そして私が張った伏線にあなたは気付けるのか!?あっ、感想には分かっても書かないで下さいね。
それと前もって言います。シノンは今回出ません。
今日は和人に言われた日曜日だ。だが俺は予定より五分ほど遅れている。
ーまさか目覚ましの電池が切れていたとは…
本来ならゆっくりとしてから行くつもりで一時間前にセットしてあったのだが見事に寝坊、朝飯も食べず急いで向かっている。どうせ菊岡の事なので“呼び出した代わりに僕が驕るよ”とか言うに決まっている。その時は遠慮なく食べさせてもらおう。そして俺は高級そうな喫茶店についた。
ーなんで話すだけでこんな所に呼び出すかな…
ドアをくぐる。即座に完璧とも言えるような店員さんが対応してくる。凄いと思う反面、苦手だなぁと身構えてしまう。
「おーい!シン君こっちこっち!」
「あのバカ…」
隣のおば様方が睨み利かせてんじゃねぇか。ついでに和人も。
「わりぃな、和人」
「珍しいなお前が遅刻なんて」
「目覚ましの電池が切れててな…」
「…なんでお前はゲーム中じゃ超が付くほどに幸運なのに現実じゃ地味に不幸なんだ?」
「言うな、虚しい」
「ねぇ僕は置き去りかい?」
おっとそういやいたな。
「ああすまんな。で、なんだっけ?何故高級官僚は信用されないかだったか?」
「それは僕に対する当てつけかな?」
「言ってやるなよ改、
「…泣いていいかい?」
いい歳した大人が泣くとか気持ち悪さしかないぞ。
「で、好きなの頼んで良いんだよな?」
「無視した挙句言う言葉はそれかぁ…ってそれは勘弁してくれ!全財産が吹き飛んでしまう!」
「ははは何言ってるんですか菊岡さん、高級官僚ならこれぐらい払えなきゃ。どうせ国民の血税巻き上げてんだろ?」
「改、それもう言った」
「む、まじか」
「だからってメニュー全てを頼もうとする君はどうなんだい!」
「税は国民に戻ってくるべきだろ?」
「僕も国民だからね!?」
「ちっ、しょうが無いから十個にしといてやるよ」
「…ここカード大丈夫だよね?」
信用は出来ないがやっぱりこの人いじるには最高だな、クライン以上だ。
「こんな事できるのはお前だけだよ」
お前はエスパーか?
「エスパーじゃない」
…エスパーじゃん。
「それでこんな話の為に俺達を呼んだんじゃないんだろ、菊岡さん」
「話を逸らしまくったのはそっちというのを忘れないようにね…そうだね、じゃあ早速本題に入ろうか」
菊岡は手を組み真剣な顔をする。
「君たち二人は仮想世界での現象が現実世界のプレイヤーの心臓を止める事が可能だと思うかい?」
俺と和人は二人して口を閉ざす。
「大分遠回りしたが今回の本題はこれなんだ」
「…どんな事件があった」
俺は気を張り詰め菊岡に問う。あの事件から俺は人命にかかわることに敏感になっている。
「話が早くて助かるよ。先月十一月十四日、東京都中野区のアパートで掃除をしていた大家がある一室から異臭がするのに気が付いた。インターホンを鳴らしても返事が無いので電子ロックを解錠して中に入った。そこでこの男…茂村保二十六才が死んでるのを発見した。死後五日半でベッドに横たわり…」
「アミュスフィアを被っていた…か?」
俺と和人は菊岡にその男が載っているタブレットを渡された。
「その通り。変死ということで司法解剖が行われて急性心不全となっている」
「心不全?ってのは心臓が止まったって事だろ?なんで止まったんだ?」
和人が質問をする。そこは俺も気になっていた。
「解らない」
「「……」」
「頼むからジト目で見ないでくれ」
おっと、つい何時もの反応で返しちまった。とりあえず俺はその茂村保氏に対して目を瞑り冥福を祈った。
「彼はどうやらほぼ二日間何も食べないでプレイしていたらしい」
和人も同じ様に冥福を祈っていた。やがて口を開く。
「…確かに悲惨な話だけど…」
「ああ、でも珍しくは無いだろ?」
「そうだね、今やよくある話だ。こういう変死はニュースにはならないし、家族もゲームをしていて死んだなんて話さないから統計も取れない。これもある意味ではVRMMOによる死の侵食だが…」
「一般論はいい、何があるんだ?」
菊岡はチラリと端末を一瞥する。
「彼のアミュスフィアにインストールされてたのは一タイトル、"ガンゲイル・オンライン"…知ってるかい?」
「そりゃもちろん。日本で唯一プロがいるゲームだし、なにより…」
「俺もそのゲームのプレイヤーだ…なるほどな、あの噂関連か」
そう言うと菊岡は目を見開く。
「驚いたな、君があのゲームをやってるなんて。ALOよりずっと殺伐としてるんじゃないか?」
「…まぁな。そのぶん忘れにくくて済む」
そう言うと和人は苦い顔をする。俺は和人をチラリと見て大丈夫だと目配りをする。
「それで、その保氏のキャラクター名は?」
「ゼクシード。知ってるだろ?」
「当然、前回のBobの優勝者だ」
「…俺だけ話が見えて来ないんだが」
しまった、菊岡と二人で進めてしまった。これではこいつが調子に乗ってしまう。
「今失礼な事を考えなかったかい?」
「常にお前に対しては考えているが?」
「…もう隠す気も無いね」
何を当たり前な事を話しているのだろうか?まぁそれはどうでもいいとして…
「ガンゲイル・オンライン…GGOって呼ぶな、GGOには今奇妙な噂があるんだ」
「奇妙な噂?」
「前のMストでゲストが落ちて番組中断ってあっただろ?」
「ああ、あれか」
「そう、それでその時GGOの首都であるSBCグロッケンの酒場で変な事をしたプレイヤーがいたらしい」
「変な事?」
「何でも酒場のテレビに向かって裁きを受けろ、死ねとか叫んで銃を撃ったらしい」
「…客観的に見れば意味無いよな、それ」
「そうだね、でも同一人物でもう一件あるんだ」
「何?」
「……」
菊岡が横から俺の言いたいことをかっ拐っていった。その目には仕返しだという色が見える。腹立たしい。
「今度は十日前にスコードロン…ギルドの事らしいね、その集会中にリーダーである…薄塩たらこ?合ってるのかなこれ」
「ちゃんとGGO最大のスコードロンのリーダーだよ」
「SAOに北海いくらっていたから親戚かもな」
「まぁその薄塩たらこ氏が集会で激を飛ばしてる時に乱入して突然撃ったらしい。圏内で、だよ」
「もちろんノーダメ、でも」
「数秒後に落ちた。そして現実でも」
「ほぼ同時刻に死んでいた、と」
その場の空気が少し重くなる。
「偶然だろ」
「僕もそう思うよ、9割方ね。でも出来ないとは言い切れないかも知れないだろう?」
「…アミュスフィアは微弱な電気信号しか出せない、脳も焼き切れないしましてや心不全なんて無理だ」
「いや、でももしかしたら本当に弾丸が飛び出て撃ち抜いたかもしれないじゃないか」
「ありえねぇよ!」
「…というか何でお前らはゲームの中限定で話してんだ?」
「え?」
「どういう事だい?」
二人は俺の発言に首を傾げた。
「和人、『人形殺人』って覚えてるか?」
「あ、ああ」
「なんだいその『人形殺人』というのは」
「昔SAOの中にあった殺人事件の事だ。あるプレイヤーが突然衆人達の前で"この人形は本人と繋がっている、これを消滅させれば実際に死ぬ"って言ってその場で人形の耐久値をゼロにさせたんだ。面白がって何人かが生命の碑を見に行くとその日の丁度その時間に本当に死んでいたってやつだ。そいつはその後パタリと姿を消したから特に広がる事もなく一部の人のみに記憶された」
「その人はどうなったんだい?」
「…そいつうちのギルドのメンバーでな、ジョニーが新しい新武器を試すって殺した」
「「……」」
この話は俺の闇の1つだ。聞いていたのにその時既に俺はギルドメンバーを殺していたから何の説得も出来なかった。いや、しなかった。何も言うことは出来ないと勝手に思い行動に移さなかったのだ。
「改…」
「ッと済まない、ぼーっとしてた」
「無理すんなよ」
「してないさ、それに…お前こそ顔色悪いぞ。討伐戦を思い出したか?」
「!!」
「図星か」
和人もかつてのラフコフ討伐戦の際仲間を助ける為に二人手を掛けていた。こいつは酷く自分を責めているが俺自身は仕方がない事だと思っている。殺らなきゃ殺られていた、それにあいつらは殺されてもしょうがない人間だ。一つ言える事があれば"済まない"だ。あの討伐戦は俺が一人でやるべきだった。来ると分かっていた、そして攻略組には攻略をしておけさせれば良かった。そうすればこいつがこんなに苦しむ事も…
「…済まなかった、嫌なことを思い出させたね」
菊岡が突然謝罪する。俺と和人は呆気に取られるがすぐに示し合わせた様に…
「全くだ、これはケーキを追加しないと割りに合わないな」
「すいませーん!メニュー追加したいんですけどー」
「悪いと思って謝ったのになんだいこの仕打ち!?」
俺と和人は二人して笑う。目の前では菊岡が頭を押さえ"本当に足りるかなぁ"とボヤいていた。
「それで、その話が今回の話にどう繋がるんだい?」
「あぁ、この事件のトリックは二人一組でやってたんだ。時間を予め決めといて片方が人形を壊すと同時に相手を殺すって具合にな。もしかしたら今回のもそうかも知れないと思って」
「つまり二人の犯行と…」
「まぁ二人とは限らないけどな、それと外傷は無かったんだよな?だったら薬物の可能性が高い、細い注射器何か使えば分かりにくいだろうし」
「でもどうやって住所を割り当てたんだ?オンラインゲーム関係はそういうのにスゴく厳しいし」
「この二人はどっちもBob…最強決定戦に出たことがある。そしてその参加の際に賞品の受け取り関係で住所を入力するところがあるんだよ」
「現実での賞品があるのか?」
和人も菊岡も驚いていた。確かにネットゲームで現実の賞品があるというのはとても珍しい。
「ゲームでのアイテムと選択出来るけどな。でも住所を見るには接近するしかないしかといって接近したらそいつ以外見れなくなるんだよな…」
「ふむ…それはこちらでもう少し調べてみるよ。」
「そうか。で、これで全部か?」
「最後にもう一つ」
…何だろ嫌な予感しかしない。
「二人にはこのプレイヤーに接触してもらいたいんだ」
はい的中ー
「接触ねぇ…はっきり言ったらどうだ菊岡さん、撃たれてこいって事だろ?」
「ははは、うんまぁ」
「嫌だよ!さっき改が危険性を示唆したばっかじゃないか!あんたが撃たれてろ心臓トマレ」
「もしシン君が言ってたことが当たっていたら撃たれるって事は犯人がその場に居るって事じゃないか、そうすれば捕まえられるんだよ」
「例え捕まったとしてもこっちが死んだら本末転倒じゃないか!明日奈を残して死ぬなんて絶対嫌だぞ!」
「あっ、さらりと惚けやがったコイツ」
「全くだね、羨ましい」
「話をずらすな!」
今のはお前が悪いぞ。
「てか何で改は反応が無いんだよ!」
「俺もう奴が出るであろうBobにエントリーしてるしもう遅いと思って。それに流石にタダでやらせる訳じゃないだろ菊岡」
「もちろん、このGGOのトッププレイヤーが稼ぐであろう金額を報酬にするよ。ーこれくらいね」
そう言って菊岡は指を3本立てた。これは三千円でも三万円でもなく、三十万円である。
「それはもちろん一人にって事だよな」
「え?」
菊岡が固まる。やっぱりかこのやろう。
「こちとら命掛けるんだ、そんなセコイことしないよな高級官僚様よ」
俺は思いっきり良い笑顔を作った。
「……分かったよ…」
「よろしい。という訳で和人、どうだ?」
「分かったよ…但し安全は確保しろよ」
「それは分かってる。そこは僕が責任を取って信頼出来る人と場所を提供させてもらう」
「なら良いよ」
「よし、これで話は全部か?なら帰らせてもらうぞ。ご馳走さま」
「ああ、呼び出して悪かったね」
「そう思うんだったらこんなに危険な事させんなよ。じゃあな」
「あ!待てよ改!」
俺は菊岡を残しその店を出た。途中背後で「嘘だろ!?」と聞こえたが気のせいだな。
「なぁ改」
「うん?なんだ?」
「あの仕事を受けた本当の理由、何なんだ?」
「…気付いてやがったか」
確かにあの店で言ったのはほとんど建前だ。本音はもっと重い。
「聞いてどうする?」
「……」
「…分かったよ、降参だ」
今コイツの目喋らなかったらぶん殴るって言ってたぞ。
「…けじめをつける為だよ」
「けじめ?」
「考えてみろ、今回の件明らかに『人形殺人』に似ている。発案者は死んでるが誰か知っててもおかしくない。…ギルドメンバーならな」
「!それって…」
「恐らく犯人はラフコフの生き残りだ」
「……」
「あのギルドの最古参としてけじめはしっかりと取る。最後にはPohを捕まえてやるさ」
「お前…」
「止めるなよ」
「!」
「これは俺のせめてもの償いだ。罪は消えないが俺は立ち向かう」
「…無茶はするなよ」
「互いにな、それにいざとなったらお前らを頼るさ"親友"」
「…ああ、任せろ!」
俺達は笑いあって互いの拳を合わせた。
「そう言えばそのプレイヤーの名前なんていうんだ?」
「そういや言って無かったな。そいつの名前は…」
死銃…デス・ガン
元ラフコフの改君ならではの推理でしたね。もうほとんど真相に…Pohが次々と新しい殺し方を編み出すので固定概念がありません。柔らか頭って良いよね…
それと人形殺人は完全オリジナルです。ほとんど原作の死銃トリックのパクりですがね。
あと感想にてこれおかしいのでは?って書き込みがあったのですが、大体この小説の仕様って事で解釈してください。あまり指摘されちゃうと心が折れますので…