罪背負いし影   作:砂利道

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砂利道シリーズ一斉投稿!!(大変だった…)


第十六撃

 俺とザザ、互いの全身から闘気、怒気、敵意、殺気が迸る。何でも無いように話していたが俺はザザ、ジョニー・ブラック、Pohの三人が大嫌いなのだ。それこそトラウマの事を忘れかける程に。

 

「シッ!!」

 

「フッ!!」

 

二つの銀閃が幾度と無く交差する、交差してしまっている。

 

ーコイツ、俺の動きを理解してやがる…上手く死角に入る動きだけ潰してる!

 

俺のスタイルなら相手は視界に入れることすら出来ずに俺に倒される、だがザザは俺のその動きに入る為の誘導を読み潰し、反撃をする。今までそんな事が出来たのはPohとキリトの二人だけだ。過去にアスナとやり合った事があったが反応も出来ていなかった。キリトの場合は俺と同等の直感と俺以上の反応速度で適応し、Pohの奴は的確に俺の行動を先読みしていた。ザザの奴は恐らくSAO時代に俺の動きを見たことがあったのだろう、それを牢獄(ジェイル)の中で何千回と反芻し、さらに予選の動きを更新して照らし合わせている。恐るべき執念だ。

 

「どう、した?俺を、殺す、のでは、無いのか?」

 

「そうしたいのは山々だがお前さんの才能の無駄遣いのせいで出来ねぇんだよ」

 

俺が苦々しく言うとザザは嬉しそうにシュウシュウとマスクから息を漏らす。

 

「ならば、そのまま、俺に、殺されろ!」

 

ザザの腕が霞み俺の心臓を捉えようとする。

 

「嫌だね、だからお前に見せてないもので逆に殺してやるよ」

 

俺は死角に入る事を止め攻撃をパリィして距離を取る。

 

「俺が、見ていない、ものだと?」

 

「そうだ、特別に見せてやるからそのまま殺られろ」

 

俺は息を5秒吸い、4秒吐く。4秒吸い、3秒吐く。それを続けザザ以外のものを一切排除する。

 

「そんなもの、待つ訳が、無いだろう」

 

ザザの体が低く沈み這うように俺に肉薄する。そしてエストックが俺の体を貫こうとする。が、

 

「何!?」

 

その攻撃は簡単に躱される。当然だ、俺はそう来ると()()()()()

"同調"(トレース)、俺が人の行動をどこまでも見続け、読心術によって相手の行動に対して予知に近い予測を行いそれに対応する。対人戦においてチートともとれるシステム外スキルだ。ただしこれにはそれなりのデメリットがある。一つは常に相手を視界に捉え続けなければならない、もう一つは限界まで集中するため外部からの攻撃に咄嗟に反応出来ない。つまりは一対一限定の技術だ。だが今ならこのデメリットはハンデにならない。

 

「こっから先は俺の領域だ、お前はなす術も無く俺にやられる」

 

そうして俺は一方的な蹂躙を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだよこれ…」

 

観客席で見ていたプレイヤー達はゲームではありえない程の殺気を目の前のモニターから感じ取り戦慄する。それほどまでにシンとザザ、二人の戦いは真の殺し合いだった。

 

 

 

「これがシンさんなんですか…?」

 

ALOの一室でキリトとシンの仲間であるシリカはポツリと呟く。だがその呟きに答えられる者はいない。SAOにいた者ですら目の前のモニターから感じる殺気に息を呑む。それほどまでに元最凶の殺人ギルドの二人は殺し合いに身を投じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時を遡り、シンとザザが接敵した頃もう一つの戦場で戦いが始まっていた。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

キリトは体に突き刺さる弾道予測線を全てなぞり飛んできた弾を切り落とす。

 

「そこかぁ!」

 

キリトはなにも無い虚空に向かって走り出す。中継を見ているプレイヤーにはなにも無い空間からいきなり弾が放たれそれを切り落とした様にしか見えなかった。だがキリトはそこにプレイヤーがいることを確信していた。

 

「この時を待ってたぜぇ、ビイィィィタアァァァ!!」

 

キリトが走り出した方向からぼろぼろのローブを纏ったプレイヤーが姿をあらわす。そのプレイヤーはよほどSTRが高いのかアサルトライフルを片手で一丁ずつ持っている。だが同時に撃つのではなく片方ずつ撃ち弾倉を絶やさずに交換している。つまり常に銃弾がキリトを襲うのだ。それでもキリトは止まらずに進み続ける。その様はまさに鬼神、いくら弾が襲おうが全てを薙ぎ払い、進む。流石に全力疾走は出来ないがそれでもかなりの速度で近づく。なまじ遅い分ジワジワと恐怖心が襲う。だがプレイヤー…アヴェンジャーは多少怯むがそれだけだ。それにキリトは違和感を覚える、しかし全てを切り裂く積もりで駆ける。だが、

 

「死ねぇぇぇぇ!!」

 

アヴェンジャーは突然キリトの足元に銃口をずらす。地面に弾丸が着弾した瞬間、

 

ドオォォォォォン!!

 

「な!?」

 

地面が爆ぜた。

 

「ヒャハハハハハ!!いくらてめえが銃弾を斬ろうが関係ねぇんだよ!この周囲には何十個っていう地雷が埋まってんだからよぉ!」

 

煙の中から何とか直撃を免れたキリトが姿をあらわす。

 

「ゲホッ、成る程な…だからその余裕か」

 

「俺は今までずぅっとこの時を待ってたんだぜぇ…こうやってお前を一方的に蹂躙できるのをよぉ」

 

「そこまで俺が憎いか、()()()()()()

 

かつての…SAO時代の名で呼ばれ男は口角を邪悪に上げる。そう、この男、クラディールはかつてキリトがヒースクリフに決闘で敗れ団員となったときの研修でキリトを亡き者にしようとした。その前にクラディールはキリトとアスナに一方的な逆恨みをしていて三流の小悪党ぶりを発揮していた。そしていざキリトを殺そうとしたときアスナに止められ一方的にやられた。そして命乞いをしてアスナが怯んだとき手元の剣でアスナを殺そうとした。ここまでは正説と同じだがここから先はシンの介入により変わった。アスナが殺されかけたとき事前にアスナから連絡を受けていたシンは間一髪間に合いクラディールの装備のみを完全に破壊し牢獄に叩き込んだのだ。

 

「お前とあの臆病者があのとき素直に殺されてればあの女は今頃俺に服従していた筈だった…それを邪魔してくれたからなぁ…」

 

「例え俺があのとき死んでいたとしてもアスナはお前の物にはなってなかったよマヌケ」

 

「黙れガキィ!!」

 

キリトの安い挑発に乗り銃を乱射する。キリトは全てを切り裂くが足元には地雷が埋まっているため攻めに転ずることが出来ない。だがクラディールも弾倉を無限に持っている訳ではない。キリトが押しきられるか、銃弾が撃ち尽くされるか、どちらの精神が長く持つかの勝負となり戦況は停滞した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「チィッ!」

 

「どうしたよ、当たってないぜ?」

 

俺は読心術の裏技たるシステム外スキル"同調(トレース)"によってザザを手玉に取っていた。手に取るようにその動きが読める。攻撃をしようものなら全く同じ行動を取り相殺し、距離を取ろうとすれば意図的にタイミングをずらしその意味を無くす。ザザは今まさに俺の手のひらで踊っていた。そして俺はザザの行動力を奪うため足を切り落とそうとするがその瞬間、

 

ドオォォォォォン!!

 

「うお!?」

 

突然の事に俺は一瞬動きを鈍らせた。そしてその隙にザザは透明化する。

 

「ッ!しまった!」

 

「成る程な…常に、視界に、入れて、なければ、ならない、のか」

 

俺はザザの姿を見失い周囲を見渡す。足跡があれば追える、だがそこで足跡が一人分しかないことに気付いた。

 

「無駄だ…"フローターシューズ"、足跡は残らない」

 

「ほんとどこからそんな攻略サイトにすら載ってない品を見つけ出すかな!?」

 

あのマントと言い奴の装備は最新鋭過ぎる。厄介極まりない。

 

「そろそろ、時間、だな」

 

「何?」

 

その言葉を聞いた瞬間背後から何かが飛んでくる気配がした。咄嗟に避ける。それは野球ボールサイズの灰色の球体だった。

 

ーグレネード!?この距離だとアイツも巻き添えだぞ!?

 

だがそれは閃光を放たず煙を吐き出した。

 

「クッソ、スモークグレネードかよ!この大会大活躍だな!」

 

俺は気配を追うが近くにザザの気配を感じ取れなかった。

 

ー奴はさっき"時間だ"と言った。一体何の…

 

そこまで考えて一つの考えにたどり着く。それは笑う棺桶(ラフィン・コフィン)に所属していたからこそたどり着いたもの。

 

「あいつまさか!?」

 

俺は全速力で走り出す。向かう先はキリトのいる戦場だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は攻め込めないまま弾丸をひたすら切り裂いていた、既に千は斬っただろう。正直集中力の限界が近い。

 

「ちくしょう!さっさとくたばれ!」

 

だが余裕が無いのはアヴェンジャー…クラディールも同じらしい。残弾が残り少ないのだろう。ならば耐えきれば俺の勝ちだ。さっきからちょこちょこ動いて意図的に撃つのを避けてる部分を見付けていた。そこさえ避ければあいつに辿り着ける。俺は集中力を振り絞り耐える。そして遂に、

 

カチッ、カチッ

 

「なっ!?」

 

弾切れを起こした。俺は一気に距離を詰める。

 

「ヒッ!く、来るなぁぁぁぁぁ!?」

 

「これで終わりだ、クラディール!!」

 

俺はソードスキルのヴォーパルストライクを叩き込もうとして…

 

ドスッ

 

「は?」

 

俺は突然全身の力を失い倒れこむ。何が起こったのかと確認すると首元に違和感があった。かつて自身の左手に打ち込んだのと同じ感覚、ピックだ。それもパラライズ付きの。

 

「どこから…ぐっ!?」

 

「この!焦らせやがって!」

 

クラディールは俺の体を蹴っていた。何か体術系のスキルでも会得しているのか僅かにHPが減る。

 

「ハァ、ハァ、まぁいい。これでじっくりと殺せる。お前を殺した後はあの女で遊んでやるよ、お前の目の前でな!」

 

「!お前!?」

 

「ヒャハハハハハ、精々悔しがりな!」

 

そう言って俺の懐をまさぐりfivesevenを取り上げ俺の頭に照準を合わせる。この距離なら俺のHPは削りきられるだろう。

 

「ちくしょう…」

 

「死ねぇ!!」

 

そう言って引き金が引かれ…

 

「あ?」

 

なかった。

 

「な、んで…」

 

クラディールは俺の目の前で倒れていた。同じ様に首元にピックが刺さっている。すると視界に足下が現れた。

 

「おい、これはどういう、事だ…」

 

「お前は、元々、捨て駒だ。いや、生け贄、か」

 

「な!?どういう事だ!」

 

「こう言う、事だ」

 

そして目の前の足の本体、ザザは黒い拳銃を取り出す。

 

「お、おい、冗談だよな…?だ、だってそれは本当に…な、仲間だろ俺らは!」

 

「ラフコフに、仲間は、いない。いるのは、駒と、それを操る、人間、だけだ」

 

ザザは十字を切った。

 

「止めろ…」

 

俺は何とか声を絞りだし体を動かそうとする。だが律儀にシステムは俺の体を拘束する。

 

「黒の剣士…お前は、コイツの、後に、ちゃんと、殺して、やる」

 

そしてザザは引き金を…

 

「止めろぉぉぉぉ!!」

 

凄まじい怒声が響く。目だけを動かすとシンが右手に3本のピックを持って独特な構えを取っていた。体術スキルと投擲スキルがカンストすることで開放される投擲系最上位スキル"トリシューラシュート"。破壊神の持つ槍の名を冠する最強の投擲術だ。一度跳ね上がり空中で体を捻転させその勢いを使い投げる事によりそのピックは音速を超える3つの弾丸と化す。システムアシストがないので流石にオリジナルには届かないがピックは恐るべき速度で放たれた。だがザザは俺の体を足でかち上げ自身の盾にした。

 

「グハッ!こ、のぉ!」

 

俺は意地で体を反らし何とか躱そうとする。

 

「グッ!?」

 

結果一つは避けきれザザに命中したが残りの2つを食らってしまった。少なかったHPが削りきられ本当に体が動かなくなってしまう。

 

「後は、頼むぞ…」

 

俺はそこでアバターにDEADタグを付けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

黒の剣士め、上手く避けたな。刺さったのは左腕、支障は無い。

 

「喜べ、贄、お前は、死銃の、伝説の、礎と、なれる」

 

「ふざけんなちくしょおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

俺は引き金を引き、飛び退く。臆病者が突っ込んできたからだ。間一髪だが弾丸は命中した。つまり、

 

「ガッ、ぐ…あが…」

 

麻痺は解けたのだろう手でのろのろと胸を掴む。そして、

 

ブツッ…

 

回線は切断された。今頃現実世界でのこいつの体は物言わぬ死体になっているだろう。

 

「後は、お前、だけだ」

 

この場所はあいつに命令して作らせたエリア、罠作成スキルの上位、地雷作成。その地雷をここには何十個と埋めさせた。俺のマスクには熱探知機能がある、どこに埋まっているかは一目瞭然なので踏む心配は無い。

 

「…?」

 

どういうことか一切の反応が臆病者から出ない。放心しているのだろうか?だが次の瞬間、

 

ザンッ!!

 

「なっ!」

 

左腕が飛んだ。慌てて後ろを向くとそこには幽鬼の様に佇み脚を構成するポリゴンが乱れている臆病者の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キリトがやられた、誰がやった?分かってる、俺だ。俺がとどめを刺した。親友に手を掛けた。

 目の前で人が死んだ。手の届く距離で。誰なら助けられた?俺だ、俺なら助けられた。

 まただ、また見殺しにしてしまった。罪を重ねた。

 俺に意味があるか?意義があるか?理由があるか?資格があるか?キリトの親友を名乗る資格が、シノンを想う資格が。

 いや、無い。そうだ、俺には何も無い。ならば止めよう。戻ろう、元の俺に。全てを諦めていたあの頃に。

 

 

 

 

 

 そこで俺の意識は、張り詰めた糸が切れたように、ブレーカーが落ちたように、昏い海に沈むように、張りぼてから中身を全て抜き、いくら振っても何も発さないただの人形(人殺し)と化した。




キリトが目立たないけどチートっぷりを発揮したぜ!千発斬るてあーた…
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