罪背負いし影   作:砂利道

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まさか日間ランキングに入れるなんて…
人生どうなるか分かりませんね!

あとオリキャラ出ます!


第十撃

 窓からの日差しで目が覚める。部屋を満たす冷気が意識を起さんと働く。目に映るのはGGO内のホームでは無く見慣れた自分の部屋の天井だ。昨日俺は予選を終えた後寝落ちを敢行しログアウトをした。現在朝の五時半、…早く起き過ぎた。

 

「…走るか」

 

手早く着替え簡単な朝食を摂る。一度外に出れば冬の厳しい寒さが待っている。朝のランニングは日課と言うわけでは無いが早く起き過ぎたり時間に空きがあれば筋トレなどを行っている。鍛えておかないと何かの拍子でリミッターが外れた際に筋繊維が目も当てられない状態になるからだ。

 

「…寒いなぁ」

 

冷やされた頭で思い出すのは昨日の死銃との接触だ。我ながら大胆な挑発に出たと思う。あいつはおそらく本気で俺を殺しに来るのだろう。そして…

 

ーターゲットには朝田さんが含まれている可能性がある

 

どうやって住所を調べ上げたのかは分からないがお隣でGGOプレイヤー、更にはBobにも参戦している。今までに殺された二人に共通するように俺と同じ一人暮らし。

 

ー菊岡に相談してみるか…

 

頭の中で悶々と考えながら半ば自動的に走り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局一時間以上走り続けこの寒さの中汗でビショビショになってしまった。

 

「やばい…風邪引く…」

 

風邪を引いたままでは本戦の方に響く、俺はさっさとシャワーを浴びて体を温める。冷えた体に熱いシャワーが染み渡る。浴室を出てから俺は菊岡に電話を掛ける。

 

『もしもし?どうしたんだい?』

 

何やら遠くから低い機械の音が聞こえる。こいつ今何処にいるんだ?

 

「今回俺に付ける護衛って何人なんだ?」

 

『人数かい?二人だよ』

 

「…倍に増やす事は可能か?」

 

『…いや、すまない。これ以上の増員は出来ないんだ。上が気にしているから君たちに頼んだんだがその上から圧力が掛かってね、仮想課の人員を引っ張り出せないんだ』

 

「どういう事だ?」

 

『僕も良く分かって無いんだがどうやら議員の一人が上層部を抑えていてね』

 

「国が圧力を掛けてるのか?」

 

『いや、あくまで一議員でらしい』

 

「名前は分かるか?」

 

『倉田次郎議員、汚職が騒がれてる人だよ』

 

「なるほど…」

 

倉田次郎、記憶では確か仮想課の敵で敵の最右翼。

 

「どうにかならないか?」

 

『君の要望なら手を尽くすけど…でもどうしてなんだい?』

 

「…死銃のターゲットになってるかもしれないプレイヤーがお隣さんにいるんだ」

 

『!?…分かった、早急に手を打とう』

 

「すまないな、次奢ってもらうときは五個にしといてやるよ」

 

『奢られる前提なんだね…』

 

俺は菊岡との電話を切って普段サバゲーに使う電動ガンをしまってある押し入れを開ける。そこには大小様々な電動ガンがしまってある。だが一つだけ明らかに電動ガンではない物がしまってあった。俺はそれを手に取る。

 

「お前に頼るしか無いよな…」

 

手の中のそれに目を落とし静かにそれをアミュスフィアの側に置いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はコンビニに行って大会前の簡単な食事を買いに行った。どうやってシンやキリト…特にシンに勝つかを考えていながら歩いていると新川君に会った。話がしたいというので帰り道にある公園によった。

 

「とりあえず予選突破おめでとう朝田さん」

 

「ん、ありがとう」

 

「にしても最後の戦いは惜しかったね、もう少しであいつに風穴開けられたのに」

 

「まぁね。でも大丈夫、今日の本戦ではちゃんと大穴開けてやるから!」

 

「あはは、シノンらしいや!」

 

新川君はひとしきり笑うと顔を悲しそうに歪めた。

 

「あーでも何で僕はシャドウに会えないんだろ…」

 

確かにシンは人を意図的に避けているところがあるが…

 

「予選の映像で見れるんじゃなかった?予選前に『シャドウが見れる!』って言ってたじゃない?」

 

「あー、うん。そうなんだけどね…」

 

新川君はそこで一度言葉を切る。するとバツ悪そうに

 

「シャドウの二つ名しか知らないからどのブロックに出てるか分からなくて…」

 

なんともまぁ初歩的なミスだ。アバター名が分からないなんて…いや、シンは徹底的に隠していたから知っている人の方が圧倒的に少ないか。そう思うとシンを知っている私は信頼されてると思い胸が高鳴り顔が熱くなる。…あれ?これって…

 

「朝田さん?どうしたの?顔が赤いよ?」

 

「え?あっ、ううん!何でもない!」

 

「…そう、でも本当に残念だよ。一回で良いから会って話がしてみたい」

 

「う~ん、彼相手には厳しいんじゃないかなぁ…」

 

「だよね…ん?()?」

 

「あれ?言ってなかったっけ?シャドウって男よ、M9000番のアバターって言ってた」

 

あ、新川君固まっちゃった。

 

「……冗談だよね?」

 

「え?いや、本当だよ」

 

「……そっか」

 

「新川君?」

 

「何?」

 

「あ、ううん。なんでもない」

 

今凄い怖い顔をしたように見えた…

 

「朝田さん」

 

「な、何…?」

 

「あのさ、僕と付き」

 

「待って」

 

私は鋭く新川君の言葉を遮る。

 

「今その言葉は聞きたくない。私は強くなりたいの。だからそれまでは聞けない。私が過去に勝てたら聞かせて」

 

「…分かったよ、確かに今言うのは不味かったよね」

 

「ありがとう…」

 

口ではそう言ったけど私は新川君の事はこの町で出来た最初の友達だと思っている。それ以下でもそれ以上でもない。今私は強くなってシンに認められたいだけなのだ。だから告白されてもそれに答える事は出来ないだろう。

 

「じゃあ僕は行くね。本戦、頑張ってね」

 

「当然、絶対に優勝するわ」

 

私達はそれぞれの帰路に着く。これが最後の"友達"としての会話と知ったのはもっと後の事だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シノンとずっと一緒にいた二人、どっちも女の子と思っていたけど黒髪の方、キリトとか言う奴は男だった。でももう一人は女の子と思っていた。シノンは友達が少ない、だから女の子の友達が出来るのは良い事だと思った。その女の子といた時のシノンはとても生き生きとしていて女の子らしかった。その表情が僕に向かなかった事には少し嫉妬したがその顔が見れるだけで良かった。優越感すらある。だってシノンの心の中心にはいつも僕が居るから。なのに、そいつは男だった。許さない、僕のシノンを誑かして、どうせシノンの体目当てだろう。守らなきゃ、シノンにあんな男は相応しくない、シノンに…朝田さんに相応しいのはこの僕だ。あんな男、死んで当然だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 予選一時間前、俺は総督府でキリトを待っていた。話しておきたいことがあったからだ。

 

「悪い、シン。遅れた」

 

「いや、そこまで待ってないさ」

 

「それで、相談ってなんだ?」

 

「ここじゃなんだ、中に行くぞ」

 

俺とキリトは会場内にある個室に入った。

 

「それで?」

 

「ああ、死銃のターゲットの一人が分かったかもしれない」

 

「!?誰なんだ?」

 

「お前も知ってるよ」

 

「…まさかシノンか?」

 

「そうだ」

 

「でもなんで…」

 

「俺もかなり最近知ったんだが実はお隣さんだったんだよ」

 

「…マジか」

 

「マジだ」

 

「でもなんでそれだけでターゲットだって分かったんだ?」

 

「かもしれない、だ。条件が死んだ二人と一致してんだよ」

 

「条件?」

 

「一人暮らしで家の鍵が旧型の電子ロック、加えてGGO最強の女スナイパーの異名も持ち知名度もある」

 

「…なんで死んだ二人が旧型の電子ロックだって分かったんだよ」

 

「菊岡が渡したタブレットに書いてあったろうが」

 

「…読んで無かった」

 

「お前って変な所抜けてるよなぁ…」

 

バツ悪そうなキリトにジト目を向ける。

 

「まぁいいや。それでお前に頼みたいことがあるんだ」

 

「もしかしてシノンの護衛か?」

 

「正解、誰かを守るの一点に関してはお前が適任だ」

 

「バリバリの攻撃専門(ダメージディーラー)なんだけどな」

 

「俺にはお前みたいに銃弾を切るなんて芸当は出来ん」

 

「ピックで撃ち落とすとかは?」

 

「……やった事ないから分かんないが出来る気がする」

 

「剣よりよっぽど難易度高いからなそれ!」

 

ああ、でもだったら銃で撃ち落とした方が良いか、威力的にもその方が良いだろうし。

 

「はぁ、まぁ分かったよ。護衛は任された。シンはどうするんだ?」

 

「全力でザザを見つけ出す」

 

「簡単に言うなぁ…確か直径十キロのフィールドだろ?」

 

「そうだがお前より探すのは得意だし何より隠密行動が得意だからな、誰かに見つかる前に確かめられる。適材適所だよ」

 

「…そうだな。了解、その手筈で行こう」

 

「おう、頼むぞ親友」

 

「そっちもな、親友」

 

俺とキリトは拳を合わせる。信頼の証を見せつけて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新川君と話していた時、シンを思い出して胸が高鳴り顔が熱くなった。いくら友達が少なくても私も女の子だ、それ位は分かる。

 

ーでも違う!これは…そう!強い奴と戦うときの高揚感!だからそういう感情は無い!

 

心の中でそう何度も叫び平常心を取り戻そうとする。しかしそれに夢中になり私は気付かなかった。

 

「シノン」

 

「うひゃう!!」

 

「う、うひゃう?」

 

振り返るとさっきまで必死に心の中で否定していたシンに会ってしまった。するとさっきまで考えていたことがぶり返し顔が赤くなってしまう。

 

「どうした?顔赤いぞ?」

 

「な、何でもない!」

 

…自分は何時からこんな乙女になったのだろうか?自分にはこんな感情など無いと思っていたのに。

 

「そ、そうか…えーとシノン、ちょっと聞きたいことがあるんだが…」

 

私は一つ深呼吸をして心を落ち着かせる。

 

「なに?」

 

「とりあえず来てくれ、キリトを待たせてるんだ」

 

「あ、うん…」

 

二人じゃないのかと落胆してまたそれに自分の気持ちに気付かされもう頭がぐるぐるしてきて大変だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はシノンにキリトと行動してもらうようにお願いするのと大会初参加の人を聞くためにシノンを探していて見つけたのだが、声を掛ければ奇声を発し更には現実世界よりも感情表現がオーバーになるとはいえ見事に顔を赤くしてしまった。

 

ーどこか体調が悪いのだろうか…

 

本戦前にリタイア、と言うのはある意味では望ましいのだがシノンは絶対に良しとはしないだろう。出るというならば万全の体調で出てほしい。

 

「なぁ、どこか体調でも悪いのか?」

 

「え?ううん。体調は万全よ」

 

「そうか?なんかいつもと違う気がするんだが…」

 

「き、気のせいでしょ!」

 

「そ、そうか」

 

おおぅ、力強く否定されてしまった…でもこれなら大丈夫…か?

 

「シン!」

 

「あれ?キリト」

 

どうやらいつの間にかキリトのいる所にたどり着いていたようだ。考え事をすると周りが見えなくなるのは俺の悪い癖だな。

 

「悪い悪い。でだ、シノンに聞きたいことが二つあるんだが…」

 

俺は左手を振りメニューウィンドウから本戦出場者一覧を呼び出す。

 

「この中にシノンの知らないプレイヤーは何人いる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はシンの質問の意味がいまいち掴めないでいた。しかしシン、キリトの目は真剣そのものだった。

 

「何でそんな事聞くのかは分からないけど…五人ね」

 

「それは誰なんだ?」

 

キリトが若干緊張させながら聞いてきた。

 

「えーと…ギャレット、ぺイルライダー、銃士X、それとこれはスティーブン?かな?あとアヴェンジャーね」

 

sterven…唯一読めなかったけどスペルミスかしら?

 

「シン、この中に…」

 

「ああ、あいつがいる」

 

「?何の話よ?」

 

「こっちの話」

 

「こんな変な事聞いてるんだから教えてもらっても良いじゃない」

 

「…ごめん、今は話せない」

 

「どうしても?」

 

「どうしても」

 

「…はぁ、分かったわよ。昨日もそのことで話したししつこくは聞かないわよ」

 

「ありがとう、助かるよ」

 

「それで?もう一つは?」

 

「あー、うん。それは…」

 

どうしたのだろうか、さっきと違って言いにくそうだ。

 

「昨日シノンは俺達に勝つって言ったよな?」

 

「ええ、言ったわね」

 

「邪魔は入って欲しくないよな?」

 

「…それはもちろん」

 

何だろうこの先の言葉が分かった気がする。

 

「だからその~…最後の三人になるまで協力しないか?」

 

なるほどなるほど理屈は分かる、で?

 

「具体的には?」

 

「キリトと行動してもらってその間に俺が片づける」

 

……はぁ

 

「ふざけないで!!」

 

「「で、ですよね~…」」

 

分かってるのに聞いたの?

 

「私はあなた達に助けられなくても生き残れる!甘く見ないで!」

 

さっきまで浮ついた考えが頭にあったけどもうそんなもの吹き飛んだ!絶対に風穴開けてやる!

 

「本戦で首洗って待ってなさい!その頭吹き飛ばしてやる!」

 

「あ、シノン!」

 

私は二人に背を向け歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…どうするんだ」

 

「…どうしようかね」

 

俺とキリトは半ば予想していたがそのまんまの結果になってしまったので軽く放心してしまっていた。

 

「プランBでいくか」

 

「ええ~マジで?」

 

「シノンの安全には変えられないだろ」

 

「そうだけどよ…」

 

プランB、それはシノンが協力を断った場合を想定した作戦だ。ちなみに協力してくれた場合はプランAとなっている。内容は役割を逆転させてキリトが探索、俺がシノンの護衛と言うものだ。しかしばれる訳には行かないので身を隠し影ながら守る、という難易度高めの作戦だ。しかもサテライトスキャンもあるので十五分ごとに違和感のない距離まで離脱するしかない。要約すれば…

 

「そんなストーカーみたいなマネしたくねぇなぁ…」

 

これが俺が渋っている理由だ。仕方が無いとはいえ犯罪者もどきになるのだ。

 

ーまぁ犯罪者だけどよ…

 

心のどこかで今さら、と考えているので余計自分に幻滅してしまう。

 

「まぁがんばれ!」

 

「お前面白がってるだろ!」

 

もうこうなったら徹底的にやってやらぁ!!(自棄)




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