後々仲間になる敵キャラを目指したところ、主人公パーティにボコボコにされまして   作:底無ノどろ沼

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敗者のプロローグ

異世界転生した先は剣と魔法のファンタジー世界。

 

最初は目を輝かせてこの世界で生きていた。

だが結局物語のように上手くいくはずがなく、気づけば死んだ目で酒と煙草を吸ってはたまに適当な仕事を受けてなんとなく生きていた。

 

その日も紫煙を肺に入れているとふと視界に一つの冒険者パーティが映った。

男女二人ずつの四人組でこの街では見たことない面だった。

 

ガラの悪い冒険者に絡まれてるテンプレをあっさりと解決し、次々と依頼をこなしすぐにこの街に馴染んだ。

 

転生して十数年、理解した。アイツらがこの世界の主人公だと。

 

ただ生きてるだけだった俺に目標ができた。

 

それは仲間になる元敵キャラ。

 

ただ仲間になるんじゃつまらない。

敵として戦って、なんやかんや共闘して、最終的に味方になる強キャラになりたかった。

 

そのために魔物を狩り、魔法を覚え、他にも色々と強くなる術を試した。

 

その結果──

 

 

現在、俺は暗いジメジメした空間で血溜まりに沈んでいます。

 

さっき主人公パーティと戦って惨敗しました。

 

こっちはズタボロで全身自分の血で真っ赤なのに向こうは全員汚れただけで無傷。ノーダメージ。

 

それにアイツらとの戦いも十数回目だが一回も勝ったことがない。

最初のほうはギリギリ戦いだったが今は最早リンチと言った方がいいレベルだ。

戦闘中何回心が折れたか分かったもんじゃない。

 

大体最初は4人だったのに今じゃ11人の大所帯だ。

出会うたびに数は増えてるし、強くなってるしでどんどん負け方がひどくなっていった。

 

11vs1で死なずに30分ぐらいもった自分を褒めてやりたいぐらいだ。

 

だが俺が目指した『後々仲間になる敵キャラ』はそんな生半可な強さではいけない。

最低でも一回は圧倒的に勝って「フッ」と笑ってその場から立ち去る。

そんなことを夢見ていた。だが現実は残酷だ。

 

二度目の人生の目標はここで終わった。もう疲れた。

 

潮時なのかもしれない。俺には主人公パーティに入れるだけの格が無いんだろう。

もう無謀なことは辞めて田舎でスローライフを送ろう、そうしよう。

 

そうと決まればこんな場所からはさっさととんずらするに限る。

 

ここは俺が用心棒をしていた闇組織の研究施設の地下だ。

違法薬物の生成やキメラ合成、人体実験など非道な行為がされていたらしい。

 

今頃主人公パーティはここで造られたキメラ共と戦っているだろう。

 

キメラ共がアイツらに襲い掛からなかったら俺も逃げれなかった。

キメラ共には感謝!

 

てか戦いが俺の時よりも明らかに長いぞ。

俺よりキメラ共の方が強いのか。キメラ共と戦う時は逃げの一手だな。

 

地上からの振動が強くなる。

崩落して生き埋めになるのは御免だ。

 

ズタボロの身体に鞭打ってなんとか立ち上がる。

とりあえずポーションかなにかを探して歩き始める。

 

ああ、だけど──

 

「一回ぐらい勝ちたかったな…」

 

 

 


 

 

 

彼と始めて出会ったのはあるダンジョンの最奥だった。

 

そこで戦いになり、私は本当の強さというモノを知った。

 

技量の高さと異常なタフネス。

 

彼の攻撃を一撃でもまともに食らえば終わり。

防御しても衝撃が全身を貫き、体力を奪っていく。

なのに彼は私達が幾ら攻撃しても怯むどころか勢いを増していく。

 

一対一だったら勝負にもならなかった。

 

彼の武器が壊れていなければ、いやそのまま戦っていれば私達は負けていただろう。

 

聖女であるセシリアが回復に専念していたのに間に合わず魔力が空になっており、私達も体力が底をついていた。

 

彼は壊れた武器に舌打ちして、私達の前から立ち去った。

 

それが私達の最初の敗北。

それから何度も何度も彼と出会っては戦い、彼に負け続けた。

 

だけど彼は私達にトドメを刺すことはなかった。

それどころか私達が限界だと分かると立ち去っていくことが常だった。

 

いつしか私達の中には彼に勝つという目標が生まれた。

 

彼に勝って知りたかったんだ。

生い立ちや強さの秘訣、そして何故闇組織に協力するのかを

 

理由は様々だけど私達全員が彼が悪い人ではないと思っている。

彼に助けられたのだって一回や二回じゃない。

それに多くの人が彼に救われている。

 

だからこそ闇組織に協力しているのが不思議だった。

 

それをようやく知ることができると、彼にやっと勝つことができると思ったのに

 

キメラ達の乱入により戦いは中断され、彼は奥に消えていった。

 

垣間見えたその瞳には光ではなく闇が映っていた。

 

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