ショータの闘志
快斗を連れ戻したデザイア、平ジェネWORLD、S.O.N.G、錬金術協会の面々は、たまには息抜きしなければならないと弦十郎やアダム、ギョロリが判断し、キャッスルドラン内でそれぞれの時間を過ごしていた。
◇キャッスルドラン内のトレーニングルーム◇
キャッスルドラン内の部屋の中で一番広いというトレーニングルームでをアメノハバキリを纏った翼と小次郎が剣を打ち合っていた。
「うむ、実に洗練された剣だ。ならばその腕に敬意を評し、我が秘剣をお見せしよう」
(…!来るっ!)
小次郎は構えを取ると雰囲気が変わり、翼はそれを感じ取り、身構える。
「秘剣・燕返し」
「!?」
3つの斬擊が同時に斬りかかり、翼はそれに驚き、防ぎきれず、ギアが解除された。
「勝負あり!勝者、佐々木小次郎!」
翼は小次郎に一礼し、小次郎も翼の健闘を称える。
「流石は天才剣士、佐々木小次郎殿…、恐れ入りました」
「実に有意義な手合わせであった」
その一方でガングニールを纏った奏がスカサハと手合わせしており、クー・フーリンが心配そうに見守っていた。
「うおおおおお!!」
奏は持てる力全てをスカサハにぶつけるが、スカサハ自身は終始余裕そうであった。
「うむ、悪くない。セタンタ*1に稽古をつけた日々を思い出すな。ではこちらもいくぞ」
その瞬間、奏はスカサハに一方的に打ちのめされてしまった。
「ぐはぁ…!まさか…、全然届かないなんて…」
「おい、大丈夫か穣ちゃん!」
奏はそのまま気を失い、クー・フーリンに介抱されることになった。優斗は装者達の様子を一通り見た後、他の部屋にいくと、そこには快斗がいた。快斗の目先にはブーディカがおり、彼女は困惑した様子で、快斗は彼女を睨み付けながら距離を取っていた。優斗は何があったのかブーディカに話しかける。
「ブーディカ、どうしたんだ?なんか刺激したのか?」
「いや、そんなつもりじゃないんだけど…、ちょっと彼を抱き締めようとしたら急に……」
どうやらブーディカが快斗を抱き締めようとしたら、快斗は急に距離を取って彼女を警戒しだしたとのことだった。するとそこへエースがやってくる。
「ブーディカ、あいつは女性から理不尽な扱いをされてきたから、さっきのただ単に抱き締める行為も、何か良からぬことをされると思ったんだろう。例え悪気がなくともあいつは拒絶反応を起こしてしまう」
「そっかぁ…、可哀想に…それさえも拒絶しちゃうなんて、余程酷い仕打ちを受けたんだろうね……」
ブーディカは悲しそうにしながら快斗に同情する。すると、部屋の外で物音がした。
バタン!
「ん?なんだ?」
優斗とエースが部屋を出ると、そこにはショータが倒れており、ゴチゾウ達が慌てふためいていた。
「ショータ!?」
「おい!どうした!?」
エースと優斗はショータに駆け寄る。ショータは顔色があまりよろしくない感じだった。優斗とエースの声を聞いたブーディカも駆け寄ってくる。
「とりあえず医務室に連れていこう!」
ブーディカはショータをおんぶするとアスクレピオスがいる医務室まで連れていく。
◇
ショータを医務室に連れていき、しばらくするとアスクレピオスが出てきた。
「原因がわかったぞ。こいつだ」
アスクレピオスはショータが倒れた原因を突き止め、それを見せる。それはゴチゾウだった。
「ゴチゾウ……?」
「こいつがあいつの腹のガヴ器官とやらに詰まっていた。それによって体調不調を引き起したのだろう。現にこいつを摘出してから体調が回復している」
ショータが倒れた原因はガヴ器官の中に生成されたゴチゾウが出てこれず、詰まってしまったことだった。エースと優斗はゴチゾウが詰まったことについてなんとなく察していた。
「あいつ、自分を卑下しているからな、それで気分も優れないんだろう」
「……」
エースがそう呟くと優斗は少し黙り込み、ゆっくりと立ち上がった。
「優斗?どこ行くんだ?」
「あいつのところだ。ちょっと聞きたいことがある」
◇
一方、ショータはガヴ器官に詰まっていたゴチゾウが摘出されたことで、調子を取り戻し、ララの見舞いに来ていた。ララはまだ眠っており、いつ目覚めるんだろうと思っていると、後ろから声をかけられる。
「ここにいたかショータ」
「優斗さん…?」
「少し話がある」
そこにいたのは優斗だった。話をするために2人は場所を移す。
「話ってなんですか?」
「ショータ、なぜお前は力を持っているのに戦おうとしないんだ?俺から見ても、潜在能力が高いと言える」
ショータは少し黙り込んだあと、重い口を開いた。
「……俺は、ヘタレなんですよ。あなた達とは違って、変身も録にできない無能で……」
ショータはゴチゾウをガヴ器官に装填するとゴチゾウが射出されてしまう。
「というか、本当はこの戦いに出向くつもりはなかったんです。あの空間割れに吸い込まれて意図しない形でここに来てしまったんです」
「取りあえず、今まで何があったか詳しく聞かせてくれないか?お前が覚えていることを」
「……それは前世の生い立ちから話せと言う意味で?」
「そこまで遡らなくていい(汗)」
唐突などこぞの物理学者と筋肉バカのやりとりのような感じになりそうになるも、ショータは自身の前世を語りだす。高校に入ってからいじめの標的にされ、思いを寄せていた人が当時クラスメイトだった堕落勇者達に過度な性的暴行で死ぬところを目の前で見せられて、自分の非力さに絶望したという。そして証拠隠滅という形でショータ自身も殺されたと話した。
「転生して地球に移り住んでから、ララと出会ってこのまま平和に暮らせればと思っていたのに、またあいつらと会ってしまうなんて…、しかもあなた達が来てくれなかったら、今頃彼女がどうなっていたか想像すらしたくない…!やっぱり俺は……」
優斗はショータの話を聞き、彼が何故こんなにも卑屈なのか、なんとなく察した。
「ショータ、お前は奴らがお前にヘタレだとか散々言われ続けてきたから、本当にそう思うようになってしまった。それでお前は自信をなくしている。いわば洗脳の一種だ。コウヘイ達から聞いている、そのララとやらがピンチになったときはお前は奮い立ったとな」
「……偶然うまくいっただけです。それに洗脳だとしても、俺がヘタレなのはあながち間違いじゃありませんよ」
ショータは頭を抱えてしゃがみこむ。優斗はため息を1回つくとショータの胸ぐらを掴み、無理矢理立たせる。
「よく聞けショータ、恐怖心を持っておくのは大事だ。だけどな、お前は初めから逃げている弱虫だ。お前が卑屈になるには良い、だけど他人の意見はしっかり聞き分けろ!お前を虐めていた奴らの意見がそんなに大事か?お前の事を大事に育ててくれた前世の親の気持ちは?生まれ変わったお前を育ててくれた奴の心は?お前を大事に思っている人の気持ちまでお前は踏みにじろうとしているんだぞ!」
優斗は強い口調で容赦なくショータにキツい言葉を浴びせる。だが、その目はショータをしっかりと見据えていた。そして優斗はショータを突き放す。
「腰抜けはおとなしく殻に閉じこもっていろ。だけどもしお前が腰抜けじゃなく、お前を大事にしてくれる人の為に戦えるヒーロー見習いなら、この先の戦いでお前を虐めていた奴らに見せつけてやれ!過去の奴隷の様なお前はいない、今此処にいるのは未来の向かって進む1人の人だってな!」
優斗はそう伝えると、その場を去っていった。残されたショータはしばらく立ち尽くしていた。するとゴチゾウ達がショータに駆け寄ってくる。そしてゴチゾウの1匹を掴み、見つめる。
「ワニャ?」
「…………」
ショータの脳裏には転生してから出会った人物達が思い浮かぶ。
◇
『お前さん、よければワシの所に来んか?こんなところにおったら体がもたんじゃろ?……決まりじゃな、ワシはデンテ・ストマック、ワシのことは祖父と思ってもよいぞ!はっはっは~!』
『お前が弟を助けてくれたのか、礼を言う。お前の名を教えてくれ。……ショータというのか、俺はラキアだ』
『僕はコメル!ありがとう!ショータさん!』
『俺、結城リト、家がないならうちに来るか?』
『結城美柑です。遠慮しないでどうぞ』
『私はララ!……えっ?私のこと知ってるの?ショータも宇宙人なの!?へぇ~そうなんだ!』
◇
「…………」
ショータはガヴ器官にゴチゾウを装填する。しかし、ゴチゾウが射出されてしまう。
「ワニャ~!(泣)」
「……ダメか」
やはり変身はできない。だがショータの目は諦めではなく、僅かに闘志が宿っていた。
◇
ショータに説教をした優斗は部屋から出ると、そこには蒼汰がいた。
「なんだ、盗み聞きか?」
「僕だけじゃないよ」
蒼汰がそう言うと春雪と黒雪が出てきた。
「春雪に黒雪まで……」
「彼の話を聞かせてもらいました。彼はかつての僕そのものと言っていいくらいです。かつての自分を見てる気分ってこういうことなんですね……」
「春雪、お前もそうだったのか(あ、確か前に蒼汰が持ってきた小説で序盤の春雪もそうなっていたな…)」
「はい、僕も先輩と会う前はショータさんのように卑屈で自信が持てない性格でした」
「確かに彼は初めて会った時の春雪君によく似ている」
「それにしても優斗、結構キツく言ったようだね」
「あいつには少し喝を入れてやらないと思っただけだ。それに心の奥底では強い闘志が眠っている。さて、ショータはどう出るか……」
◇
その夜、キャッスルドランの窓を開けてショータが顔を出し、誰もいないか確認すると窓から外に出て壁を伝いながら地面に降りると、ゴチゾウ達もやってくる。
「さて、やるか…」
ショータはガヴ器官にゴチゾウを装填する。案の定、ゴチゾウが射出されて変身に失敗する。だが、ショータは何度もゴチゾウを装填し、変身しようと試みる。そうやって何度もやっていく内に変化が現れた。
グミ!
EATグミ! EATグミ!
「!!」
「「「ワニャ!?」」」
何度目挑戦かわからなくなってきた時、ゴチゾウが射出されずガヴ器官に装填されたままになった。そのままハンドルのガヴドルを回した瞬間……
バシュン!
「ワニャ~!(泣)」
「あっ……」
ガヴドルを回した瞬間、ゴチゾウが射出されてしまい、またもや変身に失敗してしまう。その後もショータは明け方になるまで変身を試み続けた。
ちなみに射出されたゴチゾウは消滅しない。効果を発揮できていないから。
さて、準備はできた。ショータは本編で頑張ってもらいましょう。