ヤンヘラガール   作:竹モチ

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5話 友達

 一晩、彼と過ごし次の日。彼は学校に行く気が起きず今日はサボるそうだ。私も行く気になれなかったが、行かないと高坂先生が心配するだろうと思い、頑張って行くことにする。

 しかし、全身筋肉痛のような痛みが、一歩一歩進むたびにズキズキと痛む。これは、早退するかもな。なんて考えながら学校へ向けて歩みを進める。

 学校に到着。

 教室に行くのはしんどかったので、保健室へ出席。

「おはよう。高坂先生」

「あ、おはよう古賀ちゃん。昨日はどうだった?」

 一応、行為に関しては話さない方針で行こう。心配をかけてしまうかもしれない。でも恋人になったことは伝えたかった。

「二人で勉強会しました。そのあと、恋人になりました」

「え!?急展開すぎ!おめでとう!」

 先生は祝福してくれた。この後、どんな感じに告白したの?など根掘り葉掘り聞いてくるので、恥ずかしいから答えられないとはぐらかした。そのあとは、いつも通りの日常。

 しかし、変わったことが一つある。

 

「今日も来ないわね」

「そうですね」

 私は、教室復帰をお休みして、保健室登校にしている。いつも昼休憩になれば保健室に来ていた田辺くんが、いつのまにか来なくなった。そういえば連絡先を交換していないことに気づいた。連絡が取れない。

「教室にはいるのにね」

「どうして、なんでしょう」

 どうしてなのだろうか。田辺くんが来なくなった理由がわからない。何も見当がつかない。でも、恋人同士になったとたんに距離が離れるカップルも存在すると聞いたことがある、案外そういう関係が長続きするとかなんとか。

 でも、これは離れすぎな気がする。連絡すら取らない。会うことすらなくなった。これって付き合ってることになるのかな?いや、私の知識が浅いだけかもしれない。教室には居るらしいので、明日から、頑張って教室復帰してみようかと思う。

「先生、明日から教室に行ってみます」

「わかったわ。頑張って!」

 もう一度会えば、何かわかるかも。

 

 そして、次の日。

 そのまま、教室に登校する。びっくりすることに恐怖心がすっと消えている。恋の力はすごいんだな。と感じる。

 そのまま、田辺くんが来るまで座って待っている。相変わらず教室の端に設置された私の席。この位置だと田辺くんと距離が離れているな。って感じる。

 そんなことを考えていると田辺くんが教室に現れた。すかさず私は近づき挨拶しようとする。

「おはよう。田辺くん」

「おう、おはよう」

 それだけ。

 挨拶を交わして、田辺くんは素通りする。驚くほどそっけない。

「あ、あのね!私、今日から教室登校、頑張ろうと思ったの」

「よかったな」

「それ…だけ?」

「ん?どした?」

「いや、なにもない」

 そのまま、田辺くんは席についてしまった。その数秒後に担任が入ってきて点呼が始まる。私の名前が呼ばれ、返事をして出席していることをアピールする。

 授業が始まるが、田辺くんの変貌に気を取られ、なにも頭に入ってこない。周りの視線なんてどうでもいい。どうして田辺くんが変わってしまったのか。それが気になって仕方ない。

 1時間目が終わり、田辺くんのもとへ。

「ねぇ、そろそろクリスマス近いからさ、一緒にどこか出かけたい」

「悪い。予定があるんだ」

「あ、そうなんだ」

 会話が終わった。

「じゃ、じゃあ今度、家に遊びにおいでよ。勉強も教えるし、また遊ぼうよ」

「また今度な」

「いつがいい?田辺くんの予定に合わせるから。それで連絡先交換したいなって」

「俺、レス遅いから交換しても意味ないぞ」

「それでも、連絡手段は…」

「あのさ、ちょっとしつこい」

「え、ごめん…」

 予想外の言葉だった。もっと楽しく会話ができると思っていたのに。明らかに不機嫌な言葉が私を貫く。頭が真っ白になる。ふらふらと無気力のまま自分の席へ戻る。

 あれかな?さすがにグイグイ行きすぎちゃったのかな?付き合いたてで田辺くんも緊張してるのかな?きっとそうだよ。おしとやかな感じがいいのかな?私が、田辺くんの好みに寄せていけばいいんだ。

 それが、彼女。だもんね。

 なんて考えていると2時間目が始まる。相変わらず内容は入ってこないが。

 ぼーっと外を眺めながら田辺くんのことを考えていると、いつの間にか授業が終わっていた。

 よし、今度はグイグイいかないように話しかけよう。

「田辺くん」

「なに?」

 ぶっきらぼうに答える田辺くん。

「田辺くんの好みって何?私、それに合わせようと思って」

「そういえばさ、古賀ってそんなハキハキ喋れるんだな。今までおどおどしながら会話してたのに」

 言われてみれば、前に比べて口数が増えたと思う。しゃべりやすくなったし、周りのことを気にしなくなった。

「すべて、田辺くんのおかげだよ。前向きになれた」

「そりゃよかったな」

「だからね。私はお礼がしたいの。田辺くんのために何かできないことないかな?って」

「じゃあ、休み時間ごとに話しかけてくんな」

「…どう、して?」

「とくに理由はねぇよ」

 またもや予想外

 私は再び、ふらふらと自分の席へ向かう。

 恋人って、もっといろんなところに出かけたり、話したり、しょうもないことで笑いあったり、二人だけの時間を過ごすものじゃないの?私の知識は、ネットや本の情報。きっと現実とは違うんだ。

 そのあと、会話を交わすことなく一日が終わってしまった。

 

 次の日。

 廊下ですれ違ったときに、挨拶を交わす。

 それだけ。それだけだった。

 

 次の日も、また次の日も。

 

 私は、いつの間にか保健室登校を卒業して完全に教室復帰することに成功した。これもすべて田辺くんのおかげ。やっぱり鬱陶しいと思われてもいいから、ちゃんとお礼を伝えたい。そして、また遊びたい。

 大人の遊び。

 そして、とある日の放課後。

 長い廊下の先、田辺くんを見つける。声をかけようと思い駆け寄ろうとする。と

「お!?待ってたぜ」

 別のクラスの女子生徒を待っていたみたいだ。制服を着崩して、髪を金髪に染め、校則違反のオンパレードみたいな女子生徒が田辺くんに近づく。

 放課後の遅い時間。夕暮れが二人を照らす。それをただただ眺めていた。

「こうちゃん!おまたせ~」

「遅いぜ~この俺を焦らすなんて」

 田辺くんは、その女子生徒の肩を持ち、あろうことかキスを交わす。ほかに誰もいない放課後。この光景を見ているのはきっと私だけだろう。

 いや…誰?あの女。

 どうして?なんで?意味が、分からなかった。

 無意識にスマホを取り出し、写真を撮ってしまった。こんな盗撮みたいなこと。でも、これは立派な浮気。そうだ。これを突き付けて誤解を解かなくては。本当の彼女は私って言って。

 これ以上、見てられない。そう思い私は帰宅することにした。

 

 次の日。

 案の定、昨日のことで頭がいっぱいで授業なんて全く頭に入ってこない。あの女は誰なんだ。早く聞き出したいが今ではない。やはり放課後に二人きりの時間を作ろう。

 放課後、田辺くんと捕まえることに成功した。

「田辺くん。あのさ」

「なに?俺急いでるんだけど」

「昨日、一緒にいた女のところに行くの?」

「は?」

 そこで私は、昨日撮影した写真を突き付ける。

「この女!誰!?」

「あぁ、佐藤のことか。それがどうしたよ。てか盗撮じゃねぇか」

「どうしたって…浮気じゃん!なんでなの!?」

「は?浮気?」

「そう!浮気!どう説明するの!?」

「はぁ~。なんか勘違いしてねぇか?」

「…勘違い?」

「俺たち、いつ付き合ったんだ?」

「…え?」

 どういうこと?いつって、あの日。田辺くんが家に遊びに来た日。二人で遊んだ日。あの時から二人は恋人になったんじゃないの…?

「俺がいつ、お前のことを好きと言った?」

 そういえば二人で遊んでいたとき、田辺くんは一度も私のことを好きと言わなかった。私だけが好き、愛してるを伝えていた。一方的なものだったの?

「あれは、お遊び。そう言っただろ?」

 

  「俺たちは、”友達”だろ?」

 

 とも…だち?

 彼ははっきりと、友達と宣言した。

「もういいか?じゃあな」

 田辺くんは、私の肩を二回たたき、そのまま去ってしまった。

 足に力が入らず、ペタンと座り込んでしまう。

 …すべて、私の勘違いだったの?

 すべて?

 なにもかも?

 

 わからない。

 わかりたくない。

 理解したくない。

 そんなはずない。

 すべて夢なんだ。

 そう、夢なんだ。

 あれ?なんか涙があふれてくる。心臓の奥のほうがズキズキと痛む感覚がする。

 心拍数が上がる。息切れがする。

 意識を失いそう。

 このまま、倒れてしまいそう。

 このまま、消えてなくなりたい。

 このまま、死んでしまいたい。

「古賀ちゃん!?」

 振り返ると、高坂先生が立っていた。

「先生…」

 先生の姿を見た瞬間、意識を失った。

 

 

    ♦♢♦♢

 

 

 次に目が覚めた時は、保健室だった。

「古賀ちゃん。何があったの?」

 高坂先生が保健室まで運んでくれたようだ。

「すべて…私の勘違いだったみたい。田辺くんとの関係。何もかも」

「そうなのね。詳しく聞いても大丈夫?」

「ごめんなさい。ちょっと気持ちの整理がつくまでは、しゃべれないです」

「わかったわ。失恋を何回も繰り返した先生から一言アドバイス。気にしちゃダメよ。難しいかもしれないけど、忘れてしまったほうが楽よ」

 忘れてしまう。そうだね。いつまでも田辺くんにしがみつくのはよくない。お互いに。でも、初めて好きになった人。簡単にあきらめがつくとは思えない。時間がかかるだろうな。そんな気がする。

「ありがとうございます。先生」

「よし、私が家まで送ってあげるわ」

 先生の言葉に甘えて、送ってもらうことにした。明日、学校に行ける気がしない。無理だ。田辺くんと会ってしまったら、また感情が爆発してしまう。

 

 そして、私はまた、不登校になった。

 

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