限界傭兵少女が先生に救われる話   作:曇らせはダメだよ

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プロローグ

 

高校選び。それはとても重要なイベントである。

小さい頃からあらゆる分野において優秀で、将来を期待されていたボクこと『天王寺エリヤ』は、見事に高校選びに失敗した。

 

生徒数はボク含め3名。

一年が二人、二年が一人。三年生は全員失踪したらしい。とんでもない所に入学してしまったらしい。

 

「────それじゃ、ホシノちゃんとエリヤちゃんの歓迎パーティを始めまーす!ぱちぱちぱち!」

 

「「…………………」」

 

入学当日、同期のホシノと共に唯一の先輩であるユメ先輩が主催したと言う歓迎パーティに出席した。

悲しいかな、用意されていたのは湿気ったポテチが数枚だけだった。

 

「……えっと。これだけしか用意出来なかったけど、楽しんでね!なんて……アハハ……」

 

「………………エリヤ。お前にあげるよこれ」

 

「え、要らないけど……ホシノ、二人で食おうよ」

 

「いや良いって……」

 

「そ、そうだ!見て二人とも、“グルメスパイダー“もあるよ!懐かしいね?ポン!クラッシュ!ってさ!」

 

「先輩……お金ないんですか?」

 

見てて痛々しかったので突っ込むと、ユメ先輩はぎくりとして……いや、実際口に出して言っていたが、ともかくユメ先輩は金銭的に余裕がないらしい。

 

「じ、実はね……?アビドス高等学校には、とっても、とーってもおっきな借金が……」

 

「はぁ、どれぐらいです?天王寺家がスポンサーになれば解決する問題であれば良いですが」

 

「10億円……」

 

ホシノが無言で気絶した。10億円などふざけた金額だ、絶対に騙されているに違いない。天王寺家でも、一括で払うのは無理に決まっている。

それに、こんなのじゃマトモに最新BDを買う余裕もないだろう。万が一、借金取りが襲ってきた時には古い戦法で戦うことになる。

そうなれば終わりだ。この学校も、ボクたちも。

 

「ほ、ホシノちゃぁーん!?」

 

「先輩……辞めたいです………」

 

「待ってよお!辞めないでえ!」

 

結局、泣き落としに引っかかったボクと気絶して記憶が吹っ飛んだホシノはアビドスに残ることになった。

 

次の日から、ボクとホシノは少しでも借金を減らすために傭兵として働き始めた。

迅速に、なおかつ確実に作戦を遂行して報酬を得るため、大盾とハンドガンという鈍重な兵装のユメ先輩には普通のバイトをやってもらっている。

 

「ホシノ!三次方向から敵影多数!ボクは援護をする!メスはホシノがやってくれ!」

 

「任せた!」

 

火力型リニアライフル二丁持ちのボクと、高機動HPショットガンのホシノは戦術的に相性が良かった。

ホシノが戦端を切り開き、ボクが撃ち漏らしを処理する。当然、キヴォトス射撃大会で一位を連発していたボクが撃ち漏らすことはない。

 

「………ふぅ、ひとまず第一波は凌いだね。ホシノ……?どうかした?」

 

「……いや、今回の依頼に少しね。今回の任務って、カイザーの工場でストライキを起こした労働者の鎮圧でしょ?」

 

「あー、確かに。なんか嫌な感じだよね」

 

「ま、報酬が良いから。私たちとしても好都合でしょ」

 

結局、ストライキの集団は第五波まで続いた。きっと、500人以上の労働者達の夢を刈り取ったと思う。

すっかり疲れて、警戒も解いていた時の事だった。

 

「エリヤ。」

 

「分かってる、一人だけ……こっちに来てる」

 

見ると、傷だらけでもう倒れそうな生徒がボク達を視線だけで殺せそうな勢いで睨みつけていた。その手に武器はなく、なす術は無いはずなのになぜか迫力を感じてしまった。

 

「企業の、犬め……!貴様らに呪いあれ!いつか理解するが良い、失うことの痛みを!」

 

「生憎と、ボク達は最強だから。じゃ、サヨナラ」

 

最後の一人を気絶させて帰投する。傭兵支援組織から報酬を受け取って、アビドスの校舎に戻ると、ユメ先輩がニコニコしながら待っていた。

その後ろには新品のカップラーメンが置いてあり、お給料で買ったものだと一目で分かった。

 

「じゃ〜ん!見て見て、これ!特売品なの!」

 

「エリヤ、これは……」

 

「ああ……ホシノ。こいつは……」

 

「「久々のマトモなご飯だ!」」

 

一週間に渡る出向の間、味のしない缶詰と泥水みたいなフィーカを飲んでいたボク達からしてみれば、カップラーメンは極上の品だった。

お湯を入れて、3分待つ。乾燥した石みたいなパンをふやかす工程とまるで同じなのに、漂ってくる香ばしさが違う。

 

「もう待ちきれない!頂きますっ!」

 

「ま、待て……!私も!」

 

ほとんど同時にカップラーメンにがっつく。濃ゆい味と、暴力的な塩気がボクの舌を刺激する。

美味い。決して上品とは言えない味だけど、その下品さがボクの脳内に染み渡る。

 

「はふ、ズルルッ、うま、うま……」

 

「…………エリヤ、食べ方汚い……」

 

「ム………!ホシノだって、ほっぺに謎肉ついてるじゃないか。どうやったらそうなるんだ?」

 

「手が空いてないから取ってよ」

 

そうしていると、ユメ先輩は一層笑みを深めながら椅子に座ってこちらを眺めてきた。そんなにカップラーメンが食べたいのだろうか?

せっかく買ってきてくれたのだし、ユメ先輩ともカップラーメンを楽しみたい。

 

「ユメ先輩、あーんして下さい」

 

「うへ〜。エリヤ……正気?」

 

「ありがとうっ!いただきます!」

 

一週間にも渡る傭兵生活で疲れ切ったボク達の心は、確かに癒されていた。

美味しいご飯に、大切な仲間たち。これさえあれば、ボクは………満たされている。結局、ボクが入った学校は正解だったのかもしれない。

 

 

今度、二人にお礼を言おう。

「ボクと一緒にいてくれてありがとう」って。

「ボクはみんなの事が好きだ」って。

 

二人は、どんな顔をするのかな。

 

ああ……楽しみだ。

 

 

 

 

 

………おい、どうしてユメ先輩が……死んでる?

お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。お前のせいだ。お前の、お前の!お前の!全部お前が悪い。

結局、失ったものはもどらない。分かっているだろ?

 

天王寺エリヤ。お前は……生まれてはいけなかった。

 

 

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