罪背負いし影   作:砂利道

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感想にてとても嬉しい言葉を頂いたので、そんな場合ではないのですが書いてしまいました!あとがきでよく見る読者の力を糧にの意味が分かった気がします。すごいです、読者パワー


第二撃

私は現在絶望の淵にいた。理由は簡単だ。1時間前、私は次のBobの有力候補ダインの情報を得る為彼のスコードロンに潜っていた。今回の彼らのターゲットはモンスター狩り専門スコードロン。待ち伏せからの襲撃とニュービーでも出来るような幼稚な作戦だ。内心軽い失望と呆れていたのだがいざ作戦開始というときターゲットがいきなり殺られたのだ。そこからは正に地獄。ターゲットは全滅、こっちのスコードロンも即座に殺られた。私は生き残った三人のメンバーと共にその襲撃犯に一矢報いようと戦ったのだが呆気なく三人が殺られ、私も追い詰められしかも最後にデコピンで終わらせられたのだ。いや、ここまでは良い。負けたのなら反省して次に活かせば良いのだから。最悪なのは

 

 

 

 

私の半身である愛銃、ヘカートⅡがドロップとして相手に獲られてしまったのだ。

 

 

 

SBCグロッケンで蘇生してその事を知ったとき私は目の前が真っ暗になってしまった。もうこの世の終わりと本気で思っていた。そして今私はGGO内の酒場にてカウンターに突っ伏しながら最後の希望であるオークションを覗いていた。あれだけレアな銃なのだ、オークションに出される可能性が高いと思い既に一時間。…全く見付からない。

 

「フ、フフフフフフ……」

 

もう私は強くなれないのかもしれない、一生過去に怯え続けるのだ。その時私の肩が叩かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、さっきの女の子を探しているのだが全く見付からない。あのあと俺の出せる最高速でグロッケンに戻ったのだがその子はとっくにそこから離れていた。それからかれこれ一時間、人混みが苦手な俺にはそろそろ限界である。この酒場で最後にしようと扉をくぐると妙に店内の雰囲気が暗いと感じた。心なしか客も異常に少ない。この時間帯はまだまだ潜っている人が多く賑わっているはずなのだが…そう思い店内を見渡すと一番奥のカウンターにその、なんというか…そこだけ奈落のような場所があった。そしてそこにいたのは

 

「あっ、いた」

 

その子のあまりの落ち込みように物凄く罪悪感に苛まれながら近付いていき肩を叩いた。その水色の髪の子はゾンビのようにゆっくりと振り返った。

 

「あんた1時間前にスコードロンを襲おうとしただろ」

 

その子はフードに隠れた俺の顔を見ると目を見開き勢いよく立ち上がった。

 

「あ、あんた…あの時の!」

 

おおぅ、すごい睨まれとる。

 

「返しなさい私の「返すよ、ほら」ヘカートを!ってへっ?」

 

俺はメニューを開きそのヘカートとやらを実体化させ渡した。その子はいきなり現れた恐ろしく長いライフルを空中でキャッチした。

 

「えっと…なんで?」

 

その顔は信じられないと如実に表していた。

 

「何だ、返して欲しくなかったのか?」

 

「そうじゃなくて!なんで返してくれたのかって事!!」

 

「…君が本気でその銃と強くなろうとしていたから」

 

「……」

 

「それと君の目が気になったから」

 

「目?」

 

「…気にするな、それじゃあ返したぞ」

 

俺はその場から立ち去ろうと踵を返した。

 

「ッ!待ちなさいよ!」

 

「…なんだ?」

 

「このままじゃ私の気が済まない、何か奢らせなさい!」

 

「…別にいいんだが」

 

「私が良くないのよ!」

 

これはめんどくさい事になったな…こういう時は素直に従うか。

 

「分かったよ、ご馳走になろう」

 

「そうして」

 

俺はカウンターのその子の隣に座った。ふとこの子を困らせて見ようと思った。直感でからかったりしたら面白いだろうなと思ったのだ。

 

「好きなの頼んで良いわよ」

 

「それじゃあ…」

 

俺はお店のメニュー画面の上から一番下までなぞった。

 

「はぁ!?あ、あんた全部食べる気!?」

 

「好きなの頼んで良いんだろ?」

 

「言ったけど普通相手の事を考えないの!?」

 

「大丈夫だ、全部食える」

 

「そういう事じゃない!てか人間なのあんた!?」

 

これは思ったより良いぞ、クライン並みにからかいやすい。俺の隣で彼女は「ここ安さが売りだけど払えるかしら…」と呟いていた。

 

「別に良いよ、半分払うから」

 

「はっ?それじゃあ…」

 

「じゃあ払えるの?」

 

「……」

 

彼女は沈黙してしまった!

 

「代わりにあんたの名前を教えてくれ」

 

「…シノンよ」

 

一瞬教えるのを躊躇ったな。

 

「ねぇ、あなたって噂のシャドウなの?」

 

俺は出された料理を口に含みながら頷き返した。

 

「そ、そう…」

 

どうやら俺の食べっぷりに少し引いているようだ。

 

「…一つ聞きたいんだけど」

 

「…ングッ、何?」

 

「あなたはどうやってその強さを手に入れたの?」

 

「…強くはないぞ、確かに技術は周りより優れてるだろうけど」

 

「嘘」

 

俺はシノンを見返した。その目にはすがる様な色が宿っている。その奥にはかつて俺も抱えていた、今も取り除けていない果てしない恐怖が宿っていた。

 

「…自分で考えろ」

 

「教えてよ!私はそれを手にするために…」

 

「なら聞くぞ、君は目の前で自分の知る人、もしくは大切な人が、自分が殺されかけていたら君は迷いなく引き金を引けるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

知っているのか?私はそう思い呼吸を忘れた。自分のあの血に濡れた忌々しい過去を知っていて聞いているのかと。

 

「その答えを出せたら教えてやるよ、ご馳走さま」

 

「えっ、あ…」

 

私はカウンターを見た。…優に一メートルを超える皿の柱が2つ。

 

ー本当に食べたのか…

 

「そうだ、ネームカードくれよ」

 

「えっ?うん…」

 

私はメニューからネームカードを選択し彼女に渡した。

 

「ん、ほら」

 

彼女もネームカードを渡してきた。

 

「基本木金土に潜ってる。用があるなら連絡しろ、じゃあな」

 

「あっ、ちょっと待って…」

 

彼女はそのままログアウトしてしまった。

 

私は伸ばした手を下げ手の中のネームカードを見た。

 

「……えっ?」

 

ー口が悪いなとは思ってたけど…

 

「あ、あれで男なの…?」

 

私は呆然としながら名前を見た。sin…罪。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を開ける、一つ大きな伸びをして立ち上がり冷蔵庫から作ってあったハンバーグを温め、お茶を含む。

 

「ふぅ…」

 

ーなんなんだろうな、俺があいつら以外にこんなに話すなんて、というか関わるなんて。

 

俺は自分自身驚いていた。俺を救ってくれたあいつらならともかく今日初めてあった、それも敵だった奴にここまで関心を持ったことに。

 

ーそれに何故か初めてあった気がしない…

 

「あっ、そういやトイレットペーパーなかった」

 

しょうがないから食べた後買いに行くか。俺はさっさとハンバーグを食べ終え冬の寒空の下へ出た。三年前から暮らしているアパートを降りる。ふと隣の部屋の表札を見た。手書きらしい字を横目で。

 

 

 

 

"朝田"

 




次回は解放の英雄が出る予定です!
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