「コホン。ではお伝えしますが、まずあなたがギルド内で突然意識を失って倒れたのは我々も承知しています。そしてあなたに対して救命措置を施したのは私、というかギルド全体です」

 

 目の前の受付嬢はつらつらと話し始めた。

 なんと、あなたが探していた人物は今話している彼女その人だった。

 あなたは飢餓で死にかけていたところを助けてもらったことに深く感謝しようとした。

 

「いえ、ギルドとして、そして人として当然のことをしたまでですから」

 

 彼女は変わらず柔和な笑みでそう言った。

 しかしあなたとしては、命の縁をさまよっていた状態から救われただけではなく、もしかすればこの世界での冒険が何も成せず終わるかもしれなかったところを救われたのだ。

 何かしらの礼をしたい気持ちは依然としてあった。

 

 あなたが、礼としてなんでもいいから何かさせてくれないか。

 野菜の収穫からモンスターの退治まで何でもやる、とその気持ちを伝えると、

 

「そうですか! では……」

 

 パンと手を叩いた受付嬢は、

 

「少し、お話しましょうか」

 

 その言葉を待っていたとでも言うような笑顔で、あなたに対談への協力を求めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな訳で、あなたは今ギルド内の一室で数人に囲まれ取り調べらしきものを受けていた。

 いや、どういう訳でこうなったのかはあなたも理解していない。唐突に部屋へと連れ込まれたのだ。

 この話し合いも何を目的としているのかさっぱりわからない。

 

 状況が飲み込めないあなたをおいて、目の前に座る受付嬢は淡々と話し始めた。

 

「まずお聞きしたいのですが、あなたはどういった目的でこの街に?」

 

 簡単な挨拶をされた後、このような問いかけをされたあなたは、なんとも言えない顔をした。

 なぜこの街にきたかといえば、そこに街があるという情報を手に入れたからとしか言いようがない。

 何せそれ以前は何も分からぬ状況でゴブリンの餌にされるところであった。

 それに加えてここがイルヴァの大地ではないと気づいたものだから、特に目的もなかった。

 強いて言えば、この世界を冒険することが今の目的である。

 ああ、それと水の街に行くことも。

 

「なるほど。つまりは各地を巡る旅をしている、ということで合っていますか?」

 

 概ねその認識で間違いはない。

 あなたはこの世界に血縁者もいなければ身寄りもない。たった一人だ。

 しかし、自分で大概のことはこなせるし、明日を生きていく上での心配も少ない。

 一人旅など慣れたものだ。

 

「わかりました。では、あなたのご出身を伺ってもよろしいですか?」

 

 その質問をされたとき、あなたは露骨に顔をしかめた。

 この手の質問がくることは半ば予想はしていたが。

 

 当然ながらあなたの出身地はこの世界には存在しない。

 正直に話しても良いが、あなたとしてはそれは最終手段としておきたかった。これまでに渡ってきた異世界でも、別の次元からやってきたなどといって信じる者はほとんどいなかったからだ。

 良くて頭がおかしい人扱い、悪ければその場でしょっ引かれて公開処刑寸前までいったこともある。

 

 適当に話をでっち上げようか。

 この街の出身ということではどうだろうか。

 いや、どうせ後々調べられて嘘が露呈するに決まっている。

 では、水の街出身というのはどうだろう。

 しばらくこの街に滞在したら帰るつもりだったというシナリオだ。

 さすがに他所の住民の情報まで管理していることはないだろう。

 よしこれでいこう。

 

 あなたは即興で考えた身の上を話し始めた。

 しかしその最中、部屋の中のもう一人の女性があなたの話を遮るように声をあげた。

 

(ダウト)、ね」

 

 あなたが視線を向けると、彼女は続けておかしなことを言い始めた。

 

「至高神の御名において、今の言葉は間違いなく嘘です」

 

 嘘。嘘と彼女は言った。

 それも間違いなくあなた自身に向けて話している。

 そう、あなたが話したのは真っ赤な嘘だ。

 今の話に真実など一片たりとも無く、水の街にはこれから行く予定はあれど、今までには行ったこともなければ見たこともない。

 事実その通りだとあなたは冷めた感情で考えた。

 

 だが、それがなんだというのか。

 何の根拠を以て彼女は今の話を嘘と判断したというのだ。

 あなたは彼女をフードの下から睨んで言った。

 

「彼女は至高神様に仕える神官です。彼女は至高神様から看破(センスライ)の奇跡を授かっています。ですので、この場では隠し事や嘘は意味を成しませんよ?」

 

「そういうこった。下手に嘘を重ねるよりはさっさと白状することを勧めるぜ」

 

 そう言ったのは目の前の受付嬢。そして甲冑に身を包み、その手に槍を携えた男。

 そう、先程あなたが目覚めた時に部屋にいた男だ。彼らはこちらに厳しい視線を向けあなたに対する敵意を隠そうともしていない。

 

 なるほど、とあなたはつぶやいた。

 つまりは嘘を見破ったのは、あの不愉快なこの世界の神から賜った能力によるものであり、男の方は元からあなたを監視する目的で部屋に置いていたのだろうとあなたは考えた。

 依然としてその目的はさっぱり分からないが。

 さらに、その至高神とやらの威光は、少なくともこの場にいるあなた以外の人間を納得させられるだけの影響力があると理解した。

 一つの部屋の中に同じ神を崇める信者しかいないとは。

 何とも幸運なこともあるものだ。

 ノースティリスであれば、”神○○の名において~”なんてことを口にすればその部屋は即刻血で血を洗う宗教戦争のステージに早変わりするだろう。

 

 それにしても”嘘を暴く奇跡”とは、あなたも聞いたことがない。さぞかし貴重な能力なのだろう。

 

 

 全く、反吐が出る。

 

 

 あなたは心の中でそう吐き捨てた。

 

 冒険者を続ける中で様々の物を手に入れ、そして同じようにたくさんのモノを失ってきたあなたにとっては、自己の存在は何物にも代えがたい、最後に残ったあなただけの所有物だ。

 装備もアイテムも替えが利く。体もだ。

 だがあなた自身はそうではない。自らの心だけは、何者にも侵されないただの自分でありたかった。

 

 だが、この奇跡は自身に残った最後のあなただけの領域を無理やり覗き見るようなものだ。そんなものは最早心を読むことと同義である。

 

 理解してもらおうとは思わない。これはあなたが失ったものが多すぎたが故の在り方だ。

 だからこそあなたは自分の心が見透かされているということに激しい嫌悪感を抱かずにはいられなかった。

 

 そんなあなたの心境は露知らず、質問を続けますね、と受付嬢はまた話し始めた。

 

「あなたのお顔を詳しく拝見したいので、今被っているその頭巾。一度外してもらえませんか?」

 

 何を今更、とあなたは思う。

 彼女が先程話したことが事実であれば、あなたの顔を確認する時間など飢餓で倒れた時からいくらでもあっただろうに。

 

 あなたは素直にフードから顔を出した。

 嘘を見破られるという状況ではなんの意味もないであろうことはわかっていたため、インコグニートの魔法も解除した。

 

 それと同時にあなたの外見に明確な変化が現れる。

 腰にずっしりとした重量感が加わる。

 髪色は輝く白銀の長髪へと変わり、頭頂部あたりからは獣の耳が現れた。

 目の色は髪とは対照的に明るい金色となり、瞳孔が縦に伸びた。

 

 本当の姿を晒したあなたは、これで満足か、とでも言うように足を組み、椅子にふんぞり返った。

 

 それに対して受付嬢は、

 

「えっ」

 

 と驚きの声をあげ、そのまま硬直した。

 この反応にあなたは少々困惑した。

 何を驚くことがある。たかが獣の耳と尻尾が人の体に付いているだけで、他におかしな所は何も無いだろう。

 顔が(ただ)れているでも、目が4つあるというわけでもなし。

 そもそも街中でも同じような身体的特徴を持つ人間は何人も見かけた。この世界でも決して希少種という訳では無いはずだ。

 

「これは……」

 

「お前……」

 

 

 視線を横に流すと、となりの男女2人も同じように目を丸くしていた。

 フムン。これはどういうことだろうか。あなたはさらに困惑した。

 

狐人(ヴァルポ)……それも、白子(アルビノ)の……」

 

 ふいに受付嬢が発したこの聞き馴染みのない言葉にあなたは首を傾げた。それが彼らが驚愕している理由なのだろうか? 

 

 しばらく呆けていた受付嬢だったが、すぐに平静を取り戻した。目線を審判を務める女性に向けると、彼女は小さく頷いた。これは真実であると認めたということか。

 

「ええと、はい。ご協力ありがとうございます。ではお互いの顔も見られましたし、そろそろ本題に入りましょうか」

 

 そう言ってひとつ咳払いをした受付嬢は、より真剣な面持ちであなたの顔を見つめた。

 

「今回、こうしてあなたと話し合う場を儲けたのには理由があります。それが何かおわかりですか?」

 

 投げかけられた質問の答えは、それ自体あなたが最も知りたいことだった。

 元々は自分を助けてくれた人物を探していたはずなのにどうしてこうなったのか。こっちが聞きたいくらいだ。

 

「覚えていらっしゃらないのですね。では単刀直入に申し上げますが、我々ギルドはあなたが"混沌"に属する者ではないかと疑っています」

 

 受付嬢が告げた言葉は、あなたにとっては頭上に疑問符が浮かぶ内容だった。

 まず”混沌”とは何のことを言っているのだろうか。ノースティリスの魔法の一種にそういった名前が付けられていることは知っているし、耐性をつけにくい属性の一つということも知っている。

 だがその後に続く、『属する』という言葉が気がかりだ。

 この言い方ではまるであなたという存在が一つの属性や勢力に与しているような印象を受ける。

 

「あ。あくまでまだ疑っているだけですので。これから行う質問への返答によっては我々の認識も変わる可能性はあります。ですので、どうぞリラックスしてくださいね」

 

 そう笑顔で言う受付嬢にあなたは少しうすら寒い気配を感じた。

 その感覚を振り払い、あなたは、その疑いはどこから生まれたものなのかと尋ねた。

 

「はい。それはあなたが昨晩意識を失う前に、『人肉、食べたい』と発言したことが主な理由です。それ以外にも細々とした理由はあります。もちろん、この寝言ともいえる不確かな言葉だけであなたが我々にとっての善か悪かを断ずるつもりはありません。しかし、最近はモンスターの動きが活発化しており、混沌の勢力も各地で発見される回数が増えています。この状況を鑑みて、ギルド長はあなたを要監視対象として扱う事を決定しました」

 

「これから話すことは全て我々にとって最悪の事態を想定した場合の話ですが、つまりはあなたが食人を恒常的に行っており、なおかつ人々の暮らしに溶け込んで生活しているモンスターなのではないか。と我々は疑っています。具体的に言うと、人狼や鬼、吸血鬼の一種などではないかと」

 

 受付嬢の口からすらすらと流れてきた言葉にあなたは面食らった。

 それと同時にその意味を理解して内心とても落胆した。

 

 つまりは、だ。

 やはりというかこの世界でもカニバリズム……食人の文化は存在しなかったようだ。あなたは非常に悲しんだ。

 詳しいことはまだわからないが、恐らく"混沌"というモノもあまり喜ばしい存在ではないのだろう。

 なまじ期待していた分、その落胆も大きかった。

 しかしその反面、なんというか、半分わかっていたことでもあった。

 何せこれだけ人の文化が発展しているのだ。その社会の中でカニバリズムなんて趣向を大っぴらに公開する者など、それこそ人の姿をしたモンスターぐらいしかいないだろう。

 それにあなたが期待を抱いたのは、あなたの嗅覚が人肉らしき匂いに反応しただけという、とても曖昧な理由だけだったからであるが……

 

 そこまで考えて、あなたはハッと気がついた。

 目覚めたときからずっと知覚していなかったが、この部屋の中からはあの匂いがしないのである。

 昨晩はとても強烈にギルド内に漂っていた人肉の匂いがまるで全て換気されてしまったように、今では全く感じられない。

 

 寝ている間に鼻が慣れてしまったのか。もうあの感覚を味わうことが出来ないかと思うと少々残念ではある。

 

 そんなあなたをさておき、受付嬢は核心を突く問いを重ねる。

 

「さて、この対談の目的も共有したことですし、もう一度質問させていただきます。あなたの昨日の言葉、あれは本心からそう言ったのですか? あなたは本当に人の肉を喰らう存在なのですか?」

 

 受付嬢は、絶対に逃がさないとでも言うような眼光をあなたに向けた。

 それを受けたあなたは、普段と変わらない様子で、あっけらかんと言い放った。

 

 自分は人肉の味の虜である、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後

 

 冒険者ギルドのカウンターに立つ目が死んだ受付嬢とこの世界に来てからかつてないほど上機嫌なあなたは、テーブルの上に置かれた1つの物を挟んで相対していた。

 

「はい。これで冒険者登録は完了です。これからよろしくお願いしますね、()()()()さん」

 

 その言葉と共に、受付嬢は目の前の白磁の認識票を手で指し示す。あなたはわくわくしながら白磁の認識票を手に取った。

 

 何とも都合が良い組織もあったものだ。あなたは真新しい認識票を首にかけながらそう思った。

 

 この数時間の間に二人の間で何が起こったのか。

 傍から見ていたギルド職員は多少気になりはしたものの、あなたがその場を離れると同時に机に突っ伏した受付嬢を見て今はそっとしておくことに決めたのだった。

 

 





・ふかふかパン
 ノースティリスの錬金術師ならだれもが通る道。
 およそ食用とは思えない物からでも練成することができる。

・インコグニートの魔法
 使用者の姿を変化させることができる。
 犯罪者の状態で使用すると、ガードから逃れられる。


ノースティリス民の平常運転だよ。
名前が決まったよ。
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