罪背負いし影   作:砂利道

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どうだ!今回は間を開けなかったぞ!見直したか!(虫の息)


第八撃

 今日は和人がGGOにログインする日でもあり、Bob予選当日だ。本当なら何日か前にログインして慣らしておいて欲しかったのだがあいつにも予定はある。仕方ないだろう。だがその分ぶっつけ本番になってしまうのが不安だ。いや、あいつなら大丈夫か。規格外代表だし。それよりも今不安なのはシノンの事だ。あの後俺とシノンは戦利品の分配(互いに相手の相性の良いものをドロップしていたので交換などした。ついでに言えばその他のアイテムの売値にシノンは絶句していた。)をして解散したのだが何とも気まずい空気で過ごしたのだった。現実世界の方でも以前なら世間話程度ならしたのだが今日の今日まで簡単なあいさつ程度になってしまっていた。

 

「どうにかしないとまずいよな…」

 

以前の俺ならそんな事気にしなかったのだが人との関わりの大切さを学んでからは例え少なくても大事にしたいと思っている。なのだが…

 

「避けられてる感あるんだよな~…」

 

どうしたものかと考えていると待っていたゲームスタート地点から一人のプレイヤーがログインしてきた。水色の髪に砂色のマフラーを着けている少女、シノンだ。

 

「あっ」

 

「えっ?」

 

互いに固まってしまう。掛けるべき言葉が浮かばない。

 

「えっと…よ、予選で会いましょう」

 

そう言って早々にシノンは立ち去ろうとする。

 

「あっと、ちょっと待った!」

 

何かこの辺菊岡に似ているなと自分で気付いてショックを受けるが今は関係修復が最優先だ。キリト?何とかなるだろ。

 

「…なんですか?」

 

「時間あるか?話があるんだ」

 

「…分かりました」

 

良かった、これで断られたら打つ手無しだった。俺達はもはや常連となった酒場に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうしようかとずっと考えていた。今まで自分でもしつこいかなと考えたことがあった。でも一応返事とかあったし何より顔も名も知らない人だから大丈夫って思いがあった。でも実際はまさかの私によくしてくれたアパートの隣室の人だった。閑田さんと分かった時は驚きやら申し訳なさやら黙っていた事への怒りやらでしどろもどろになってしまいさっさと戦利品整理をしたらすぐにログアウトをしてしまった。そのあとこの世界で会うことは無かったけど現実世界で会うと目を合わせられず挨拶程度で済ましてしまっていた。そして今、それを解消するチャンスに恵まれた。こちらとしても今の関係性では何とも気まずいので閑田さん/シンの申し出はありがたかった。

 

「……」

 

「……」

 

なのに今現在進行形で気まずいのはなぜだろう?いや理由は簡単だ。どちらも言葉を発しないのだから。

 

「「…あの!あっいえどうぞ」」

 

続かない、どうしても続かない。自分の語彙力の無さが腹立つ。

 

「…シノン」

 

「は、はい…」

 

「すまなかった!」

 

「……え?」

 

「確証は無かったんだが俺は君が朝田詩乃ということに気付いていたんだ。その上でこちらの事を話さずに黙っていた。だからすまない」

 

「い、いつから気付いていたんですか?」

 

「…二回目に街で会った時だ」

 

そんな最初の時だったのか、相変わらずこの人の洞察力と観察眼はすごいな。

 

「…こちらこそすみませんでした、今思えばあんなにしつこく聞いたのはゲーム内のマナー以前に人としてのマナーとして駄目でした」

 

「…じゃあ互いにイーブンで良いかな?」

 

シンさんが不安そうに聞いてくる。

 

「もちろんです、こちらからお願いしたいくらいですよ」

 

「そうか、よかったよ。リアルの方まで引き摺っちゃうから気まずくて」

 

「それはこっちもですよ」

 

互いに苦笑しながら言う。

 

「ああ、それと敬語は要らないぞ、この世界じゃ対等だしな」

 

「え?でも…」

 

「年上だとか俺の方が先輩プレイヤーだからとか関係ない。この世界では俺は“シン”で君は“シノン”だ。そこに差は無いよ」

 

大人だ。しっかりと自分を持っていて器も広く許してくれる。やっぱりこれが強さの差なのかもしれない。

 

「分かりました…じゃなくて、分かったわよ、シン」

 

「ん!」

 

そう言ってシンは笑う。その顔はどう見ても可憐で凛とした女の子で…

 

「今女みたいだって思っただろ」

 

「うっ!」

 

びしりと言われてしまった。しかもほんのわずかに殺気が乗っている気がする。

 

「ご、ごめん…」

 

「…はぁ、もう慣れたからいいよ」

 

どうやら何回も勘違いされているようだ、気の毒に…

 

「さて、そろそろ行こうか。まだエントリーしてないんじゃないか?時間はあるけど」

 

「そうね、行きましょうか」

 

私たちは店を出てエントリーステージに向かった。足取りが軽くなったのは気のせいではないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺とシノンはSBCグロッケンに向かっていた途中に一人のプレイヤーに声を掛けられた。

 

「あ、あの!すみません!」

 

「うん?」「…なに?」

 

そのプレイヤーは長い黒髪に黒瞳の女の子で明らかにニュービーのプレイヤーだった。

 

「すいません、その…Bobに出たいんですけど道が分からなくて、それと出来れば武器屋にも行きたいんですけど…」

 

「あなたニュービーよね?いきなりBobに出るなんて勇気あるわね」

 

「ええと、今までファンタジーのゲームばっかりやってたんですけど銃撃戦に興味が出たのでコンバートしたんです」

 

黒髪、黒瞳、ニュービー、ファンタジー、コンバート、そして女の子…いや()()。これは確定だな。

 

「シノン、ちょっといいか」

 

俺はシノンに耳打ちをした。

 

「(こいつ俺の知り合いのプレイヤーだ)」

 

「(そうなの?)」

 

「(落ち合う約束をしてたんだが忘れててな、今思い出した)」

 

「(…この子に同情するわね)」

 

「(言っとくが男だぞこいつ)」

 

「え!?」

 

「(声がでかい!)」

 

「(ご、ごめん)」

 

「(それで物は相談なんだがちょっと手伝ってもらっていいか?)」

 

「(道案内とか?)」

 

「(いや遊びに)」

 

「(はい?)」

 

「(あっちは多分自分が女の子と思われてると勘違いしているはずだ。そして俺も女の子だと思っている。これを利用しない手は無い!!)」

 

「(そんな良い顔で言わなくても…)」

 

「(という訳で協力してくれないか?)」

 

「(…良いわよ、面白そうだし)」

 

シノンはニヤリと笑った。俺も悪い顔をしているだろう。

 

「あ、あの~。どうかしましたか?」

 

「ううん、何でも無いわ。それで道案内だったっけ?良いわよ。でもその前に装備を整えなきゃね」

 

シノンは何事も無かったかの様に進めた。さぁ、楽しくなりそうだ! (悪笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

俺、桐ケ谷和人ことキリトは菊岡誠二郎の依頼でガンゲイル・オンラインと言うゲームの内部調査をしている…と言うのは建前で本来の依頼はこの世界で起きた謎の圏内での攻撃、それとほぼ同時刻に起きた攻撃を受けたプレイヤーの変死。そしてそれに関与してると思われるデス・ガンなるプレイヤーへの接触。一緒にその依頼を受けた(あらた)と共に最強決定戦、Bobに出場し接触を図ろうとしていたのだが…

 

「どうしてこうなった…?」

 

まず一緒の場所からログインすると思っていた改がベッドが足りなかったという理由で別の場所からログインする事になりログインしたら今度はこの世界での改の容姿を聞くのを忘れていて誰が改なのか分からず仕方ないのでエントリーをしておこうと総督府と言うところに向かったら迷子になり埒が明かないのでプレイヤーを尋ねたら二人組の()()でしかも俺の容姿から女の子と勘違いされて仕方が無いので女の子のふりをしながらこの世界の武器…銃についてレクチャーを受けている真っ最中である。

 

「となるわけで…って聞いてる?」

 

「き、聞いてます聞いてます!」

 

駄目だ…軽い現実逃避をしてて聞いてなかった。申し訳ないな…

 

「そういえば君は今いくら持ってるんだい?」

 

今説明していた水色の髪の女の子ではないもう一人のフードをかぶった白髪紫瞳の女の子が聞いてくる。

 

「えーと……1000クレジットです…」

 

「バリバリの初期金額ね」

 

「それじゃあ中古のハンドガンでも厳しいな…」

 

二人は考え込んでしまった。初めて来た場所で離れる訳にも行かないので視線を泳がしてしまう。ふと視界に不思議なものが写った。

 

「あの、あれは何ですか?」

 

「え?…ああ、あれは簡単に言えば弾避けゲームよ。あそこにいるガンマンが撃った弾を避けながら進んで行ってガンマンに触ればクリア」

 

「今までにクリアできたのは一人だけだけどな」

 

「「え?」」

 

白髪の女の子が言った言葉に俺と水色の髪の女の子と声がハモった。

 

「一人しかいないんですか?」

 

「クリアした人が存在するの!?」

 

同時に、しかし意味は真反対の事を言い放った。

 

「そんなに難しいんですか?」

 

「それは…いや、見本が来たから見たほうが早いわね」

 

再びそっちに目を向けると三人組の男のプレイヤーが挑戦しようとしていた。

 

「あれは掛け金があってクリアしたのがこのゲームの最初の方らしいからそこそこ溜まってるんじゃないかな?ええと…今は約30万クレジットだね」

 

「30万!?すごいですね…」

 

視界の先では三人組の一人が挑戦していてレーンを走り抜けている。すると突然変な体勢で止まった。そこに弾丸が通り抜ける。

 

「今のは…」

 

弾道予測線(バレットライン)、防御的システムアシストよ。狙われた人には赤い線でその弾丸の軌道が見えるのよ」

 

「へぇ…」

 

挑戦していた人は10mを超えた辺りで被弾してゲームオーバーになっていた。

 

「やってみれば?」

 

白髪の人に聞かれた。それに対し俺は…

 

「そうですね、やってみます」

 

「え!?ちょっ、本気?」

 

俺は返事することなくそのレーンに向かって行きタッチスクリーンに手を当てる。周りから声が聞こえるが気にしない。カウントダウンが始まりゼロになって俺は走り抜けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結果的にキリトの奴は楽々とクリアした。まぁSAOのトッププレイヤーならこれぐらいは出来て貰わないとな。その後俺達は期せずして手に入った資金でキリトの装備を整えてやった。光剣を見付けた時迷わず買ってたのには吹き出しそうになった。とりあえずさすがに光剣一本じゃ厳しいのでシノンと協議した結果ファイブセブンを薦めて買わせた。おそらく金はすっからかんだろう。

 

「なにからなにまでありがとうございました」

 

丁寧にキリトは頭を下げる。

 

「別にいいわよ。さてそろそろ総督府に行きましょうか」

 

シノンが言うが一つ気付いていないことがある。

 

「なら急いだ方がいい、あと五分だぞ?」

 

キリトとシノンが固まる。銅像より硬そうだな。

 

「……なんでもっと早く言わないのよーーーーーーーーーー!!」

 

「あ、あのテレポート的な手段は無いんですか!?」

 

「テレポート出来るのは死んだ時のみだ」

 

「とりあえず走りましょう!」

 

俺達は総督府に向けて走り出す。俺一人ならここから全力で走れば二分で着くがさすがに置き去りに出来ない。流れる景色の中に見えた物によって一つの策が浮かぶ。

 

「シノン、こっちだ」

 

「え、ちょっと!」

 

「君もこっち」

 

「あ、はい!」

 

そこにあったのはレンタルバギーだ。シノンを後ろに乗せる。キリトは別のバギーに乗った。

 

「行くぞ!」

 

「はい!」

 

俺達はいきなりフルスロットで走る。

 

「うそ…このバギー操作が凄い難しいのになんで乗りこなせるの!?」

 

「ははは…実は昔レース系のゲームをやってたことがあって…」

 

「普通にバイクと同じだ」

 

「いや、違うと思うわよ」

 

呆れた声が後ろで聞こえるがすぐに笑い声に変わる。

 

「あははははははは!ねぇもっととばしてよ!」

 

俺はキリトに目配せをする。どうやら大丈夫のようだ。

 

「了解!」

 

俺達は更にアクセルを上げる。景色が放射線状に流れていく。俺はこの時初めてシノン…朝田詩乃の心からの笑い声を聞いた気がした。きっと今の朝田詩乃が本当の姿なのだろうと思った。いつか自身の強さを知って自信を持てればいつでもこうやって笑ってくれるのだろうか。

 

 

 結果的に二分と少し前に到着した。俺は既にエントリーを済ましているので少し離れた所で待っていた。住所などが見えるかどうか試してみたが当然のように見えなかった。犯人、デス・ガンはどうやって住所を手に入れたのだろうか。未だに見当がつかない。そうやって考えていると二人が近づいてきた。

 

「終わったのか?」

 

「ええ、何とか間に合ったわ」

 

「こっちもです、ありがとうございました」

 

「いいさ、さて行くか」

 

俺達は会場に向かって歩いた。しばらく歩くと大きいホールの様な所に出た。そこでは既に屈強な男たちが自身の銃を点検したり構えたりしていた。

 

「…こいつらバカか?」

 

「バカなんでしょ」

 

「えっと、何でですか?」

 

「相手に手の内晒して対策してくださいって言ってるような物じゃない、だからよ」

 

「なるほど」

 

「あなたも装備は直前にした方が良いわよ、さて行ってくるわ」

 

そう言うとキリトも行こうとするので襟首掴んで引き留める。

 

「ぐえ!」

 

つぶれたカエルの様な声を出した。

 

「なにするんですか!」

 

「お前は浮気をするつもりなのかな?」

 

「え?」

 

「いやー、まさか女の子の着替えを覗こうとするなんて悪い奴だね、()()()()?」

 

「な、なんで俺の名前を……あ!」

 

俺はからかうときの笑顔をする。それで確信したのだろう。

 

「お前シンかよ!分かりづらいアバターにしてんじゃねぇよ!」

 

「やかましい、俺だって好きでこんなアバターになったんじゃねぇ」

 

そこで着替え終わったシノンが戻ってきた。

 

「あれ、シンばらしちゃったの?」

 

「おう、付き合ってくれてありがとな」

 

「別にいいわよ」

 

「えっと…もしかしてグル?」

 

「ええ、そうよ。シンからあなたが男と言うのは聞いていたわ」

 

この言葉を聞いてキリトはorz状態に移行した。

 

「いやー、面白かったぜお前の必死の女装!」

 

「うるせー!」

 

俺は構わず笑ったがシノンは流石に悪いと思ったのか忍び笑いですごそうとした。シノンよ、充分に酷いと思うぞ。取りあえず俺はキリトを引っ張り男性更衣室へと行った。人がいなかったのは幸いだ。

 

「シン、死銃らしいプレイヤーはいたか?」

 

「…いや、まだ見てない。取りあえず予選を勝ち抜いてあっちから接触してくるのに賭ける」

 

「分かった。接触したら報告な」

 

「分かってら」

 

戻るとシノンが一人の男性プレイヤーと話していた。その光景を見た時心が少し痛んだが俺は気付かなかった。また同時に嫌な予感がした。それもこの世界に来て何度も感じたものだ。

 

「キリト、俺少し隠れるわ」

 

「は?何で?」

 

「俺の精神衛生上良くないことが起こりそうで」

 

「?分かった」

 

俺は少し離れた所に行き様子を伺った。どうやら予感的中のようだ。恐らく熱く俺の事を語っているのだろう。余りの熱意に二人は引き気味に、俺はまたかという思いで涙を流す。ああ神よ、なぜ俺にこのアバターを与えたのか。恨むぞ神よ。俺は彼が二人の前からいなくなるまで息を殺し隠れていた。戻ったとき二人はぐったりとしていた。マジですまん。




一つ報告何ですが次の更新は意図的に遅らす事になります。理由は簡単でもう1つの作品が2ヶ月以上更新していないので流石にまずい!と言う事でそちらに暫く集中します。なるべく早く戻って来ますのでこの作品から離れないで頂ければ幸いです。
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