エンターテイルズ   作:セカラボ

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第7章 影の徒花

「なあ、マター」

「ん? どうしたんだい、マナ」

「あまり食べてなかっただろう。腹は減らないのか?」

「ん~? ……大丈夫だよ」

「今、少し目を逸らしただろう。腹が空いてるなら私が何か買ってくるが」

「いや、良い。僕はさ、自分で作った物って美味しく感じないんだよね」

「そうか? とても美味しかったが」

「そうなんだよねぇ」

 

俺は今、風呂場からこの会話を聞いている。ご飯を作ってる間に色々してたなとは思っていたが、風呂を沸かしていたとは。体も温まったので、用意してもらった服に着替えて風呂場を後にする。

 

「お、目覚まし君。あがったかい? 温度はちょうど良かったかな?」

「はい、大丈夫です。ありがとうございます。お風呂に、着替えまで用意してもらって」

「ふふふ、それは良かった。僕はまだ片付けがあるから浴槽のお湯、流してて良いよ。マナももう入ったし」

「いや、俺も手伝いますよ。流石に何もしないのは」

「あ、そうだ。課題があるって言ってたけど大丈夫? パソコンなら充電もしてあるしいつでも使って良いからね」

「あ、はい。ありがとうございます」

 

軽く流された気がするがまぁ良いか。課題提出に間に合わせるため、ここは有り難く使わせてもらおう。

課題に取り掛かろうとパソコンを立ち上げると、マナが話しかけてきた。

 

「そう言えば、課題ってなんだ?」

「大学の講義で出た課題で、英語のやつなんですけど。流行についてレポートをまとめなきゃいけないんです。流行の周期だとか、そもそも何故それが流行るのかとか」

「時期とかも関係あるよな。私の所もそうだが、箒を作っても一定の時期で売れる物、売れない物もあるし」

「箒を作る?」

「あぁ、言ってなかったか。私は箒職人でな。素材があれば一通りは作れる。愛用してるこれも自分で作った物だ」

 

壁に立てかけてる箒を指差してマナはそう言った。流行についてのレポートについて、マナの話は参考になるかもしれない。そう思った俺はすかさず、話題を広げにかかる。

 

「へぇ~。そうなんすね。今はどんなのが主流になってるんです?」

「そうだな。前までは自分で育てた草、ホーキ草を用いた物がよく売れてたが。ここに来るちょっと前までは魔法繊維で出来た物が売れてたか」

「それ、何が違うんですか?」

「ホーキ草はまぁ、名前の通り箒に使われる植物の名前だな。これで作った箒は比較的安く作れるんだ。それに比べて、魔法繊維で作った物は作った本人の魔力によって出来が左右する。私は炎の魔法を扱うだろう?炎は邪を払うと言われているからかな。最近になって扱い始めたが、よく売れるんだ」

「ふむふむ」

「まぁ、偶然かもしれないな。何が売れるかなんてその時次第で、完璧に乗るなら予知とかしなきゃ分からないんじゃないか?」

 

そうか。職人でも完全には分からないものなのか。課題を片手に、マナの話を聞いていたところに、片付けを終わらせたのかマターさんも会話に入ってくる。

 

「それもそうだよね~。目覚まし君が読んでるラノベも今は異世界転生ものとか悪役令嬢ものとかが流行りだけど、最近じゃありふれた物になってるし、流行とは言えなくなってるよね」

「俺は好きですけどね」

「うん、まぁ好きなのがあるのは全然良い。と思うけど、流行りではない。そう言う話だよ。今は何が流行ってるんだろうか。最近のは分からないな」

「確かにそうですね」

「やっぱり、王道じゃないかミィ? 勇者が魔王を倒す。みたいなのがボクは好きミィ!」

 

全身を使って、好きな物を伝えるラミィ。こう見ると、長い耳?が絡まったり、どこかに当たったりしそうではある。

 

「ふふふ。そうか、ラミィはそう言うのが好きなのか」

「マター君はどうなのかミィ?」

「あぁ、僕も好きだよ。悪を滅ぼして世界が平和になり、争いがなくなる。やはり、展開が分かっているからこそ、ここからの場面をどう魅せるのか。そこを見るのが面白いんだよね」

 

そう言い終え、俺たちのいる部屋に入って俺の隣に座ろうとしたときだった。

 

「……っ!」

 

と、マターさんが小声で呻き、頭を抱えて膝を床に付ける。

マターさんに名前を呼びかけるも、荒々しい呼吸しか返ってこない。

 

 

 

何だここは。いや、この空間は、僕は知っている。以前、フォルディを見た、赤い世界だ。だが今回は奴ではなく、緑髪の少女とスーツの男が立ち話をしているのが見える。

 

「ふ~ん、そうなのね。そうやって、私の事も忘れていくのね。あらすじも設定もあまり変わらないのに」

「お、お前は。誰だ……!」

「さて、始めましょうか。影精騎士」

「……」

「や、やめろ、来るな!」

「奪って、私の騎士」

 

緑髪の少女の周囲から、黒い影が何体か現れたかと思うと、その影は少女の前に立っていた男を包み込む。暫くすると、その影ごと男は消えていた。

 

「これでまた一つ、新しい知識が付いた。今はこれが流行りなのね。帰って描こうっと。あ~、でもめんどくさいなぁ。影精に任せちゃおうかなぁ。でも、絵が上手い影精なんていないし」

 

独り言を呟いた後、何かを閃いたのか少女はその場を後にする。

 

「そうよ。いないなら創り出せば良いのよ。賢い、流石私」

「私の騎士、絵を描きなさい。勿論上手く、ね? それと、設定も。良い感じに纏めちゃってよ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「大丈夫ですか? マターさん」

「う、ん。あ、あぁ。大丈夫。最近何だか、眩暈というか、頭痛が多くなったなぁ」

「本当に大丈夫なんですか? 何回も呼びかけてたのに。確か前にもなってましたよね? 休んだ方がいいんじゃないですか?」

「うーん。でも特にそれ以外は体調にも変化はないし、大丈夫だよ。ありがとね、目覚まし君。その気遣いに応えてマターさんポイントを1ポイント贈呈しちゃおう!」

「一応聞きますけど、何ですかそれ」

「このポイントを831ポイント集めると良いことがある! ……かもしれない」

「じゃ、いらないです。しかもなんでそんな中途半端なんですか」

「むー。そんなこと言わないでくれよ~」

 

そんな事を言いつつ、課題を終えた俺は寝ようとしたが、当たり前だがベッドが1つしかないことに気付いた。今日は床で寝るしかないか。そう思って床に突っ伏した。だが、マターさんはそんな俺を揺さぶり起こす。

 

「お〜い、目覚ましく~ん?まさか床で寝るつもりかい?」

「バイト終わりとか疲れてたら普通に床に寝てるんで大丈夫です。」

「それはいけない。床で寝るなんて身体を痛めてしまうぞ。すぐに布団を敷くから待っててくれたまえ!」

 

押し入れからササっと布団を取り出し敷き終わると、布団に入るように促してくるマターさん。

 

「さぁ、どうぞ」

「な、何で布団が置いてあるんですか」

「何でってそりゃあ、ユウが遊びにくるから。それに、ラミィ用のベッド。これで2つあることに理由が付いただろう。僕は今日はラミィと一緒に寝るとしよう」

「初めてマター君と一緒のベッドだミィ! コイバナするミィ!!」

 

コイバナ、妖精にも恋バナという概念があるのか。なんか意外だな。

 

「ふふふ、それはそれで修学旅行みたいで楽しそうだな。だが、ゆっくり眠るといい。寝る子は育つぞ」

「もう子どもじゃないです」

「私もだ」

「僕はもっと育ちたいから寝るミィ!」

「そうかそうか。よし。じゃ、寝るとしようか」

 

マターさんはそう言って部屋の電気を消し俺たちに背中を向け、何秒か経った時にはスースーと寝息を立てて寝始めた。

 

こんな状況で寝れるわけないだろうが。

 

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