姉妹校交流会は両校の学長が提案した二つの種目を一日ずつ行い、その結果によって勝敗を決める。
通例として初日に団体戦、二日目に個人戦が行われることとなっており、今年の一日目はチーム模擬戦。階級ごとに分けられ二〜三人のチームで勝敗を競う。
勝敗の基準は点数方式で、四級〜準二級が一点、二級〜準一級は三点、一級は五点、特級は十点。模擬戦終了時に残った人数×各階級の点数が加算され、最終的な点数が高い方の勝ち。
階級毎に分けられているのは、特級が入るとその他はもう有象無象になっちゃうから。
ちなみに準一級と二級は同じ枠になる。
「戦うのは特級グループと二級グループか。今年は三、四級いないし、一級はこっちにいないから東京校の不戦勝だし」
「良く言えば中堅に纏まってるって感じだね」
「それ、悪く言えば雑魚は雑魚って事だろ」
「二人とも、弱いものいじめは良くないよ。事実の陳列は時として非常に鋭い言葉のナイフになる」
「強い奴いじめるバカがどこにいんだよ」
「歌姫せんぱーい。頑張れー」
一級グループで戦う予定のない夏油くん、そして特級グループで模擬戦が終わるまで暇な俺と悟の三人は、模擬戦が始まってもだべっていた。
雑魚先輩達の戦いに興味が無いとも言う。この場で射殺されて呪霊になってくれるなら興味も湧くんだけど、どうせ勝つの東京校だろうしなぁ⋯⋯。
一級グループで確定五点の夏油くんがいるから、先輩方には頑張って減らして欲しいところだ。二人残ってるとこっちの勝ち目無くなっちゃうからね。
そうなるとやる気がなくなってしまう。
「残ったのは歌姫だけか」
「雑魚先輩達もっと頑張ってくださいよ。人数一人多かったんですから」
「なんだとぉ⋯⋯」
「続いて第二試合、特級グループの模擬戦を始める!」
普通に戦っても悟には攻撃届かないしなぁ⋯⋯。宿禰は普通に攻撃通すだろうけど。
「“
「喰蛇。呪力砲チャージ開始」
普通に攻撃してもロクなダメージにならないのは同じ。俺は喰蛇という盾で、悟は無下限による無限のバリアで。
とはいえ、遠距離で無限バリアを突破できるような手段は今の所持っていない。近付ければ領域展延で殴れるものの、遠距離では攻撃の相殺がせいぜい。
お互いに呪力切れはほぼ有り得ないから、近接戦に持ち込むしか勝機はない。
「“
「術式併用。炎の剣」
北欧に出現した呪霊の一体から手に入れた術式。持ち主は炎でできた巨人型で、炎に対する畏怖と北欧神話が結びついた特級呪霊だった。
名称はそのままスルト。呪力を炎に変換、操作し、収束させることで、太陽よりも高温なのに周りに被害が及ばないというファンタジックな術式だった。
対処が遅れていたら世界が燃やされていたかもしれない。原作では産まれなかったのか、それとも何とか対処できたのか不明である。
「“
「さらに術式併用。打ち倒す者」
エジプトで戦った一級呪霊『メジェド』の術式。目からビームを出す呪霊で、シンプルに移動が速く、隙も少ない上に連射してくるクソ呪霊だった。
検証してみたら別に目からじゃなくてもビームは出せたため、目からのみ出すことで効率や威力を上げるような縛りだった、ということが後になって判明したのは良い思い出だ。
仮想の質量と極大の砲撃が衝突する。
どちらも地形を容易に変える程の威力を持ち、それが真正面から衝突するのだから、当然ダイナマイトや手榴弾なんて比較にならないほどの爆風が吹き荒れる。
数瞬拮抗した衝突の軍配は俺に上がり、仮想の質量を食い破った砲撃は無限に阻まれ、後方へと拡散し消えていった。
「これでも効かないって理不尽でしょ。無限バリア」
「茈を突破してくる奴に言われてもねぇ⋯⋯」
「届かないなら一緒でしょ?」
「まぁ⋯⋯ね」
このままじゃ埒が明かない。お互いにそう認識し、距離を詰める。
無限を纏った格闘は一撃一撃がクリティカル。無敵な上にジャブ感覚のクリティカルを強要される。相手側からしてみればたまったもんじゃない。『やってらんねー』という評価はまさにその通りだ。
──とはいえ、それを抜けないかと言われればそうでも無い。
一つは領域展延。相手の術式を中和するそれは、無下限のバリアすらも中和できる。
一つは領域展開。術式を必中にすれば、届かないという事象そのものが発生しなくなる。
そして最後に空間ごと攻撃すること。宿禰や宿儺はともかく、俺には無理。
「特級術師の戦いが殴り合いって、なんか不思議だね!」
「仕方ねーだろ。お互いに遠距離じゃ有効打が無いんだから⋯⋯よ!」
お互いにクリーンヒットしたら大ダメージ確定なので、弾く、流す、躱すと千日手に近い状況が出来上がっている。
反転術式が使えてしまうため、かすった程度なら実質ノーダメージになってしまうのが最大の原因。
そろそろ心理戦始めるか。
領域展延を断続的に使用し、解除のタイミングで喰蛇による死角からの攻撃を含ませる。
六眼には領域展延の解除は見えているのだろうが、そこに喰蛇による攻撃があるかどうかは半々。六眼は呪力が見える便利な眼だが、視覚外は当然見えない。
喰蛇に意識を向ければ俺が攻撃するし、俺に意識を向け過ぎれば喰蛇に襲われる。統一された指揮系統から繰り出されるブラフ混じりの連撃。一糸乱れぬ連撃をしかけ、赫で弾く隙を与えない。
ほら──
「──隙が出来た」
「ガッ⋯⋯!」
左の拳が脇腹に突き刺さり、呪力が黒くスパークする。
連続して右。
左。
『黒閃』
テンションが上がってくる。
ゾーンに近い状態になり、自然とハイになって行く。
「震えるぞハート、燃え尽きるほどヒート!」
何名か吹き出した音が耳に届く。
「刻むぞ、呪力のビート!」
もう自分でも、何を考えているのかわからない。テンションに任せ、言葉が勝手に口から出ていく。
「『
左右の拳に合わせて絶え間なく黒閃のスパークが走り、吹き飛んだ悟が背中から落ちた。
⋯⋯生きてる?
正気に戻り、冷や汗をかきながらチラと東京校の面々*1の方を向く。
⋯⋯目が合った瞬間そらされた。
京都校の方を向く。
満面の笑みで親指を立てられ、悟の方を見て驚いていた。
恐る恐る悟の様子を伺う。
立ち上がって土埃を払っていた。
⋯⋯キッショ、なんで生きてんだよ。
多分、五条悟なら反転術式ガン回しで生き残ってると思う。
ちなみに主人公の加茂殲景は、女子供が相手でも容赦なく黒閃ドロップキックを入れられる真の男女平等主義者です。歌姫の顔面とか普通に殴れます。