ついでに言えば今回も戦闘描写はありません!そしてオリジナルダンジョンがあります!痛い!岩投げないで!
菊岡からの仕事の依頼のあと和人は明日奈とデートだとかで皇居に向かっていった。GGOにログインするのは明後日と言っていたのでその間にこちらでも準備を進めておこう。そして和人がいるときに頼めなかった事を話すために俺は菊岡に電話をした。コール二回で繋がる。
『もしもし?どうしたんだい?』
…何故だか幾分か声が沈んでいる気がする、だが気にしない!
「少し頼みたい事があってな」
『キリト君がいるときに話せなかったのかい?』
「あいつがいるときに話せば確実に止められるからな」
『…どんな危険な事かな?』
「なに、大したことないさ。ただ
『…つまりこちらで用意した場所からでは無く、既に知られてるかもしれない君の自宅からログインすると?』
「話の早いあんたは好感持てるぜ」
『そんな危ない事をさせると思うかい?』
「ついさっき俺達に撃たれろって言ってた奴の言葉とは思えないな」
『分かってるのかい?君は自ら、それも僕の様な冗談じゃなく死にに行こうとしてるんだよ?』
「俺の命であいつらの安全を確保できんなら本望だな」
『改君!』
「耳元で騒ぐなよ、鼓膜破れるだろうが」
『こっちは真面目だ!』
「こっちも真面目だよ」
菊岡は激しく、俺は淡々と、だが互いに譲らない。菊岡にも譲れない一線というものがあるのだろう、それはおそらく民間人の安全、さらに言えば罪ない人々の安全だろう。だから真っ先にSAOの対策本部を作ったのだろう。だがこれが罪の無い人々と言うならそれは俺には当てはまらない。だからこそ俺も譲らない。俺は受け入れ、前に進む事が出来るようになったとしても
『…どうしてもかい?』
「どうしてもだ」
『……分かった、代わりにこちらから自宅周辺にSPを付けさせてもらうよ』
「願ったり叶ったりだ。そんじゃ頼む『改君』…なんだ?」
『君はもっと自分の命の重さを考えた方がいいよ』
「……」
『それじゃあ予選の日から付けるよ、キリト君には誤魔化しといてあげるから。またね』
そう言って菊岡は電話を切った。
ー…俺の命の重さ、ね…
果たしてあるのか、それは俺にはまだ分からない。
「全く、君は自分の存在を軽く見すぎだよ」
彼のものぐさについ熱くなってしまった。僕は冷静でクールさが売りなのに。
「そうでも無いですよ?」
「え?僕の考え駄々漏れ?」
「それにしても彼は自分の事をどう考えてるんですかね、死んでも構わないってセリフでしたが…」
「無視かい、そうなのかい?」
部下の態度に涙が出そうだよ…
「男の涙ほどむさ苦しいものは有りませんよ?」
「もう僕の心は読まないでくれ!」
この職場もう辛いよ…
「…それでさっきの質問の答えだけど」
「はい」
「別に彼は自ら死のうとは思って無いんだよ。ただ親友が危険なら自らの命はどうなろうが構わない、俺の命はそうでしか使えないと思っているんだろうね」
「…ずいぶんと危ない考え方ですね」
「僕もそう思うよ」
自分で言いながら彼は本当に親友、いや、恩人を第一に考え過ぎている。彼の過去と周りの環境がそうさせたと僕は考えている。
ー君は確かに命を奪ってしまったかも知れないけどそれの何倍も沢山の命を救っているんだよ?
そんな言葉を心で唱え、彼の護衛に誰をつけるか頭の中で部下の名簿をめくっていった。
今日は日曜、本来ならバイトが入っているが店長が久しぶりの休みを入れてくれたのだ。そこで俺はキリトも後日始めるという事もあり普段は入らないこの日にGGOに潜ることにした。
「…普段入らない日に入ると何故か新鮮だな」
実際変わったところはないのだがほんの少し違和感があるのだ。慣れとはやはり怖いな…
「さて今日は何を狩ろうか…ん?」
どこに行こうかとマップを開いたときメールが届いた。この世界で俺にメールを送れるのはあのときの少女だけだ。内容は簡単、『今から会える?』とだけ書いてあった。ふむ…
「まぁいいか、『いいぞ、前の酒場で待っている』と…」
俺はメールを送ると酒場へと歩き始めた。
正直期待はしていなかったけどフレンドリストを見ていたかいがあった。私は一刻でも早く彼に会いたかったのだ。別に恋しくてという訳ではない、ただ彼といれば強さの意味が分かる気がする。それだけだ。
「…シン」
私は圧倒的な強さを持つ影シャドウの本当のアバターネームを口にする。
「…なんだ?」
「いひゃ!?」
「いひゃ?」
いつの間にか彼が私の背後にいた。
ーど、どうやって…というかいつの間に…
「いつからそこに…」
「君があの角を曲がってきた時あたりだ。索敵をある程度上げてあれば気付けたはずだが?」
「私も結構上げてあるはずなんだけど…」
少なくとも半径五十メートルなら何人いるかはすぐに分かる、だがそれでも気付けなかった。
「どれだけ隠密高いのよ…」
「とりあえずカンストはしている、加えてこの装備のおかげで姿は見えにくくなっている」
そうやって彼の装備をみる。初めて会ったとき同じパーカーのような黒い服、濃い紫のズボン。金属の類は見れない。ついでに言えばそこまで高価なものには見えない。
「高そうには見えないって顔だな」
「!?ま、まぁね」
顔には出さないようにしていたつもりだが簡単に心を読まれてしまった。本当に何者なのか…
「この装備だが全部合わせれば三十万はするぞ」
「さ、三十万!?」
高すぎる!どんなトッププレイヤーでも精々十五万といったところだろう。
「…それは課金でもしたのよね?」
「いや、全てドロップだ」
「幸運過ぎるでしょ…」
あり得ない、というか信じたくない。こんな幸運なプレイヤーがいるなんて…
「それでなんの用なんだ?ただ呼び出したという訳では無いんだろう?」
そうだった、前の話が衝撃的すぎて忘れていた。
「そうね。話は二つ、一つはあなたの狩りに私も連れてって。もう一つはあなたに会いたいって人がいるのだけど…」
「前者は君の実力次第、後者は却下だ」
「…前のはまだいいわ、実力差があるのは分かっているから。でもなんで会うのが駄目なの?」
「俺は基本的に特定の奴以外とはつるまないからだ。このゲーム以外にもう一つやっているがそれでも十人に満たない。それに俺は人が苦手なんだよ…」
後半彼は顔を逸らし小声で言った。自分でも気にしているのだろう。
ーだったら直せば良いのに…
「そう簡単に直せたら苦労しないさ」
「あなたエスパー?」
「特技が読心術なだけだ」
「…それをアバター相手に使えるってどうなのよ?」
「便利だ」
「いやだから…じゃなくて!どうしても駄目なの?」
「…何故そこまで俺と会わせたいんだ?」
「…ちょっとその子がステ振りに詰まっててね、同じAGI特化型なら有効な話が聞けるかもしれないって。それにただでさえ彼、あなたのファンだし」
そこまで言うと彼はため息を一つついた。
「…会うのはダメだが次の出現場所なら教えといてやる、それで我慢しろ」
「ありがと、そう伝えるわ。それで狩りに同行したいんだけど…」
「さっきも言ったが君が付いてこれるかどうかだ」
「誰を狩るつもりなのよ」
「今回はモンスターだ。ただしこのGGOで最凶のな」
「…まさか」
「そうだ、最高難易度ダンジョン、“怒りの戦艦”だ」
"怒りの戦艦"
GGO内において攻略はほぼ不可能と言われている文句なしの最高難易度ダンジョン。トラップの多さとモンスターの凶暴性からステージとなっている戦艦が怒っているとなっている。今まで数々の猛者たちが挑み、挫折している。このダンジョンをクリアするには最低でも15人のベテランプレイヤーが必要とも言われている。さらに最奥には"king of wrath"“怒りの王”という阿修羅に似たボスモンスターがいる。倒せば超がつくほどのレア装備やアイテムが手に入るとされているが倒せたものは誰一人としていない。
「ということよね?」
「そうだが誰に向けて話していたんだ?」
「それはもちろん読「メタいから止めろ」…そうね」
なんか口が勝手に動いたのよね、バグかしら?
「というかそれをたった二人でいくの?自滅行為よ」
「一人でも最奥の部屋まで行けたんだから大丈夫だろ」
「……はい?」
「ん?どうかしたか?」
「あんた今一番奥まで行ったって言った?あまりの難易度に何人もの人がザスカーに意見書を出したダンジョンを?それも一人で?」
「ああ、言ったが?」
「……もうなにも言わないわ」
「それでどうするんだ、付いてくるか?」
私はその問いに少し悩んでしまった。普通にプレイヤーを襲うなら即断即決で行くと言っていたが相手はモンスター、しかもGGO最強クラス。
ーでも彼の戦いが見れるなら…
「行くわ、あなたの強さをもっと知りたいから」
「ボソッ(まだ拘っているのか)」
「?なにか言った?」
「いや、なんでもない。行くぞ」
「ええ」
私は彼の後ろをついて行く、その強さを知る為に。
今回後切れ悪くね?と思った方、その通りです。元々次のと一つのものだったのですが、長くなりすぎたので比較的キリのいいところで切りました。
ちなみにシンの装備は全て最高難易度のダンジョンのドロップです。詳しくは感想の反響によって書くか決めたいと思います。