エンターテイルズ   作:セカラボ

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第9章 復讐ノ色

マナの乗る箒を見てラミィはポツリと呟く。

 

「ミィ。やっぱりあの箒すごいミィね」

「目的地までひとっ飛びってのは楽で良いねぇ。僕も使えればだいぶ楽になるけどなぁ」

「マター君も使えてるじゃないかミィ? あの、描画送還? って叫んでるミィ」

「あ~、それは確かに。でもその日限定だしなぁ」

「その日限定でもすごいミィ! いつも使えなくても、マター君とお話しできる時間が出来るからボクは嬉しいミィ!」

「ふふふ。そうかい? それは良かった。」

 

バス停へと着き、バスが来るまでラミィと話していた。目的のバスが着いたので、それに乗り込む。ここからしばらく、電車にバスにと乗り継ぐので無言の時間が続くだろう。僕は徐ろにポケットからスマホを取り出して時間を確認する。

 

「着くのは、昼時か。熱かったら遠慮なく言ってくれよ?」

「もちろんミィ!」

「さて、乗るか」

「出発ミィ~!!」

 

バスに揺られること数十分、電車に乗り継ぎこれまた数十分、そしてまたバスに乗り数分。大学に着くまで、僕はスマホで何の気無しに絵を描いていた。これも描画召喚できるかな?と思ったが、ラミィが最初に言ってたな。羽根ペンで書に描いたものが具現化するって。

 

今スマホに描いた、自作のドラゴンのイラストが具現化したら強いのだろうか。前にドラゴンの絵を書に描いてみた事があったけれど、それが具現化することは無かった。この事から考察するにどうやら僕の能力は、「現実に存在しているもの限定」の召喚のようだ。架空の物、オリジナルの物は具現化しないみたいだ。最初に出した剣も、現実で存在するシンプルな見た目のものだったから召喚できたのだろう。オリジナルの物が召喚できたらどれだけの強さをしているか、こういった暇な時間に考えるのが最近の僕の楽しみである。

 

「さて、着いたか」

「着いたミィ!」

「まずは腹ごしらえだな。目的の中学校の近くには~っと。コンビニがあるな。今日はコンビニのおにぎりにしよっと。さて、少し歩くぞ」

「食べる前の運動ミィ!」

「お、よく分かってるじゃないの。」

 

コンビニに着き、おにぎり二つとお茶、お菓子を購入し、日陰に入る。日焼けしたくないからね。……ラミィは日焼けとかするんだろうか。真っ白だけど、日焼けとかしたら黄色っぽくなったり?

そんな事を考えながら、先ほど購入したおにぎりを口にする。あ、そうだ。そろそろユウに連絡を入れないと、あそこからは割と遠いから早めにやっておかないとな。

 

「……よし、送信。既読は、流石にまだか。今の時間は寝てるだろうし。気長に待とうか」

「待つって言っても立ち上がって、何処かに行くミィ?」

「あぁ、気になるとこがあるからね。」

 

気になる所、昨日のあの赤い空間。この近くの場所である事は分かっている。そこに行けば彼女に会えるだろうと、僕は踏んだ。その考えが当たっていればいいんだけど。と考えていた刹那、上空から僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。

 

「やっほ~、マッちゃん! 来たよ!」

「おや、ハム子? まだ寝ているのかと思ったよ」

「そりゃマッちゃんからのお呼びだからね! マナちゃんの箒に乗って急いで来ちゃった」

「先程振りだな、マター。確かに姉さんは寝てたけど、マターの送ったメッセージで完全に目が覚めたみたいで」

「そうなのかい? 起こしてしまったみたいですまない」

「いや、大丈夫だよ! 私はだけど」

 

何か含みのある言い方をするハム子。目線をハム子の手に目線を落とすと、黄色い傘が握られている。心なしかドス黒いオーラを纏っているように見える。

 

「あんた……マスターの睡眠時間を削っておいてそれだけなの?」

「何だ、啊魔傘か。本人が良いって言ってるんだし大丈夫だろう? 何をそこまで怒ってるんだよ」

「当然でしょ!? 昼間はマスターの睡眠時間なの知ってるでしょう? それを知りながらマスターを起こし、その上で外に呼び出すなんて何考えてるの!?」

 

そうだった。このめんどくさい奴の事を完全に忘れていた。これは僕の失態だな。

 

「悪かった。もうちょっと気を遣うべきだったよ。すまなかった」

「……何よ。今日はやけに素直ね?」

「僕が悪かった。ただそれだけだよ」

「マター君も謝ってるしそんなに怒らないで欲しいミィ」

「……分かったわよ。今度から気をつけなさい?」

 

 

それきり、啊魔傘は静かになった。

……よし、ひとまずこれで大丈夫だな。はぁ、本当にめんどくさいな。この主大好き傘娘は。

 

「ごめんね、マッちゃん」

「いや、僕が全面的に悪かったからハム子は謝らないでくれ。それよりも、今日呼んだ理由なんだけど」

「あ、それは大丈夫!マナちゃんから少し聞いたよ。諷香ちゃんに会うんだよね」

「あぁ、その通りだ。」

 

ハム子達と合流した僕たちはコンビニから、一度、目的地へと向かう。勿論、マナにひとっ飛びしてもらうためだ。さてと、良い感じに時間も潰せたか。そろそろ目覚まし君が講義から帰ってくるだろう。大学へと戻り、目覚まし君が出てくるのを待つ。数分後、大学前の門を潜りこちらへと向かってくる人影が1つ見えた。後輩、目覚まし君だ。

 

「お待たせしました」

「お、来たね。じゃ、今日の目的地へと行こうかな。マナ、お願いできるかい?」

「え? 私?」

「勿論。ひとっ飛びしてくれ。」

「あ、そうか。マター、申し訳ないが実はこの箒、3人が限界なんだ」

「……1人余るってことか」

「そう、だな」

「そうか。なら僕が残ろう」

「え?マッちゃん、大丈夫なの?」

「あぁ、ラミィも一緒に先に行っててくれ。」

「分かったミィ!」

「集合場所は先程の場所だ。よろしくね、マナ」

「あ、あぁ、分かった。」

 

マナは瞬とハム子、啊魔傘とラミィを乗せて飛んでいった。

 

「さて、皆行ったし準備をしないとな。万が一の事があるだろうし、ね。描画召喚。衣装チェ〜ンジ!」

 

僕はバッグから羽根ペンと本を取り出し、そのまま走って目的地へと向かった。

 

 

 

 

「よし、着いたぞ。皆」

「お疲れ様、マナちゃん!」

「マターさんがここ集合って言ったんですか? 一体何のために……ってあれは」

 

俺たちは今、路地裏に入る前の広い通路にいる。その場所からでも分かる、あの緑色のセミロングの髪を靡かせているあの少女は。

 

「EPさ……諷香ちゃん!」

「あれ? 皆さん、どうしたの?」

「え? 古筆さん……ですよね?」

 

俺たちは彼女の元へと駆け寄る。が、彼女の雰囲気は前に会ったものとはかけ離れているように見えた。赤い眼鏡は変わらずとも、おどおどしている様子はなく、服装も制服ではなく、紺色のドレスの様なものに身を包み、微笑んでいる顔の右半分は黒く変色している。

 

「あ〜あ、バレちゃったか。完璧だと思ったのに。えぇそうですよ。私は古筆諷香。そして、あなた達が倒すべきアンチエンター幹部の1人『怠惰のカーネイト』ですよ」

 

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