書くのが嫌になったんじゃないんだよ!なんかもう色々行事が重なるんだもん!!
俺とシノンは二つ目の大空間のボス、“death prant”を狩り終え最後のマップデータである“機械化生体兵器実験室”に向かっている、のだが…
「約束と違うわよ!さっさと説明しなさい!あのグレネードの軌道を変えた技は何!?」
…先ほどからこの調子である。とりあえず「なんかのアニメの再現技」と言って誤魔化しているのだが妙な所で鋭く「あれは長年使ってる程に滑らかだった」と言いしつこく本当の事を言わせようと躍起になっている。
「だからさっきから言ってるだろ、昔見た何かのアニメの再現だって」
「じゃあ何のアニメよ!」
「それは忘れたが…」
「それで私が納得出来る訳無いでしょ!」
…しつこい。そこまで気になるか…あぁもう!めんどくさい!腹括ってやる!
「はぁ、分かったよ教えるよ」
「最初からそうし「ただし」…なによ」
「次に殺るボスのLAを取れたらな。こちとらBoBのライバルに手の内の一つを晒すんだ、これ位の賭けは受けて貰うぞ」
本来今のシノンの様にしつこく相手のスキルや手の内を聞くのはマナー違反なのだ、このままGMコールして訴える事も出来たがさすがにやり過ぎになるので少し痛い目に遭う程度にしておこう。
「分かったわ、やってやるわよ」
…この数時間で分かった事。シノンは倫理的に押せば大抵の事は通る、あと結構気性荒い。例えるなら獰猛な山猫だな、うん。
「あなた今結構失礼な事考えたでしょ」
「さて何のことやら」
どうやら俺の周りには読心術できないのに心の読めるエスパーが沢山いるらしい。
「それとささっきの奴とは全然違うんだけどさ、あなたこのゲーム初期からやっているのよね?」
「ああ、そうだがそれがどうした?」
「なんで今までBoBに出なかったの?」
「…それか」
俺は今までの現実での地味すぎる不幸を思い出し遠い目をする。
「シ、シン?」
「第一回目の時は予選にエントリーしたんだけどリアルでバイクが故障して翌日も使う予定だったからその日の内に直さなきゃならなくて、しかも直しに行ったらその部品が足りないとかですぐ直らなくて徒歩で帰ったら間に合わなかった…結局その用事も無くなったし」
「…第二回は?」
「アミュスフィアを落っことしてログインすらできなかった…」
「うわぁ…」
ははは、改めて思うとリアルでは不幸だなぁ…
「うん、ちょっと同情するわ…」
「しなくていいぞ、悲しいだけだから」
ああもう、ボスと戦う前にテンション下がっちまったじゃねぇか。
話を聞いてて思ったけどシンはあまりにも現実と仮想世界で運の違いの落差が酷いみたいだ。
ーそれにしてもさっきの話どっかで聞いたことがあるような…
どこか引っかかる。この近くにいるけどはっきりしない感覚、身近にいた気がする。
ー誰だったかしら、…そのうち思い出すか
「ああとそれで最後のボスだけど」
「なに教えてくれるの?」
「条件は対等にしなければな」
こういうところは律儀よね。
「名前は知ってるだろうけど“king of wrath”、設定だと人間をモンスター化させその上で機械化したみたいだな」
「…人をモンスターにしたの?」
「設定だ、割り切れ。まぁ分からんでもないけどな。…続けるぞ」
「…うん」
例え設定でも後味は悪い、シンの言うとおり割り切らなければ。
「姿はもろ阿修羅らしいな、腕が六本あって更に全身が超合金で覆われていて硬度は“death prant”よりはるかに硬い」
「あれより硬いとか…」
私のへカートでも凹ませるのが限界ではないだろうか。
「それにレーザー炎弾雷球何でもござれだ」
「真面目にザスカーは何をしたいのかしら…」
そんなものを作っても大丈夫なのだろうか…
「あともうひとつ、資料の情報には書いてないんだけどもし俺の考え通りならこいつは全GGOプレイヤーにとって天敵だ」
「どういうこと?」
「それをこれから確認するんだよ」
そう言ってシンは巨大な扉の前で立ち止まる。どうやら着いたようだ。
「…覚悟はいいな?LAはやらねぇぞ」
「私もあなたに渡すつもりはない」
互いに不敵な笑みで答える。私は今までのこの戦闘で自分も結構やれると思えていた。それは自信になり私に勇気を与えてくれる。
ーやっぱりついて来てよかった…
私は彼といれば強くなれる、そしていずれは乗り越える。あの過去を!
どうやら士気は高いようだ。これなら大丈夫だろう。俺とシノンは一緒に両開きの扉を押した。ゆっくりと開く、この時俺はSAOのボス部屋を連想した。かつてあの世界で俺はボス攻略に参加しないまでも最前線で戦っていた。その中で何度も俺はボス部屋を見付け、単身で挑んでいた。もちろん勝てなどしなかったが。
ーにしてもこの感じ…
この感じはまんまあの世界のボスと相対した感じなのだ。
ーこりゃ賭け以前に乱発してばれそうだな
俺は内心苦笑して更に腹を括る羽目になりそうだと思った。敵の姿が鮮明に見える。そいつは奥の玉座に座っていた。パッと見は人だ。だが本来の肩の後ろ、肩甲骨のあたりから左右二本ずつの通常の三倍ほどの太さの腕が見える。何も微動だにしていないのにそこにいるだけでとてつもない威圧感がある。
ーよくもまぁアミュスフィアでここまでのものを作り出したな
確かに威圧感もあるし感覚もあの世界と同等だがやはり重みが違う。俺にとってはこの程度の威圧感は少し強い風くらいだ。だが隣のシノンはそうでも無いらしく体が緊張してるのが目に見えて分かる。
「…逃げ帰っても誰も文句は言わないぞ」
「っ!!ふざけんな!ここまで来て後に引ける訳無いでしょ、LAは私が取ってやるわよ!」
「ならその調子で頑張れよ、俺をぎゃふんて言わせてみろ」
「ええ、言わせてやるわよ!」
どうやら少しはほぐれたようだ。俺は“king of wrath”に向き直り、左手にPC356、右手にサバイバルナイフを構える。シノンも可能な限り遠くかつ高い場所に移動する。
フィィィン…
ふと音がした。それは視線の先の敵からだ。体からモーター音を響かせながら、だが機械ではあり得ないような滑らかさで立ち上がる。…でかい、3メートルはありそうだ。"king of wrath"が顔を上げる、半分はバイザーのような物で隠れているが下半分から覗いている口には恐ろしく長く鋭い牙が見える。俺は普段滅多に使わない本気の覚悟を決めた。相手も気付いたのだろうか、構えを取る。
グオオオォォォォォォ!!!
1つの咆哮、それが始まりのゴングとなった。
シンはいきなり私が見てきた限りで最高速度で突進していった。左手のPC356が三回火を噴く。全弾頭部に命中したがかすり傷が付いた程度だ。
「やっぱり硬いみたいね、でもへカートなら…」
私はスコープに目を当て覗き込む。視線の先ではシンがサバイバルナイフで関節部分を攻撃している。しかし相手はさして行動が制限されたわけではないらしく悠然としている。突然“king of wrath”がこちらに顔を向けた。上二つの腕が動きこっちを捉える。
「っ!!シノン今すぐそこを離れろ!」
私はシンが言い切る前にその場から自身の限界速度で離脱する。その瞬間さっきまでいた場所に二本の極太のレーザーが通り抜けた。そこは余りの高熱で融けていた。
ーなにその威力!?ザスカーふざけてんの!?
私は自分の意思力を総動員して声を上げまいと踏ん張った。意味ないかもしれないが声を上げたら自身の位置を悟られるかもしれないと思ったからだ。再び視界に敵を入れると今度はシンが下二つの手に捉えられていた。その手のひらには各一つずつ砲門が設置されている。シンが即座にその場から離れる。
「飛び火に気を付けろ!」
私は言葉に従い物陰に完全に身を隠す。壁の向こうで爆発音がする。どうなったかと顔を上げると目の前に眩い塊が通り過ぎた。目だけでその塊を追う。それは一昔前に流行ったというモ〇スター〇ンターに出てきた雷を纏った狼が放つ雷球をそのまま大きくしたような物だった。余りの近距離に顔が引きつる。そしてシンはと言うと…
「雷球と炎球の二段構えでしかも間隔短いなおい!」
と愚痴垂れながらも紙一重で躱し続けている。本当にどんな反射神経してるのだろうか?私は射撃体勢に入り相手がこちらに銃口を向けるのを待つ。シンには悪いがそのまま引き付けておいてもらって囮になってもらう。シンは知ってか知らずか私を背後にするように立ち回りをする。掌の銃口が一瞬こちらを向く。即座にバレットサークルを狭め引き金を引く。亜音速を超える弾丸が銃口に吸い込まれるように入っていく。内部から装甲が吹き飛ばされた。
グオオオォォォォォォォォ!!
初めて“king of wrath”が大きく体勢を崩す。
「なるほどな、内部から壊せばいい訳か!」
シンが感心したように叫ぶ。そこからの行動は迅速だった。シンはもう片方の手に急接近し独特の動きを超高速で行い砲口を自身に向けさせた。エネルギーが溜まっているのが分かる。だがそこに手を突っ込んだ。
「はぁ!?」
バカじゃないのか、と思った私は悪くない筈だ。わざわざ攻撃を食らいに飛び込むのはおかしいだろう。しかし、
バガアアァァァァァァァァァァン!!
「ハッ?」
何故手を突っ込んだだけでへカートの様に装甲が吹き飛んだのだろうか。
「よし二本目!」
「今の何!?」
「突っ込んだ手にグレネード握ってただけ!以上!!」
どうやら私の見えない角度でグレネードを持っていたらしい。ただもうひとつ謎なのは…
「何で爆発に巻き込まれたのに無傷何だろ、アイツ…」
謎は増えるばかりだ。
ー今のは危なかった。グレネードを砲口に突っ込むまでは良かったがあちらさんの発射のタイミングをちょっと見誤ってたわ。
そうシンは心中つぶやくが実際シンは爆発の瞬間後ろに飛んでダメージ判定ギリギリ範囲外まで逃げていた。ゆえにダメージはゼロ。
「シノン、上の二本やる。左を頼む!」
「了解」
互いに左右に素早く移動をした。“king of wrath”は上の二本を二人にぴったりと照準を合わせ続けている。上の二本から発射されるレーザーはホーミングは無いが一撃でHPを吹き飛ばせるほど大火力で更にタメがない。つまり狙いが定まれば即時撃てるという事だ。シンやシノンにとってタメと言うのは非常に重要なものだ。シノンはスナイパーとして、シンはあの世界で培った経験からその一瞬でカタを付けている。ゆえに二人は思う。
「「…やりにくい!」」
余りのタメの無さに内心舌打ちをする。その間にシンは紙一重でレーザーを避け続けている。シノンも隙を見付けては引き金を引くが狙いが逸れるかレーザーに巻き込まれて蒸発するかだ。
「シノン!」
「なに?」
「出血大サービスだ、もういっちょ見せてやるよ!」
どうやら痺れを切らしたようだ。シンは一瞬の隙を見付けて懐に入り込んだ。蹴りを膝裏に一発、それだけでバランスが崩れる。簡単に言えば強烈な膝カックンだ。そして僅かな駆動部の隙間に手を入れしっかりと掴む。
「暗殺術体術系スキル、
ズドオォォォォォォォォォン!!!
“king of wrath”は頭から地面に落ちた。“崩山”は自身より大きい相手を柔道の背負い投げに似た要領で一撃で沈める技だ。ただ元々対人用の技なのでHPを体術にしては少し大目に削り
「頼むぜシノン!」
「分かってる!」
シノンの正確無比の弾丸が腕の銃口に侵入し破壊する。シンもちゃっかり落とすと同時に銃口にグレネードを入れて置いてあった。シノンの銃弾とほぼ同時に爆発する。
「部位破壊成功!」
腕を全て破壊した為にもう相手に攻撃手段は無いかのように思われた。事実シノンは後は叩き放題だと思っていた。どうやってLAを取ってやろうかと考えていた時、
「シノン、気合入れろよ」
「は?なんでよ?油断する気は無いけどもう攻撃手段はあっちには無いでしょ?」
既に砲口はボロボロで撃てる様な状態では無い。しかしシンは違った。
「まずどう考えても
“king of wrath”が起き上がる。
「次に何故砲口をそのままでは無く掌に付けたのか」
体中から蒸気が溢れ見えなくなる。
「最後に、吹き飛んだのは砲口と装甲のみであって腕自体はまだ残っている。何より…」
シンはそこで言葉を切り敵を睨む。シノンはこの時戦闘直前にシンが言ったことを思い出していた。
『もし俺の考え通りならこいつは全GGOプレイヤーにとって天敵だ』
そしてその答えが目の前にある。
「あいつは真ん中の腕を一切使っていない、まるで温存していたかのように」
蒸気が晴れる。そこに佇んでいたのは上下四本にその体躯に合わせて作られたかのような超大ぶりのナイフを持ち、武術の構えを取った敵であった。
シンは危惧していた事が現実であったことに舌打ちをした。自分だけならまだ捌ける自信はある。しかしこの場にはシノンがいるのだ。自分に集中させるにはシノンはヘイトタグを取り過ぎた。“king of wrath”が動き出す。
ーやっぱりシノンの方に行くか!
大きな足音を響かせながら急接近をする。シノンは混乱して行動するのが一瞬遅れた。その体に拳を食らい吹き飛ばされた。
「アグッ!」
「シノン!」
相手は追撃をしようと一歩踏み出す。
「させるかよ!」
シンは踏み出した足に組み付き自身の体ごと捻る。全体重とコンバートしたアバターの筋力補正がかかり倒す。が、完全に相手は近接モードにシフトしていた為倒れず器用に体を使い耐える。どうやら標的はシンに移行したようだ。シンは顔に凶悪な笑みを浮かべる。
「来いよ、あの世界を抜けてから張り合いが無かったんだ。勘を取り戻すついでに相手してやる」
私は吹き飛ばされた後余りの衝撃に視界がチカついていた。HPを確認すると残り二割ほどになっていた。殴られる前は八割はあったはずなので一撃で半分以上削られた事になる。
ー馬鹿げた威力ね、ホント…
腰のポーチからポーションを含み回復させる。視界の端のバーが徐々に増えていく。その時この世界ではあまり聞かない殴打する音が響いた。そちらの方を向くと
「…え?」
シンがまともに殴り合いをしていた。所々にピックやナイフで攻撃を仕掛けながら相手の攻撃を全て
「あいつなんなの?あれはもうゲームの枠を超えてるわよ…」
振り上げられたナイフを避け逆にその腕を逆方向に折る。既に三本目だ。シンの声が聞こえた。
「なぁ、もっと来いよ。こんなものなのか?」
耳を疑う、あの攻撃の嵐は私はもちろん格闘系のスキルを全てをコンプリートしても捌き切れないものだ。それを軽々と流し、あまつさえ反撃し既に戦力の半分を削いだ。その光景とシンの表情に私は驚嘆と同時に恐怖を感じた。私が目指している男はこんなにも遠い所にいるのかと。
ー敵わない
その一言が私の中に吹き荒れる。HPは既に回復した。それでもあの戦いに混ざる事はできない。私は自身の無力さを感じ強く歯を食いしばった。
破砕音が空間に響く。
「四本目!」
既に上下の腕はへし折った。銃撃戦ではあんなにも苦戦した相手がこんなにも容易く腕を破壊できるのはやはりあの世界での経験のおかげだろう。今現在俺は七割体術三割ナイフとピックとなっていた。本来一番得意なのはナイフ…小刀なのだがいちいち硬いので効果があまり期待が出来なかった。
ーまぁ十分だな
相手のHPは残り二割ほどだ。腕も残り二本だしもうかなり大きいただの人と変わりは無い。
「目星はついた。終わりにするか」
満遍なく攻撃していく中でトドメとなる場所を探し当て狙いを定める。
「暗殺術体術系スキル“無重力”」
体を揺らし相手の重心が最も離れる所に誘導し足を払う。更に空中にその巨躯を放る。
「これで終わり、暗殺術体術系上位スキル“昇雷”」
それはまるで天に昇る雷の如き神速の双拳の突き。この技は“無重力”とセットの技で落ちてきた敵に対し二つの拳の突きを頭と心臓に突き刺すというもの。技と技の間が極端に短くなるように“無重力”の終わりと“昇雷”の始めが同じ構えになっている珍しい技だ。ただ今回は敵が大きかったのでどっちの拳も胸の中央にヒットした。しかしそこには機関部があり最大のWPとなっていた。“king of wrath”はその体を爆発四散させた。ダンジョンに入ってからおよそ二時間、長い戦いになった。
私たちはダンジョン攻略を終えSBCグロッケンの最初に会った酒場に来ていた。しかし私は終始無言になっていた。分かっていたはずだがその実力差をまざまざと見せつけられたからだ。胆力、判断力、予測力、どこを取っても私は彼に追いつけないのだろう。
「…折角勝って景気よくと思ったのに何そんな辛気臭い顔してんだよ」
「…お得意の読心術で探ってみれば」
つい棘のある言い方をしてしまう。
「ふむ…大方俺の戦い方を見て追いつけないとか思ったんじゃないのか?」
まさか言い当てられるとは思わなかった。…いやこれ位はできるか、もはやじ「俺は人間だぞ」読まれた…
「一つ言っとくぞ、比べても何の意味も無い」
「…どういうことよ」
「そのまんまだよ、人は一人一人にそれぞれの色がある。そして決して同じ色になる事は無い。強さだってそうだ。自分なりのこだわりを持って形を作りそれを支えにする。俺はそう考えてる」
「あなたはそれを見付けたの?」
「どうだろうな」
「それ位は教えてよ」
「…見つけたよ」
「それは何?」
「内緒だ、知りたかったら自分の答えを見付けて、
ー…あれ?今の言い方…
「閑田さん…?」
「えっ」
まさかだよね…?
「…バレた?」
なにこれ……なにこの偶然。
読み返して分かった事…
あれ?話噛み合ってなくね?これやっちゃいけないパターンのだよね?
自分の無能さを呪うわ~…と言うわけでどう書き換えるか現在思案中。