後々仲間になる敵キャラを目指したところ、主人公パーティにボコボコにされまして 作:底無ノどろ沼
青い空、白い雲、風で揺れる木々の葉、こんなに穏やかな空気は久々だ。
鳥達のさえずりがどこかから聞こえてくる。
絶対絶命の状況から脱け出した俺はとある森のひらけた場所で寝転がっていた。
血反吐を吐いていなかったらこの状況を楽しんでいただろう。
主人公パーティとの戦闘のダメージと魔晶の副作用とで俺の身体ではデバフの世界大会が開かれていた。
ワイバーンに乗ってここまで逃げてきたは良いものの碌な治療もできなかったため、数日間は気を失っていたようだ。
そのまま身体を動かせるようになるまでさらに何日もかかった。
その間ワイバーンはずっと俺の隣にいた。
というか愛着湧いて'テト'という名前も着けた。
動物を狩っては俺へも分けてくれる超良い子。
まあ動けないから食えなかったが、それでも感動してしまった。
寝るときは俺を囲うように丸まって、たまに頭を擦り付けてくる。
普通にカワイイ
水が欲しいと言ったら川に落とされそのまま流されたことだけは一生恨むつもりだが
それでも身体はボロボロ、心はズタズタの俺だったがアニマルセラピーのおかげで心は大分回復した。
田舎でのスローライフwithテトを心の支えとしてこれからは生きていく。
身体が動くようになったのでテトを洗ってやり、旅の準備をする。
テトが狩ってきた動物を捌いて干し肉にして、薬草を煎じ薬を作っておく。
干し肉を作る最中に焼いた肉をテトにあげたが失敗だった。
それからは生肉を食べなくなり、焼かないといけなくなった。
そして干し肉も好きなようで、朝目覚めると全て食べられていた。
一応怒った。その後撫でたけど。
身体はまだ痛むし思うように動かないがここ数年で一番QOLが高い。
色々と考えなきゃいけないこともあるが今はテトのために肉を焼く。
明日からここを離れてテトと過ごせる場所を探す旅に出る。
そのためにテトには英気を養って貰わないとな。
テトはヨダレを垂らしながらずっと肉を見ていた。
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雲一つない快晴の下、俺とテトは旅立った。
テトと旅をし始めて数時間、魔物の群れに襲われている行商人を見つけた。
何か貰えるだろうと思い助けてやる。
群れはテトが尻尾を振るっただけで半分以上が動けなくなり、残りは逃げていった。
行商人は最初、テトにビビっていたが俺が乗っていることに気づくと声をかけてきた。
テトを降りて行商人と交渉して色々なモノを手に入れることに成功した。
その後は何もない数日を過ごし、今は湖の辺で休憩している。
行商人から貰った少しの金を落としていないか確認する。
と言うのも現在俺は貯金とかが全くない。
主人公パーティとの戦いのためにポーションや魔導具、魔導書、武具に全て消えていった。
それにこの前の魔晶は数年に一度売られるかどうかのモノだ。
下手な貴族の財産くらいの金額を出したのに使えなかった。
ポーションなんて消耗品だし、魔導具も魔導書も殆ど役に立たなかった。
武具なんて主人公パーティと戦えば壊れるのが当たり前だ。
ある戦争で何百人も斬ったという魔剣も普通に叩き折られた。
あれも魔晶ほどじゃないが高かったのに。
てかよく考えたら俺って主人公パーティのために人生100週はできるだけの金額使ってんじゃね?
…萎えそうなので考えるのをやめよう。
とりあえずは検問を通るための金は手に入った。
近くの街で少し金を稼いで必要なモノをさっさと買ってテトと暮らせる場所を探さないとな。
テトを一撫でして背に乗ろうとしたその時
「見つけたよロルガー、ハハハ」
嬉しそうだがどこか狂気を感じる声が聞こえた。
背中越しに掛けられたその声は俺の名を呼んでいる。
マズイ、浮かれ過ぎていたか。
まさかもう刺客を送ってくるとはね。
振り返るとそこにはフードを被った中性的な子どもがいた。
しかしただの子どもではない。
コイツの名はリライ。
俺が居た闇組織の一員、しかも幹部である。
マッドを攻撃した時点で完全に裏切り判定だろうとは思っていた。
だが送ってきた刺客がコイツとなると組織の本気を感じる。
リライは組織の中で1、2を争う話ができないタイプで戦いに快楽を見出す奴だ。
そういうキャラの戦闘能力は総じて高いモノでリライも例に漏れず強い。
てか幹部連中全員強いわ。
個人の戦闘能力が一番低いであろうマッドでさえ、この世界の魔法使いの中で二桁上位の実力者だ。
で目の前のリライはそのマッドの何倍も強い、幹部の中でも上位の強さを持つ。
まだ万全の状態じゃないが、戦うしかない。
テトの全速力ならば逃げ切れるだろうが、テトに乗って飛び立つまでの時間をどうにか作らなければならない。
「ハハハ、会った時から君とは殺り合いたかったんだよねぇ」
リライはどこからか取り出したのかナイフを逆手に構え、腰を落とした。
俺も脚を肩幅に開き、腰を落とす。
武器の類も行商人から貰っておけば良かったと後悔するがもう遅い。
「来ないならこっちから行くよ!ハハハハッ!!」
リライが距離を詰めてくる。
牽制用の魔法を放つが軽く跳んで躱された。
だが跳んでいるリライに向かってテトがブレスを放った。
マッドが作ったキメラを軽く焼き尽くしたブレスをナイフの一振りで切り裂く。
「そんな攻撃じゃぼくには届かないよ、ハハハ」
その言葉とともに無数の投げナイフが放たれた。
急所はなんとか外したが、身体中に赤い線が引かれていく。
だが好都合、武器が手に入った。
今度はこっちが攻めてやろうと一歩踏み込もうとした。
その前にテトがリライに向かって突進していく。
その突進をいなしてリライのナイフの刃がテトの首の鱗に刺さった。
──ブチッ
何かが千切れたような音が聞こえた。
「いや~、助かりました。本当にありがとうございます!」
行商人のオジサンが私達に頭を下げてお礼を言ってくれる。
私達"銀翼"は次の街を目指して旅をしていた。
その途中、魔物に襲われている行商人を見つけたため助けたのだ。
「おっさん行商するなら護衛を雇った方がいいぜ。魔物もそうだし、野盗だっているかもしれないだろ」
斥候のエドが口は悪いが気遣うように行商人のオジサンに言う。
「その通りだね。今回で身に沁みたよ。まさか2回も魔物に襲われるなんてね」
「おっさん2回目かよ。1回目はどうしたんだ?」
まさかこの前にも襲われていたとは思わず、大丈夫だったのかを聞く。
「通りすがりの人に助けて貰ったんだよ。信じられないと思うけどその人はワイバーンを連れていてね」
オジサンがにこやかに話した内容は私達にとって聞き流すことができなかった。
ワイバーンを連れた人。
私達には思い当たる人物がいた。
彼だ。
オジサンにその人の特徴を聞けば聞くほど彼だという確証が得られた。
黒い髪に黒い目、体格、人を殺してそうな目つき、全てが一致した。
「彼は近くの街に寄ると言っていたから、ノダの街に行ったと思うよ」
ノダの街、それは私達が目指していた街だ。
次こそは彼に勝つ。
勝って彼のことを知りたい。
私達はノダの街への足を早めることにした。
彼との再会と再戦を願って
Tips
"テト"
カワイイワイバーン。
友達の家の大型犬がモデル。川に突き落とされたことをまだ覚えてる。
"行商人のオジサン"
40歳で何の知識もなく行商人を始めた。
初めての行商で2回も魔物に襲われたが、2回とも救われた。
1年以内に3人の嫁ができ、立ち上げた商会が国家お抱えになることはまだ誰も知らない。