後々仲間になる敵キャラを目指したところ、主人公パーティにボコボコにされまして   作:底無ノどろ沼

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虎狼の二河、白道のワイバーン

 

こういう状況を前門の虎後門の狼というんだったか。

 

前には主人公パーティがそれぞれ武器を構え、後ろには組織の幹部が俺を殺すためのキメラを召喚している。

 

どうしてこうなった?

 

 

 

 

 

 

 

揺れを感じて再び目を覚ました。

 

崩落を免れていたココも限界が近いらしい。部屋全体にヒビが入り、天井が少しずつ落ちてきている。

 

ふと視線を感じ、その方向を見るとワイバーンと眼があった。

ポーションで回復したようで首を傾けてこちらを見ている。

 

ワイバーンの腹が鳴った。

よく見れば口からヨダレが垂れている。

 

コイツ、状況が分かってないどころか恩人の俺を餌だと思ってやがる。

しかも鳴いて催促してきた。

 

部屋に置いてあった食料をやるとバクバクと一生懸命に食い始める。

その間にもココの限界が近くなる。

 

遂には一部が崩れそのまま部屋の3割が崩壊した。

その間もずっとワイバーンは食料に夢中である。

 

その図太い神経が羨ましい。

 

崩壊がジリジリと進んでいくとガンッと大きな音が響く。

振り向くとワイバーンが鎖を引き千切り、檻の中をグルグルと走り回っていた。

 

さっきまであんなに弱りきっていたのに下級のポーションと食料でこんなに元気になるとは。

生命の神秘に驚いていると俺の灰色の脳細胞が輝き出した。

 

この地下から地上への道を作ることはできるがそこから脱出することができないため、諦めていた。

だがこの元気になったワイバーンがいれば可能だろう。

 

問題はこのワイバーンが思う通りに動いてくれるかだが…

 

ただ生き埋めになるくらいならやった方がいいだろう。

 

ワイバーンも翼を動かして飛びたそうにしているから道さえ作れば飛んではくれると思う。

俺を連れていってくれるかは別だが

 

檻から出し崩落から離れたところに待たせる。

意外と聞き分けが良く座ってこちらをじっと見ている。

 

地下から地上への道を作ると言っても、正確な距離も硬さも分からない。

下手な攻撃は崩落を早めるだけだ。

最大威力を叩き込み地上までの穴を空ける。

 

では満身創痍の今の俺でそんなことができるのか。

 

この世界には魔力が結晶化した魔晶と呼ばれる鉱石がある。

その魔晶の中でも最高級のモノを俺は身体に仕込んでいる。

 

それを主人公パーティとの戦いで何故使わなかったのか。

簡単な話で使った後の副作用がキツ過ぎるからである。

その他にも色々と理由があるが、今はコレに頼る他ない。

 

腹が熱くなってきた。

魔晶が活性化し莫大な魔力が解放されていく。

 

解放された全てを上へ向けて放つ。

放たれた魔力が全てを呑み込んで地上への道を作る。

 

副作用の一つ、魔力酔いがすぐに起こる。

平衡感覚が乱れ、膝をつく。

 

いつの間にか近くにいたワイバーンが穴から地上を見上げ、翼を広げている。

 

吐き気を催しながらなんとかワイバーンに捕まり脱出を目指す。

すでに穴の側面が崩れ始めている。

 

ワイバーンが飛び上がり、地上に向かって行く。

 

明らかに上昇スピードが速すぎる。

飛び立って僅か3秒もせずに地上へと脱出できた。

 

俺の計画は上手く行った。──ここまでは

 

地上へと脱出できたはいいがワイバーンの速さに振り落とされてしまった。

 

そして場面は冒頭に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

振り落とされた先が詰みだとは思わなかった。

前には主人公パーティ、後ろにはマッドサイエンティスト。

 

こっちは見た目は回復してるが内側はボロボロ。

仕込みも使い切ってもはやマナ板の上の鯛同然。

今地面にスーパーヒーロー着地できたことだけで奇跡だ。

 

「貴様裏切ったのかッ!!」

 

なんかマッドサイエンティストが叫んでいるが、頭に響いて気持ち悪い。

 

チラッと見ると不健康そうな面を怒りで歪めて俺を睨みつけている。

会った当初から気に入らないのか俺に食って掛かってくる。

コイツは俺を実験体にでもするつもりだろう。

追加のキメラを召喚して今にも襲いかかろうとしている。

 

なんで今のところ味方のはずの奴にも襲われなきゃならないのか。

 

てかもうすでに死にそう。

魔晶の副作用が段々と現れてくる。

魔力酔いなんて軽いモノだ。

ボロボロの身体なのに、さらに内臓をミキサーにかけられる感覚。

 

薄れゆく意識の中でもこの状況の打開策を考える。

 

主人公パーティをなんとか突破する。無理。怖い。

心を折られた相手にまた挑む勇気は俺にない。

 

突破するとしたらマッド一択だ。

 

最善策はマッドを適当に流して主人公パーティにぶつけてその隙に逃げればいいのだが、弱体化した今の俺にできるかは怪しいところだ。

 

深呼吸をする。

 

全て悪いのはあのワイバーンだ。

ワイバーンが俺を置いて飛んで行きやがったせいでこうなっている。

恩を仇で返すとはこのことだよ。

 

「アイツを殺せ!!」

 

マッドがキメラに命令を下す。

 

俺に飛びかかるキメラ共。

迎撃しようとするが身体が動かない。

 

ヤベ、死んだ

 

次の瞬間、キメラ共が炎に焼かれる。

ワイバーンのブレスだ。

 

どうやらワイバーンが戻ってきたらしい。

そのまま俺の前に着地し咆哮を上げる。

 

「ソイツは経過観察中の…」

 

マッドが何か言ってるが咆哮で聞こえない。

だがラッキーだ。今ならこのワイバーンに乗って逃げれるだろう。

 

無理矢理身体を動かしワイバーンに今度は振り落とされないように背に乗る。

ワイバーンがマッドにブレスを吐きながら飛び立つ。

 

ざまぁみやがれ、クソマッド。

 

そのままワイバーンは施設がすぐに見えなくなるほどの速さで飛んで行く。

 

俺はやっと逃げることに成功したのだ。

西陽がやけに眩しかった。

 

 


 

 

今の魔力の濁流は彼が放ったモノだろうか。

一瞬でも彼に勝てると思った自分が恥ずかしい。

私達は彼にまだ本気を出させてもいなかったのだ。

 

「貴様裏切ったのかッ!!」

 

シュタインが追加のキメラを召喚する。

彼がシュタインを睨みつけた。

 

それに気圧されたのかシュタインはすぐにはキメラ達に彼を襲わせなかった。

様子を伺うように自身の周りにキメラを配置する。

 

彼が深呼吸をした。

 

「アイツを殺せ!!」

 

その号令でキメラが彼に襲いかかる。

しかし襲いかかろうとした瞬間、戻ってきたワイバーンのブレスで焼き尽くされた。

 

あのワイバーンは何なんだ。

普通のワイバーンが放つブレスじゃない。

あのキメラ達は一匹一匹が普通のワイバーンよりも強かった。

それをブレス一発で

 

そのワイバーンはさらに一発のブレスをシュタインに放ち、彼を乗せて今度こそ飛んでいった。

 

シュタインはブレスを食らう前にこの場から消えた。

おそらくテレポートの魔導具か何かを使ったのだろう。

 

廃墟とかした建物の中にはもう私達しかいなかった。

 




Tips
"実験体626"
ワイバーンの卵に古龍の血を混ぜて造った個体。
意識が覚醒せず、しかし身体だけは成長していくため経過観察対象だった。
意識の覚醒の兆しがないため、生命維持装置を外し拘束。
第九区画で保管されていた。

"魔晶"
魔力が結晶化したモノ。
魔導具のエネルギー源として使用される。
魔晶の魔力は生物にとって劇物であるため、人体に取り込むことは大変危険である。
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