罪背負いし影   作:砂利道

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なんか思った以上に早く書けました。思うように書けるのって改めて良いな~と思いました!


第九撃

一つの嵐をどうにかやり過ごした俺は直後に来た追撃の嵐の渦中にいた。

 

「「あんたの/お前のせいだぞ!」」

 

「わ、悪かったって…」

 

キリトとシノン(尊い犠牲)に現在進行形で責められています、助けて…

 

「助けは無いぞ」

 

「お前やっぱエスパーだろ」

 

もうなにそれチート。

 

「とりあえず大会終わったら奢ってもらうわよ」

 

その言葉に俺だけではなくキリトも口を噤んでしまう。忘れていたわけではないが俺達は文字通り命がけの戦いに身を投じているのだ。シノンのこの一言は当たり前に出来るようで絶対ではない。

 

「…ああ、絶対に奢るよ」

 

何気ない一言にまさか改めて覚悟を決めさせられるとは思わなかった。思いのほか気持ちの入った言葉にシノンは少しキョトンとしている。

 

「そ、そう…期待してるわよ」

 

「おう」

 

生きていればな、と言う言葉は飲み込む。

 

「そういやシンはブロックはどこだったんだ?」

 

「俺か?Aブロックだよ。お前は?」

 

「Fブロックだった」

 

「キリトもなの?」

 

「シノンもFか」

 

「ええ、にしてもシン、あなたまたすごいところを引いたわね」

 

「やりがいがあってよろしい」

 

「どういうことだ?」

 

「Aブロックは別名強者潰し、エントリーが早い言わばトッププレイヤーが集中するブロックなんだよ。その分本物が生き残るがな。前回優勝のゼクシードと準優勝の闇風もこのブロックだった筈だ。今回は別ブロックに闇風は行ったらしいが」

 

そしてゼクシードは現実世界からログアウトしてしまったからいない。

 

「すごい所に入ったんだな…生き残れるのか?」

 

「…それは本気で言ってるのか?」

 

「…悪い、愚問だった」

 

キリトが訂正した理由、それは俺が対人戦ならほぼ無敵という事だ。モンスター相手ならキリトに軍配が上がるがことPvP、PKで俺に勝てるのはあの殺人鬼位だろう。負ける気がしないが。()()もあるし使いたくないが()()()もある。

 

「あなた達すごい信頼関係ね」

 

シノンの言葉に顔を見合わせる。互いに似た笑顔で笑う。

 

「色々あったからな、ホントに」

 

「そうだな、本当に…」

 

「?ふーん、そう…」

 

なんだ?あっちから聞いてきたのに微妙に機嫌が悪くなった気がする。どうかしたのかと聞こうとした時アナウンスが響く。始まるようだ。戦いが。

 

「絶対に生き残るぞ」

 

「当たり前だ」

 

「当然ね」

 

俺達は光に呑まれそれぞれの戦場に転送された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの二人は本当に信頼し合っているようだった。互いを疑わず迷いなく背中を預ける事が出来るのだろう。私はそれに対して少し、ほんの少しだけ嫉妬をした。シャドウはいつも一人、そんな人にただ一人フレンドとして登録され自分は彼にとってそれなりに特別なのだと思っていた。だけど絶対に届かない場所にキリトはいた。だからそれが羨ましかったし、シンに気付いて欲しくなった。私にとってあなたは他とは違う人間なのだと。

 

ーだったら気付かせてやる、この大会で私の“強さ”を見付けてそれを見せつけてやるわ

 

私はその思いを弾丸に込め対戦相手に必殺の弾丸を叩き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 シン、シノン、キリトはともに破竹の勢いで勝ち進んでいった。シンは相手に悟らせず何時終わったのかが分からないように、シノンはどこから撃ったのかが分からないように、それでいて挑発的に大胆に、キリトは常識外れの“弾丸を切り裂く”という芸当で相手を驚愕に叩き落とす。特にシンとキリトは今のところ一度も銃声を鳴らしていない。余りの異常に観客は静まり返る。そしてそんな空間に二人のプレイヤーが空中に浮かぶスクリーンを見上げている。片方には底知れぬ憎悪と荒れ狂う怒りが、もう片方はどこまでも冷淡に、静かに、だが確かな殺意を持って。

 

「ビーター…まさかこんな所で会えるとはなぁ、待ってろよぉ、絶対に殺してやるからよぉ…」

 

男は濁り切った眼を黒髪の長髪、黒瞳の光剣使いに向けている。その男をチラリと赤い目の下で冷たく見やり、スクリーンの中のフードを被った偶に見え隠れする白髪と紫瞳のプレイヤーを注視する。

 

「シン、お前は、俺が必ず、殺す」

 

静かに、だが確かに盛り上がり始めた大会の闇に不穏な影が忍び寄る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は強者がひしめくAブロックをどのブロックよりも最初に制覇した。俺の周りには誰も近づかない。どうやら俺がシャドウと言うのは気付いたらしいがどうやって相手がやられたのかが分かってないらしく不気味がっているらしい。

 

ー普通に近づいて切ったり貫いたりしてるだけなんだけどな…

 

ただその精度が以上に高いだけである。

 

ー唯一プロがいるゲームなら分かるやつがいても良いと思うんだが…

 

俺はスクリーンを見ながらそんなことを考える。スクリーンの中ではキリトとシノンがやりあっている。シノンの銃撃をキリトは真正面から叩き切っている。周りの観客はサーバーに数十丁しかないレア銃の弾丸があっさり切られていることに唖然としているがシノンはあくまで淡々と冷静に対処しながら撃っている。キリトもおかげで今一歩踏み込めていない。

 

「伊達に俺と一緒に戦ってなかったみたいだな」

 

小声でキリト相手に善戦しているシノンを分かりづらい言葉で称える。それでもおそらくこの戦いはキリトが勝つだろう。この世界は確かに殺伐としていて全VRMMORPGの中でも屈指の難易度だろうがやっぱりあのデスゲームとの差は大きい。“死んでもいいゲームなんてぬるい”それがおれとキリトの共通認識だ。あの世界の全てが本物で残酷だった。

 

ー例えば今俺の後ろで殺気を送ってる奴がいたとかな。

 

俺は立ちあがり迷わず進んでいく。殺気の根源にたどり着く。ボロボロのローブを羽織り、フードの中には輝く赤い目が二つ。

 

「よぉ、久しぶりだな死銃。いや、()()

 

「…気安く、俺の名を、呼ぶな。臆病者」

 

臆病者はラフコフ内での俺の呼び名だ。

 

「おーおー嫌われてるようで安心したよ、俺も大嫌いだから丁度いいじゃねぇか」

 

「口が、回るように、なったな。現実世界の、腐った、空気を、吸って、頭が、逝ったか?」

 

「生憎こっちが素でね、お前らみたいな屑連中から離れた後は気分よく過ごせるようになったんだよ」

 

「能天気な、ものだ。これから、死ぬというのに」

 

「俺は死なねぇよ。代わりにお前らが監獄にぶち込まれるだけだ、現実のな」

 

「ほう、()()()と、言ったか。腐った空気を吸っても、犯罪者、としての、考えは、健在の、ようだな」

 

「そりゃお前らの先輩だかんな」

 

「…俺や、ジョニーより、少し、早いだけで、先輩面か」

 

「(ボソッ)…そういう事じゃ無いんだがな」

 

「何を、ぼそぼそと、言っている」

 

「お前らへの悪口だよ、それよりいいのか?こんなに長く話してると〈視〉ちまうぞ」

 

「…すぐに、終わらす、お前を、殺す、ために」

 

「そーかい、なら精々頑張りな。俺としてはそのまま負ける事を願うぜ」

 

「言っていろ、臆病者」

 

そう言い残し死銃…ザザは立ち去って行った。

 

ーあいつ…明らかに強くなっていた。多分討伐戦のPoHクラスには…

 

討伐戦で監獄に入れられてからクリアまで何千、何万と反復練習をしたのだろう。PoHと一緒の時とは挙動も気配の殺し方も殺意も段違いに上手く、強くなっている。

 

ー……()()()きゃ()ならないかもしれない、例えシノンに知られようとも、キリトにぶん殴られようとも。

 

戻る、それは俺が最も忌避している切り札で罪だ。消し去りたい過去で、だけど消えない。拭いたい恐怖で、一生纏わり付く。シノンには強さを見付けたと言った。だがそれは過去を乗り越えたという事ではない。それに俺の強さはまだ未完成だ。俺の強さ、それは憧れだ。俺はキリトやアスナ、リズやシリカ、クラインにエギル、あいつらの様に誰かを支えられるようになりたいという願望だ。俺はいつも周りの奴…特にキリトに支えられてきた。キリトが俺を引っ張らなきゃ俺はとっくに潰れていただろう。だから感謝と共に渇望ともいえる憧れを抱いたのだ。誰かを心の底から支えたい。それが俺の強さ…

 

「…ン、シン!」

 

「ん?おう!?」

 

目の前に黒髪美少女が…じゃなくてキリトがいた。どうやら周りが見えなくなるほどに考え込んでいたらしい。

 

「どうしたんだよボーとして」

 

「…死銃に会った」

 

「!!?(本当か?)」

 

「(ああ、ついでに予想通りSAO生還者だった)」

 

「(…ラフコフか)」

 

「(当たりだ、赤眼のって言えば分かるか?)」

 

「ザザ…」

 

キリトの顔が厳しくなる。恐らくキリトにとっても浅からぬ因縁らしい。

 

「見た限りかなり強くなっていた、恐らく討伐戦のPohクラスだ」

 

「そんなに…」

 

キリトは驚愕に顔を染める。この戦いは厳しいことになるだろう。

 

「キリト、明日の本戦はあの世界と同じだ。死ぬなよ」

 

「…当たり前だ、シンも死ぬなよ」

 

俺達は拳を合わせる。これをやる度に思う、こいつと会えて良かったと。

 

「そういえば決勝はどっちが勝ったんだ?」

 

「見てなかったのか?それは…」

 

「私の負けよ」

 

突然後ろから声をかけられた。

 

「びっくりしたな、シノン。気配の殺し方が上手くなってるがこれ如何に?」

 

「なによその言い方…あとあなたといれば嫌でも上手くなるわよ」

 

なにそれ俺ウイルス?

 

「何故自分を病原菌に例えるのかが分からないんだけど」

 

「俺の周りにエスパーが増えてる件について」

 

いや真面目に何故こんなにエスパーが増えてるの?俺の読心術の価値薄くなってない?

 

「と言うかシン、あなたの周りには規格外しかいないの?へカートの弾を至近距離から避けたあなた然り、キリトも弾丸切るなんて神業見せたのだけど」

 

「キリトは例外、そう言うシノンもあんま動じてないように見えたけど?」

 

「あなたと言う規格外をすぐ近くで見てきたからね、驚きはしたけどすぐに冷静になれたわ」

 

「対処が正確だったからやり難くて仕方が無かったよ。最後なんてとにかく突っ込んで切るの猪戦法だったからなぁ」

 

「お前はそれが一番だろ」

 

「違いない」

 

互いに声を上げて笑う。すぐそばでシノンが訝しげな顔をする。

 

「ねぇシン」

 

「なんだ?」

 

「すごく不躾な質問なんだけどもしかしてあなたはあのゲームに…」

 

「ストップシノン」

 

シノンが言おうとしてる事はもう分かっている。キリトも同様だ。でも今は…

 

「今は話す時じゃない、いつか必ず話す。だから今は聞かないでくれ」

 

真っ直ぐにシノンを見据える。今シノンは聞くべきでは無いのだ、何かを掴みかけているシノンは。

 

「…そうね、ごめんなさい。軽々しく聞く事じゃ無かったわね」

 

「分かってくれればいいさ」

 

そこまで言うとアナウンスが掛かる。どうやら全予選が終了したようだ。

 

「…明日だ、明日で全てが決まる」

 

「…そうね、シン、キリト」

 

「うん?」

 

「なに?」

 

「明日は負けないわよ、あなた達の頭に大きな風穴開けてあげるわ」

 

「…言うじゃないかシノン。受けて立つぜそれ。なぁシン」

 

「当然だ、俺が優勝するさ」

 

三人して不敵な笑みを浮かべる。確かな約束を交わし、俺とキリトは拳を合わせシノンを見る。シノンも少し驚いたようだがその拳を俺とキリトに重ねる。絶対に生き残る。その覚悟を胸に。

 




このGGO編で終わりにしようかなと思っていたんですがアニメのキャリバー編を見て書こうかどうか迷う…
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