バレットオブバレッツ/BoB本戦開始五分前。シンとキリトは作戦の最終確認を行っていた。
「ザザはボロボロのフード付きローブを被っていると…」
「ああ、特徴的な赤目はそのまんまだ」
「そこまでこだわってんのかよ…」
「お前も黒こだわりじゃねぇか」
「いいだろ、好きなんだから!」
冗談を交えながらも真剣に話し合う。本来なら冗談は無い方が良いのかもしれないがこうでもしないと二人は緊張に押し潰されてしまいそうになる。しかし二人とも決して折れない芯がある。“自分の手で決着をつける”その思いを心の中心に据え支柱とする。だがシンはもう一つ絶対に、その支柱よりも大事なものを心に突き立てていた。“絶対にシノンを守りきる”何故この思いが心の中心にあるのかシンはまだ分かっていない。だがそれはかつてキリトがシンを救い出したという事と同じくらいシンにとって大きな変化のきっかけとなる。
「とにかく見つけたら合図してくれ」
そう言ってシンはキリトに発煙筒を渡す。
「これ他の奴が寄ってこないか?」
「その分ザザも動きにくくなるはずだ」
「なるほど」
キリトは発煙筒をアイテムストレージにしまう。
「まぁ俺は良いとしてだ、シンは大丈夫なんだよな?」
「当たり前だ、隠密行動で俺の右に出る奴はいないぜ?」
「俺結構な割合でお前見つけてる気がするんだけど」
「それはお前の感覚が鋭すぎるだけだ!」
キリトや、お前も結構なチートぞ…
「じゃあ
そうやってキリトは自分の胸を差す。
「…大丈夫だ、菊岡から依頼受けた時から腹括ってる。心配しなくていい」
「…そうか」
キリトはまだ心配そうな目をシンに向ける。
ーお前はやっぱ優しいよな、自分も同じ罪が圧し掛かってるのに俺の心配をしてくれるなんて
シンは改めてキリトに深い感謝の念を抱いていた。だからこそ固く誓う。
ーだから絶対に死なせたりはしない、俺が命に代えてでもキリトとシノンを守り抜く…
静かに、決して揺らぐことのない意志でシンは自分を奮起させる。
自分の指がしっかりと動くかを確認する。…問題無い。何時でもあの二人に風穴を開けられる。
ー私は一人でも生き残れる!それを証明してあげるわ、シン…!
私は装備の点検を余念なく行う。おそらく自分は最後の数人には生き残れるだろう、だがキリトとシン…特にシンに勝つには並大抵の実力じゃ撃たせてもくれない。だからこそ使えるものはとことん使う。私はもう一度アイテムストレージを開き持ち込むアイテムを再度確認をする。予備の弾倉に回復ポーション、シン対策に麻痺解毒のポーション。そしてシンにもらった私に最適なある
ー例えそれがシンからの初めてのプレゼントだとしても…
私はそれを実体化させ胸に抱え込む。そうすればシンの力が私に流れてくる気がした。シンに勝つためにシンを頼る。矛盾しているが私はそれでもいい。
「絶対に勝つわよ、シン…!」
でもその時私は気付かなかった、大きな悪意が私を包み込んでいた事に。
それぞれの者がそれぞれの思いを胸に戦いに身を投じる。ある者は過去と決着を付けるために、ある者は自身に屈辱を与えた者に復讐するために、ある者はかつて殺せなかった者を殺すために……ある少女は自身の強さを見せ付け心惹かれつつある者を見返すために、ある青年は自らの贖罪と断罪、そして守る為に戦う。様々な思惑が交錯する最強決定戦、バレットオブバレッツが今始まる…!!
転送された場所は廃墟地帯だった。フィールドの中央に位置するここは一つの巨大な廃墟で身を隠すには最適な場所でもある。
「すぐ動くけどな」
俺は携帯端末でそれぞれの居場所を確認する。15分ごとに居場所を送信してくれるサテライトは始まった直後はそれぞれのスタート地点が写される。
「さてと、シノンは…ん?」
背後から嫌な予感がする。ザザ…ではない様だ。
ーなら問題無い
直後銃弾をばら撒く音がする。俺は
「…はい?」
「残念でした」
俺は高速移動をして敵の視界から消える。向かう先は敵から少し離れた壁だ。
「は、え?どこいった!?」
俺はそのまま速度を落とさず壁を駆け上がる。と言ってもこの世界じゃどう足掻いても7メートルが限界だ。俺は5メートルほど駆け上がり敵の真上に跳躍する。相手はまだ気付かない。そして一刀二閃。首と胴を切り落とし、音も無く着地する。
「相手が悪かったな、お疲れさん」
三つに分かれた敵に一言、可哀想な事に開始三分でDEADタグがついた敵にとりあえず合掌。俺はとりあえずその場を離脱して携帯端末を確認する。写るのはスタート地点だが十分だ。
「シノンは…森林エリアか、鉄橋に向かうかな?間にひぃふぅみぃ…四人。これなら減らしながらでも行けるな」
俺はシノンが潜むと予測する森林エリアに向かって走り始めた。
始まっておよそ三十分。スタートから合わせて三回目のサテライトスキャンだ。確認するとタイミングよくこちらに二人のプレイヤーが走ってきていた。名前を確認すればシンと出会う切っ掛けになったスコードロンのリーダー、ダインだ。私は冷静にこちらに来るときに通るであろう鉄橋にヘカートを向ける。ダインはどうやら追いかけられているので意識を追いかけている方に向けるはず、その隙に不意打ちで弾丸を叩き込む。そう言えば追いかけているのは誰だろうと思い見てみると
「ペイルライダー…」
シンとキリトが聞いてきた初参戦のプレイヤーの一人。どんな姿でどんな装備なのかは分からない。
「でも関係ない。どんな奴だろうが私の標的に変わりはない」
私は獰猛な笑みを浮かべ鉄橋を見据える。だが、
「!!誰!?」
私は背後に気配を感じ腰のH&KMP7A1を抜き背後に照準を合わせようとするが、
「あ、あれ?」
そこには誰もいなかった。
「おかしいわね、今確かに…」
そう、確かにいたはずなのだ。シンといた事により今の私は集中すれば半径十メートルならスキル無しでもいるかいないか位は分かるようになった。それで気配を感じたのにそこにはいない。すると
パァン!
「え?あっ!しまった!」
私はスコープを覗きこみ鉄橋を見る。そこには仰向けに倒れDEADタグを浮かべているダインとショットガンらしき物を構えているぺイルライダーと思われるプレイヤーがいた。
「狙撃のタイミングを逃したか…」
だが次の瞬間ぺイルライダーが右に吹き飛んだ。
「な!?狙撃!?一体何処から!」
ぺイルライダーが吹き飛んだ方向からすれば左の方向にいるはず。慌てて左を確認するがそこには錆びれた鉄橋の一部と川のみ。
「一体…」
再びぺイルライダーの方にスコープを合わせるとそこにはいつの間にかボロボロのフード付きのローブを着たプレイヤーがいた。
「何時の間に…」
しかしどうして起き上がらないのだろうか、そう思いぺイルライダーを注視すると
ー電磁スタン弾!?そんな高価な物をプレイヤー相手に使うの!?
余りの無駄遣いに驚愕しているといきなり横から声が聞こえた。
「シノン、撃て」
心臓が止まるかと思った。そこには双眼鏡片手のシンがいた。それも今までで一番切迫した顔で。
「い、いつから…」
「それは後だ!早く、早くあのボロマントを撃ってくれ!」
余りの気迫に私はただ言われるままにボロマントに銃弾を叩き込まんと引き金を引く。しかし
「なっ…」
ボロマントは当たる前に体を逸らしその弾丸を避けた。
「あの野郎既にこっちを視認してやがった!」
スコープの先ではボロマントがキリスト教の様に十字を切っていた。そして腰から一つの拳銃を取り出す。
ーどういうこと?倒すならさっき使ったスナイパーライフルの方が良いのに…
弾代をケチっているのだろうか?
「やめろ…」
「シン?」
「やめろ!
ーザザ?
シンは立ち上がり大声を上げる。まるで誰かが殺すのを止めようとするように。そして
「あ…」
ぺイルライダーがボロマントの放った弾丸を胸に受けた。でもHPはそこまで削られていない筈だ。なのに
「ちくしょう…」
シンはなんでこんなに悔しそうに顔を歪めるのだろう。
「シン、なんでそんな悔しそうにするのよ。今すぐにでもぺイルライダーは起き上がって反撃するはずよ?」
私の言葉の通りぺイルライダーは即座に起き上がりボロマントにショットガンを押し当てる。だが何時まで経っても銃声が響かない。そしてそのままショットガンが手から落ちる。空っぽの手は胸に向かい苦しそうに握る。その瞬間ぺイルライダーは消えた。回線切断のようだ。
「なに、今の?あいつは撃ったプレイヤーをログアウトさせれるの?」
「違う」
シンが断言した。
「そんな生易しいものじゃ無い」
「…どういうこと?」
「あいつは、死銃は今さっきぺイルライダーを操っていた人を
私はシンの言葉に凍りつく。頭ではありえない、与太話だと否定できる。でも体が、心が本当の事だと叫んでいる。逃げろ、この場から、この世界から、シンと一緒にいて知らずに鍛えられた直感があのボロマントと関わるなと警鐘を鳴らす。
「シンは、知っていたの?」
もしかしたらキリトと二人で話していたのはあのプレイヤーの事だったのかもしれない。
「…すまない、本当なら大会前に話すべきだった。その上で辞退してもらいたかったんだ」
当然だろう、そんな危険な事になっているなら止めようとして当然だ。
「でも俺はシノンの思いを優先してしまったんだ。本当に、心の底から強くなりたいと思っていた君の思いを」
そこまで考えてくれていたのか。私の思いを第一に考えていてくれた。それはこの戦いで私は強くなれるという信頼なのだろうか。
「でもすまない。シノン、お願いだ。頼むから大会が終わるまで隠れていてくれないか?俺は君を失いたくない」
その言葉に私は固まる。隠れる。それは逃げてくれと同じ意味だ。また逃げなきゃならないのか?
ーいや、私は、私は…
「あなたはどうするの?」
「…俺は奴を追う。これ以上被害を出さないように」
やっぱりだ。
「私も戦う」
「シノン!」
「私は逃げる為にここにいるんじゃない!!」
「シノン…」
「それに危険なのはあなたも同じでしょ?」
シンは項垂れ一つ深呼吸をした。
「…分かった。でも絶対に離れるな」
「場合によるわね」
私は獰猛に笑う。
「言うと思った」
シンが拳を付き出す。私はそれに拳を重ねた。
「てか結局俺達と組むんじゃん」
「そこには触れないで」
何だろう、前の話であんだけシノン拒否してたのに掌返しちゃうの…状況が状況だから?誰か文才くだせぇ…