仮面ライダーシーカーこと、快斗は困惑していた。3年のIS操縦者に喧嘩売られたり、突如現れた中国の代表候補生に喧嘩売られたりでイライラした為、誰もいない部屋に入り(整備室)、自前の横笛で前世からの特技であるナイトティンバーの曲を吹くことで心を落ち着かせようとしていたら、メガネをかけた女子に声をかけられた。しかもその女子には名乗っていない筈なのに快斗の名前を知っていた。
「快斗…?」
その女子は快斗と目を合わせると段々涙目になっていった。
「快斗…!生きて…!生きててくれたんだ…!」
「誰だお前?」
「え…?」
しかし快斗は彼女のこと知らない為、そういう反応しかできない。
「快斗…私のこと覚えてないの…?」
「知るか。人違いだろ」
「そんなことない…!だってさっき吹いてた曲はいつも私にだけ聞かせてくれた秘密の曲だから!!」
「お、おい!」
「快斗!私よ!更識簪!小学校の時、一緒だったでしょ!?」
簪と名乗る女子は快斗に掴み掛かる。快斗は訳が分からず困惑する。そしてカチンと来てしまい…。
「てめぇいい加減にしやがれ!!」
怒った快斗は簪の首を掴み、締めつける。
「うぐ…あ…」
このまま意識を奪おうとした快斗だったが、突然頭痛が走った。
「…っ!?」
一瞬だが顔にノイズようなものがあって認識できない少女が快斗の脳裏に浮かんだ。その姿は簪に何となく似ている気がした。すると快斗の締め付けが弱くなる。
「快斗…?」
簪も急に締め付けが弱くなったことに気づき、快斗の顔を見る。快斗は目を見開きながら、何やら混乱しているようだった。
「ハァアアアアアアア!!」
突然快斗は背後からヘッドロックされる。快斗は驚き、簪から手を離すと振り解こうとする。
「簪ちゃんから離れなさい!!」
「ぐうううううう!?」
「お…お姉ちゃん…!?」
楯無が乱入し、快斗の首を絞める。快斗は体を激しく揺すり、楯無を振り解こうとするが彼女もなかなか離れない。
「簪ちゃん!早く彼から離れて!」
「え?え…?」
簪は訳が分からず硬直することしかできない。
「てめぇ…!この…!」
快斗は楯無の足を浮かして、壁に向かって背中を楯無ごとぶつける。
ドォン!
「うぐ…!」
そして締め付けが弱まった隙を見逃さず、快斗は楯無の腕を掴み、無理矢理引き剥がすと放り投げる。しかし楯無は受け身を取ってすぐに立ち上がった。
「何をしているお前達!!」
快斗はその声に振り向くと、そこには千冬と山田先生がいた。楯無は快斗が千冬達に気を取られた隙にスタンガンを取り出し、快斗に当てた。
「ぬがああああああ!!」
快斗はその場に倒れ、動けなくなる。
「…はっ!快斗!」
「駄目よ簪ちゃん!」
簪は快斗に駆け寄ろうとするが楯無に阻まれる。
「どいてお姉ちゃん!」
「彼は危険よ!近づかないで!」
楯無の制止を振り切って簪は快斗に駆け寄った。
「快斗!大丈夫!?」
「ぐぅうう…!」
「…更識、何があった?」
「織斑先生…」
◇
「なるほど、更識妹は大角とはかつて小学校が一緒で仲が良かったと…」
「はい…」
「でも大角君は簪ちゃんのことを知らないみたいだけど…」
千冬と楯無と簪は拘束衣を着せられた快斗を見る。快斗はまだスタンガンが効いているのか動けない。
「大角君、あなたが通っていた小学校の名前は言えますか?」
「……?……?」
山田先生が快斗に通った小学校の名前を尋ねたが、快斗は首を傾げながら考え込んでいた。
「織斑先生…これは…」
「あぁ、記憶喪失かもしれないな…」
「そんな…!どうして…!」
千冬達は簪に快斗の事情を話した。彼が仮面ライダーであることも。
「快斗にそんなことが…」
簪は快斗の事情を聞いて愕然とする。
「更識姉、大角の見張りを引き続き頼む」
「わかりました」
そして楯無が快斗を連れていこうとした瞬間だった。
「待ってください。織斑先生、快斗の事を…私に任せてくれませんか…?」
「何?」
「簪ちゃん!?」
「うぇ…?」
簪の発言に千冬や楯無だけじゃなく、快斗まで驚いていた。
「快斗の事は私がよくわかっています。それにさっき首を絞められた時、締める力が弱まったんです。もしかしたら、完全に私のことを忘れているわけじゃないと思って…お願いします…!」
千冬はしばらく考え込んだ後、再び口を開く。
「更識妹、大角はかなり情緒不安定だ。いつタガが外れるかわからないぞ?それにさっきのようにお前に危害を加えるかもしれない。それでもいいのか?」
「構いません。快斗が受けた仕打ちに比べれば…」
「…いいだろう」
「織斑先生!?私は反対です!」
千冬は許可したが楯無は反対する。
「簪ちゃんも見たでしょう!?彼の凶暴さを!それに私も何度も攻撃されそうになったことがあるわ!悪い事は言わないから辞めなさい!」
すると簪は楯無に近づき、小声で何か話した。すると楯無が青ざめた。
「ちょっと簪ちゃん…?冗談よね?」
「冗談に見える?」
「…わ、わかったわよ。その代わり、何かあったらすぐ私か織斑先生に連絡すること!いいね?」
「わかった」
千冬は何を言ったのだろうかと思ったが、気にしないでおくことにした。
◇
「…と言うわけで、よろしくね、快斗」
「……」
こうして快斗のお目付け役は簪が担当することになり、部屋も同室となった。快斗は最早突っ込むのを放棄していた。それにスタンガンが効いていてまだ動けないからだ。
これは全てを憎む少年に寄り添う少女の奇妙な学園生活である。
うーむ、やっぱりシーカーの話を書くのは楽しい。
シーカーニキ
実は夜寝ているとよくうなされているらしい。おそらくは過去で受けた拷問が悪夢となっているのだろう。
簪
シーカーニキの面倒を見ることを決意した。どれだけ危害を加えられようが彼の受けた仕打ちに比べればそれはちっぽけでしかないから。
楯無
うなされているシーカーニキを心配して駆け寄ったら急に起きて攻撃されたらしい。その為強引な手段でシーカーニキを止めていた。